シリア難民は、世界の難民の中でも最も数が多いと言われています。
なぜシリア難民はそれほど多くなったのか。
それは、長引くシリア国内の内戦が原因です。
シリア国内の内戦は、複雑な対立関係があり、簡単には解決しないでしょう。
そうした背景によって、シリア難民は多くなっており、様々な支援が必要とされています。
シリア難民の数は世界で最も多い
世界で紛争や迫害によって、移動を強いられた人は約8,240万人いると言われています。(2020年末時点)
その中でも、シリアを故郷に持つ難民の数は約1,160万人で、世界で最も多いです。
シリア国外に移動した難民数は、670万人にも上り、トルコやレバノンなど周辺諸国やドイツなどのヨーロッパまで、安住の地を求めて移動をしています。
難民として受け入れられても良い職につけないなど、難民として安全な地に住むことになっても問題は山積しているのが現状です。
国外だけではなく国内でも避難民が多い
シリア国外に避難する人以外に、国内で避難生活をしている人も大勢います。
このような国内で避難している人を「国内避難者」と呼びます。
危険な地域を避けるために、住み慣れた家から避難を強いられている国内避難者の数は、シリア国内に約660万人いるとして、国外に避難している難民とほぼ同数です。
シリア国内は、紛争による建物の破壊などでがれきが散乱し、生活がままならない環境が多いのも事実です。
安全に暮らすには、まだほど遠い環境と言えます。
国内にいるとしても物資が足りず、国外の難民と同じように十分な生活ができていない場合が多いです。
シリア難民が多い理由
国内避難者を除き、世界で難民とされている人数は約2,640万人いると言われていており、その中でもシリア難民が一番多いです。
シリア難民は、難民全体の約25%を占める割合でもあります。
なぜシリア難民は、こんなに多いのでしょうか。
それは国内の内戦が原因になっているからです。
複雑な関係が内戦を長引かせている
シリアはフランスの委任統治領でしたが、第二次世界大戦後の1946年に正式に独立しています。
そして1970年代から続くアサド一家による独裁政治が続いています。
そんな中、2011年にチュニジアやエジプトで起こった民主化運動「アラブの春」がシリアにも及んできました。
アラブの春は、民主化のために複数の国で政権交代が起こしていたこともあり、長く続くアサド政権による独裁政治に抗議する活動が、シリア国内で活発になっていきます。
やがてシリア国軍と反対勢力の武力衝突が起こり、内戦が始まっていくのです。
シリア内戦には、外国勢力も加勢していきます。
元々シリアと友好的だったロシアと中国は、シリア政府への支援をし、反対勢力組織にはアメリカやサウジアラビアなどが支援をし始めました。
また、反対勢力が分派したり、宗教間の対立があったり、そして過激派のイスラム国が介入してきたりなど、複雑な対立関係ができてきてしまいました。
シリア内戦が長引いているのは、こうしたいろいろな勢力の複雑な関係が原因です。
シリアは今世紀最悪の人道危機が続いている
複雑な紛争関係が長引き、国内の破壊行為などがやまずに、シリア国内の治安はどんどん悪くなっています。
安全な地を求めて国外へ避難している難民は、トルコなど近隣諸国やドイツなどのヨーロッパ諸国へ入国し、保護されている人も多くいます。
しかし、他国に受け入れられても、職を得ることが難しい場合も多いようです。
また、他国に受け入れてもらえず、難民キャンプにとどまる人などは増加の一途をたどっており、十分な食糧を確保できないなど問題は山積みになっています。
シリアは、今世紀最悪の人道危機とも呼ばれるほど混乱しているのです。
衛生が悪く改善が必要
特に国内避難者に関しては、家屋が破壊されている場所も多いため、快適な生活環境を整えることが難しい場合が多くあります。
難民キャンプで安全が保障されている場所でも、水を好きなだけ使えるわけではなく、不衛生な環境で生活しなければならない現状もあります。
病気などを防ぐためにも、トイレや井戸の設置は、欠かせない支援です。
安定の就業に就くのが困難
難民として国を出た場合、まずは安全な地を求めますが、一定の場所にとどまるようになると働く必要が出てきます。
しかし、難民は働く場所がほとんどないのです。
ましてや他国になると、就業することはとても難しくなります。
難民キャンプでは、職業訓練などの自立支援も行っています。
工芸品を作って売ったり、自分たちで育てた野菜や果物などを売ったり、国際組織による支援だけではなく、自分たちで生活していけるように手に職を付けるのです。
教育を受けられない子どもが多い
教育を受けることは、将来職に就くためには重要です。
しかし、紛争に巻き込まれてしまうと、危険のあまり学校に行けなくなり、学校自体が攻撃を受けて授業が受けられなくなることも多いです。
難民キャンプでは、危険が過ぎ去った後に、子どもたちに読み書きができるように教育をする支援も行われています。
国際的な支援が必要
シリア難民は、世界でも一番数の多い難民で、シリア国内も内戦が続き危険が続いています。
シリア難民や国内避難者は、自力では生活していけない環境に置かれている場合が多いです。
全ての人が安心して暮らしていける社会を作るためにも、難民や国内避難者には国際的な支援が必要です。
実際に支援は行われていますが、この機会に自分でもできることを考えることも重要でしょう。
実際に現地へ行けなくても、支援のための寄付という行為もできます。
まとめ
シリアの内戦は、今世紀最悪の人道危機と言われるほど長期間続いていて、国民は避難を強いられています。
シリアの内戦は、政府側と反対勢力の単純な対立ではなく、過激派のイスラム国や宗教の対立など複雑な対立構造になり、すぐに解決する問題ではなくなっています。
シリア難民は、世界の難民の中でも最も数が多く、みな疲弊しています。
国際的な支援をはじめとする様々な支援を必要としているので、私たちにできることを考えてみると良いでしょう。