日本といえば、蛇口をひねれば綺麗な水が出て、どこの家庭でも自由に水が飲めるため、水不足と縁遠いイメージがあります。
確かに、日本は、アフリカやアジアの水不足に悩まされている国々と比べると、大変恵まれた国です。
しかし、日本でも将来的に水不足になる可能性があるといわれています。
にわかに信じがたい話ではありますが、なぜ日本にも水不足が広がりつつあるのでしょうか。こちらの記事では、日本で考えられる水不足の原因とその対策について解説します。
日本の水資源について
国土交通省による「日本の水資源の現状・課題」によると、日本の水道普及率は97%を超えているといいます。
また、日本の降水量は約6,400億㎥で、36%は蒸発散しますが、残りの約4,100億㎥は利用可能です。
この降水量は世界的に見ても非常に多く、「水が豊かな国日本」の所以といえるでしょう。
日本でも水不足が起こりうる原因とは
非常に水が豊富な日本ですが、実は水不足が発生する可能性があります。
主な理由としてあげられるのが「地形」「水の使用量」「降雨量」の3点です。
それぞれの理由について、具体的に解説していきます。
地形による日本の水不足
日本は大陸の国々と比べて土地が狭いことから、河川が急勾配になっており距離も短いといった特徴があります。
そのため、いくら沢山の雨が降っても海へと流れ出てしまうため、簡単には淡水の確保ができません。
1994年には、こうした地形の理由から全国的な渇水が起こりました。
いわゆる「平成6年渇水」です。
J-STAGE(科学技術情報発信・流通総合システム)の情報によると、当時の梅雨明けは異常に早かったといいます。
また、太平洋高気圧の威力が強く、猛烈な暑さが続きました。
さらに、前年が暖冬だった上に、梅雨時期の少雨も重なって水不足に拍車をかけます。
結果的に、福岡市では断水期間が295日も続く事態となったり、琵琶湖の水位が観測史上最低値の123cmを叩き出したりと、全国各地で深刻な被害を被りました。
参照元:「平成6年渇水の全国的な状況」|J-STAGE(科学技術情報発信・流通総合システム)
水使用量による日本の水不足
環境省の資料によると、日本の年間平均降水量は1,718mmです。
降水量だけで見ると、世界平均の2倍と言われています。
しかし、国の面積に対して人口が多いことから、一人当たりに換算すると世界平均の1/4程度になるため、意外と水が足りないことがわかるでしょう。
それに対して、日本人が使う生活用水は、世界平均の倍以上となっています。
一般的に人が暮らすのに必要な水の量は、最低1日100ℓです。
しかし、日本人は一人当たり200ℓの水を利用しており、無駄な消費があることが見えてきます。
一方、世界を見てみれば、多くの国の人たちが、一日20リットルにも満たない水で生きているのです。
参照元:環境省
降雨量による日本の水不足
世界的な温暖化に伴い、日本でも平均気温が年々上昇しています。
そのため、降雨量もこれまでのバランスが保てなくなっているのが現状です。
環境省の資料によると、日本の平均気温の上昇率は100年に1.15℃の割合で、世界平均よりも上回っています。
こうした気候の変化から、日本でもゲリラ豪雨や大雨による被害が絶えません。
短期集中型の雨が増える一方で、雨が降らない日数も延びているのが現状です。
このように、たくさん雨が降る時期は災害レベルの事態に陥り、日照りが続き取水制限に至るといった状況になっています。
従来の降雨量から大きく変化したことにより、夏や冬の渇水が増えており、安定的な水の利用が困難です。
参照元:環境省
日本の水不足に対する取り組み
日本でも水問題は多岐にわたり、将来的には水不足が深刻化することが予想されます。
そのため、日本でも水不足や水問題に対する取り組みが急務です。
日本の多くの企業は、水問題を解決するための技術を磨き、取り組んでいます。
また、日本の先進的な技術は、世界各国から期待を寄せられている状況です。
続いては、日本の企業が手がけている水不足に対する取り組みについて解説します。
東レ株式会社による海水淡水化
合成繊維や合成樹脂などの大手化学企業である東レ株式会社では、7割を占める海水から飲料水を作る装置を完成させました。
これまで、海水淡水化は、海水を蒸発させる方法で行われるのが一般的でした。
しかし、蒸発させるために使うエネルギーが膨大であり、環境破壊にもつながります。
東レ株式会社の技術は、海水を蒸発させることなく淡水化させる地球に優しい技術です。
ROと呼ばれる逆浸透膜を使って塩素イオンを除去するもので、インドネシアやパプアニューギニアなどでも、海水淡水化の設計・製作に携わっています。
参照元:東レ株式会社
日本コカ・コーラ株式会社による水資源保護活動
大手飲料メーカーである日本コカ・コーラ株式会社では、公益財団法人コカ・コーラ教育・環境財団を通じて、自社の商品である「い・ろ・は・す」の売り上げの一部を寄付しています。
寄付先は、日本各地にある水資源の保全を手がける自治体やNPO法人です。
このプロジェクトを「いろはすの森活」といいます。
2020年度は、対象となる22団体に対して支援を行いました。
参照元:日本コカ・コーラ株式会社
TOTO株式会社の水環境基金
トイレやユニットバスなど水回り製品の製造販売を手がけるメーカーTOTO株式会社は、SDGsの取り組みとして、2005年より『TOTO水環境基金』を設立しています。
日本国内で水問題に取り組む団体に助成をしており、2020年度までの助成総額は3億6431万円です。
日本だけではなく、海外でもトイレの設置や修理、井戸再生などといった取り組みを行っています。
参照元:TOTO株式会社
個人でできる取り組み
水不足に関する取り組みは、個人でも十分可能です。
一人一人が日常的に行う小さな行動が、将来的な水不足を防ぐといっても過言ではありません。
続いては、誰でも取り組める対策について解説します。
節水を意識する
小さなことのように思えますが、家庭での節水も大切な対策方法です。
実際、蛇口から排水される水の量は、毎分11〜13ℓといわれています。
歯磨き中に水を出しっ放しにしたりシャワーを長く浴び続けるという人も多いでしょう。
水の使い方について、日常的に意識するだけで水資源は随分節約されます。
油を拭き取ってから洗う
油がべったりとついた皿を洗う際には、たくさんの水を使う必要があります。
また、油をそのまま排水口に流してしまうと、水質汚染や海の生態系の破壊にも影響するでしょう。
こうした問題を起こさないためにも、紙で油を拭き取ってから洗うことが欠かせません。
ちょっとした一手間で、水の節約に繋がります。
温暖化対策を意識する
水不足は、温暖化と切っても切れない関係にあります。
そのため、節水と合わせて温暖化対策も欠かせません。
例えば、冷暖房を冷やしすぎたり温めすぎたりしないことも大切です。
また車に乗る場合は、アイドリングストップも温暖化対策になるでしょう。
こうした小さな行動の積み重ねが、水不足対策に繋がります。
まとめ
SDGsの目標6は「安全な水とトイレを世界中に」です。
水が豊富な日本に暮らしていると、水不足をはじめとする水問題に意識がいかない人も少なくありません。
しかし、日本でも水不足は起こり得ることです。
蛇口をひねればすぐに水が出てくる日本ですが、無限にあるものではありません。
このままの状態で無駄遣いを続ければ、すぐにでも危機的状況に陥る可能性はあるでしょう。
実際、降水量が少ない時期には節水制限がかけられることもあります。
人間にとって欠かせない水が、これからも安心して使えるように、一人一人が水不足について意識することが大切です。