SDGsが広く浸透しつつある昨今、注目を集めているのが「地域循環共生圏」という考え方です。
これからの地球が住みよい状態になるためには、各エリアがそれぞれに保有する自然や様々な資源をいかに循環させていくかが課題となっています。
地域循環共生圏は、こうした課題を解決するために欠かせない考え方であり、今一度重きを置く必要があるでしょう。
今回は、地域循環共生圏について概要を解説するとともに、具体的な事例を紹介していきます。
地域循環共生圏とは
地域循環共生圏は、2018年4月に閣議決定された第五次環境基本計画において提唱された考え方です。
各エリアにある美しい自然景観を含む地域の資源を最大に活かした上で、自立型・分散型の社会を作り上げ、エリアによって異なる特性を踏まえて資源を補い合うことにより、地域が持つパワーを最大限に発揮することを目的としています。
里山や漁村、農村に限らず、都市にも活用すべき自然はあり、日本全体の底力を最大限に発揮する構想といっても過言ではありません。
また、SDGsで掲げられた目標を実現するためにも欠かせない考え方といえます。
参照元:地域循環共生圏|環境省
地域循環共生圏の必要性
国連において、2015年にSDGsが、2016年にはパリ協定が採択される中で、世界は変革の時代を迎えています。
当然、日本も国際社会の一員であり、世界各国と同じく、環境や社会、経済を変えていくための具体的な取り組みをしなくてはなりません。
特に、日本は都市部に人や経済が集まっており、地域経済は難題を抱えているのが現状です。
地方再生を進めるうえでも、地域循環共生圏は大きな役割を担います。
それぞれの地域持つ豊富な自然や資源をこれまで以上に活用できれば、地域経済も回り始めるでしょう。
環境省では、こうした目標を達成すべく、経済産業省・国土交通省との連携を図り、「脱炭素イノベーションによる地域循環共生圏構築事業」を進めています。
参照元:地球環境・国際環境協力|環境省
地域循環共生圏の取り組み例
環境省が地域循環共生圏を提唱して以来、各地で様々な取り組みが始まっています。
続いては、3つのエリアで行われている事業について詳しくみていきましょう。
うべ未来エネルギー株式会社(山口県宇部市)
山口県宇部市では、市の焼却場で行なっているバイオマス発電や地域における再生可能エネルギーなどを活用して、電力の地産地消を推進しています。
さらに、地域内で電力と資金を循環させる仕組みを作っていくことを目的とした、「うべ未来エネルギー会社」を設立しました。
出資者は、宇部市と商工会議所、金融機関、民間事業者で、事業収益を市民サービスに還元しています。
実際、2020年4月から公共施設への電力供給が始まっており、早速効果が発揮されているといえるでしょう。
真庭里海米(岡山県真庭市)
岡山県真庭市は、2018年の段階からSDGs未来都市に選定されています。
それだけ、恵まれた自然があり地域循環共生圏の取り組みも多く行われているエリアです。
農業分野における取り組みのひとつが、「真庭里海米」です。
真庭市を流れる旭川は、瀬戸内海に注ぐ河川であり、真庭里海米では瀬戸内海の牡蠣殻を活用しています。
つまり、里山で作る農作物の肥料を里海でカバーするという循環が実現しているのです。
そもそも、牡蠣殻は破棄をするのが困難で、有効活用を模索していました。
真庭里海米によって、課題がクリアされただけでなく、牡蠣殻を肥料にすることで米の収量が増えたり、稲の倒伏が防げたりといったメリットもあります。
エコタウン(福岡県北九州市)
北九州市では、1997年に「北九州エコタウン」を設立しました。
これは国内初のリサイクル拠点であり、地域循環共生圏が提唱される以前から課題に取り組んでいます。
2022年現在も活動は広がっており、日本でトップクラスの規模を誇るリサイクル拠点です。
北九州エコタウンの窓口として北九州エコタウンセンターが設けられており、地域循環共生圏はもちろん、次世代のエネルギーについても学べる設備が整っています。
参照元:北九州エコタウンセンターHP
おわせSEAモデル(三重県尾鷲市)
三重県尾鷲市では、中部電力の尾鷲三田火力発電所の跡地を活用した「おわせSEAモデル」という取り組みが行われています。
広大な敷地をフルに使い、新たなエネルギーと豊富な自然を生かした、産業・環境・市民サービスを融合した拠点です。
再生エネルギーの活用だけではなく、新たな雇用を生み出すといった社会面にも影響を与えています。
参照元:おわせSEAモデル
まとめ
地域循環共生圏は、この先日本がSDGsを達成し、脱炭素社会を実現するために欠かせない考え方です。
すでに各自治体で取り組みがスタートしており、身近に感じている人も多いでしょう。
美しい自然を大切に守りながら資源を有効活用することで、地域同士が協力を進められる素晴らしい目的をしっかりと念頭に置いて、地域ごとの特色を生かした取り組みが求められています。
人ごとではなく、自分が暮らすエリアを見渡してみましょう。
誰もが意識をすることで、思いもよらない活用方法が生まれるかもしれません。