中国は依然として、深刻な医療問題を抱えています。
看病難や看病費の問題、医療格差、高齢化問題、医療機器のコスト増など様々な問題がありますが、これらの問題はなぜ起きているのでしょうか。
中国で起きている医療問題を確認することで、どんな医療問題を抱えているのか分かるかもしれません。それでは、中国の医療問題についてご説明しましょう。
看病難・看病費の問題
中国では、看病難や看病費の問題が深刻化しています。
1960年代、かつての中国は最貧国であったにもかかわらず、乳幼児の死亡率を半減させることに成功させています。
その結果は当時161ヶ国中13位という驚異的な数字を叩き出しており、改革が行われる前にここまで減少させたのは非常に素晴らしい功績だと言えるでしょう。
しかし、近年では看病難や看病費の問題が相次いで起こっています。
「衛生緑書2006」では、政府が医療に対する支出を削減してしまったことによって個人が負担する費用が増えているにも関わらず、過剰診療を防ぐメカニズムが働いていません。
当時行われた世論調査では、半分以上が診療を受けるのが難しく、たとえ受けられたとしても医療費が高い、つまり看病難・看病費の問題が発生しているという結果があります。
これは今現在でも続いており、常に医療体制がひっ迫している状況にあるでしょう。
安心できる医療の需要は高いに越したことはありませんが、需要が低い状況が続いているといつ病気になるか分からない不安な状況が続きます。
また、もしも病気になった時に医療費がいくら必要になるのか分かりません。
医療費が高いと、貧困世代はむやみに診察を受けることができなくなるので看病難・看病費の問題が露呈します。
貧困世代からやっとの思いで抜け出したとしても、高い医療費のせいで生活水準を大きく低下させる原因になるでしょう。
なぜ医療費が高騰し、個人負担が増えるのか
中国において医療費が高騰したのは、過剰診療が横行しているのが原因でしょう。
薬剤や検査は、医師の判断で薬剤や検査の量や種類を増やすことができます。
そもそも患者は、自分が受ける診療が本当に適切なのかどうかを確実に判断するのは非常に難しいです。
たとえ適切ではないと指摘したところで、医師に言いくるめられたり別の医院を紹介されたりする可能性があるでしょう。
つまり、アドバンテージがあるのは患者ではなく医師ということになります。
中国では数多くの医療機関が非営利であり、収入を占める補助金の割合が少ないのが大きな問題です。
つまり、経営の良し悪しを決めるのは収益への貢献度によって決まる仕組みになっています。
これによって患者からいくら徴収できるのか、収益を上げて医師の処遇を高めるのかに集中してしまっているため、過剰診療が横行する事態になっているのです。
これが個人負担が増える仕組みであり、とても感化できる状態ではないと言えるでしょう。
中国の医療格差問題
中国では医療格差の問題は後を絶ちません。
上述したように、看病難・看病費の問題が解決しない限り、医療格差を止めることができないどころか格差が広がり続けてしまうでしょう。
医療費が高騰して個人負担額が増加すれば、貧困層と富裕層の医療格差はどんどん差を広めていきます。
たとえ医療水準の平均値を算出したとしても、現実を見ない結果は信ぴょう性に値しません。
この流れはコロナ禍が始まる以前からずっとあるもので、都市と地方、大病院と中小病院で非常に大きな違いがみられるでしょう。
特に拍車をかけるのが、依然として増え続けている深刻な高齢化問題です。
中国では一人っ子政策から3人っ子政策を表明し、何とか高齢化社会の改善を試みるものの、それでもなかなか若い国民は増える見通しがありません。
北京などの大病院では、診察券を求めて数百人もの家族が徹夜で並ぶこともあれば、数百円の診察券を数千円や数万円で転売する人も横行しているなど、ますます医療格差が広がり続けています。
医療費の問題が格差を広げている
医療格差が広がり続けている要因の一つとして挙げられるのが、医療費の問題です。
都心と農村のどちらで診察を受けるか聞かれれば、当然都心を選ぶ人の方が多いでしょう。
都心の病院の方が清潔で医療機器も十二分に揃っており、十分な治療を受けるのに適しているからです。
しかし、ここで問題なのは、医療費が高いということです。
都心と農村では農村の方が医療費が安い傾向にあるので、都心の方が質が高い治療が受けられると分かっていても医療費が払えないのであれば意味がありません。
自分が支払える医療費の範囲内で治療を行ってくれる可能性が高い農村に頼る他にないのでしょう。
ただ、農村では都心よりも十分な医療機器や技術があるスタッフ等がいない可能性が高いため、十分な治療が受けられるかどうか分からないというジレンマが発生します。
中国の医療機器問題
中国の医療機器市場は活発化している傾向にありますが、それに伴って別の課題が生まれています。
高度な技術の医療機器が導入されることによって多くの患者の命を救ったり、効率良く病状を回復させることができたりするなど様々なメリットがあります。
しかし、その医療機器は基本的に大病院を優先して導入されるため、中小病院や農村部の病院で導入されるのが後回しになっているのが問題です。
さらに高額な医療費がかかる場所に高度な医療機器が導入されたところで、その治療が受けられるのは富裕層など余裕がある人ばかりでしょう。
ここでも医療格差の問題が起こっているため、誰もが自由に十分な診療が受けられるというわけではありません。
まとめ
中国の医療問題は、何十年も前から懸念されていたことでした。
今もなお広がり続ける医療格差を縮めるのは並大抵のことではありませんし、政府も何もしていないわけではありません。
ただ、このまま人口が増え続け、ますます高齢化社会が深刻になることで看病難・看病費の問題が起こり続けるのは避けられないでしょう。
今の中国にとって、いかに医療格差を縮めていけるかが最大の焦点になるのではないでしょうか。