ごみ問題は、大きな環境問題の一つです。
各家庭から出る生ごみや、公園などの草木からでるごみ処理にかかるコストは自治体の重い負担になっているだけでなく、燃やすことで二酸化炭素が発生し、環境にも負担をかけています。
軽減するためには、ごみの量を減らすだけでなく、資源化やリサイクルも必要です。
そこで注目されているのが、家庭の有機ごみを微生物の活動を利用して堆肥に変える「コンポスト」。
この記事ではコンポストについて解説します。
「コンポスト」「コンポスター」とは?
「コンポスト(compost)」は堆肥、「コンポスター(composter)」は堆肥を作るための容器のことです。
しかし「コンポスト」や「コンポスター」、さらに、コンポスターに生ごみを入れて発酵させてコンポストを作る、つまり「コンポスト化」させることを全てまとめて「コンポスト」というのが一般的です。
コンポストの原料は、落ち葉や枯れ草、雑草や野菜くずなどの植物の残りかすです。
家庭では、主に生ごみがその原料です。
これらを微生物の働きを利用して分解、発酵させることでコンポストができます。
農場などでは、堆肥の原料となるものを決まった場所に集めて発酵させますが、家庭では臭いや虫の発生を抑えるために専用の容器を使うことが多いです。
できたコンポストは土に混ぜることで土壌を豊かにし、植物・作物が育ちやすい環境となります。
堆肥によって土に栄養を
コンポストは、生ごみを微生物の働きで分解することで堆肥に変えます。
納豆やチーズを生み出すのと同じ「発酵」が、コンポスターの中で起こるのです。
堆肥は、植物の生育に有効な土の中の微生物を増やす働きがあります。
堆肥を加えることで、土は植物を育てやすい状態に改良され、豊かな土壌ができるのです。
堆肥が土に混ざると、土の中に存在する微生物や、作物の根から放出されるクエン酸などの有機酸によって分解・溶解され、作物の根から養分として吸収されます。
田畑で野菜や果物を育てて収穫を繰り返すと、土地がやせるといいます。
これは作物に土の中の栄養素が吸収され、なくなってしまうからです。
やせた土地には栄養も保水力もなくなり、作物が育たなくなってしまいます。
堆肥を補うことで、土をふかふかの柔らかい土にすることができるのです。
コンポストに使えるもの、使えないものを知ろう
生ごみを活用できるコンポストですが、全てのゴミを入れられるわけではありません。
コンポストに入れてよいもの、ダメなものを見ていきましょう。
コンポストに使えるもの
コンポストに使うのは、食べ物や飲み物などの生ごみがメイン材料。
他にも庭の草木の落ち葉や枯葉なども使うことができます。
また、市販の堆肥を作るときに使われる牛糞や鶏糞なども利用可能です。
ただし、人間やペットの排せつ物は悪臭や病気の原因になるため利用しないで下さい。
具体的には以下のものです。
コンポストに使えないもの
生ごみならなんでもコンポストに入れられるかというと、そうではありません。
コンポストに使えないものを入れてしまうと、悪臭や虫がわく原因になります。
また、味付けされた食事の残飯など塩分を含むものは、微生物の働きを鈍らせたり死滅させたりすることもあります。
具体的には以下のものがNGです。
もし「これはコンポストに入れて良いの?」と思う場合は、自治体の発信情報などをチェックするようにしましょう。
コンポストのメリット・デメリット
コンポストを作るとどのような良いことがあるのか、またコンポストを作るにあたってのデメリットを見ていきましょう。
コンポストのメリット
家庭のコンポストの材料は、主に「生ごみ」。
それらがすべてコンポストの原料となるため、ごみを捨てる手間がなくなります。
そればかりでなく、ゴミ出しのためのビニール袋も不要です。
ゴミ出しの袋もそうですが、レジ袋有料化で生ごみをまとめるビニール袋も有料となっていますので、環境だけでなく金銭的にも助かります。
できた堆肥は、ガーデニングや家庭菜園へ。
土壌が豊かになるため、化学肥料を使わずに野菜や果物が収穫できます。
循環型でエコなシステムです。
もっと広い目で見ると、自治体での焼却処理も軽減されます。
ゴミを燃やすことで出る二酸化炭素の軽減は、環境問題への解決の糸口です。
このため、自治体によってはコンポストの設置を助成しているところも少なくありません。
ぜひ検索してみてください。
家庭の生ごみを燃やさないようにするだけで、自分たちの手間や節約だけでなく、環境にも影響があるのがコンポストのメリットです。
コンポストのデメリット
メリットばかりに思えますが、コンポストにデメリットがないわけではありません。
コンポストのデメリットは、堆肥が出来上がるまでの手間が面倒というとことでしょうか。
生ごみを微生物が分解するには、数週間~数カ月の時間がかかります。
生ごみをそのままコンポスターに入れればいいというわけではなく、分解できないものや、分解しにくいものをより分けたり、土をかき混ぜたて新鮮な空気を取り入れるなどの作業が必要です。
もし、放置したままだと悪臭や虫がわく原因に。
ベランダなどで作業する場合は気を付けて行いましょう。
コンポストの種類は様々
生ごみを堆肥に変えるコンポストには、様々な種類があります。
設置型コンポスト
大きな筒状のコンポストを設置し、生ゴミのほか、庭の落ち葉や雑草なども入れます。
熟成期間は夏で1ヶ月、冬で2~3ヶ月程度です。
庭や畑などの土地が必要なことと、虫や悪臭の発生を防ぎづらいことが難点です。
回転式コンポスト
容器ごと回転させられるコンポストです。
生ゴミや落ち葉などを入れて、容器を回転させることで、自分でかき混ぜなくても発酵に必要な酸素を効率よく加えられます。
ポリバケツなどで自作する人も。
密閉型コンポスト
生ごみをとぼかし(米ぬかや発酵促進剤など)を密閉した容器で発酵させて堆肥を作るコンポストです。
生ごみを発酵させるところまでをへ 1~2 週間容器内で行い、分解は土へ投入して1ヶ月程度かけて行います。
容器を密閉するので、屋内でも使うことができ、虫の発生や悪臭を抑えられるのがメリットです。
ぼかしが必要なためコストがかかることと、生ごみを混ぜたり不用な水分(発酵液)を抜き取る作業を毎日する必要があります。
ダンボールコンポスト
通気性の良いダンボールを、コンポスターとして使う方法です。
安価で作り方が簡単なのがメリット。
基材(ピートモス、もみ殻くん炭)と生ごみを入れることで、微生物の力によって生ごみを分解し、堆肥を作ることができます。
ダンボールは庭やベランダに置き、2~6か月ごとの交換が必要です。
生ゴミ処理機
コンポストのお手入れが面倒だったり、臭いが気になる人には生ごみ処理機がおすすめです。
室内に設置でき、臭いも大幅にカットされます。
しかし、本体が高価なのと、電気代もかかるというデメリットがあります。
まとめ|コンポストに取り組んでみよう
家庭の生ごみを、有用な資源に変えるだけでなく、環境にも良い「コンポスト」。
食べることで発生する生ごみで堆肥をつくり、家庭菜園などで野菜を育て、また食べるというエコフレンドリーな取り組みです。
なお、自作コンポストの作り方については下記のコラムで詳しく紹介しています。
コンポストが初めての方でも無理なくはじめられるキットなども開発されています。これを機に、ぜひコンポストに取り組んでみませんか?