公園や河川敷などに、段ボールを敷いて暮らす人たちがいます。
いわゆるホームレスと呼ばれる人たちで、過酷な状況に陥ってしまう経緯は様々です。
豊かな国になった日本でも、未だホームレス問題は後を絶ちません。
こちらの記事では、なぜ、ホームレス問題がなくならないのか、その原因を解説します。
ホームレスとは
日本では、1990年代半ばからホームレス問題が著しく増大しました。
こうした問題を解決するために、2002年8月7日に「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」が公布されています。
いわゆる「ホームレス自立支援法」と呼ばれる法律です。
この法律の中で、ホームレスは「都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでる者」と定義されています。
とはいえ、これは法律上定義されているだけであり、最近では、簡易宿泊所やビジネスホテル、ネットカフェなどを渡り歩き、住居を持たない人も増えているのが現状です。
参照元:ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法|厚生労働省
日本のホームレスにおける実態
厚生労働省では、定期的に「ホームレスの実態に関する全国調査」を行なっています。
東京23区と政令指定都市に加えて、50名以上のホームレス数の報告があったエリアにおいて実施している調査です。
2021年の調査では、全国のホームレスの数は3,824人で、2017年の5,534人から年々減少傾向にあります。
性別で見てみると、男性が3,510人、女性が197人と大きな差がありますが、女性は2020年の168人から一気に増えているのが特徴です。
全国で最もホームレスが多いのは、東京都23区で、大阪市、横浜市が続きます。
ただし、先の章でもお伝えしたように、ホームレスの多様化が進んでおり、実際はより多くの人が住処を持っていない可能性もあるでしょう。
ホームレスがなくならないのはなぜ?原因について
日本には、ホームレス自立支援法の他に、生活保護法という制度があります。
こうした自立を促すための制度が整っているにも関わらず、完全にホームレス状態に陥る人がいなくならないのはなぜでしょうか。
その理由について解説します。
ホームレス状態からの脱出が難しい
ホームレスになるきっかけは、失職や借金、家族との離別など様々です。
理由は異なるものの、共通していえることは、相談する相手や場所、チャンスがなかったという点でしょう。
単に、仕事や住まいを失っただけでは、すぐにホームレスに陥ることはありません。
手を差し伸べる人があり、人とのつながりを持っていれば、何らかのサポートが受けられる可能性が高くなるでしょう。
周囲との関わりがない状態でホームレスに陥ってしまうと、生活再建に向かうハードルが高くなります。
生活保護の問題
生活に困窮した人に対する法律として生活保護法があります。
生活保護法は、1950年に制定された法律で、国が生活に困窮するすべての国民に対し、困窮の状態に合わせて必要な保護を行い、最低限の生活を保障、また自立をサポートすることが目的です。
生活保護法は世帯単位で行われているため、世帯の誰かが資産を持っていたり、働く能力があれば、保護の対象とはなりません。
一人世帯だったとしても条件は同じです。
ホームレスに陥る人の多くは「働く能力がある」とみなされるケースが多く、生活保護の対象とはならないため、結果的にホームレスを脱することができないのが現状です。
参照元:生活保護法|厚生労働省
ホームレスに陥った人をサポートする活動
基本的に、ホームレス自立支援法や生活保護法は、自主的にサポートを得るための行動を起こさなければなりません。
しかし、実際はホームレスの多くが高齢であり、自主的な行動に移せない人も多くいます。
また、若年層であっても、生活保護の対象にならないケースもあり、頼る先がなく途方に暮れている人もいるでしょう。
こうした人たちを支えられるのは、個人的なサポートや民間団体による支援です。
とはいえ、個人で直接支援を行うのは現実的に難しいため、団体や企業が行なっている活動を知ることが欠かせません。
続いては、ホームレスに陥った人をサポートする活動を紹介します。
認定NPO法人Homedoorの活動
ホームレス状態を生み出さない日本の社会構造を作ることをビジョンに掲げたNPO法人がHomedoorです。
誰もが何度でもやり直せる社会づくりを手がけており、ホームレスの人たちの心の拠り所として存在しています。
例えば、シェルターの提供や居場所づくり、仕事の提供や再出発のサポートなど、支援内容はじつに様々です。
また、ホームレスに陥る人たちがいることや現状を多くの人に伝える活動も行なっています。
参照元:認定NPO法人Homedoor
認定NPO法人大津夜まわりの会の活動
大津市で自立支援相談や生活困窮者一時生活支援を受託している大津夜まわりの会では、緊急一時宿泊所を提供しています。
いわゆるシェルターと呼ばれる施設です。
大津市内の賃貸住宅5室をシェルターとして構え、住居探しや仕事探しなどのサポートも手がけています。
全国にはこうしたシェルターを運営する団体が多くあり、過酷なホームレスの生活を支えています。
参照元:認定NPO法人大津夜まわりの会
私たちができるサポート
ホームレス状態に悩む人たちを支える団体は、寄付金を募ったり、企業や財団と連携している活動を行なっているところがほとんどです。
また、食料品や生活用品など物資の寄贈も募集しています。
その他、ホームレスや生活困窮者に向けたポスターの掲示、チラシの配布なども欠かせません。
このように、私たち個人ができるサポートも多くあります。
まずは、ホームレスを支える活動を行なっている団体のホームページやパンフレットをみて、自分ができる支援を選ぶとよいでしょう。
まとめ
高度経済成長を駆け抜けて、今や先進国の一つといえる日本でも、ホームレス状態に陥る人は少なくありません。
とはいえ、誰も望んでホームレスになったわけではなく、何らかの理由があります。
できれば、再び社会に戻りたいと考える人も多いのが現実です。
ホームレスとしての暮らしを余儀なくされている人の存在を知り、できることからサポートをするだけで、ホームレスを余儀なくされる人たちが再度社会に復帰する一歩へつながります。
一人でも多くの人が社会に復帰でき、また、ホームレスにならないような社会づくりが欠かせません。
政府やNPO団体だけではなく、一人一人が少し意識を向けるだけで社会は大きく変わり始めます。