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心のバリアフリーとは?私たちにできることから始めよう|声かけ・制度・盲導犬との接し方

心のバリアフリーとは?私たちにできることから始めよう

心のバリアフリーとは、年齢や障害の有無などにかかわらず、さまざまな特性や考え方を持つ人が互いに理解を深めようとコミュニケーションをとり、支え合うことです。国は2017年2月のユニバーサルデザイン2020行動計画で、この考え方を街づくりと並ぶ柱に位置づけました。点字ブロックやスロープといった設備が整っても、その上に荷物が置かれたり、困っている人が見過ごされたりすれば、バリアは残ります。この記事では、身近なバリアの種類を確認したうえで、2024年4月に義務化された合理的配慮、駅や観光施設の実践、盲導犬との接し方、声をかけるときの具体的な手順までを整理します。

この記事で学べること

  • 国が示す「心のバリアフリー」の3つの考え方
  • 物理・制度・情報・意識という4つのバリアの違い
  • 2024年4月から事業者の法的義務になった合理的配慮の中身
  • 盲導犬ユーザーの約半数が受け入れ拒否を経験している現状と、出会ったときの接し方
  • 声をかけるときの順番と、断られたときの受け止め方
目次

国が示す心のバリアフリーの3つの考え方

心のバリアフリーは「親切にしましょう」という呼びかけだと受け取られがちです。しかし国の計画では、気持ちの持ちようにとどまらず、考え方と行動の両方を含むものとして整理されています。

障害は「社会の側の壁」から生まれるという見方

1つ目は、障害の社会モデルの理解です。ユニバーサルデザイン2020行動計画では、障害は個人の心身機能の障害と社会的障壁の相互作用によって生み出されるとされています。そのため、社会的障壁を取り除くことは社会の責務だと位置づけられています。

たとえば車いすの人が段差で進めないとき、原因は「歩けないこと」だけでなく「段差があること」にもあります。このように見ると、自分にも壁を減らす側として関われることが分かります。

差別をしないことと、合理的配慮を欠かさないこと

2つ目は、不当な差別的取扱いや、合理的配慮の不提供をしないことです。障害を理由に入店や利用を断ることは差別にあたり得ます。また、本人から求められた調整に応じないことも、配慮の不提供にあたり得ます。この点は後の章で、2024年の法改正とあわせて詳しく見ます。

自分と違う条件の人と対話する力

3つ目は、自分と異なる条件を持つ人と対話する力と、他者の困難や痛みを想像する力です。計画はこれを、学校教育や企業研修で育てる対象として位置づけています。

2020年の改正バリアフリー法では、心のバリアフリーに継続的・計画的に取り組むための「教育啓発特定事業」が法律上に位置づけられ、2021年4月に全面施行されました。バリアフリー教室やまち歩き点検が、市町村の事業として進められる土台ができたことになります。

暮らしの中の4つのバリアと、設備だけでは解けない場面

バリアは大きく4種類に分けて考えると、どの場面で何が足りないのかが見えやすくなります。設備や制度で解消できるものと、人の行動でしか解消できないものが混ざっている点が特徴です。

物理的なバリアと制度的なバリア

物理的なバリアは、段差、狭い通路、急な坂、高い位置にある操作ボタンなど、空間や設備が原因のものです。エレベーターの階数ボタンを低い位置にも付ける、内部に鏡を設けて出入口を確認できるようにするといった工夫は、このバリアへの対策です。

制度的なバリアは、店や施設のルールが利用を妨げるものです。障害を理由に就職や免許取得の機会が狭まる場合や、盲導犬を連れた人が入店を断られる場合がこれにあたります。物理的な環境が整っていても、ルールが壁になることがあります。

情報面のバリア

情報面のバリアは、伝え方が一通りしかないために情報が届かない状態です。電車が急停止したとき、車内アナウンスだけでは聴覚に障害のある人に状況が伝わりません。タッチパネル式の券売機に点字や音声の案内がなければ、視覚に障害のある人は操作が難しくなります。

電光掲示板や音声案内など複数の手段を併用することが対策になります。ただし緊急時は設備の更新が追いつかない場面もあるため、周囲の人が声で状況を伝えることが補完になります。

意識上のバリア

意識上のバリアは、無理解や偏見から生まれます。点字ブロックの上に荷物を置いたり、立ち止まったりするのは、悪意がなくても歩行の妨げになります。また「大変そうだから何もできない」と距離を置くことも、結果として壁になり得ます。

4つのうち、設備を整えても残るのはこの意識上のバリアです。心のバリアフリーが重視されるのは、物理・制度・情報の壁を作り替える主体が、結局は人だからです。

2024年4月から変わったこと|合理的配慮は事業者の法的義務に

心のバリアフリーを個人の善意だけに任せない流れも進んでいます。その中心が、障害者差別解消法の改正です。

努力義務から義務へ

改正法は2024年4月1日に施行され、民間事業者による合理的配慮の提供が努力義務から法的義務になりました。内閣府は、障害のある人から社会的な障壁を取り除くための対応を求められたとき、事業者は負担が重すぎない範囲で対応することが求められると案内しています。対象は店舗や民間企業、個人事業主などで、非営利の民間団体も含まれます。

なお、障害を理由とする不当な差別的取扱いの禁止は、改正前から事業者の法的義務でした。今回変わったのは合理的配慮の部分です。

「負担が重すぎない範囲」の意味

合理的配慮は、何でも要望どおりにすることではありません。費用や人手、安全面などから実施が難しい場合は、理由を説明したうえで、代わりにできる方法を一緒に探すことが前提になります。

たとえば、メニューの文字を読むのが難しい人に店員が読み上げる、筆談に応じる、待合の順番が分かるよう声で知らせるといった対応は、設備投資なしでも実施できます。内閣府は、障害種別ごとの事例を集めたポータルサイトや、合理的配慮の提供等事例集を公開しています。

店や職場に関わらない私たちへの意味

この法律の義務を負うのは事業者ですが、客として、同僚として、私たちが配慮を求められる場面は多くあります。求めに応じて一緒に解決策を考える姿勢は、義務化以前から心のバリアフリーの核心でした。

法改正により、「困っている人が言い出しにくい」状況が少しずつ変わる土台はできました。ただし実際に変わるかどうかは、受け止める側の人の対応にかかっています。

駅・観光施設・ヘルプマークに見る現場の実践

心のバリアフリーは、すでに複数の分野で仕組みとして動いています。ここでは、鉄道、観光、見えにくい障害への配慮を取り上げます。

鉄道各社が合同で進める「声かけ・サポート」運動

駅や車内は、視覚や聴覚に障害のある人、高齢者、ベビーカー利用者など、多様な人が同時に使う場所です。鉄道事業者などが合同で進める「声かけ・サポート」運動の強化キャンペーンは、2026年は9月1日から10月31日までの実施で、今月末まで続いています。交通事業者等93社局と、障害者団体を含む10団体が連携し、駅構内でのポスター掲出やディスプレイでの映像放映を行っています。

この運動は、駅係員が困っている人に積極的に声をかけるだけでなく、周囲の利用者にも助け合いの声かけを呼びかける点が特徴です。期間が終わっても、日々の移動の中で実践できる内容です。

観光施設の心のバリアフリー認定制度

観光庁は2021年9月に「観光施設における心のバリアフリー認定制度」を始めました。ソフト面のバリアフリー対応や情報発信に積極的な観光施設を国が認定する仕組みで、第1弾は66施設でした。2023年3月2日時点の認定数は515件です。研修用の動画を視聴すると、認定基準にある「バリアフリーに関する教育訓練」を満たせる仕組みも用意されています。

設備の改修には費用がかかりますが、接客の訓練は小規模な施設でも取り組みやすい点が、この制度の特徴です。

ヘルプマークで見えにくい困りごとに気づく

外見では分からない困りごとを知らせるのが、ヘルプマークです。義足や人工関節を使う人、内部障害や難病のある人、妊娠初期の人などが対象で、2012年に東京都が作成し、2017年7月20日にJIS規格の図記号に追加されました。周囲の人には、電車やバスで席を譲る、駅や商業施設で声かけや見守りをする、災害時の避難を支援するといった配慮が求められています。

内閣府の世論調査をもとにした第一生命経済研究所のレポートによると、ヘルプマークの認知率は2017年の9.5%から2022年には52.3%に上昇しました。ただし両調査は方法が異なり、単純には比較できないとされています。認知は広がっていますが、見かけたときに声をかける行動まで進んでいるかは別の問題です。

盲導犬の受け入れ拒否はなぜ続くのか|数字と接し方

元の記事でも触れた盲導犬は、心のバリアフリーが問われやすい場面です。制度が整っていても、現場の対応が追いついていない実態が数字に表れています。

約半数のユーザーが拒否を経験している

認定NPO法人全国盲導犬施設連合会は、2025年3月に2回目の全国調査の結果を公表しました。加盟団体の盲導犬ユーザー603名のうち576名が回答し(回答率96%)、48%にあたる276人が受け入れ拒否を経験していました。2020年の前回調査は52%(336人)で、低下はしたものの、半数近い水準が続いています。

拒否された場所は、回数ベースで飲食店が488回(43%)、交通機関が156回(14%)、宿泊施設が132回(12%)でした。母数は拒否が起きた1,144回で、複数回答を含みます。

法律はあるが、拒否した側に罰則はない

身体障害者補助犬法は、人が立ち入れる施設での補助犬の受け入れを義務づけています。一方で、受け入れを拒否した事業者への罰則はないとされています。2024年の合理的配慮の義務化は、この状況を変える後押しになると期待されますが、現場の理解が進まなければ数字は動きません。

街で盲導犬に会ったときの4つの約束

盲導犬が仕事中のとき、周囲の人にお願いされる基本は次の4つです。

  1. じっと見つめたり、声をかけたりしない
  2. なでたり、ハーネスに触れたりしない
  3. 食べ物を与えない
  4. 自分のペットを近づけない

犬の注意がそれると、ユーザーの安全に関わるためです。また、犬は信号の色を見分けて渡るのではなく、ユーザーが音や周囲の状況から判断しています。交差点で迷っていそうな人がいたら、犬ではなく人に「お手伝いできることはありますか」と声をかけてください。

声をかけるときの実践ガイド|相手別の手順と断られたとき

「声をかけたいが、どうすればいいか分からない」という迷いが、行動を止める最大の理由になりがちです。ここでは、場面別の手順を整理します。自治体や支援団体の案内に共通する基本は、まず声で話しかけ、相手の希望を聞いてから動くことです。

声をかける前の共通の3ステップ

1つ目は、相手の正面や視界に入る位置から、驚かせない距離で声をかけることです。2つ目は、「何かお手伝いしましょうか」と尋ね、手伝う内容は相手に決めてもらうことです。3つ目は、手を貸すときも、相手のペースに合わせることです。

ヘルプマークの自治体案内でも、困っていそうなときは声をかけて、相手の希望に応じるのが基本とされています。

視覚に障害のある人、車いすの人、聴覚に障害のある人

白杖を持つ人には、後ろや横から突然触れず、まず声で話しかけます。「何かお手伝いできることはありますか」と伝え、必要なら腕や肩を貸す形で誘導します。体に触れる前に、触れてよいかを尋ねると安心されます。

車いすの人には、段差の前で立ち止まっていたり、ボタンに手が届かなかったりするなら、同じ言葉で声をかけます。勝手に車いすを押さず、「押してもよいですか」と確認します。

聴覚に障害のある人には、口を大きく動かすよりも、スマートフォンの画面やメモで筆談するほうが伝わりやすい場合があります。緊急時の案内は、文字や身振りで状況を知らせます。

見た目では分からない人

ヘルプマークを付けている人や、体調が悪そうなのに席に座れていない人には、席を譲る申し出が助けになります。「必要ない」と断られても問題ありません。申し出たこと自体が、周囲に気づいている人がいるという安心につながります。

断られても落ち込まなくてよい

声をかけて断られることはあります。それは、その時点で手伝いが必要なかっただけで、あなたの好意が否定されたわけではありません。断られたあとは、「また何かあれば声をかけてください」と一言添えて離れれば十分です。次に困っている人を見かけたら、また声をかけてみてください。

誤解されやすい3つのポイント

善意が空回りしないために、行動の前に確認しておきたい視点があります。

「助けること」が目的になっていないか

手伝いは、相手の「できること」を奪わない範囲で行うものです。本人が自分で進めたいときに先回りして動くと、かえって負担になります。尋ねてから手を貸す順番を守ることが、いちばんの近道です。

「何もしない」が配慮とは限らない

「かえって迷惑かもしれない」と声をかけずにいることは、一見控えめな配慮に見えます。しかし、困っている本人から見れば、誰にも気づかれなかった状態です。声をかけて断られる負担よりも、誰にも声をかけられない負担のほうが大きい場面があります。

「障害は本人の問題」という思い込み

階段しかない店、案内が音声だけの駅、盲導犬を断るルールは、いずれも本人の力で変えられない壁です。本人に努力を求める前に、環境やルールを変えられないかを考える視点が、社会モデルの出発点です。

まとめ

心のバリアフリーは、国の計画では障害の社会モデルの理解、差別をしないこと、対話する力の3つで説明されています。設備や制度を整えても残る意識上のバリアは、人の行動でしか変えられません。2024年4月には民間事業者の合理的配慮が義務化され、駅の「声かけ・サポート」運動や観光施設の認定制度、ヘルプマークのように、仕組みとして広げる動きも続いています。

一方で、盲導犬ユーザーの48%が受け入れ拒否を経験している現状は、仕組みと現場の間にまだ距離があることを示しています。私たちにできるのは、困っていそうな人に声をかけ、相手の希望を聞き、断られても受け止めることです。12月3日の国際障害者デーから始まる障害者週間に向けて、今から意識しておくのもよい機会です。まず1つだけ、次に外出したときに試してみてください。

  • 心のバリアフリーは、障害の社会モデルの理解、差別をしないこと、対話する力で成り立つ
  • バリアは物理・制度・情報・意識の4種類で、意識上のバリアは人の行動でしか変えられない
  • 2024年4月から、民間事業者の合理的配慮の提供は法的義務になった
  • 盲導犬ユーザーの48%が受け入れ拒否を経験しており、仕事中の盲導犬には触れず声もかけない
  • 声をかけるときは、手伝う内容を相手に聞いてから動き、断られても落ち込まなくてよい

参考文献

  • 記事を書いたライター
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