日本では、決められた大きさや色に満たない野菜を「規格外野菜」と呼びます。
これまで規格外野菜は、市場に流通できないことを理由に、その多くは食べられることなく廃棄されていました。
しかし近年は、「規格外野菜の廃棄が、食品ロスにつながる」として問題視されているのです。
本記事では、日本の規格外野菜の廃棄量や廃棄を減らすための取り組み、規格外野菜を専門に販売しているサイトなどをまとめました。
まずは、規格外野菜がどのような野菜なのかを知りましょう。
規格外野菜とは
規格外野菜とは写真のように、
・表面に傷がついている
・形がいびつ
・育ちすぎてしまった
・発育が悪く小さい
・色ムラがある
などの理由から、市場に流通しない野菜です。
野菜や果物には「農産物規格(※)」が定められており、収穫した野菜や果物を、サイズ「S・M・L」、形状「A・B・C・規格外」などに選別し、条件を満たしたものだけが市場に流通しています。
A等級と規格外の例
引用元:農産物の生鮮販売や加工・業務用途における多様なニーズに対応した取組の可能性(案)|農林水産省
規格外野菜も流通している野菜と味や品質は変わりません。
見た目が少し個性的であったり傷がついていたりするだけで、市場に出せないと判断されてしまうのです。
そして近年は、規格外野菜の廃棄量が問題となっています。
(※)農産物規格:農作物の取引や出荷の簡素化、公正化、流通の合理化を図るための基準。国や国に準ずる機関が定める「標準規格」と、府県や生産者団体によって設定される「自主規格」がある。近年は、農産物の生産や流通が大量化・大型化し規格取引が一般化しているため、自主規格を標準規格に近づける傾向が強まっている。
規格外野菜の廃棄量
生産された野菜や果物の約30~40%は、規格外という理由で市場に流通せず廃棄処分されてきました。
年間廃棄量は発表されていませんが、秋冬野菜の収穫量が292万1,000トンであったのに対し、出荷量は239万2,000トン(令和3年)だと報告されています。
つまり、52万9,000トンは出荷されていないということです。
出荷されなかった野菜を、自ら消費する生産者もいるため全ての野菜が廃棄されるわけではありません。
しかし、消費量よりも廃棄量の方が多いと考えられています。
参照元:
・食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢|農林水産省
・作物統計調査 :令和3年産野菜(41 品目)の作付面積、収穫量及び出荷量(年間計)|農林水産省
規格外野菜は食品ロスの原因の1つ
農林水産省が公開した「食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢(令和4年8月時点)」によると、令和2年度の日本の食品廃棄量は約522万トン。
そのうち、売れ残りや規格外品などの事業系食品廃棄量は275万トンにものぼり、規格外野菜の廃棄も食品ロスの原因の1つと言われています。
そのため最近は、国や企業も農業従事者と共に規格外野菜の廃棄量削減に向けて動き出しているのです。
規格外野菜を救うための方法
ここからは規格外野菜を救うために、どのような取り組みが行われているのか見ていきましょう。
加工して販売する
先述しましたが、規格外野菜の味と品質は流通している野菜と変わりません。
そのため、食品加工を施し、新たな商品として市場に送り出す取り組みも行われています。
規格外野菜を使用した、カット野菜やジャム、ジュースなどを見たことのある人もいるのではないでしょうか。
最近は食品にとどまらず、ファッションアイテムや文房具なども登場しています。
例えば、mizuiro株式会社の「おやさいクレヨン」。
引用元:おやさいクレヨン‐お米と野菜から作られた安全なクレヨン|mizuiro株式会社
規格外野菜や米油などを原材料に使用しており、万が一子どもが口に入れても安全なクレヨンです。
規格外または加工の際に捨てられた人参を活用した「オレンジ色」や、廃棄されたキャベツの外葉を混ぜた「緑色」など、さまざまな野菜が活用されています。
参照元:おやさいクレヨン‐お米と野菜から作られた安全なクレヨン|mizuiro株式会社
フードバンク
フードバンクとは、味や安全性に問題はないが、理由があって流通できない食品を企業から寄付してもらい、困窮世帯や困窮世帯を支援している団体・施設に提供する活動です。
引用元:フードバンクとは|一般社団法人全国フードバンク推進協議会
食品ロスの問題解決にもつながる活動として注目を集めており、その輪は規格外野菜を抱える生産者やJA、市場関係者にも広がっています。
直売所やECサイトで販売する
直売所やECサイトの魅力は、農産物を生産者から直接購入できるところです。
生産者の顔も分かるため、安心感も増すでしょう。
また近年は、規格外野菜を専門に扱うECサイトも少しずつ増えてきており、以前より手に入りやすくなっています。
規格外野菜の販売サイト
続いては、規格外野菜を実際に購入できるサイトを紹介します。
【unica】
引用元:ユニークな野菜や果物のファーマーズマーケット|unica
unicaは、「形が少し悪い」「色ムラがある」など、少しユニークな見た目の規格外野菜や果物をお得に購入できるサイトです。
生産者と直接コミュニケーションをとれるだけでなく、農産物への想いや独自のレシピを知れる点も特徴になります。
【unica】の公式サイトはこちら
【みためとあじはちがう店】
引用元:「みたあじの今」と商品への想い|みためとあじはちがう店
みためとあじはちがう店、通称「みたあじ」では、規格外野菜と果物を10~20個詰め合わせた「2,000円おまかせパック」や、14~16種類詰め合わせた「みたあじ・野菜おまかせ4,000円パック」を販売。
公式サイトに公開されている「本日のお品書き」にて、その日詰め合わせる野菜や果物の詳細を確認できます(すべて詰め合わせるのではなく、お品書きリストの中から厳選して)。
【みためとあじはちがう店】の公式サイトはこちら
【ロスヘル】
引用元:地球に優しい野菜宅配 美味しい規格外野菜が安い通販定期便|ロスヘル
ロスヘルでは、市場に流通している価格より30~35%安く野菜を購入できます。
なかでも、規格外の野菜や果物が5~8種類詰められた「お試しパック」は初回送料無料で利用できるため、「規格外野菜を試しに注文してみたい」という方におすすめです。
その他にも、規格外の野菜や果物が4~7種類入った「Sパック」、5~8種類の「Mパック」、6~9種類の「Lパック」を用意。
またロスヘルは、過剰包装やプラスチック製品の使用を控えた自然環境に優しい梱包を心掛けています。
【ロスヘル】の公式サイトはこちら
規格外野菜の廃棄量削減とSDGsの関係性
規格外野菜の廃棄量を減らすと、食品ロスの問題解決のみならずSDGsの目標達成にも貢献します。
その理由をお伝えする前に、まずはSDGsについて知りましょう。
SDGsとは
SDGsとは、2015年に開催された国連総会にて、193の加盟国が賛同した国際目標です。
2030年までに、地球上で起きている環境・社会・経済の課題解決を目指し、17の目標と169のターゲットが設定されました。
そのなかでも規格外野菜の廃棄量削減は、目標12「つくる責任つかう責任」の達成に貢献できると期待されています。
目標12「つくる責任つかう責任」
目標12は、持続可能な消費と生産形態を確実につくるための目標です。
そのなかでもターゲット【12.3】は、食料廃棄の問題に注目しています。
2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる。
「収穫後損失=市場に出せない廃棄予定の農作物」であり、規格外野菜の廃棄量を減らすことによって、SDGsの目標12の達成につながるのです。
そのためには、現在の生産から廃棄までの流れ(サプライチェーン)を変えていかなければいけません。
そして、生産者だけではなく、サプライチェーンに関わる全ての人が連携・協力していく必要があります。
まとめ
基準をクリアしていないことが理由で、市場に流通しない規格外野菜。
最近は廃棄量を減らすために、専用の販売サイトや加工品も増えています。
規格外野菜は、味や品質も市場に流通している野菜に劣りません。
買い物をする時に、見た目の良いものを選んでしまう気持ちも分かりますが、規格外野菜にも目を向けてみましょう。
「ソースや煮込み料理を作る時は、規格外野菜を使う」のように、料理によって使い分けても良いかもしれません。
あなたの選択が、食品ロスの問題解決やSDGsの目標達成につながります。