性的な多様性を理解するにあたって、覚えておきたいことの1つに「シスジェンダー」があります。
シスジェンダーとは、体と心の性が一致している人のことを指し、ジェンダー関連では比較的新しい概念であり知らない人も少なくありません。
今回は、シスジェンダーについてヘテロセクシュアルやトランスジェンダーとの違いにも触れながら解説します。
シスジェンダーとは
冒頭でも示したように、シスジェンダーとは体と心の性が一致している人を指します。
例えば、男性の体で生まれ、自身も男性だと認識して生活している人は、シスジェンダーの男性です。
女性も同様であり、一般的には多くの人がシスジェンダーに該当すると言われています。
トランスジェンダーとの違い
シスジェンダーの対義語として、「トランスジェンダー」という概念があります。
シスジェンダーの「cis-」には、「一方にものが集まっている状態」という意味があり、トランスジェンダーの「trans-」は「乗り越えて移動する状態」です。
つまりトランスジェンダーは、性別を乗り越えた状態であり、体と心の性が一致していない人を表します。
ヘテロセクシャルとの違い
ヘテロセクシャルとは、「異性愛」を表す言葉です。
「同性愛」を意味する「ホモセクシャル」の対義語であり、恋愛対象によって分類されます。
一見すると、シスジェンダーとヘテロクシャルは同じ意味に思われがちですが、異なるため注意が必要です。
シスジェンダーであっても、同性を愛する人であれば、ホモセクシャルの一面もあります。
つまり、シスジェンダーは「性自認」を表し、ホモセクシャルは「性的指向」を表す言葉です。
シスジェンダー・プリビレッジについて
シスジェンダーは、一般的に人数が多いことから、性に関して社会的に制限されることが少ないといった特徴があります。
トランスジェンダーは、日常的に違和感を感じることが多く、生きづらさを感じやすいのが現状です。
例えば、トイレの区別や名前に使われる呼称などは、トランスジェンダーが感じる違和感の一つでしょう。
一方で、シスジェンダーは違和感を感じることが少なく、普通に日常を送っています。
また、シスジェンダーは「ノーマル」と言われることも少なくありません。
しかし、シスジェンダーがノーマルになってしまうと、それ以外のジェンダーがノーマルではないという格差ができます。
こうした格差をなくすためにも、シスジェンダーはトランスジェンダーの対義語として登場しました。
日本のセクシャルマイノリティの割合
日本で暮らすセクシャルマイノリティの割合は、調査機関によってばらつきがありますが、おおよそ8〜10%と言われています。
何れにしても、シスジェンダーと比べると少数であることには変わりありません。
とはいえ、確実にセクシャルマイノリティとして生きる人が身近に暮らしていると理解し、尊重することが大切です。
参照元:多様な性への理解と対応ハンドブック~ちがいが尊重される長崎県をめざして~|長崎県人権・同和対策課
セクシャルマイノリティが抱える問題
セクシャルマイノリティに該当する人の約7割は、いじめを経験したことがあると言われています。
さらに、性同一性障害の当事者の6割は自殺を考えているという調査もあり、社会的問題のひとつです。
心無い言葉を投げかける人は、シスジェンダーでありセクシャルマイノリティの苦悩を知らない人である可能性が高いでしょう。
こうした問題を解決するためには、一人一人の意識を変えていくことが大切です。
参照元:
・多様な性について考えよう! ~性的指向と性自認~|法務省人権擁護局
・多様な性への理解と対応ハンドブック~ちがいが尊重される長崎県をめざして~|長崎県人権・同和対策課
誰もが暮らしやすい社会にするためにできること
現代社会は、トランスジェンダーにとって生きづらい形になっています。
シスジェンダーは、社会的に人数が多いことや制限が少ないことを理解して、誰もが暮らしやすい社会を意識することが大切です。
続いては、シスジェンダーが意識すべきポイントを解説します。
自分の代名詞を伝える
初めて会う人に対して、自分の名前と代名詞(彼/彼女)を伝えるのも1つのポイントです。
シスジェンダーだと、自分の性について意識することが少ないため、代名詞を伝えるという概念がありません。
しかし、初対面の人が全てシスジェンダーとは限らず、セクシャルマイノリティに該当する可能性も高いでしょう。
シスジェンダーから代名詞を伝えると、相手もカミングアウトしやすくなり、関係性がスムーズになります。
性別を特定する表現は使わない
集団で行動をするときは、性別を特定する表現に注意しましょう。
例えば、「彼女たち」と表現してしまうと、トランスジェンダーの人に違和感を与え兼ねません。
それよりも「みなさん」といった性別関係なく使える言い回しを使うと、誰もが気持ちよく過ごせるでしょう。
まとめ|性の多様性の一つであるシスジェンダー
シスジェンダーは、トランスジェンダーの対義語として登場しました。
しかし、社会的マジョリティであるシスジェンダーは、セクシャルマイノリティと比べると取り上げられることが少ないのが現状です。
また、自分がシスジェンダーであることを知らない人も少なくありません。
誰もが自分らしく生きる社会を作るためには、まずは知ることが大切です。
性の多様性の1つとしてシスジェンダーも存在しています。
こうした概念が理解できれば、セクシャルマイノリティに対する考え方も大きく変わるのではないでしょうか。