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シンガポールが抱える水問題とは?原因と対策を解説!

水に関する問題は、世界中で抱えている問題です。しかし内容は、国や地域によって大きく変わります。

その具体的な内容によって、行われるべき対策や私たちの行動も変わってきますよね?そこで今回は、シンガポールが抱えている水問題について解説します

シンガポールと聞くと、ゴミの落ちていない綺麗な街であることや、高層ビルが立ち並び先進的な国であることを想像する人が多いと思います。そんなシンガポールで、どのような水の問題が起きているのでしょうか?

シンガポールの「水不足」が起こす 2つの水問題

シンガポールの「水不足」が起こす 2つの水問題

シンガポールの水問題の根本となっているのは、「水資源の不足」です
国内には国民の生活をまかなえるほどの潤沢な水資源がなく、マレーシアからの輸入と国内の限られた水資源の活用で水源を確保しています。

この水源確保の方法に関連し、シンガポールは2つの問題を抱えています。それぞれ詳しく見て行きましょう。

マレーシアから輸入する水の 価格高騰の懸念

1962年、シンガポールはマレーシアから水を販売してもらう契約を結びました。販売予定期間はなんと、99年間におよびます。
現在ではシンガポールで利用する水の半分以上を、マレーシアからの輸入に頼っています。

しかし、1,000ガロン(約3785.41リットル)あたり1円未満での契約締結となっており、マレーシアからは2018年、2020年に値上げの打診を受けています

打診に対しシンガポールは、送水施設の建設費用や維持費をシンガポール側が負担していること、上水の一部をマレーシアに再販していることを理由に応じていません。

今後マレーシアの政権交代をきっかけに、再び値上げの打診をされるのではと不安視しています。

さらにシンガポールにとっては、法外な値段を設定されることや断水されること、そして2061年の契約満了後に契約更新を拒否されることがもっとも恐れている問題となります。

自国内の水質汚濁

恒常的な水不足に悩むシンガポールにとって、国内にある限られた水資源は特に大切に扱うべきものです。しかし、水質汚濁によってそれが叶わない状況となっています。

シンガポールは日本と同じように国土が狭く、天然資源が少ないことから、経済発展のために産業誘致を率先しておこなってきました。

その結果、現在のような先進的な国へと発展を遂げた一方で、廃水や廃棄物による水質汚濁の問題が起こり、貴重な水源を活用できないという問題を抱えています

シンガポールで水問題が起きる原因

シンガポールで水問題が起きる原因

シンガポールの水資源不足の原因は、雨が降っても水を貯蓄できない地形です
年間の降水量は日本より多いものの、高低差の少ない地形によって、降った雨を貯めておくことができません。

わずかに貯水池はあるものの、国民の生活をまかなうには到底足りず、マレーシアからの輸入に頼らざるを得ない状況となっています

そこで気候変動や国際情勢による影響に対処できるよう、水の自給自足を目指して廃水を再利用したり厳しい水質基準を設けたりと対応をしています。

シンガポールがおこなう 水問題解決のための5つの対策

シンガポールがおこなう 水問題解決のための5つの対策

1972年にシンガポール政府内に「環境水資源省」が設置され、現在多くの水関連企業や研究所が存在することからも、国内の水対策の優先度や関心が高いことがわかります。

現在では、5つの柱を中心に水問題の対策にあたっています。

1. 大型国内貯水池の建設

シンガポールの年間降水量は、日本の2倍近くとなる年もあります。それだけの貴重な水源をムダにしないよう必要となるのが、貯水池です。

そこで、2008年にマリーナ運河河口に「マリーナバラージ」が建設されました。

河口に長さ約350mの「堰(せき)」と呼ばれるゲートのようなものを設けて海と仕切り、水を確保することでその集水域は10,000ヘクタールにも及びます。

海と仕切ったダム施設であることから、満潮時の海水の排水方法や海水を淡水化する技術などが求められましたが、それらをクリアし、現在に至っています。

また、貯水面ではウォータースポーツを楽しめるなど、レジャー施設としての側面も持ち、オンフラ設備だけにとどまらず大きな社会的役割を担っています。

2. 再生廃水「NEWater」の利用

「NEWater(ニューウォーター)」とは家庭排水を下水処理したあと、さらに高度な精製技術でろ過・殺菌処理をした水のブランド名です。

人が飲料水として飲めるほど高品質で、国内の他の水源よりもクリーンであると言われています。

半導体工場をはじめとする工業用水としても使われていて、今後2030年には国内需要の50%、2060年には55%を「NEWater」でまかなえるよう目標が掲げられています。

シンガポールはこの高度な技術によって、これまで廃水として処理していた水を新たな水源として確保できるようになりました。

3. 海水淡水化

島国シンガポールにとって、河川を水源として利用することは長年考えてきたことです。

しかし、海水は多くの塩分を含んでいるため、塩分を抜いて淡水化してからでないと利用ができません

そのため、コストやエネルギー消費のバランスを踏まえ、非現実的な技術であると言われてきました。

ところが、長年にわたる研究開発や技術進歩によって、2005年に初めて海水を淡水化するプラントが稼働し淡水化に成功

四方を河川に囲まれているシンガポールにとって、水源確保のための大きな一歩となりました。

2002年8月に発表された「Singapore Green Plan 2012」では、2060年には国内における水需要の25%以上を淡水化した海水でまかなうことを目指すとしています。

4. 排水規制の厳格化

水源の確保はできたものの、その水質も重要です。貴重な水源を汚さないよう、排水の水質基準も厳しい管理がおこなわれています

具体的には、これまでシンガポールでは生活排水、産業排水いずれも下水道で処理されていました。

しかしそのことが水質汚濁の原因となっていたため、下水道施設の拡充や改善がおこなわれてきました。

さらに、水質汚濁の原因となる産業排水については、シンガポール環境庁の公害管理部による規制が徹底されています。

たとえば、下水道施設や自然環境に悪影響となる「酸性排水」の懸念がある工場に対し、排水口に pHメーターとそれに連動する排水の遮断装置の設置を義務づけています。

また、下水道が未整備である地域に工場を建てる場合には、下水道に排水を流す場合よりさらに厳しい排水規制が適用されるなど、排水に対してもしっかりと管理される仕組みが構築されています。

5. 「節水」に関する取り組み

これまでの技術革新によって、使える水を増やすことができています。並行して、節水によって使う水を減らす取り組みが行われています

具体的には、2006年に「10L(リットル)チャレンジ」と呼ばれる取り組みがおこなわれました。これは、家庭用水において1日あたり10Lまで使用量を抑えることを目標とした取り組みです。

同様に、2008年には企業を対象とした「10%チャレンジ」がおこなわれました。各施設・企業の水の使用量を10%削減する取り組みや、効率よく水を利用する施設に対して補助金を交付する取り組みが行われました。

そうした取り組みを一過性にしないため、家庭用水については1か月あたりの水使用量に比例して、料金単価と水保全税率が高くなるような料金体系にしています。

シンガポールの水問題解決のための日本の取り組み

シンガポールの水問題解決のための日本の取り組み

日本の環境省は、2014年3月にシンガポール共和国環境庁との間で「環境協力に関する同意書」を締結しました。この締結により、環境改善に向けた協力関係を深めてきました。

しかし、パリ協定の実施やSDGs達成に向けて関係をより強固にするため、2017年6月には協力内容に気候変動対策、水質管理等を追加し、新たに協力覚書を締結し、環境活動に対する情報交換や知見の共有がおこなわれています。

そのほか、日本企業が独自の水処理システム構築をおこなうなど、企業間においても国際協力をしています

ただ、客観的に見ると日本も必要な水の多くを他国に負担してもらっているという現状があり、シンガポールの技術を学び、両国で切磋琢磨していく必要があります。

水問題で得た技術によって水技術の先進国へ

水問題で得た技術によって 水技術の先進国へ

シンガポールは長年にわたり水問題に悩み、その悩みを克服するための技術革新によって関連分野で大きく成長しています。

現在でも、国内外の水に関連する企業を誘致し、実務担当者向けの研修を実施したり研究開発機関が入居する施設を設置するなど、力を注いでいます

いまではその先進的な技術を中東諸国に指導したり販売したりすることで、同じように水に関する悩みを抱える国を支援しています。
世界的に持続可能な社会を目指すうえで、今後、シンガポールが持つ排水の高い浄化技術に、今後、より高い期待と注目が集まるでしょう。

 

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