近年、LGBTに関する認識が少しずつ深まっており、同性婚を認める国も増えてきました。
日本では、まだ法律で認められていませんが、自治体によっては同性パートナーシップ制度を導入するところもあります。
とはいえ、未だにLGBTを原因とするいじめや偏見に悩まされている人は後を絶ちません。
こうした問題を解決するためには、LGBTに関する教育が欠かせないでしょう。
今回は、LGBT教育に必要なことを解説するとともに、課題や取り組み事例を紹介します。
LGBTとは
LGBTとは、セクシャルマイノリティ(性的少数者)の総称です。
「Lesbian(女性同性愛者)」「Gay(男性同性愛者)「Bisexual(両性愛者)」「Transgender(性別越境者)」の頭文字をとっています。
最近は、「Questioning(クエスチョニング)」という自分の性自認や性的指向が定まっていない人を表す単語も加えて、「LGBTQ」といわれるケースも多いでしょう。
各国のLGBT教育
LGBT問題は、日本に限らず世界中で重要な課題とされています。
日本の教育においては、ごく最近になってようやくLGBTを取り上げるケースが増えてきました。
続いては、日本を含めた各国のLGBT教育について解説します。
日本のLGBT教育
文部科学省では、教員向けの指導として「性同一性障害や性的指向・性自認に係る児童生徒に対するきめ細かな対応等の実施について」という要項を2015年4月30日に通知しています。
しかし、学習指導要領の中には、LGBTに関する記述はありません。
とはいえ、2020年の段階で、中学教科書でLGBTに触れている出版社は5社で、数にすると6点でした。
2020年3月24日に文部科学省から発表された検定結果によると、2021年の春から採用される中学教科書においては、9社17点にまで増加しました。
さらに、これまで道徳で記載されることが多かったLGBTですが、国語・歴史・公民・家庭・美術・保健体育の6科目に広がるなど、出版社によってはLGBT教育の必要性があるとして採用しています。
ただ、学習指導要領では、道徳で「異性の理解」、保健体育で「異性の尊重」に関する内容を含めることが義務付けられていますが、LGBTへの配慮がかけるとして「異性」という表現に疑問を持つ人も少なくありません。
参照元:性同一性障害や性的指向・性自認に係る、児童生徒に対するきめ細かな対応等の実施について(教職員向け)|文部科学省
フランスのLGBT教育
フランスでは、同性愛者を犯罪者として扱うような時代もありました。
しかし現在のフランスでは、2013年に「みんなのための結婚法」が成立され、同性パートナーシップの制度も整備されています。
比較的早くLGBTに対する取り組みを行なっているフランスのLGBT教育は、「科学」の授業において、「生物領域」という科目がメインです。
これに加えて、歴史的、社会制度、生命倫理といった様々な角度からLGBT教育が行われ、LGBTフレンドリーな風潮に結びついています。
参照元:コロナ禍で振り返るパートナーシップ制度「PACS」|一般社団法人 自治体国際化協会 パリ事務所
アメリカのLGBT教育
アメリカといえば、LGBTの先進国といわれる国です。
LGBT教育も進んでおり、2017年11月にはカリフォルニア州教育委員会が、中学校までの教科書にLGBTに関する内容を記載することを認めています。
これは、アメリカにある50州の中でも初めての試みでした。
とはいえ、アメリカでも、LGBTに関する悩みを苦にして自殺をするような悲しい事件は未だに起こっています。
こうした現状からも、LGBT教育はしっかりとした改革を元に行われなければ、浸透していかないことがわかるでしょう。
日本のLGBT教育における課題
日本のLGBT教育において何よりも課題としてあげられるのが、教員の理解不足でしょう。
LGBT自体が意識されるようになったのは、ここ近年の話であり、指導する側としてもLGBTに対する知識が足りない点は否めません。
しかし、子供に対して正しい知識を教えるためには、教育者の理解が不可欠です。
そのため、教員を対象にしたLGBTに関する研修やワークショップなどが、より大切になってくるでしょう。
また、LGBTに配慮した学習指導要領が作られることも求められています。
さらに大切なのは、校内環境の整備です。
社会全体や職場におけるLGBTの取り組みと同様に、学校内でも誰もが過ごしやすい環境づくりが欠かせません。
例えば、トイレや制服など、これまでは男女で分けられていたものに対する配慮が必要です。
多目的トイレを設置したり、制服を自由化するなど学校全体での取り組みが不可欠でしょう。
また、誰にもいえずに悩みを抱えている生徒に対して、相談しやすいカウンセリング体制も大切です。
まとめ
最近は、ようやくLGBTであることを伝えやすい環境が少しずつ整ってきています。
芸能人や著名人がカミングアウトするケースも増えており、LGBTに関する運動も活発化しているため、この先はよりスムーズに暮らせる時代がくるでしょう。
とはいえ、長い歴史の中で培われた考え方や文化は、なかなか簡単に崩せるものではありません。
根底から意識を変えるためには、教育を変えていくことが大切です。
まずは、大人がLGBTに関する正しい認識を持ち、誰もが暮らしやすい社会を作るという意識を得なければなりません。
その上で、子供達に正しい知識を伝えることが大切です。