最近のニュースでも、世界中で作物の不作や物価上昇が取り上げられています。
「食べたいものが食べられない」という問題をよりリアルに感じた方も多いのではないでしょうか。
今も未来も、すべての人が食事をするためには、持続可能な食料生産が欠かせません。
その救世主として、今注目されているのが「アグリテック」です。
とはいえ、「アグリテックとは?」「具体的などんな事例があるの?」と疑問に思いますよね。
この記事では、アグテックについて分かりやすく解説するとともに、最先端の世界と日本の事例を紹介します。
アグリテックを知ることで、今後の農業の見方が変わるかもしれません。
アグリテックとは
アグリテックとは、「Agriculture」である農業と「Technology」である技術をかけ合わせた造語です。
ロボット技術やICTなどの最新技術を活用して、省エネで高品質な生産を叶える農業を目指しています。
農林水産省は、アグリテックを「スマート農業」と呼び、現在も積極的に推進しています。
参照元:スマート農業|農林水産省
どうして、アグリテックが必要なのか?
けれども、どうして、アグリテックが必要なのでしょうか。
そこには、大きく分けて3つの理由があります。
・農家の高齢化や人手不足を解消するため
・作業の自動化・効率化を図るため
・持続可能な農業を実現するため
農家の高齢化や人手不足を解消するため
アグリテックには、農家の高齢化や人手不足の解消が期待できるからです。
この問題は日本も抱えています。
農林水産省の調査によると、現在の農家の平均年齢は67歳。自営農家に占める65歳以上の割合は既に7割に達しました。
さらに、新しく農業を始める方は近年では2万人程度しかいません。
高齢化が進む中、新規参入する若者が少ないのが現状です。
長年「農業は経験が命」と言われていました。
しかし近年、情報を見える化して共有したり、気象データのAI解析のようなデータの活用をしたりできるようになりました。
つまり経験値が少なくても、より高度な農業経営が可能になったのです。
農家の高齢化や人手不足を解消するために、アグリテックが必要といえるのではないでしょうか。
作業の自動化・効率化を図るため
アグリテックを活用すれば、作業の効率化を図れるという大きなメリットがあります。
ドローンやロボット技術を活用することで、大変な作業も自動化できるからです。
例えば、自動走行トラクターを導入したことで、一人当たりの作業可能な面積が拡大し、大規模化が可能になりました。
また、作業が面倒な草刈りを無人化したことで、天候や時間を問わず草刈りができるようになったのです。
作業時間が減った結果、労働力不足の解消につながりました。
このように作業を自動化できるアグリテックは、今後ますます必要とされるでしょう。
持続可能な農業を実現するため
今も未来も持続可能な農業を実現するためにも、アグリテックは必要です。
実は、世界人口を40人のクラスに例えると、「今日も食べるものがなく、明日もあるかわからない」という生徒は4人もいるといわれています。
さらに、世界人口の増加は今後も見込まれているのです。
2050年に世界人口は約100億人に達し、飢餓人口も今より20億人増えると予想されています。
今後、人口増加が続いても、すべての人が毎日十分な食事をするためには、どこの地域の食料自給率を上げなければいけません。
最小の労力で、確実に農業の生産性を高めていくためには、最新技術が必要といえます。
データ分析やロボット技術を活用すれば、必要な水、肥料や農薬をベストなタイミングで適度な量を追加できます。
そのため、使い過ぎを防止できるため、環境にもやさしいというメリットもあるのです。
参照元:
・2.飢餓をゼロに|日本ユニセフ協会
・農業のデジタルトランスフォーメーションについて|農林水産省
・農業 DX 構想~「農業×デジタル」で食と農の未来を切り拓く~|農業 DX 構想検討会
世界の事例
では、アグリテックを活用した事例には、どのようなものがあるのでしょうか。
今ではアグリテックの可能性は高く評価され、政府だけではなく大手企業からベンチャー企業までが開発に力を入れています。
まずは、世界の取り組みからみていきましょう。
オランダ:海の上の酪農場「FloatingFarm」
FloatingFarmという牧場があるのは、オランダ南部の港町。
海に浮かぶ酪農場です。
「動物福祉、循環性、持続可能性を重視し、消費者に近い都市で健康食品を生産すること」を目指して建設されました。
海上にソーラーパネルを設置し、ここで発電した再生可能エネルギーで搾乳機や排泄物処理などの電力をまかなっています。
また、牧場消費者に近い場所で生産することは鮮度も維持でき、輸送における環境負荷も減らせます。
オランダは、世界に先駆けてアグリテックを導入し、非常に効率よく農作物を生産しています。
その結果、国土は九州ほどの小さな国ですが、農作物の輸出量は世界トップクラスです。
イギリス:機械学習でレタスを識別・収穫「Vegebot」
イギリスのケンブリッジ大学の研究チームは、2019年7月に自動収穫ロボット「Vegebot(ベジボット)」を開発しました。
内蔵カメラでレタスを検知し、その色から収穫の是非を評価した上で、野菜を傷つけることなく切り取り、所定の場所に移動させることができます。
この画期的な機能があれば、作業負担は軽減されます。
さらに、経験値に関係なくベストなレタスを収穫でき、新規参入もしやすくなるのではないでしょうか。
オーストラリア:砂漠でトマト栽培「Sundrop農場」
オーストラリアでは、太陽光発電と海水を使うことで、砂漠でトマトなどの栽培を行う「Sundrop農場」が本格的に稼働しています。
20ヘクタールという広大な敷地に、
・中央に立つ太陽光を集めるタワー
・太陽光を反射する鏡が並べられたエリア
・作物を栽培する温室エリア
などが配置されています。
では、どうして太陽と海水だけで栽培可能なのでしょうか。
その理由は以下の通りです。
・鏡に反射した太陽光で発電できるから(ここでの電力は、温室を温める際に使われます)
・海水を脱塩する装置で真水を作り出せるから
・海水はシステムや温室の冷却に活用できるから
このような理由から、砂漠でも必要な電力と水を確保できるのです。
アグリテックを活用することで、砂漠でも年間で1万7000トンのトマトを生産できるようになりました。
この事例は、これまで農業が不可能とされていた場所でも作物を栽培できることを証明しているといえるでしょう。
日本企業の事例
では、日本ではどのような取り組みがなされているのでしょうか。
日本企業の事例を以下にまとめました。
ヤンマー:無人ヘリによるベストな追肥
ヤンマーは、農家の労力を軽減し、栽培における管理や作業の見える化することを推進しています。
そこでリモートセンシングと無人ヘリを組み合わせて、ベストな追肥を可能にしました。
簡単に説明すると、
・ドローンで農場を撮影
・撮影したデータをもとに、実際に作物に触らずに追肥の有無を分析
・分析してできたマッピングデータを無人ヘリに読み込ませる
・そのデータに基づいて、設計された量の肥料を正確に散布する
という仕組みです。
その結果、「管理作業が大幅軽減」「コスト削減と生育の安定を実現」「次年度の土壌改善に活用」という大きな成果が得られました。
まさに、アグリテックで作業の効率化と環境保護を実現させた事例といえます。
参照元:トンポプラス11号|ヤンマー
みどりモニタ:水田や畑のモニタリングシステム
みどりモニタは、いつでも・どこでも・誰でも簡単にはじめられる農業ITを開発しました。
自動的に水田や畑の環境を計測・記録し、そのデータを離れた場所からいつでも確認できます。
この機能があれば、「一人で複数の生産地を管理すること」「遠隔管理」「労働の省力化」が実現可能です。
栽培に必要なデータを見える化することで、農家の働き方改善や収入アップに大きく貢献しているといえるのではないでしょうか。
参照元:みどりクラウド|みどりモニタ
まとめ
アグリテックとは、農業と先端技術をかけ合わせたものです。
ロボット技術やICTなどの最新技術を活用して、省エネで高品質な生産を叶える農業を目指していることが明らかになりました。
日本だけでなく世界でも、農家の人手不足の解消や安定した食料確保が深刻な問題になっています。
持続可能な食料生産を実現させるためには、アグリテックが必要と感じた方も多いのではないでしょうか。
世界中で食料の不作や物価上昇が起こっている今だからこそ、アグリテックの価値を知ることが非常に大切です。
消費者として、アグリテックを活用した作物を買うこともサポートにつながります。
私もスマート農業で作られたお米があることを知ってから、積極的にスマート米を買うようにしました。
食の選択肢が広がったことで、楽しさも感じています。
これから先も美味しい食事を楽しむために、アグリテックはますます注目される存在になるのではないでしょうか。