日本では、1年間に約48万トンもの服がごみとして捨てられています。
これは、平均すると1日あたりに大型トラック約130台分に相当する数字です。
近年、必要以上に服を買い短期間で捨てる人が増えています。
このまま捨てられる服が増え続けると、環境や社会など、さまざまな場所に影響がでるでしょう。
そこで、いま注目されているものがサステナブルファッションです。
本記事では、サステナブルファッションの内容や注目されている理由、取り入れる方法をまとめました。
まずは、サステナブルファッションとは何かを見ていきましょう。
サステナブルファッションとは
サステナブルとは、「持続可能な」を意味する言葉です。
そのためサステナブルファッションは、持続可能なファッションを指します。
衣服の生産から廃棄まで、将来にわたり持続可能であることを目指し、地球環境や生態系・社会に配慮した取り組みです。
サステナブルファッションは日本でも浸透し始め、ファッション業界でもサステナブルな取り組みを意識する企業が増えてきました。
注目されるようになった理由としては、環境や労働などの問題が関係しています。
挿入:ユニクロ独自のサステナブルファッション|私たちができること
参照元:サステナブルファッション|環境省
なぜサステナブルファッションが注目されているの?
ここからは、サステナブルファッションが注目されるようになった理由について、詳しく見ていきます。
生産時の環境負荷問題
1年間に、服の原材料調達から製造段階までに排出される環境負荷は、下記の通りです。
参照元:サステナブルファッション|環境省
1着あたりを計算すると、CO2排出量は500mlのペットボトル255本分、水消費量は浴槽11杯分になります。
製造過程や店舗への運搬の際にCO2が排出され、原料となる植物の栽培・染色にも大量の水が不可欠です。
さらに、生産の際に余った生地は、廃棄物として処理されます。
このように、服を作るためには多くの資源が使われ、同時に環境負荷もかかるのです。
ファッション業界で起こっている人権問題
2013年に、ファッション業界で人権問題が注目される出来事が起こりました。
アジア最貧国であるバングラデシュで起きたラナプラザ崩壊事故です。
このビルでは低賃金で現地の人を雇い、先進国へ輸出用の衣類を製造していました。
ビルは違法に増築された疑いがあり、事故前日に警察から退避要請が出ていたそうです。
しかし経営者はそれを無視し、労働者を働かせ続けた結果ビルは崩れ、1000人以上の人が亡くなる大事故になりました。
私たちは、安い金額で一定の品質を保った服を購入できます。
しかし、それは安全とは言い難い環境の中、低賃金で働かされている人々がいるからです。
このような事故を繰り返さないためにも、サステナブルファッションのような考え方が必要です。
参照元:大量廃棄社会 アパレルとコンビニの不都合な真実|仲村和代 藤田さつき著
服を作るために動物たちが犠牲になっている
ファーやレザーの服を作るために、動物たちが犠牲になることも少なくありません。
ミンクやウサギ・キツネなど、なにも罪のない動物たちが命を落としています。
また命は助かっても、毛や羽を取るために傷つけられる動物もいます。
私たちは、動物たちを守り悲惨な現状をなくさなければいけません。
大量生産・大量消費の先にある危険
現代は手頃な価格で、一定の品質を保った服を購入できます。
「流行の服は、長くは着ないから安くすませたい」「たくさんの服を着て、ファッションを楽しみたい」と言う人にはあっているでしょう。
実際に、国内のアパレル供給数は増加し、服1枚あたりにかける金額は年々安くなっています。
参照元:サステナブルファッション|環境省
安い服を購入する人が多ければ、需要に合わせて企業も安い服を大量に作ります。
こうして、大量生産・大量消費の流れができあがっていくのです。
しかし、大量に作られ消費されるだけで終わりではありません。
1年間に購入する服の枚数は、1人あたり約18枚と言われています。
対して手放す服の枚数は、約12枚です。
1着を何年も大事に着るのではなく、1年で捨てることが当たり前になっています。
このことから、現代はファッションの短サイクル化が起こっていると言えるでしょう。
着なくなった服の68%は廃棄されている
環境に対する意識が急速に高まっている日本ですが、可燃ごみや不燃ごみとしての服の廃棄率はいまだに68%もあります。
理由としては、先述したファッションの短サイクル化の影響もあるでしょう。
このまま大量生産・大量消費が進むと、大量廃棄も起こりかねません。
リユースやリサイクルの割合も少しずつ増えていますが、廃棄率を下げるためには改善が必要です。
ここまでの話から、現代社会はさまざまな問題を抱えており、解決策の1つとしてサステナブルファッションを推進していることが分かりました。
そして、サステナブルファッションはSDGsとも深い関わりがあります。
サステナブルファッションはSDGsと深い関わりがある
サステナブルファッションを取り入れると、SDGs目標12の達成に貢献します。
まずは、目標12がどのような内容か知る前に、SDGsについて見ていきましょう。
SDGsとは
SDGsとは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略です。
2015年9月に開催された国連総会にて、193の加盟国が賛同した国際目標になります。
2030年までに環境・社会・経済に関する課題の解決を目指し、17の目標と169のターゲットが設定されました。
17の目標を達成するために、世界中の人々が協力し、誰一人取り残さない世界を目指します。
また、目標達成のために設定された169のターゲットには、例えば「2030年までに、1人当たりの食品廃棄率を半分にしましょう」のように、具体的な年と数値を入れ到達点を示しました。
ここまでがSDGs全体の話しになります。
SDGsがどのようなものか、おおまかに分かったのではないでしょうか。
続いては、目標12「つくる責任つかう責任」の内容を確認していきます。
SDGs目標12「つくる責任つかう責任」
目標12は、持続可能な消費と生産を目指すことに焦点を当てた内容です。
実現には「服の生産から廃棄までの工程が、どのようになっているのか」を考え、その仕組みを良い方向へ変えていく必要があります。
そのため、目標12のターゲットの中でも、特にサステナブルファッションと関係しているものは下記の7つです。
【12・1】 | 開発途上国の開発状況や能力を勘案しつつ、持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組み(10YFP)を実施し、先進国主導の下、すべての国々が対策を講じる。 |
【12・2】 | 2030年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。 |
【12・4】 | 2020年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。 |
【12・5】 | 2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。 |
【12・6】 | 特に大企業や多国籍企業などの企業に対し、持続可能な取り組みを導入し、持続可能性に関する情報を定期報告に盛り込むよう奨励する。 |
【12・7】 | 国内の政策や優先事項に従って持続可能な公共調達の慣行を促進する。 |
【12・8】 | 2030年までに、人々があらゆる場所において、持続可能な開発及び自然と調和したライフスタイルに関する情報と意識を持つようにする。 |
目標12のターゲットは、天然資源の適切な利用や管理をはじめ、化学物質や廃棄物の排出を減らすこと、などを中心に設定されました。
しかし先述した通り、現代は化学繊維を使用した安価な服が大量に出回り、大量消費・大量生産の傾向が強い印象を受けます。
この状況を改善するには、政府や企業だけでなく私たち個人の取り組みも不可欠です。
その第一歩として、生活に取り入れたいものがサステナブルファッションになります。
次は、サステナブルファッションを生活に取り入れる方法を紹介します。
サステナブルファッションを取り入れよう
無理せず生活の中に、サステナブルファッションを取り入れるために、まずは下記の3つを意識してみましょう。
国際認証や環境ラベルに注目
サステナブルを意識した服とそうでない服を見分けるポイントとして、国際認証や環境ラベルの確認があります。
環境負荷の少ない製品に付いており、環境に優しい製品が分からない人も手に取りやすいでしょう。
特に下記の3つが知られています。
【オーガニックテキスタイル世界基準(GOTS)】
参照元:サステナブルファッション|環境省
繊維製品を製造加工するための国際基準です。
オーガニックコットン・ウール・麻・絹などの原料から製品を作る際に、環境や社会に配慮した方法を使用。
また、原料から製品までの全ての工程を、第三者が検査し認証していることを表します。
【国際フェアトレード認証コットンラベル】
参照元:認証ラベルについて-フェアトレードとは?|Fairtrade Japan
国際フェアトレード基準を守り、生産から取引まで行われたコットンの使用を証明しています。
また、加工中にフェアトレード認証を受けていないコットンの混合は禁止。
コットン以外の繊維を混ぜる場合は、認証コットンを製品重量の50%以上になるように決められています。
【BCI】
参照元:BCI(Better Cotton Initiative)とは?|The Global Alliance for Sustainable Supply Chain
Better Cotton Initiativeの略であるBCIは、世界最大の綿花を対象とした持続可能プログラムです。
綿花農家や綿花の栽培環境・コットン産業の将来が、より良いものになるように活動しています。
現在、世界の綿花生産量の約22%は、BICによって持続可能な農法の指導を受けた綿花農家が生産しています。
挿入:サステナブルな素材とはどのようなものかを知ろう!持続可能な未来のために!
持っている服を長く大切に着よう
店頭に並んでいる服だけでなく、自室のクローゼットにある服にも目を向けてみましょう。
新たに組み合わせを考えたり手入れをしたり、今持っている服をできるだけ長く着るように工夫してみてください。
素材にあった洗濯方法やケアをするなど、少し変えるだけでも長持ちします。
1人ひとりが意識して1年長く着ると、日本全体で4万トン以上の廃棄量削減につながるのです。
再生原料で作られた製品を選ぼう
最近耳にするようになった再生原料。
ペットボトルを原料としたリサイクル繊維や古着を化学分解した再生原料など、さまざまな種類が登場しています。
再生原料は、通常の原料とは異なり手間もかかる素材です。
しかし、それと同じくらい作り手の思いも込められています。
一度、製造元のホームページを覗いてみるのも良いでしょう。
「どういう思いで作り完成させたのか」その素材や服の物語が見えてきます。
「環境や社会に良いから」という理由だけでなく、作り手の思いに目を向けることも選択肢の1つに入れてみてください。
まとめ
服を購入し短期間で捨てる行為は、環境だけでなく人権や動物など、さまざまな場所に影響を与えます。
その問題を改善する手段の1つが、サステナブルファッションです。
1人ひとりが気をつけることで、世界のファッションに対する考え方も変わってきます。
まずは「国際認証や環境ラベルの付いた服を購入する」や「手持ちの服を、丁寧に扱い長く着る」など、自分にできることから始めてみましょう。