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ホームレス問題がなくならないのはなぜ?原因と支援活動について解説

ホームレス問題がなくならないのはなぜ?原因を解説

公園のベンチや河川敷、駅の通路に段ボールを敷いて夜を明かす人がいます。いわゆるホームレスと呼ばれる人たちですが、その数は法律ができた2002年以降減り続けてきた一方で、依然としてゼロにはなっていません。豊かな国と呼ばれる日本で、なぜホームレス問題はなくならないのでしょうか。この記事では、法律上の定義や最新の実態調査をふまえながら、問題が解消しない構造的な理由と、NPOや個人が取り組める支援の形を具体的に解説します。

この記事で学べること

  • ホームレスの法律上の定義と、ネットカフェ生活者など「見えないホームレス」との違い
  • 厚生労働省の全国調査からわかる人数の推移と地域差
  • 生活保護制度がありながらホームレス状態を脱せない構造的な理由
  • Homedoorやビッグイシュー日本など支援団体の具体的な取り組み
  • 寄付や声かけなど、個人が今日から検討できる支援の選び方

ホームレスとは|法律上の定義と「見えない」ホームレスの広がり

2002年に公布された「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」では、ホームレスを「都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者」と定義しています。この法律ができた背景には、1990年代半ばから路上生活者が急増し、社会問題として対応が急務になった経緯があります。

ただし、この定義はあくまで屋外や公共施設で寝泊まりする人を指すものです。実際には、簡易宿泊所やビジネスホテル、24時間営業の飲食店やインターネットカフェを転々としながら、決まった住居を持たずに生活する人も少なくありません。東京都が行った調査では、こうした「住居喪失不安定就労者」、いわゆるネットカフェ難民が都内だけで数千人規模にのぼると推計されたことがあります。

つまり、路上で目に見える形の困窮だけでなく、屋根はあっても「家」と呼べる安定した住まいを持たない人たちが一定数存在するのが実態です。統計上の「ホームレス数」だけを見ていると、この問題の広がりを見誤ってしまう可能性があります。

日本のホームレス数の推移|厚生労働省調査から見える現状

全国調査の仕組みと数の推移

厚生労働省は毎年1月ごろ、東京23区や政令指定都市などを対象に「ホームレスの実態に関する全国調査」を実施しています。目視による概数調査で、法律施行後の2003年には全国で25,000人を超えていたホームレス数は、その後20年近くにわたって減少を続けてきました。2021年の調査では全国3,824人と、2017年の5,534人から大きく減少しており、性別では男性が3,510人、女性が197人と報告されています。減少傾向はその後の調査でも継続していると報告されており、路上での野宿生活者という狭い意味でのホームレスに限れば、統計上は着実に減ってきたといえるでしょう。

地域差と「見えないホームレス」の存在

地域別に見ると、東京都23区がもっとも多く、大阪市、横浜市がこれに続く傾向が続いています。都市部に集中する背景には、路上でも身を寄せやすい環境や、支援団体・炊き出しへのアクセスのしやすさがあると考えられます。一方で、先述のネットカフェ生活者のように、調査の対象から漏れてしまう「見えないホームレス」が地方も含めて一定数存在する可能性は否定できません。厚生労働省の概数調査はあくまで目視できる範囲の人数であり、実際の困窮者数はこれより多いと見る専門家もいます。数字の減少を額面どおりに受け取るのではなく、統計の外側にいる人たちの存在も念頭に置く必要があります。

ホームレス問題がなくならない3つの理由

日本には、ホームレス自立支援法のほかに、生活に困窮するすべての国民を対象とする生活保護法という制度もあります。自立を後押しする仕組みが整っているにもかかわらず、ホームレス状態に陥る人が完全にはいなくならないのはなぜでしょうか。主な理由を3つに整理します。

理由1 生活保護の資力調査と「稼働能力」の壁

生活保護法は1950年に制定された法律で、国が困窮の程度に応じて必要な保護を行い、最低限度の生活を保障することを目的としています。ただし生活保護は世帯単位の資力調査が前提で、働く能力があると判断されると、保護の対象から外れやすくなります。ホームレス状態にある人の多くは若年層も含め「働けるはず」とみなされがちで、これが申請のハードルになってきました。加えて、住所や身元確認の書類がそろわないことを理由に窓口で申請を思いとどまらせる、いわゆる「水際対応」が各地の福祉事務所で問題視されてきた経緯もあります。

理由2 社会的孤立|頼れる人間関係の喪失

ホームレスになるきっかけは、失職、借金、病気、家族との離別など人によってさまざまです。ただ、多くのケースに共通するのは、困ったときに相談できる相手や場所がなかったという点です。仕事や住まいを失っても、頼れる家族や友人、地域とのつながりがあれば、すぐに路上生活に至ることは多くありません。孤立した状態でホームレスに陥ると、情報にもアクセスしにくくなり、生活再建に向けた一歩を踏み出すこと自体が難しくなります。

理由3 住居確保のハードル|保証人と初期費用の壁

賃貸住宅を借りるには、連帯保証人や敷金・礼金などの初期費用が必要になるのが一般的です。身寄りがなく安定した収入もない状態では、この初期費用と保証人の壁を越えられず、たとえ就労先が決まっても住まいを確保できないという逆転現象が起こります。こうした課題に対応するため、2024年には住宅確保に配慮が必要な人を支える「住宅セーフティネット法」の改正が行われ、居住支援法人による見守りや家賃債務保証の仕組みを強化する方向性が示されました。制度の後押しがあっても、実際に窓口となる自治体や支援団体の体制がまだ追いついていない地域も少なくありません。

「甘え」ではない|誤解されやすいホームレスの実像

ホームレス状態にある人に対して、「働く気がないだけ」「自己責任だ」という見方をされることがあります。しかし、路上生活に至る経路は病気やケガによる離職、事業の失敗、DVからの避難、家族との死別など多岐にわたり、本人の努力だけでは避けられない事情が重なっているケースが目立ちます。

厚生労働省の調査では、路上生活者の平均年齢は年々上昇しており、高齢化が進んでいることが繰り返し指摘されています。長年路上生活を続けてきた高齢の人の中には、体力の低下から就労が難しくなっているにもかかわらず、書類上「稼働能力あり」と扱われてしまう人もいます。制度上の「働けるかどうか」の判断と、本人の実際の心身の状態にズレが生じやすい点は、見落とされがちな実像といえるでしょう。

こうした背景を知ると、ホームレス状態にある人への視線も変わってきます。「なぜ自分で何とかしないのか」ではなく、「相談できる場所につながる機会がこれまでになかったのではないか」という見方に立つことが、支援の第一歩になります。

支援の現場|NPOと企業が取り組む実践例

ホームレス自立支援法や生活保護法は、基本的に本人が自ら支援を求める行動を起こすことが前提になっています。しかし高齢や心身の不調によって自主的に動けない人、若年層で制度の対象から外れてしまう人など、公的制度だけではカバーしきれない人たちを支えているのが、各地のNPOや企業による民間の取り組みです。

Homedoorのシェルターと仕事づくり

大阪を拠点とする認定NPO法人Homedoorは、「ホームレス状態を生み出さない社会」をビジョンに掲げ、シェルターの提供や居場所づくり、就労機会の提供、再出発に向けた伴走支援など幅広い活動を行っています。シェアサイクル事業を通じて路上生活経験者に仕事の場を用意するなど、支援を受ける側から支える側へと役割を変えていける仕組みづくりに力を入れている点が特徴です。

ビッグイシュー日本の雑誌販売モデル

雑誌「ビッグイシュー日本版」を路上生活経験者自身が販売する仕組みは、支援と就労機会の提供を両立させるモデルとして知られています。販売者は雑誌の売上の一部を収入とすることができ、対面での販売活動を通じて社会とのつながりを取り戻していく機会にもなっています。寄付だけに頼らず、当事者の働く力を生かす形の支援として、各地の都市で活動が続けられています。

地域に広がるシェルター運営団体

大津市を拠点とする認定NPO法人大津夜まわりの会のように、自治体から自立相談支援や生活困窮者一時生活支援事業を受託し、賃貸住宅を活用した緊急一時宿泊所(シェルター)を運営する団体は全国各地にあります。住まいを確保したうえで生活再建に取り組む「ハウジングファースト」型の考え方は、まず安定した居場所を用意することが自立への近道になるという発想に基づいており、国内でも取り入れる団体が増えてきています。

私たちにできる支援|寄付・ボランティア・声かけの前に知っておきたいこと

ホームレス問題を自分ごととして考えたとき、個人ができることは決して少なくありません。ただし、やみくもに行動する前に、いくつか押さえておきたいポイントがあります。

支援団体の多くは、寄付金の募集に加えて、食料品や衣類、生活用品などの物資提供、そして炊き出しやパトロールへのボランティア参加を受け付けています。まずは関心のある団体のウェブサイトやパンフレットを確認し、どのような支援を必要としているかを調べることから始めるとよいでしょう。

団体を選ぶ際は、認定NPO法人など第三者の認証を受けているか、活動報告や会計報告を公開しているかといった透明性を確認すると安心です。継続的な支援を考えているなら、単発の寄付だけでなく、マンスリーサポーターのような形で長期的に関わる選択肢もあります。

路上で困っている人を見かけたときに、個人がその場で現金を直接渡すべきかどうかは判断が難しいところです。専門知識のない状態での声かけは、かえって本人を戸惑わせてしまうこともあります。まずは地域の自立相談支援機関や夜回り活動を行う団体に情報をつなぐという選択肢も、支援の一つの形です。

生活に困窮する背景には、ホームレス状態に限らず子どもの貧困や相対的貧困の問題も重なっています。あわせて日本の貧困の実態についても知っておくと、支援の全体像がつかみやすくなります。

生活保護制度がどのような人を対象にしているのか、申請の流れとあわせて詳しく知りたい人は、制度そのものを解説した記事も参考にしてみてください。

寄付先の団体をどう選べばよいか迷う場合は、寄付の基本的な選び方を整理した記事も参考になります。

まとめ

ホームレス問題は、法律や制度が整っていないから起きているわけではありません。生活保護の資力調査や稼働能力の判断、保証人や初期費用が必要な住宅市場の仕組みなど、既存の制度のすき間に取り残されてしまう人がいることが、問題が解消しきらない大きな要因です。厚生労働省の調査では路上生活者の数自体は減少を続けていますが、ネットカフェなどを転々とする「見えないホームレス」は統計に表れにくく、実際の困窮者数はさらに多い可能性があります。

Homedoorやビッグイシュー日本、各地のシェルター運営団体のように、制度のすき間を埋める形で活動する民間の支援は各地に広がっています。私たち一人ひとりにできることも、寄付や物資提供、団体への情報提供など多岐にわたります。まずは自分の関心に近い団体を1つ調べてみることから、できる支援を考えてみてください。

  • ホームレスの数は法律上の定義に基づく統計であり、ネットカフェ生活者などは含まれにくい
  • 厚生労働省の調査では全国の路上生活者数は長期的に減少傾向にある
  • 生活保護の資力調査や稼働能力の判断が、支援からこぼれ落ちる一因になっている
  • 2024年の住宅セーフティネット法改正など、住まい確保を支える制度も動き始めている
  • 寄付や物資提供、団体への情報提供など、個人にできる支援の選択肢は複数ある

参考文献

  • 記事を書いたライター
  • ライターの新着記事
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