普段あまり聞くことのない「砂漠化」という言葉。
砂漠のない日本には関係のなさそうな問題に感じますが、決して他人事ではないのです。
世界では、乾燥地帯に住む人が20億人以上もいると言われています。
その大半は途上国に住み、100カ国以上の約10億人が極度の貧困に苦しんでいます。
人口の8割が農業や自然資源に頼る生活をしている住民にとって、砂漠化は生死にかかわる問題です。
この記事では、砂漠化の原因と砂漠化によってどのような影響があるのか、日本がどのような対策をしているのかをご紹介します。
「砂漠化」とはなんだろう?
砂漠化とは、もともと緑が育っていた地域が、土地の劣化などにより植物が育ちにくくなった地域の変化のことをいいます。
UNCCD(砂漠化対処条約)によると、
と定義されています。
引用:地球環境 砂漠化対処条約|外務省
UNCCD(砂漠化対処条約)とは、砂漠化が深刻化しているアフリカ諸国を中心に、問題解決をするために国際社会で協力し合うことを目的とし、1994年6月に採択された条約です。
国際社会で条約を結ぶほど、砂漠化問題は重大なのです。
JICA(国際協力事業団)によると、乾燥地は陸地の約41%を占めていますが、10~20%がすでに劣化しており植物が育たなくなっていると発表しています。
では、植物が育っていた地域がどうして砂漠化してしまったのでしょう。
砂漠化の原因と影響
砂漠化の原因には、気候が関わる「気候的要因」と人間活動が関わる「人為的要因」があります。
それぞれ、ご説明します。
気候的要因
気候的要因とは、気候変動による干ばつや乾燥化による土壌荒廃です。
サハラ砂漠の南では、1930年から長い間雨が降らず、1968~1973年にかけて西アフリカを襲った大干ばつによりサハラ砂漠は拡大しました。
人為的要因
人為的要因とは、限度を超える人間活動により生じた要因です。
脆弱な生態系の中で、過剰にヤギや羊を放牧し草を食べつくし土地が劣化したり、農地開拓や薪炭材のための過剰な森林伐採をしたりする人間活動によるものが要因です。
これらにより植物が少なくなることで、風食(土が飛ばされる)や水食(土が流される)により砂漠化が進みます。
また、人為的要因が起こった理由には、その土地に住む人口の増加や貧困といった社会的・経済的な問題があります。
「気候的要因」と「人為的要因」のこの2つの要因が影響し合うことで砂漠化は進んでいます。
では、砂漠化が進むことでどのような影響がでてくるのでしょうか。
砂漠化による影響
砂漠化が進むことで生態系に影響がでます。
そうすると、農業の生産性が低下し、貧困などの問題が発生します。
地球上には、砂漠化により影響を受けている人が約2,000万人~1億2,000万人いるといわれており、食糧不足、水不足、貧困の状態に陥っています。
特に水食による被害が進んでいるのが、モロッコ、ブルキナファソ、エチオピアです。
生態系への影響
人為的要因により土の劣化が進むと、生態系が崩れ、森林が消失するだけでなく、生物多様性を消失することになります。
生物多様性により食料や資源を得てる人間や動物はそこで生活することができなくなり、新たな開拓をすることで、砂漠化が拡大にさらに生物多様性を失うという悪循環に陥ってしまうのです。
この悪循環を断ち切らない限り、生物多様性や喪失し、その地域の住民も苦しい生活が続くことになります。
人への影響
砂漠化により、生物多様性が失われることは、その土地に住む人たちの暮らしにも大きな影響を与えます。
まず、土地の劣化により農作物の収穫が低下し、安定した食料の確保ができなくなります。
また、安定した農作物が収穫できないことで、食糧の価格が高騰し、生活環境が悪化、栄養失調や飢餓など、貧困の加速につながります。
土地の劣化に直面した住民は、新たな農地拡大にために森林伐採を行い、水などの資源を過剰に使うことで土地の劣化が拡大します。
さらに、農業で生活を支えている人にとっては農作物を収穫できないことで、生活の糧を失うことになります。
生活の糧を失った人は職を探して都市部に移動し、都市の人口が集中し新たな社会問題を引き起こします。
今後30年間に、サハラ以南のアフリカから北アフリカやヨーロッパに職や土地を求めて、6000万人が移動する可能性があると言われています。
このような人口移動は、最悪の場合、社会的混乱や紛争などの要因を引き起こす危険性があります。都市へ移動し、職に就けず犯罪に加担する人もでてきます。
砂漠化が進むことで、自然災害や食料問題だけではなく、貧困や紛争など、日常的な生活を失うなど社会的問題に発展してしまうのです。
日本への影響
アフリカの砂漠化問題は、食料の輸入を海外に頼っている日本に大きく影響します。
なので砂漠化がまったく関係のない問題ではなく、解決に向けて取り組む必要があるのです。
途上国の砂漠化問題は持続可能な目標を解決に関わる問題であり、国際社会で解決を進めて行く必要があります。
また、春に飛来する黄砂はゴビ砂漠や、タクラカマン砂漠で発生し、大陸から日本に来る西風によるものです。
黄砂は日本に飛来するまでに濃度は低くなり、自動車や洗濯物の汚れに注意するくらいですが、最近では呼吸器や循環器系の病気の悪化やアレルギーへの影響が発表されています。
このように砂漠化は、環境や生態系への影響だけではなく私たち日本へも関係しているのです。
日本がおこなっている砂漠化の対策
そこで、日本がどのような対策をしているのかご紹介します。
先進国である日本は、砂漠化対処条約により途上国を支援する責任があります。
取り組み内容としては、3つを主に力を入れています。
国際機関への拠出
砂漠化対処条約事務局への拠出は2010年から続けており、UNDP(国連開発計画)やFAO(国連食糧農業機関)、UNEP(国連環境計画)などにもおこなっています。
二国間援助
住民が主体となっておこなえる砂漠化対処技術の導入に取り組んでいます。
また、地域の自然環境に適した技術を近隣地域間で移転する支援をおこなっています。
具体的には、近隣地区において砂漠化対処の成果が出ている方法(伝統的知識・技術・ノウハウ)を抽出し、希望する技術を住民に選んでもらい、住民主体で取り組み、普及と定着させる取り組みです。
NGO支援を通じた草の根レベルの協力
草の根レベルの協力とは、草の根レベルのきめ細やかな協力のことをいいます。
日本の団体が主体的となり、人を介した技術協力をおこない、途上国の地域に生活改善と生計向上に役立つ事業であること、日本市民の国際協力への理解を示すなど重要な視点を持っておこなっています。
日本は、資金援助や砂漠に関する研究と調査など、原因を抑制するための技術提供や新しい技術を提供することで砂漠化の進む国を支援しています。
まとめ
砂漠化は遠い国の話のように感じてしまいますが、私たちの将来の生活に関わる重大な問題です。
海外の輸入に頼っているからこそ、世界の問題に目を向け、興味を持つことが大切です。
そして、その中で自分に「出来ることがあるかな?」と考え、行動することで未来を変える小さなきっかけとなるのです。
・世界の砂漠化|JICA(国際協力事業団)
・国際的な砂漠化対処|環境省
・人々の暮らしと砂漠化対処|環境省
・砂漠化について考える。日常を非日常にしないために|国際連合広報センター
・黄砂とその健康影響について|環境省