世界の飢餓が問題になっていることは、テレビ番組などの情報をからご存知の方も多いと思います。
しかしその中でも、アジアの飢餓の現状について熟知している方はあまり多くないかもしれません。
何日も食べることができず、気が遠のくような空腹感……。
アジアには、そんな深刻な状況に置かれている人々が大勢います。
また、決して他国だけの問題ではなく、現代の日本でも起きている問題です。
今回は、アジア全体の飢餓の現状と原因について詳しく解説していきます。
また、この問題について私たち一人ひとりに何ができるのか、解決策についても触れています。
飢餓について知ろう!
まず、飢餓とはどのようなことを言うのでしょうか?
2020年7月に国連は、世界人口の8.9%に当たる約6億9000万人が飢餓状態にあり、このままでは2030年までに8億4000万人を超えると警告しています。
また2019年に、何も口にすることができない日がある重度の食料不安を経験した人は7億5000万人に上ります。
栄養不良の人口が最も多いのはアジアで3億8100万人、次にアフリカで2億5000万人、中南米とカリブ諸国が4800万人です。
SDGsの目標2に「飢餓をゼロに」が示されていますが、飢餓と栄養不良の増加傾向は続いており、2030年までの飢餓ゼロの達成が危うい状況だと言われています。
さらに、現在世界最大の問題である新型コロナウイルス感染症による景気後退が進むと、SDGsの目標達成にも影響を及ぼしてしまいます。
飢餓の原因とは?
飢餓に陥ってしまう主な原因は、自然災害、紛争、慢性的貧困などです。
それぞれの原因がどのように飢餓を引き起こしていくのか以下にまとめました。
自然災害
自然災害(地震・津波・洪水・干ばつなど)が起きると、農作物が被害を受けます。
被災した人々は、家や家財一式、仕事などの生活基盤を失います。
世界中で食料不足に苦しんでいる人の大半は、自然災害が発生しやすい環境に暮らしています。
しかも農業で生計を立てていることが多く、打撃を受けやすいのです。
近年、世界規模で自然災害による被害が起こっています。
特にアフリカやアジア地域の被害は、一層深刻化しています。
紛争
アフリカや中央・南アジアなどでは、今でも紛争が起きている地域があります。
紛争が起きると、大勢の人が家や農地などを捨てて難民キャンプなどへ避難せざるを得なくなります。
そして、紛争が続いているとなかなか帰ることができません。
避難せずに地元に残ったとしても、危険すぎて農作物をつくることはほとんど不可能です。
紛争が終わったとしても、元の生活に戻るまでにはかなりの時間がかかります。
そのため食糧不足は深刻になります。
慢性的貧困
貧しい農民は資金がないため、農業を行うための土地、水、種を確保することができません。
それは、自給自足ができないということです。
満足な食料を買うお金もないので、貧困や飢餓から抜け出せません。
また、子どもにも満足な教育を受けさせられないので、農業以外の職業に就いて貧困から脱け出すこともできません。
子どもの飢え
世界の未来を担う子どもたちの飢えも大きな問題です。
子どもが飢餓になると、病気と戦う力が弱くなり、命を落としてしまうことがあります。
生き残ることができたとしても、十分な栄養が得られないため成長が遅れ、知能に問題が生じたりします。
幼少期に十分な栄養が得られない代償は、一生残ってしまうのです。
この子どもたちが大人になって、生産的な経済活動の担い手になる可能性は極めて低いのです。
飢えた子どもを放置することは、人的資源の低下につながり、国家にとって大きな経済的損失になるとも考えられます。
また子どもの飢餓は、生まれる前から始まっているケースも多いのです。
飢餓状態の妊産婦が出産すると、生まれた赤ちゃんはすでに栄養不足に陥っています。
無事に出産できたとしても、その後に亡くなるリスクが高くなります。
アジアの飢餓の現状と原因
ここでは、アジアの飢餓の現状と原因についてご説明します。
アジアの飢餓の現状ですが、特に人口が多い南アジアや東南アジアなどが深刻な状況です。
ちなみに南アジアとは、インド・パキスタン・バングラデシュ・スリランカ・モルディブ・ネパール・ブータン・イラン・アフガニスタンを含めた地域のことを指します。
また東南アジアとは、中国より南、インドより東のアジア地域のことで、インドシナ半島、マレー半島、インドネシア諸島、フィリピン諸島などを含めた地域のことを指します。
アジア地域で飢餓問題が深刻な原因のひとつに、人口の爆発的な増加に対して、食料の確保と食料の供給システムが追いついていないことが挙げられます。
例えばインドの場合、人口増加が著しく、10年も経たないうちに中国を抜きトップに躍り出ると言われています。
インドでは、水不足が社会問題となっていて、農作物への影響も深刻です。
アジアでの飢餓が特に問題となっている国
アジアで飢餓が起こっている国はいくつもありますが、その中でも特に飢餓が深刻な国についてまとめました。
《インド》
前述のとおり、インドには人口増加という問題があります。
人口増加に対応できるような食料の確保、食料の安定的な供給、都市部へ安全に運搬するための交通インフラ整備などがほとんど進んでいません。
また、インドでは水不足も深刻で、飢餓人口増加に拍車をかけています。
インドには、乾季、暑季、雨季と大きく分けて3つの季節があります。
雨季は6月から9月頃で、それらの時期を除くと降水量が少なく、多くの地域で雨が降らないという状況が続きます。
安全に飲める水が安定して供給できないと、衛生的でない水を飲んで健康を害する人が増えます。
また農作物を育てる水も不足し、食料の生産性が落ちます。
このように、飢餓人口が増えてしまう環境にあるのです。
また、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって、インド女性の貧困と飢餓も悪化しているとの報告もあります。
インドでは女性の賃金格差は長年の問題となっており、コロナ禍によってインドの根深い社会的不平等がさらに浮き彫りになっています。
《ミャンマー》
ミャンマーは、世界の中でも最貧国と言われています。
ミャンマーでは慢性的貧困に加えて、自然災害の影響も受けやすい環境にあります。
乾季と雨季がはっきりわかれた気候で、雨季の時期に雨が大量に降り洪水となり農作物に打撃を与えます。
乾季が続き干ばつが起これば、農作物を枯らせてしまいます。
ミャンマーは、東南アジアの中でも平均寿命がもっとも低く、貧困が寿命や健康に大きな影響を与えています。
また、国連世界食糧計画(WFP)は2021年4月、2月に発生したミャンマーのクーデターなどの影響で、この先半年で最大340万人が飢餓に陥る恐れがあるとの見通しを発表しました。
ミャンマーでは、クーデター以前から新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる経済の停滞で、低所得者の生活に打撃を与えていただけに、さらに深刻な問題となっています。
日本の飢餓
日本のような豊かな国に飢餓なんてあるはずない、と思う方もいるかもしれません。
しかし、実際に餓死者がいるのです。
近年の記録でいうと、2016年中に食料不足が原因で死亡した人は15人おり、そのうちの10人は40代から50代の現役層だったのです。
日本では、相対的貧困層の飢餓というものが問題視されています。
日本では15%の人が相対的貧困状態にあると言われており、その家庭内の子どもが満足に食事を得られないことが社会問題となっています。
子どもたちは十分に食べられず、栄養失調になり、病気にかかりやすくなってしまいます。
今の日本では、外見からはその人が相対的貧困であるかは判断しにくいと言われています。
なぜなら、携帯電話や服などにお金をかけて身なりを整えているからです。
その分、食費を削っているケースが多いのです。
飢餓の解決策
ここでは、飢餓を解決するためにできる支援についてご説明します。
支援には、今すぐできる(即効性のある)支援と、未来のために必要な(中長期の)支援があります。
特に、飢餓状態の子どもたちに必要な支援を迅速に行えることが理想ですよね。
さまざまな解決策については、以下の通りです。
今すぐできる(即効性のある)支援
緊急食糧支援
緊急食糧支援とは、食料を必要としている飢餓や栄養不足になっている子どもたちに緊急で食料を支援しています。
また、自然災害などで食料難となり飢餓状態が続いている地域に対して食料を支援しています。
学校給食支援
学校給食支援とは、食料不足が続いている国や地域の学校に学校給食を支援する活動です。
学校で栄養価が高い給食を提供して、子どもたちの栄養不足を改善していこうとしています。
母子栄養支援
母子栄養支援とは、妊産婦に十分な食事を提供する活動です。
母子ともに健康を維持してもらうことを目指しています。
未来のために必要な(中長期の)支援
飢餓を回避するため、安定的に食料の供給を続けていかなくてはなりません。
そのためには、食料を多く生産し、食料を安全に保管して、各都市部まで運搬することが必要です。
食料を多く生産するには、農業のノウハウを伝授していく活動も有効です。
小規模農家の生活水準とスキルを向上させて、市場へのアクセス権を与え、継続できる農業形態をつくるサポートをしなければなりません。
また、自給自足ができるようにサポートすることも重要です。
次に、食料を安全に保管するために貯蔵や保存設備を整える必要があります。
貯蔵・保存設備が整えば、食品ロスを減らすことができます。
そして、食料を生産地から都市部まで運搬するために、交通インフラを整備する必要があります。
そのため、道路工事などの技術提供の支援も行われています。
飢餓の現状を知ることから始めよう
アジアでは飢餓で苦しんでいる人々が多く、自然災害・紛争・慢性的貧困などの原因により飢餓を撲滅するのは並大抵ではないのかもしれません。
しかし、SDGsの目標2「飢餓をゼロに」でも示されている通り、飢餓が深刻な地域に、その土地柄や必要性に合わせた様々な支援も行われています。
私たちにできることは何でしょうか?
飢餓をゼロにするためには、この現状をまず知ることから始まります。
私たちが住んでいる日本も含む、アジアの飢餓の現状をしっかり受け止めていきましょう。
・飢餓7億人、コロナで悪化|佐賀新聞LIVE
・飢餓と栄養不良の増加傾向続く、2030年までに飢餓ゼロの達成が危うい状況に=国連報告書|WFP
・unicef|アジアの飢餓の現状と原因
・CNN.CO.JP|日本の飢餓
・ニューズウィーク日本版|アジアでの飢餓が特に問題となっている国(インド)