「二酸化炭素を減らす」という背景には、気温上昇を1.5℃に抑えるという目標があります。
このまま二酸化炭素を含む温室効果ガスが増え続けると、地球温暖化が進み、今世紀末には、全世界の平均気温が約4.8℃あがると発表されています。
この気温上昇を1.5℃に抑える目標は、全世界で取り組みが強化されているなか、日本ではどのような取り組みをしているのでしょうか?
この記事では、日本が排出している二酸化炭素の排出量や企業の脱炭素に対する取り組み、そして私たち個人ができることなどについてご紹介します。
日本の二酸化炭素排出量は世界で5番目の多さ
2018年のデータによると、二酸化炭素排出量ランキングは、
1位 中華人民共和国 95億3000万トン
2位 アメリカ合衆国 49億2000万トン
3位 インド 23億1000万トン
4位 ロシア 15億9000万トン
5位 日本 10億8000万トン
となっています。
上位には開発途上国も含まれており、中国やインドの二酸化炭素の排出量の増加はめざましく、今後も人口の増加と経済の発展により二酸化炭素の排出量が増加すると見込まれています。
また、アフリカ全体での二酸化炭素の排出量も増えています。
加えて、日本の二酸化炭素排出量は全世界で5番目という量の多さです。
世界各国が温暖化対策に取り組んでいく中でも、先進国の責任として、率先して二酸化炭素の排出量の削減に取り組まければならない状況です。
参考元:IEA「CO2 EMISSIONS FROM FUEL COMBUSTION」 2020 EDITIONを元に環境省作成資料
日本の二酸化炭素排出量の内訳
日本の二酸化炭素排出量は、産業別に分けて考えると、エネルギー産業、製造業、運輸業、商業・家庭などが主要な排出源となっています。特に、エネルギー産業と製造業が全体の約70%を占めており、これらの分野での排出削減が重要となります。
さらに、運輸業や商業・家庭部門も二酸化炭素排出量の大きな割合を占めているため、これらの部門でもエネルギー効率の向上や再生可能エネルギーの導入など、排出削減に向けた取り組みが求められています。
エネルギー源別に見ると、石炭、石油、ガスが主な排出源となっています。石炭は二酸化炭素排出量が最も多く、石油も大きな割合を占めています。これらのエネルギー源からの排出削減が求められており、石炭火力発電所の減少や再生可能エネルギーの導入などが検討されています。
さらに、ガスも二酸化炭素排出量に大きく寄与しており、低炭素化や省エネルギー技術の普及が重要です。特に、天然ガスを用いた発電は、石炭や石油に比べて二酸化炭素排出量が少ないため、エネルギーミックスの一環として期待されています。
地域別では、都市部や工業地帯での排出量が多くなっています。大都市圏や工業地帯では、人口が多く工場が集まっているため、二酸化炭素の排出量が多くなります。
日本政府の二酸化炭素削減目標と政策
日本政府は地球温暖化の影響を最小限に抑えることが目指し、二酸化炭素排出量の削減に向けて、国際的な取り組みや国内政策を通じて様々な施策を実施しています。
国際的な取り組み(パリ協定など)
日本は、国際社会と連携して地球温暖化対策に取り組むため、パリ協定に参加しています。パリ協定は、地球の平均気温上昇を2℃以下に抑えることを目標とした国際的な協定で、各国が自主的に目標を設定し、努力を進めます。日本は、2030年までに二酸化炭素排出量を2013年比で26%削減することを目標としており、国内外でさまざまな施策を展開しています。
再生可能エネルギーの推進
環境負荷の低い再生可能エネルギーは、持続可能な社会を実現するための重要な要素です。日本政府は、太陽光、風力、バイオマス、地熱などの再生可能エネルギーの普及を促進するため、固定価格買い取り制度や補助金制度を導入しています。これらの政策により、再生可能エネルギーの導入が加速され、総エネルギー消費の割合も増加しています。
エネルギー効率の向上
エネルギー効率の向上は、二酸化炭素排出量の削減に大きく寄与する重要な要素です。このため、日本政府は家庭や企業のエネルギー消費量を削減する省エネルギー対策を推進しています。具体的には、環境に配慮した省エネルギー製品の普及を促進し、省エネルギー基準の強化を進めることで、エネルギー使用量の低減と二酸化炭素排出量の削減が期待されています。
地球温暖化対策の一環として、2015年に採択されたパリ協定において、日本は2050年までに温室効果ガス排出をゼロにするカーボンニュートラルを目指すことを目標に掲げています。この中長期的な目標に向けて、2030年までに二酸化炭素排出を2013年比でマイナス46%(さらに50%に向けて挑戦を続ける)とすることを、2020年10月に表明しています。
この政府の目標に伴い、企業でもさまざまな環境対策が行われるようになりました。では、なぜ企業がこうした取り組みに積極的になるようになったのでしょうか。それは、環境問題への認識の高まりや国際的な取り組みの影響、そして環境対策が企業の競争力や社会的評価にもつながることを理解しているからです。
企業が二酸化炭素削減に取り組む理由
二酸化炭素排出量の全体において、企業が占める割合は80%にも達しています。エシカル消費やサスティナブルな取り組みが社会に浸透している今、二酸化炭素排出量の削減は、環境保護だけでなく、企業のイメージ向上にもつながる要素となっています。
消費者は、企業が環境に配慮しているかや、環境に配慮した商品を提供しているかといった視点を重視しています。さらに、ESG投資という投資家の投資基準も存在し、企業の収益力だけでなく、環境への配慮、社会貢献、従業員福祉といった企業の取り組みが重要視されるようになりました。
このような背景から、企業のイメージ向上を目的として、二酸化炭素排出量削減に取り組むことが重要な課題となっています。このため、多くの企業が積極的に環境に配慮する取り組みを開始しています。
次に、日本の企業が実施している環境対策や私たちが日常生活で取り入れられる方法についてご紹介します。
日本の企業の取り組み
日本の企業は、それぞれどのような取り組みをしているのでしょうか。ここでは、いくつかの企業の取り組みをご紹介いたします。
積水ハウス
1960年に設立された積水ハウスグループは世界のNo.1の建築戸数を誇るハウスメーカーです。
業界に先駆けて、1999年に「環境未来計画」を発表し、人にも環境にもやさしい住宅つくりに取り組んでいます。
2002年には工場生産段階で発生する廃棄物を全量リサイクルし、「工場ゼロミッション」を達成、2008年には業界初の「エコ・ファースト企業」として環境省から認定を受けました。
また、2017年に日本で2社目に「RE100」に加盟しています。
二酸化炭素削減のための取り組みのひとつが「グリーンファースト」です。グリーンファーストの特徴は、快適性・経済性・環境性です。
高い断熱性で国の省エネ基準より断熱性を30%高めた使用になっています。
断熱性が高いことで、冷暖房にかかるエネルギーを大幅に削減できます。
また、太陽光発電を備えることで、自家発電しクリーンエネルギーとして使用することができます。
加えて、自然災害時に「太陽電池」「燃料電池」「蓄電池」が使用できる「グリーンファースト ゼロ+R」では、停電が複数日続いても普通に近い暮らしが可能になります。
さらに、オーナーとともに二酸化炭素削減に取り組む「積水ハウスオーナーでんき」という、サービスを2019年にスタートしています。
余力電力をオーナーより買い取り、事業用電力として使用するものです。
この取り組みより、「令和2年新エネ大賞」で「資源エネルギー庁長官賞」を受賞しています
コニカミノルタ
コニカミノルタは創業1873年にカメラ・写真用フィルムの製造から、工学分野や画像分野など多彩な技術を活用し、さまざまな分野の事業を展開している会社です。
コニカミノルタでは、2019年に、再生可能エネルギー100%で事業運営を目指す「RE100」に加盟し、目標としていたカーボンマイナスの実現を2050年から2030年に前倒しして達成すると発表しました。
中国、広東省にあるコニカミノルタビジネステクノロジーズでは、工場内のエネルギー負荷の高いクリーンルームの見直しにより、大幅な省エネを実現しています。
具体的内容として、
- 製品仕様範囲内での温湿度条件の見直し
- 休日の空調稼働停止
- クリーン度を維持しながらの換気頻度の最適化
- タイマー設置によるクリーンルーム設備の稼働時間の削減
- レイアウトの見直しによる面積の削減
などで、冷熱源設備や送風設備でのエネルギーを削減を実現しました。
また、工場の屋根に太陽光発電設備を設置し、再生可能エネルギーの利用により、2019年から100%が再生可能エネルギーとなりました。
また、トナー生産工程の廃熱の利用方法や蒸気配管からの放熱ロスの抑制、低温水の廃熱も熱交換により接触的に」有効活用するなど大幅な省エネを実現しています。
参照元:気候変動への対応|コニカミノルタ
佐川急便
佐川急便は宅配便事業を中心に、物流とその周辺の事業を展開する会社です。
環境に配慮した輸配送
佐川急便では1990年代から脱炭素社会の実現に向け、「環境対応車」を導入しています。
「環境対応車」とは、従来のガソリン車などに比べ排気ガスに含まれる大気汚染物質や温室効果ガスの排出が小さい車のことです。
導入数は7年の間に2倍を超えています。
また、トラックによる二酸化炭素の排出を減らすために、トラックによる長距離貨物輸送を、列車や船の輸送に切り替えるモダールシフトを推進。
日本貨物鉄道と共同開発した電車型特急コンテナ列車スーパーレールカーゴを使用することで、トラックと比較して二酸化炭素の排出を11分の1に抑えています。
さらに、佐川急便では各地にサービスセンターを設置することで台車や自転車などを使った集配で二酸化炭素の排出の抑制に貢献しています。
環境型物流施設
物流施設では、太陽光発電を設置し、1年間で一般家庭約51,000世帯1日分の消費電力を発電、営業所や大型物流施設308か所にLED照明を導入し、二酸化炭素の排出を削減しています。
参照元:環境への取り組み|佐川急便
また、以下のサイトでは脱炭素に向けて取り組みを進めている企業が掲載されています。
参考までにご覧になってみてください。
参照元:脱炭素経営の状況|環境省
日常でわたしたちが二酸化炭素を減らすためにできること
二酸化炭素が排出されるのは、企業からだけではなく家庭からも14.4%排出されています。
わたしたちが日常でできることをご紹介します。
家の中で省エネルギーで暮らす
・人のいない部屋の電気は消し、ひとつの部屋でみんなで過ごす
・エアコンの設定温度を冷房は「1度高く」、暖房は「1度低く」を意識する
・食器を洗う時の設定温度を見直し温度を低くする
・炊飯器の保温をやめて、冷凍し、レンジで解凍する
・お風呂のとき、シャワーの使用時間を短くする
・風呂の残り湯で洗濯して、節水する
・長時間使わない電化製品のコンセントは抜いておく
ゴミを減らす
・食材は食べきれる分だけ買い、食品ロスを出さない工夫をする
・マイボトル、マイバッグを習慣にする
・買ったものは大切にし、長く使う
その他
・出かけるときや買い物は、自家用車より電車やバスを利用、または自転車や徒歩で
・アイドリングはやめて、エコドライブを
・地元で作られた食材を買う
・省エネ家電に買い替える
参照元:COOL CHOICE|環境庁
まとめ
日本の二酸化炭素排出量は、産業別やエネルギー源別、地域別に見るとさまざまな特徴があります。日本政府は、国際的な取り組みや再生可能エネルギーの推進、エネルギー効率の向上などの政策を進めています。
企業も環境への配慮や技術革新を通じて、二酸化炭素排出量削減に取り組んでいます。また、個人がエコライフを実践し、エコ商品を選ぶことも重要です。これらの取り組みを通じて、日本の二酸化炭素排出量削減が進められることを期待しています。