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SOCIETY

パリ協定とは?世界の取り組みから達成への課題と展望について|2026年の現在地

パリ協定とは?気候変動への対策と国際的な協力の重要性について

パリ協定とは、2015年12月にフランスのパリで開かれた国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で採択された、世界共通の気候変動対策の国際ルールです。産業革命前からの気温上昇を2℃より十分低く抑え、1.5℃に抑える努力を続けることを世界共通の目標とし、先進国だけでなく途上国も含むすべての国が温室効果ガスの削減に取り組みます。

採択から10年が過ぎた今、知りたいのは仕組みの説明だけではないはずです。目標は守られているのか、アメリカが離脱した後も協定は機能するのか、日本の目標はどこまで進んだのか、私たちの暮らしとどうつながるのかという「次の疑問」に、2026年10月時点の公開資料をもとに答えていきます。

この記事で学べること

  • パリ協定の「2℃」「1.5℃」の正しい読み方と、京都議定書との違い
  • 気温と排出量の最新の数字から見た、世界の現在地
  • COP29・COP30の結果と、アメリカ離脱後の協定の行方
  • 日本の2035年度・2040年度目標と、その進み具合
  • よくある誤解と、暮らしの中で選べる行動
目次

パリ協定の基本|京都議定書との違いと「2℃・1.5℃」の読み方

パリ協定の特徴は、「全員参加」と「各国が自分で目標を決める」という2点です。1997年に採択された京都議定書は、先進国だけに排出削減の義務を課す仕組みでした。その後、中国やインドをはじめ新興国の排出量が大きく増え、先進国だけの削減では世界全体の排出を抑えられないことが明らかになりました。そこで2015年に、すべての国が目標を持つ新しい枠組みとしてパリ協定が生まれ、2016年に発効しました。

京都議定書との違いは「誰が」「どう決めるか」

京都議定書では、削減義務を負う国と数値目標が交渉で割り当てられました。パリ協定では、各国が自国の事情に合わせて削減目標を作り、国連に提出します。この目標を「NDC(国が決定する貢献)」と呼びます。

自分で決める方式にしたことで、参加のハードルは下がり、ほぼすべての国が加わる枠組みになりました。一方で、目標の高さは国ごとにばらつき、その合計が気温目標に届くとは限りません。この「参加のしやすさ」と「目標の足りなさ」の両面が、後の章で見る現状の背景です。

「2℃以下」ではなく「2℃より十分低く」

パリ協定の長期目標は、気温上昇を産業革命前と比べて「2℃より十分低く」抑え、「1.5℃に抑える努力を追求する」ことです。「2℃以下を守れば合格」という読み方は正確ではありません。2018年のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の特別報告書が、1.5℃と2℃では影響の大きさに差があることを示したため、現在は1.5℃が事実上の中心目標として扱われています。

1.5℃は「単年」ではなく「長期の平均」で見る

もう一つ押さえておきたいのは、1.5℃が長期的な平均気温の水準を指す点です。世界気象機関(WMO)によると、2024年の世界平均気温は産業革命前より約1.55℃高く、観測史上で初めて単年で1.5℃を上回りました。ただし、1年だけ超えたことが、そのままパリ協定の目標の失敗を意味するわけではありません。問題は、この水準が一時的ではなく定着しつつあることです。

目標を引き上げ続ける仕組み|NDC・ストックテイク・透明性

パリ協定は、各国の目標が足りないことを前提に、5年ごとに目標を見直して引き上げる設計になっています。この点は元の協定の説明で見落とされがちですが、協定の核心です。

仕組みは三つの要素でできています。各国が5年ごとにNDCを提出・更新すること、世界全体の進み具合を5年ごとに点検する「グローバル・ストックテイク」を行うこと、そして各国が排出量や対策の進捗を共通のルールで報告し、専門家の確認を受ける透明性の枠組みです。

5年ごとの更新で目標を上げていく

NDCは「前回より高い目標」を出すことが求められます。2025年は、2035年を目標年とする新しいNDCの提出が求められた節目の年でした。UNEP(国連環境計画)の「排出ギャップ報告書2025」によると、2025年9月末までに2035年目標を提出または発表した国は、約60の締約国で、世界の排出量の約63%をカバーするにとどまりました。

世界全体の点検は2023年に初めて実施

最初のグローバル・ストックテイクは、2023年のCOP28で結果が示されました。世界全体の取り組みがパリ協定の目標に対して不足していることが公式に確認され、各国はその結果を踏まえて次のNDCを作ることになりました。

目標未達でも罰則はない

パリ協定には、目標を達成できなかった国に制裁を科す仕組みはありません。代わりに、各国が報告を公開し、国際社会の目が届くことで、行動を促す方式をとっています。この「圧力で動かす」設計は、参加しやすさを生んだ半面、達成の確実さを弱める点でもあります。

世界の現在地|気温と排出量は目標とどれだけ離れているか

10年たった時点での評価は厳しいものです。ただ、「何も変わっていない」とも言えません。両方の事実を並べて見ます。

気温は1.5℃の近くまで来ている

WMOの報告では、2025年の世界平均気温は産業革命前より約1.43℃高く、観測史上2番目か3番目に暖かい年でした。2015年から2025年までの11年間は、いずれも観測史上で暖かい11年に入っています。WMOの事務局長は、今後数年で1.5℃を一時的にも超えずに抑えることは、ほぼ不可能に近いという趣旨の見解を示しています。

各国の目標がすべて実現しても2.3〜2.5℃

UNEPの「排出ギャップ報告書2025」では、各国が新しいNDCを完全に実施した場合でも、今世紀中の気温上昇は2.3〜2.5℃と見込まれています。前年の報告書の2.6〜2.8℃からは下がりましたが、改善幅は小さいと報告されています。現在の政策のままなら、最大で2.8℃に達する見通しです。

注目したいのは、協定が採択される前の2015年ごろには、各国の政策が続けば3℃台後半まで上がると見られていたことです。協定が「温暖化の道筋を下に曲げた」ことは確かですが、1.5℃には大きく届かないというのが、2026年時点の正確な姿です。

「目標を出した国」と「達成できる国」は別

UNEPは、多くの国が自国の2030年目標の達成軌道に乗っていないとも指摘しています。目標の数字を高く掲げることと、実際に排出を減らすことのあいだに距離があるのが、現状の最大の課題です。

COP29・COP30とアメリカ離脱|交渉の最新動向

国際交渉の場では、ここ2年で資金と適応の議論が大きく動きました。同時に、アメリカの離脱という大きな変化もありました。

COP29|途上国向けの資金目標が年3,000億ドルに

2024年のCOP29(アゼルバイジャン・バクー)では、途上国の気候対策を支える新しい資金目標が決まりました。外務省の整理によると、先進国が中心となって2035年までに少なくとも年間3,000億ドルを拠出することが定められ、あわせて、公的・民間のあらゆる資金源から2035年までに年間1.3兆ドル以上へ広げるよう、すべての関係者に協力が求められました。従来の目標は年間1,000億ドルでしたが、途上国が求めていた規模には遠く、不十分だという批判も出ています。

COP30|10周年の会議は「実施」が焦点に

2025年11月にブラジルのベレンで開かれたCOP30では、「グローバル・ムチラオ決定」が採択されました。外務省の整理では、パリ協定10周年、交渉から実施への移行、実施・連帯・国際協力の加速が柱です。気候ネットワークの報告書によると、合意文書は1.5℃目標への決意を示しつつ、初めて目標の一時的な超過(オーバーシュート)の可能性に触れ、公正な移行を進める新しい枠組みの設立も決まりました。

一方で、化石燃料からの転換については、最終文書に段階的廃止の明確な文言は入らなかったと報じられています。議長国ブラジルが、国連の正式な枠組みの外で転換のロードマップを作る方針を示した、という整理です。気候ネットワークの報告書は、各国が出した2035年目標を合わせても排出量は2019年比で12%減にとどまり、IPCCが示す60%削減との間に大きな開きがあると指摘しています。

アメリカの離脱は2026年1月27日に発効

アメリカは2025年1月に離脱を国連へ通知し、パリ協定の規定により、通知から1年後の2026年1月27日に離脱が発効しました。さらに2026年1月には、国連気候変動枠組条約そのものからの離脱の意向も示されましたが、大統領が議会の同意なしにこれを行えるかには議論があると指摘されています。

アメリカは世界有数の排出国であり、離脱の影響は小さくありません。ただ、協定は残る国々で続いています。来月には、次の国連気候会議(COP31)がトルコで開かれる予定と報じられており、離脱後の枠組みを各国がどう支えるかが引き続き問われます。

日本の目標と進み具合|2035年度60%・2040年度73%削減

日本の目標は、読者の暮らしや仕事に最も近いテーマです。数字を整理してみます。

2025年2月に新しい目標を閣議決定

政府は2025年2月、温室効果ガスの排出を2013年度比で、2035年度に60%、2040年度に73%削減する目標を閣議決定し、NDCとして国連に提出しました。2030年度の46%削減という目標は維持されています。環境省はこれらを、1.5℃目標と整合的な野心的目標と位置づけています。

2023年度は2013年度比で27.1%減

環境省の発表では、2023年度の日本の温室効果ガス排出・吸収量(正味)は約10億1,700万トンで、2022年度比4.2%減、2013年度比27.1%減でした。電源の脱炭素化や製造業の生産活動の減少が主な要因とされています。

残り7年で必要なペースは、過去10年と同じ水準

ここで、公表数値から単純に計算してみます。2013年度から2023年度までの10年間で27.1ポイント下がったので、1年あたりの平均はおよそ2.7ポイントです。2030年度の46%に届くには、2023年度から残り7年で約18.9ポイントを減らす必要があり、これも1年あたり約2.7ポイントです。つまり、「これまでと同じペースを7年間続ける」ことが最低条件になります。

ただし、この10年の減少には、電源構成の変化のように一度きりで進んだ要素も含まれます。同じペースを保つには、今後は住宅や建物の断熱、輸送、産業の燃料転換といった、時間と費用のかかる分野での削減が欠かせません。

対策の積み上げは今後の課題

2035年度・2040年度の目標については、2030年度目標のように個別の対策を細かく積み上げた計画は示されておらず、今後の技術開発の状況を見ながら具体化していくと整理されています。これが日本の課題の一つです。

誤解されやすい点|「失敗した」「意味がない」と言い切れない理由

パリ協定をめぐっては、極端な見方が流れがちです。数字を見ながら、よくある三つの受け取り方を確かめます。

「もう1.5℃を超えたから、協定は失敗」

先に見たとおり、1.5℃は長期平均の水準です。ただし、短期的に超過する可能性は高く、COP30でも一時的な超過に初めて言及されました。大切なのは、超えた後にどれだけ早く、どれだけ下げられるかです。0.1℃の違いでも、猛暑や豪雨のリスクは変わります。

「どうせ守られないから意味がない」

目標が足りないのは事実です。しかし、協定がなければ今よりも高い気温上昇の道筋をたどっていたと見られています。UNEPの推計で温暖化の見通しが少しずつ下がってきたことは、協定の枠組みがあって初めて測れる変化です。

「個人が動いても影響はない」

世界の排出量は、電力、輸送、産業、建物など、私たちが使うサービスを通じて決まります。個人の行動は小さく見えても、需要を変え、企業や自治体の選択を動かします。その意味で、次の章の行動は意味を持ちます。

私たちにできること|暮らしの中で選べる三つの方向

パリ協定の目標は国の話に見えますが、日本の家庭や職場にもつながっています。環境省は「デコ活」などの国民運動を通じて、脱炭素型の暮らしへの転換を呼びかけています。ここでは、生活の中で選びやすい方向を三つにまとめます。

電気の使い方と選び方を見直す

家庭のCO2排出は、電気由来の割合が大きいとされています。照明をLEDにする、古いエアコンや冷蔵庫を省エネ性能の高いものに替える、再生可能エネルギーの比率が高い電力プランを選ぶといった行動は、効果が見えやすい入口です。

住まいの断熱を考える

暖房や冷房に使うエネルギーは、住まいの断熱性能で大きく変わります。窓を複層ガラスや内窓にする、といった工事は費用がかかりますが、光熱費の負担を長く抑えられる可能性があります。自治体や国の補助制度が用意されている場合があるため、住んでいる地域の情報を確認するのが先決です。

選挙や投資、仕事の場で意見を出す

気候変動対策の多くは、政策や企業の方針で決まります。自治体の計画に意見を出す、勤め先や取引先の脱炭素の取り組みを尋ねる、年金や投資信託の運用方針を確認するといった行動は、家庭の外に影響を広げる方法です。

まとめ

パリ協定は、気温上昇を2℃より十分低く、できれば1.5℃に抑えるという目標のもと、すべての国が自分の目標を持ち、5年ごとに引き上げていく枠組みです。10年がたち、世界の見通しは以前より下がりましたが、各国の目標がすべて実現しても2.3〜2.5℃に向かうと見られ、1.5℃とは大きな差が残っています。

COP29の資金目標、COP30の「実施」への転換、アメリカの離脱という変化の中でも、協定は続いています。日本は2035年度に60%、2040年度に73%の削減を掲げ、2023年度までに27.1%を減らしました。目標に届くかどうかは、これまでと同じペースを維持できるか、そしてまだ手が届いていない分野で削減を進められるかにかかっています。

最初の一歩としては、まず一つだけ、自宅の電気の契約や古い家電のどれか一つを見直してみてください。小さく始めた選択が、需要の変化を通じて、世界の目標につながっていきます。

  • パリ協定の目標は「2℃より十分低く、1.5℃に抑える努力」であり、1.5℃は長期平均の水準で見る
  • 各国の新目標がすべて実現しても、今世紀中の気温上昇は2.3〜2.5℃と見込まれる
  • アメリカは2026年1月27日にパリ協定から離脱したが、協定は残る国々で続いている
  • 日本は2013年度比で2035年度60%・2040年度73%の削減を掲げ、2023年度は27.1%減
  • 電気・住まい・投資や意見表明の三方向で、暮らしから目標につながる選択ができる

参考文献

  • 記事を書いたライター
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