近年ではSDGsが世界中に広がり、各国でさまざまな対策が取られています。
今回は、土壌汚染の現状や取られている対策を細かく解説。
汚染された土壌をクリーンにする方法や持続可能な産業について一緒に学べます。
地球にきれいな土地があってはじめて、私たちの生活が成り立っていると再認識しましょう。
政府や企業に任せるだけでなく、私たちも土の豊かさを守るために行動するのが重要です。
地球に優しい買い物の仕方も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
福島の放射性物質による土壌汚染と現状
2011年3月11日に東日本大震災が発生し、岩手や宮城、福島などに大きな津波がきました。
このときに起きた「東京電力福島第一原子力発電所」の事故で、国は避難指示を出しています。
放出された放射性物質は地上に降り積り、土壌汚染が引き起こされました。
放射線物質から人々の身を守るために、国は「土地の除染」や「廃棄物の処理」を開始。
「放射線セシウム」は粘土鉱物に付きやすく、水に溶けにくい性質があるため、まずは除去や遮へいをして汚染された土を人から遠ざけていきました。
段階を踏んで解除されている場所もありますが、今もまだ「帰還困難区域」に指定されている場所があります。
現在は中間貯蔵に力を入れている
「中間貯蔵施設」とは、除去した土壌や放射線廃棄物などを管理している場所です。
福島第一原子力発電所の近くに位置している大熊町や双葉町に設立しました。
広さはおよそ1,600ha。
貯蔵は下記の順序で行われています。
・仮置場から運ばれてきた除去土壌は、まず分別と測定をする
・大型のふるい機で、袋や草木、根などの異物を取り除く
・分別した土壌の重量を測定し、 ダンプトラックまたはベルトコンベアで貯蔵施設に運ぶ
・分別した土壌を蔵施設に入れ、重機を使って敷きならしてから締め固める
・貯蔵が完了したら、遮水シートで土壌を覆う
・環境モニタリングを利用して、安全に管理できているか常にチェックする
汚染された土の再利用も目指している
現在は、除去した土壌の再生利用を目的とした実験も行われています。
例えば、南相馬市小高区東部仮置場では、盛土の安全性を調査中です。
飯舘村長泥地区の盛土実証ヤードでは、花や野菜などの栽培実験を始めました。
ちなみに、作物の放射性セシウム濃度は「検出下限値未満」を維持しています。
さらには、汚染された土壌の「分級処理システム」も開発されました。
分級処理システムを利用して、放射性セシウム濃度の低い礫や砂を取り出せるようになっています。
「ガン村」と名付けられた中国の現状
「ガン村」という言葉には、明確な定義はありません。
しかし、中国の汚染問題の深刻さを伝えるために、メディアでは使用されています。
中国政府はガン村については明言していませんが、有害な化学製品が乱用されている実態を認めました。
既に生態系に悪影響を及ぼしているとも発言しています。
2014年に実施された全国調査によると、中国の土地の約16%が肥料や殺虫剤、重金属、プラスチックなどによって汚染されていました。
政府は罰則を重くして対応している
2015年1月1日から環境分野で最上位の法律である「環境保護法」が改正されました。
罰則規定が厳しく強化されていて、最高限度額が決められていません。
汚染物質の違法排出は、日割りで細かく計算。
化学物質を隠して排出したり、監視測定データを改ざんしたりすると、刑事責任を問われる場合があります。
また、環境保護部は「中国全国土壌汚染状況調査公報」を公表。
2016年3月時点では「土壌環境保護と汚染対策行動計画」も進められていて、「土壌汚染防止法」も制定に向けて動いています。
上記のように法律を厳しくしたため、1300社以上の重金属企業が2016年以降に閉鎖されました。
参照元:
・中国における環境汚染の現状と対策、環境対策技術ニーズ|環境省
・環境汚染が原因の「がん村」、中国当局が存在認める|AFP BB News
・中国、16年以降1300社以上の重金属企業を閉鎖 土壌汚染対策で|ロイター
現代では「リジェネラティブ農業」が増えている
「リジェネラティブ農業」とは環境に優しい農法を意味していて、明確な決まりはありません。
「環境再生型農業」とも呼ばれています。
化学肥料や農薬を使用すると生産性は向上しますが、土壌へのダメージは避けられません。
地表で生息している生き物にもデメリットが生じてしまいます。
食の豊かさも大事ですが、自然の豊かさはもっと大切です。
近年では「不耕起栽培」のように、自然に近い状態で作物を育てている農家もあります。
生産量に囚われるのではなく、土に優しい農法を意識する企業が増えるといいですね。
参照元:リジェネラティブ農業とは? 世界で注目されている農法を事例と共に紹介|SMART AGRI
土壌汚染を防ぐために私たちができることは?
企業だけでなく、消費者も土壌を守るためのアクションが必要です。
消費者の行動次第で、企業方針が変わる可能性もありますよ。
商品を購入するときは、「JASマーク」があるものを選んでみるのがおすすめです。
「有機JASマーク」は、太陽と雨が植物を育むことを表現しています。
有機JASマークは「登録認定機関」から認定されているものしか使用してはいけません。
有機JASマークがないのにも関わらず、食品に「有機」や「オーガニック」と表示するのもNGです。
有機農産物の生産農家や有機加工食品の製造業者のみが、有機JASマークの使用を許可されています。
有機食品の生産方法は、主に以下のような流れです。
・収穫後に残った葉を家畜の餌にする
・家畜のふんから堆肥が作られる
・その堆肥でまた作物を育てる
最近では土壌を汚さない取り組みが増えている
福島第一原子力発電所の事故のように、土壌汚染の対策は長期にわたって続きます。
災害をきっかけに土壌汚染が起こってしまう場合もあるため、あらゆるリスクを考慮しなくてはいけません。
土壌から有害物質が見つかってから行動するのでは遅く、最初から排出量を減らしておくのが重要です。
消費者は日頃の買い物でJASマークの商品を選択するように意識してみてください。
持続可能な方法で、みんなの土をみんなで守っていきましょう。