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タイの格差社会が深刻化する理由とは?貧困層の現状も解説

「微笑みの国タイ」といわれ、穏やかでのんびりした性質で知られるタイですが、実は格差社会が深刻化しています。
コロナ禍が経済低迷に拍車をかけ、タイの貧困層はますます悪い状況に陥っているのが現状です。

新型コロナウイルスの蔓延は、タイの社会問題ともいわれる格差社会を浮き彫りにしたといっても過言ではありません。
2020年7月から続く反体制デモは、こうした格差社会に不満を持つ市民が発端のひとつだといわれています。
未だ、タイの格差社会は深刻になるばかりです。

こちらの記事では、タイの格差社会が深刻化する原因を探るとともに、貧困層の現状についても紐解いていきます。

タイの格差社会が深刻化する理由

タイの格差社会が深刻化する理由

スイスに本社を置くユニバーサルバンク「クレディ・スイス」が2018年に出した推計によると、タイの富裕層における上位1%が所有する資産が、タイ全体の資産において約67%を占めたという結果が出ています。
この数字は、調査対象となった40カ国のうちトップクラスで、日本は18.6%だったことからいかに大きな数字かがわかるでしょう。

このようにタイの格差社会は開く一方ですが、その根底には何があるのでしょうか。

その理由を解説します。

参照元:クレディ・スイス

首都バンコクが牽引してきた経済成長

タイが経済成長を進めた中心には、首都であるバンコクが存在しています。
そのため、バンコクにおける経済活動や都市人口の一極集中は目を見張るものがあるでしょう。

その一方で、地域格差は非常に開いており、特に最貧地域である東北エリアや農村部では深刻な貧困問題を抱えています。

こうした、地域格差もタイ全体の格差社会を進める一因となっているでしょう。

アグリビジネスの失敗

首都バンコクの都市化が進む一方で、東北エリアでは、アグリビジネスが進められました。

1960年代から拡大していった農業は、一次産品の輸出の拡大と併せて、耕地拡大も必要となります。
そのため、農民は潤沢にあった森林資源を伐採するようになり、結果として森林破壊が深刻化していきました。

また、1970年代以降には、エビの養殖が拡大します。
それに伴い、マングローブ林が破壊され、さらには内陸部に塩害被害をもたらしました。
さらには水質汚染を引き起こし、アグリビジネスは失敗に追いやられます。

東北エリアに暮らす人々は、首都バンコクへの出稼ぎを余儀なくされ、地域経済は衰退しました。

タイの貧困層における現状

タイの貧困層における現状

2020年から続く新型コロナウイルス感染症の影響は、タイの格差社会にも大きな影響を与えています。

世界銀行の推計によると、2020年におけるタイの貧困層は、150万人程度増加したと報告されました。
特に、低所得層が暮らすスラム街では、多くの人が職を失っています。

こうした背景も踏まえて、現在のタイにおける貧困層の現状を紐解いていきましょう。

参照元:世界銀行

反体制デモが加熱

タイに限らず、世界的にも富裕層と呼ばれる人たちは、コロナ禍とは関係なく、株取引などを活用して資産を増やしています。
その一方で、タイの貧困層には大きな打撃を与えているのが現状です。

深刻化する格差社会に対して、貧困層の市民は不満を抱えており、ついには反体制デモが加熱し始めました。
民主主義とはいえ、絶対的な権威を持つ王室に対する改革を要求したものです。

これまで、王室の批判をすることはタブーとされてきたタイですが、格差社会が開くとともに、市民の不満は耐えきれないものへと発展して、デモに拍車をかけました。

高止まりする失業率

NSO(タイ国家統計局)が調査したところによると、2021月12月のタイ全体における失業率は2.3%でした。
コロナ禍以前は、失業率が1%前後だったため、失業者の増加が問題視されています。

こうした失業者の中には、若者も多く含まれ、先行きが見えない現状に失望し、デモに参加して不満を爆発させているのが現状です。

参照元:NSO(タイ国家統計局)

自殺者が増加

深刻な格差社会から貧困に悩む人たちの中には、自殺を選ぶケースも少なくありません。

実際、WHOが2016年にまとめたデータによれば、タイの人口10万人あたり14.4人といった結果が出ています。
この数字は、東南アジアでも最も多く、2020年には前年度よりも22%増加したと言われているほどで、状況は悪化するばかりです。

中でも多いのが10〜19歳の若者で、格差社会によるストレスや家族におけるトラブルが原因と言われています。
タイ全体におけるメンタルヘルス問題は、差別対象とされる傾向にあり、治療が遅れたり治療機会が無い人も少なくありません。

参照元:メンタルヘルスと物質使用|World Health Organization

ますます富続けるタイの富裕層

ますます富続けるタイの富裕層

貧困層の問題が加速する中で、タイの富裕層はますます豊かになっています。
特に、子供達の差は開くばかりで、教育格差は深刻です。

例えば、富裕層の子供達は、しっかりとした教育を受けている上に、ネット環境も充実しているため、様々な情報に触れることができます。
一方、貧困層では情報はおろか、接点となる大人は、周囲に暮らす同様の貧困層のみです。

こうした格差は、現状のみならず、結果的には将来的な貧富の差にも繋がっていくでしょう。

タイの教育格差は地域格差も要因

タイの教育格差は地域格差も要因

タイの教育は、日本とよく似ています。
小学校6年間、中等学校3年間、高等学校3年間といった流れが一般的です。

しかし中等学校への進学率は、首都バンコクとその他のエリアに暮らす子供達とでは、大きな差があります。
また、教育自体の差も大きく、設備も異なる点も問題でしょう。

加えて、都市部にはインターナショナルスクールがあり、英語教育が進んでいますが、農村部ではこうした教育は導入されていません。

まとめ

まとめ

タイにおける格差社会は、コロナ禍もあってますます深刻化を帯びています。
しかし、日本も他人事ではありません。

実際、タイも日本と同じ民主主義でありながら、現在のような格差社会が広がっています。
日本でも地域における格差は起きており、教育格差も少なくありません。

タイで起こっている状況を教訓にしながら、まずは、自国の現状を知ることも大切です。

誰もが平等に本当に受けたい教育を受け、そして健やかな暮らしを送ることは、SDGsにおいても重要な目的となっています。
日本の問題が解決すれば、タイやそのほかのエリアにおいても格差社会の是正が影響していくでしょう。

一人一人が、格差における課題を意識し、できることから積極的に行動していくことが欠かせません。

  • 記事を書いたライター
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