私たちが日常的に体感する地球温暖化の影響は、夏に最高気温が年々上昇していることや冬の降雪が減少していることなどが挙げられるのではないでしょうか。
東京の冬日を例に挙げてみると、一年間の冬日(一日の最低気温が0℃未満の日)はだんだんと減少しています。
1933年以降年間約40日から約80日あった冬日は減少し続けており、1990年代には一度も10日を超えることはありませんでした。
また、年間の平均気温は、1800年代と比べ約1.24℃ほど上昇しています。
さらに、夏の熱帯夜(一日の最低気温が25℃以上の日)は、1950年頃まではほとんどありませんでしたが、現在では年平均15日以上にものぼります。
上記のような平均気温の上昇は東京だけではありません。日本全国、そして世界中で起こっているのです。
そして、地球温暖化によって、海面上昇という問題も同時に発生します。今回は地球温暖化による海面上昇の問題に焦点を当てて解説していきます。
実際に世界ではどんな問題が発生しているのか、そして私たちにできることはあるのか、具体的に見ていきましょう。
地球温暖化の原因
なぜ、地球の気温は上昇を続けているのでしょう。主な原因は、温室効果ガスが増えているからです。
温室効果ガスとは、主に大気中の水蒸気、二酸化炭素、メタンガスでできており、地球全体を見えないベールのように覆っています。
地球全体の平均気温は現在14℃前後となっていますが、実はこの温室効果ガスがなければ、地球はマイナス19℃ぐらいになってしまいます。
つまり、温室効果ガスは人間を含めたあらゆる生物や植物が、地球で生活する上でなくてはならない存在なのです。
その反面、温室効果ガスが増えすぎてしまうと大気中での濃度が高まり、太陽からより多くの熱を吸収するようになります。
通常であれば、地球に吸収された熱は循環し随時地球の外に放出されますが、吸収される熱の量が放出される熱の量より多くなってしまい、つまり熱をため込んでしまうことが地球温暖化の原因となります。
温室効果ガスが増えている原因としては、主に化石燃料(石炭、石油、天然ガスなど)を燃焼することで発生する二酸化炭素、そして、エアコンや冷蔵庫に使われているフロンガス、生ごみや水田からでるメタンガスが原因とされています。
そして、森林伐採により、二酸化炭素を吸収してくれるはずの木々が減少してしまったことも原因の一つです。
参照元:温暖化とは?地球温暖化の原因と予測|全国地球温暖化防止活動推進センター
海面上昇が起こる原因
海面が上昇する原因は、主に2つです。
一つは、気温の上昇により南極やその他の山岳氷河、また山に残る万年雪が溶けて海水の量が増えるためです。
そしてもう一つは、地球温暖化により海洋に蓄積された熱で海水の体積が膨張するためです。(熱膨張)
地球の7割を占める海洋は、大気に比べて熱容量が大きいため、大量の熱を蓄積しています。そして、大気との熱のやり取りを通し、気候に大きな影響を与えるのです。
海面上昇による影響・問題
海面上昇は、世界各地に深刻な問題を及ぼします。
中でも最も深刻なのは、キリバス・モルディブ・ツバルといった太平洋やインド洋の島々です。元々国土が小さいこれらの国々では、海面が30㎝上昇するだけで島の5割から8割が浸水する恐れがあります。そのため、ひとたび浸水してしまえば居住不可能となり、他国へ移住するしか方法がないのです。
こうして、自国に住むことができなくなり、他国へ移住しなければならなくなってしまう人を環境難民と呼びます。紛争などの問題も含めると、2050年までに約10億人の人々が環境難民になるだろうと言われています。
日本も例外ではありません。日本の周囲は海に囲まれているため、海面上昇による問題は深刻になります。海面がほんの数十㎝上がるだけでも海岸の砂浜や干潟が減少します。
そして、万が一日本を取り囲む海洋が1m上昇した場合、日本の砂浜の約9割が失われると予測されています。また、河口部では海水からの塩水が遡上し、農地や井戸の塩分汚染も深刻な問題となることが予想されます。
地球温暖化に対する世界の取り組み
京都議定書とパリ協定
1992年、ブラジルで開かれた地球サミットで取り決められた「気候変動枠組条約」に基づいて具体的な内容を取り決められたものが、1997年の京都議定書です。
京都議定書では、2020年までの温暖化対策について取り決められていますが、2020年以降について取り決められたものがパリ協定となります。
さらに、京都議定書は1997年当時の先進国のみを対象として公布されたものに対し、2015年に採択されたパリ協定では、すべての国による取り組みが実現しました。
パリ協定での大きな目標は、今後の気温の上昇の上限を2℃までという目標を設定し、少なくとも1.5℃までに抑える努力をするというものです。その目標に向かって世界中の国々が努力をしているのが現状です。
再生可能エネルギーによる世界各地の取り組み
化石燃料などの有限な燃料を使わずに、無限に降り注ぐ太陽光や、風、水などの力で発電する再生可能エネルギーに世界が注目しています。
再生可能エネルギーは、主に太陽光発電、水力発電、風力発電、バイオマス発電、地熱発電があります。意外にも日本では1980年代頃から太陽光発電が注目され、ごく早期の段階で導入され始めていました。
イギリスでは、海に囲まれた地形から主に風力発電が行われています。
アメリカは主に太陽光発電と風力発電の利用が拡大し続けており、カリフォルニアを始め、ニューメキシコ州、ネバダ州、ワシントン州、コロラド州、ニューヨーク州などいくつかの州で、2045年から2050年までにクリーンエネルギー100%を目標に掲げています。
北欧の国スウェーデンのベクショー市では、松ぼっくりやコケ、食品廃棄物を燃料にしたバイオマスエネルギーを積極的に取り入れています。同市では、今後20年以内に二酸化炭素排出量を半分に減らす目標を掲げています。市民には自転車や公共交通機関の利用を促進しています。
市内を走る循環バスはバイオガスを燃料としていて、こうしたバイオマスエネルギーが市営の供給システムで行われているのです。
ドイツでは、ドイツ連邦環境庁が国民一人一人の年間二酸化炭素排出量を知ることができるサイトを公開しています。暖房の燃料についての詳細や、車の所有の有無などの必要事項をインプットするだけで、自分自身が年間何トンの二酸化炭素を排出しているかが確認できるユニークなシステムです。
企業の温暖化対策
IKEAのパッケージはフェアウッド(違法伐採されていない木材)を選んでおり、環境への負担を減らすため、組み立て前の製品を隙間なく梱包する「フラットパック」方式をとっています。
フラットパックでの製品の輸送は一度にたくさん運べるため、ガソリンの消費を抑えられるのです。
アウトドアメーカーのパタゴニアでは、2025年までに同社が扱う全ての製品に、再生可能素材またはリサイクル素材のみを使用するという目標を掲げています。
また、世界中の森林再生などの二酸化炭素回収プロジェクトに投資することを約束するなど積極的に環境問題に取り組んでいます。
H&Mは、以前からリサイクルに力を入れており、ブランドにかかわらずいらなくなった服を回収し、古い衣服から新しい生地を作る循環型の生産を行っています。
また、2021年に同社から発表された「イノベーション・ストーリーズ」では、新素材として、多量のマイクロファイバーを排出してしまうポリエステルやアクリルに代わり、ヒマシ油を用いた糸や、サボテンから作られる植物由来のレザー、バイオファイバー(作物の廃棄物を織物用の繊維に変えたもの)などが使用されています。
さらに、漁網や使い古しのカーペットなどの廃棄物から再生されたナイロン繊維を利用することにより、天然資源の保護につなげています。
海面上昇問題に対して私たちにできること
地球温暖化対策として、個人ができることは非常に小さなことになりますが、重要となるのは継続的にできることであるといえます。
極端なことをしなくても一人一人が無理をせず、日常生活の中で少しずつ習慣化していくことが重要です。
- 繰り返し使えるエコバッグを利用する。
- LED照明に切り換える。
- 車を使わず、なるべく自転車や徒歩、公共交通機関で移動する。
- 旬の野菜を食べる(季節以外の野菜を育てるには旬のものを自然に育てる約5倍 のエネルギーが必要です)
- 省エネルギーの電化製品を利用する。
- 環境に配慮した製品を買うように心がける。
- 使っていない照明やエアコンはこまめに切る。
- 太陽光発電システムを取り入れる
- 植物を育てる。
- 早寝早起きを心がけ、電気使用量を減らす。
- Webサイトで情報を収集し、環境を意識した生活の方法を学ぶこと。
環境に配慮した製品や地球にやさしい暮らし方については、日々新しいアイデアが生まれネット上で配信されています。
北欧の国フィンランドでは、首都ヘルシンキの町を紹介するサイトで環境にやさしいカフェの紹介や宿泊施設、交通手段などの紹介をしています。
日本では、2011年の東日本大震災以降「復興デパートメント」という名前で始まったWebサイトがあります。
開設当初は、東北を応援するために東北の商品を集めネット販売していたものが、現在では自然環境や地域にやさしいものが買える「東北エールマーケット」として活躍の場を広げています。
参照元:「わかる、えらぶ、エシカル -Shopping for Good-」|エールマーケット
私たちの暮らしは、100年前とは比べ物にならないほど便利になりました。テレビや冷蔵庫、電話の普及から始まり、現在では携帯電話を持っているのが当たり前の世の中になりました。
しかし、海に囲まれた島国日本に暮らす我々にとって、地球温暖化による海面上昇は非常に深刻な問題です。
この課題を未来に持ち越さないために、私たち一人一人が今何をすべきか考えるときが来たのではないでしょうか。