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安全な水とトイレを世界中に

世界の水衛生問題とは?日本に住む私たちに出来ること

SDGsの目標6に設定されている「安全な水とトイレを世界中に」。
この目標が設定された背景には、世界で抱えている深刻な水衛生問題があります。

この問題によって、今現在も多くの命が失われています。
一日でも早い解決が求められる一方で、さまざまな問題が複雑に絡み合い、解決の遅れを生んでいます。

そこでこの記事では、具体的にどんな原因や問題があるのか詳しく解説します。
ひとりでも多くの命が救えるよう、私たちに出来ることを考えていきましょう。

水衛生問題とは?

水衛生問題とは?

水衛生問題とは、水や衛生環境における格差問題を指します。
具体的には2019年時点で世界人口約77億人のうち、約22億人は安全な飲料水を手にできていません。

また、約42億人は安全なトイレを利用できず、約30億人つまり世界の5人に2人は基本的な手洗い施設のない生活をしていると言われています。
(出典元:Progress on household drinking water, sanitation and hygiene, 2000-2017

水衛生における理想は、地球に住むすべての人が安心して綺麗な水を飲めること、衛生的なトイレを利用出来ること、清潔な環境に暮らせることです。

しかし現状、その理想は現実となっていません。

水衛生問題による 5つの問題

水衛生問題による 5つの問題

水衛生問題は、世界の人々に大きく分けて5つの問題をもたらします。

水衛生の問題を抱える人々の生活に、どのような影響を及ぼすのか考えていきましょう。

1. 下痢や感染症

安全な水が得られない多くの人は、下痢や感染症に苦しんでいます。
それは、目の前にある水が安全でないとわかっていながらも、喉を潤すためにやむを得ず不衛生な水を口にしているからです。

また、衛生的なトイレや手洗い施設がないために、河川で用を足し、同じ河川で洗濯も入浴も行われているのです。
そしてまたこの水を口にすることで、下痢や感染症を起こす悪循環を生んでいます。

こうした病気になった場合、治療のための費用がかさみます。
しかし、病気に罹ったことで働けず収入が得られないだけでなく、適切な治療を受けられずに命を落とすケースも少なくありません。

2. 女性や子どもたちへの強制労働

住まいの近くに水を供給する施設がない、または河川がない場合には、女性や子どもが水を汲みに行かされるという強制労働が発生しています。

生活に必要な水の量は多く、その水を長い距離持って歩くことは、体力のない女性や子どもにとって簡単ではありません。

しかし、水が生活に欠かせないこと、そして性差別や宗教的観念などさまざまな理由から、子どもが学校に通うこと、女性が自由に働くことは認められず、こうした強制労働が発生しているのです。

3. 性犯罪

衛生設備が整っていないことが、性犯罪の発生原因にもなっています。
それは、2019年時点で約6億7,300万人が行っている野外排泄に起因します。

野外排泄とは、トイレではなく、人通りのない路地や草むら、河川などで排泄をすることです。
トイレの施設がない、下水道施設の整備がされていないなどの理由から、現在もアフリカを中心に行われています。

人目を気にして人通りの少ない場所や時間帯を選ぶことで、性犯罪が起きやすい条件が揃ってしまうのです。

また、野外排泄には性犯罪に限らず、野生の動物や害虫にかまれて命を落とすリスクもあり、早急に安全な衛生環境が整備されることが求められています。

4. 水質汚染

適切な上下水道の整備が行われていないことで、水質汚染に繋がり環境への問題も危惧されています。

生活排水をそのまま河川に流してしまうことで、それらが海に流れ込み水質を汚染するほか、海産物への影響も懸念されます。

水質汚染の問題は、先進国による生活排水や工業排水によるものと思われがちです。
しかし、上下水道の整備されていない環境もまた、水質汚染を引き起こす原因のひとつとなっています。

5. 水紛争

水資源の枯渇、安全な水の不足は、家庭や村のみならず国家間の紛争の原因にもなっています。

具体的には、井戸や川の使用権を巡って争いが起きたり、水資源が攻撃の対象となり水流を停止されたり破壊されたりします。
ほかにも、水の使用量の配分や汚染が原因となり、紛争が起こることもあります。

こうした問題によって、これまで水を使えていた人々の生活が一変する事態も起きています。

水衛生問題を起こす 4つの原因

水衛生問題を起こす 4つの原因

水衛生問題は、人の暮らしだけでなく命にも多大な影響を及ぼすことがわかりました。

ここからは、その根本原因を見ていきましょう。

1. 人口増加

国連人口基金(UNFPA)の「世界人口白書2021」によれば、2021年の世界人口は78億7,500万人にのぼると言われています。

世界の人口は年々増加している一方、反比例してひとり当たりの水の使用可能量は減ることとなります。

人口が増えることで、生活排水は増えます。
さらに、経済発展に伴い工業排水も増え、水質汚染につながります。

こうして安心して使える水の量が減ること、水質汚染が進むことによって、水衛生問題の深刻さは加速することとなります。

2. 気候変動

水衛生問題の原因は、気候変動も大きく影響しています。

国土交通省の発表による将来予測では、

・高緯度域と太平洋赤道域は降水量が増加する
・中緯度と亜熱帯の乾燥地帯は降水量が減少する

とされています。

その結果、

・ほとんどの乾燥亜熱帯地域において再生可能な地表水及び地下水資源を著しく減少させる
・水不足を経験する世界人口の割合及び主要河川の洪水の影響を受ける割合は、今世紀の温暖化水準の上昇に伴って増加する

としており、今後、水衛生問題がさらに深刻化することを示しています。

しかし、気候変動の原因は突き詰めれば、その多くが人間による自然破壊です。

つまり、水衛生問題の原因のひとつは、私たち人間によるものと言えます。

3. 経済格差

水衛生問題を引き起こすさらなる原因は、経済格差です。
これは個人間だけでなく、地域間、国家間における格差いずれも該当します。

個人の貧富の差によって、安全な水を購入出来る、家にトイレを設置出来るかどうかなどが決まってしまいます。
また、国内において農村部と都市部という地域間でも格差があり、衛生施設の充実度に大きな格差が生じています。

そして、水衛生問題に悩む国の多くは貧困問題を抱える後発開発途上国です。

外務省が示す後発開発途上国は、2018年現在で47ヶ国あります。

この多くでインフラ整備のための人件費が払えない、資材費が払えないなどの理由から水衛生問題が未解決となっています。

4. 技術格差

経済格差に次いで、技術格差も大きく影響しています。

後発開発途上国では経済的な理由から適切な教育機会を与えられず、インフラ整備に必要な技術者を育成することができません。
そのため他の国との技術格差が広がり、結果として水衛生問題の是正に至らないのです。

また、国家に資金がなければ他国から技術者や指導者を呼ぶこともできず、八方塞がりの状態となってしまいます。

水衛生問題に対する 具体的な取り組み

水衛生問題に対する 具体的な取り組み

水衛生問題は人命に関わる重大な問題であると同時に、その解決には問題の悪循環を断ち切ることが必要です。

世界ではこれまでに、2001年のミレニアム開発目標(=MDGs:Millennium Development Goals)や2015年の持続可能な開発目標(=SDGs: Sustainable Development Goals)設定によって、ターゲットを定めて水衛生問題の解決に向けた取り組みが行われてきました。

そのほか2016年12月に、2018年-2028年を「『持続可能な開発のための水』国際行動の10年」とすることが、国連総会において決議されています。
この決議により2028年までの期間にさらなる取り組みを行い、世界の水問題への関心を集めることを目的としています。

また、国際協力機構(JICA)から厚生労働省に依頼する形で、毎年25~50名前後の水のスペシャリストを途上国に派遣し、水道行政や水道事業などの指導を行っています。

そのほかユニセフでは、途上国の村や学校などに給水設備を設置したり、衛生習慣に関する教育や啓発キャンペーンを実施したりもしています。

水衛生問題に対して 私たちに出来る方法で解決を目指そう

水衛生問題に対して 私たちに出来る方法で解決を目指そう

水衛生問題の解決には、国家間の協力や政府の取り組みが不可欠であり、私たちひとりひとりが出来ることは少ないのが実情です。

しかし、水資源に恵まれている日本の状況が当たり前でないことを知り、限られた資源を大切に使うことが重要です。

また、私たちに出来ることのひとつとして、水衛生問題に取り組む団体への募金が考えられます。
ユニセフやウォーターエイドジャパンといった団体を支援することで、間接的に活動に貢献することが出来ます。

こうした動きが大きくなることで、支援団体の活動資金や、途上国のインフラを整備する資金などが集まり、水衛生問題の解決に向けた大きな一歩になるのではないでしょうか。

  • 記事を書いたライター
  • ライターの新着記事

会社員とのパラレルキャリアを経て、独立。 執筆ジャンルは主に、SDGs、旅行、ファッション。現在、複数のメディアで記事を掲載。 SDGsに関心を持ったきっかけは、ハワイへの語学留学中、日本のSDGsに関する取り組みの遅れを感じたこと。 より多くの人に、環境への取り組みを知ってほしいと思い、2021年6月より「MIRASUS」にて執筆を開始。

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