メディアでも目にする機会が増えた「森林火災」のニュース。
なかでも特に多いのがアマゾンでおこっている「アマゾン火災」です。
熱帯雨林であるアマゾンで、なぜ頻繁に火災が発生しているのか？
またアマゾン火災がおこることでわたしたちに影響はあるのか？
アマゾン火災の原因と地球や人への影響についてご紹介します。
アマゾン火災と火災の原因
熱帯雨林アマゾンは南米大陸に広がり、その広さの総面積は約550万平方キロメートルという想像もつかない大きさです。
アマゾンの大きさは、地球上の熱帯雨林の約半分をアマゾンが占めているとイメージするとわかりやすいです。
全長7,000㎞にもおよぶ世界有数のアマゾン川が流れ、豊かな水源により多くの生態系が育まれています。
そんな多くの生態系を育む熱帯雨林アマゾンで問題となっているのが、アマゾン火災です。
アマゾン火災とは2019年に入って急増した、アマゾンの熱帯雨林地域における火災のことを指します。
年々増加していた森林火災ですが、2019年8月は1か月間で約8万件の森林火災が発生しています。
その数は2018年と比べて85％増加しているとブラジル国立宇宙研究所が発表しています。
また2019年のアマゾン火災は、2018年を上回る深刻な火災状況で過去最大の被害で、失われた森林面積は約9,000平方キロメートル。
9,000平方キロメートルは東京ドーム約2,000個分の広さです。
しかしその後も森林火災の被害は大きくなっており、2022年5月の火災件数は2,287件と、2021年の1,166件を96％上回り状況は年々悪化しています。
また2022年7月現在、アマゾン地帯での火災件数は5,373件発生しており、2021年の同月の4,977件を上回っている状況です。
さらに火災以外にも森林破壊による森林減少は1970年代から続いており、アマゾンの森林のうち14～15％が消失したといわれています。
アマゾン火災による森林減少は、環境問題を重視する欧州諸国を中心に世界的にも解決するべき課題となっています。
アマゾン火災の原因は自然発火？人為的？
アマゾン火災の原因のひとつとして挙げられるのが、落雷による自然発火です。
アマゾンは７～10月の乾季に森林火災が起きやすく、7月は「火災の季節」のはじまりといわれています。
またジャイール・ボルソナロ大統領が就任した2019年からアマゾン火災が増加しています。
ジャイール・ボルソナロ大統領により、アマゾンでの開発規制が緩まったことで農地や牧草地、鉱山の開発が盛んとなったこともアマゾン火災が増えた要因といわれています。
なぜなら、土地を開拓するためにつけた火が、乾燥した天候の影響で火災を加速させているからです。
さらに自然発火が増えた原因は気候変動も関係しています。
フェーン現象
気象庁によると、フェーン現象は
湿潤な空気が山を越えて反対側に吹き下りたときに、風下側で吹く乾燥した高温の風のことを「フェーン」と言い、 そのために付近の気温が上昇することを「フェーン現象」と呼びます。
強い風により延焼方向に影響を与えるだけではなく、火の粉が飛ばされることで新たな場所で再び火災が発生する原因になっています。
エルニーニョ/ラニーニャ現象
気象庁によると、エルニーニョ/ラニーニャ現象は
エルニーニョ現象とは、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高くなり、その状態が１年程度続く現象です。
逆に、同じ海域で海面水温が平年より低い状態が続く現象はラニーニャ現象と呼ばれ、それぞれ数年おきに発生します。エルニーニョ現象やラニーニャ現象は、日本を含め世界中の異常な天候の要因となり得ると考えられています。
エルニーニョ/ラニーニャ現象が発生すると森林地帯での降水量と貯蓄量が減少し、干ばつにより森林火災の原因となります。
アマゾン火災による周辺地帯への被害
アマゾン火災による影響は森林減少だけではありません。
その影響は熱帯雨林アマゾン周辺だけに留まらず、アマゾンから3,200㎞離れた都市にも影響がでています。
アマゾン地帯で火災が発生すると、どのような影響がでるのでしょう。
先住民への影響
アマゾンには、自然と共に生きる先住民が生活をしています。
ブラジル全土の先住民族の人口はおよそ90万人と言われ、その半数が今もアマゾンで暮らしています。
ブラジルの先住民族は305の民族、274の言語が存在し、多様性に満ちた社会を実現しています。
火災により森林が減少すると猟鳥獣類の激減により食料難や薬になる植物の採取ができず、生活の基盤を失う可能性もあります。
さらにアマゾンが消失することで先住民族のコミュニティや歴史・文化・アイデンティティが喪失する可能性があります。
アマゾンの生態系が崩れる
アマゾンにはわかっているだけで、
・植物…約4万種
・哺乳類…400種以上
・鳥類…1000種以上
が生息し、アマゾンでしか見ることのできない生物もたくさん存在します。
森林が減少することで、大地はやせ荒廃していきます。
アマゾンの環境に適応しながら進化してきた生き物は、森が失われることで絶滅する生物もうまれます。
また豊かな森の環境を支えているのが、アマゾンを流れる多くの川です。
豊かな水源があることですべての生物がバランスを取りながら生きています。
ひとつの生態が失われることでアマゾンの生きる生物のバランスは崩れ始め、すべての生物に影響を及ぼす可能性があります。
アマゾン地域に暮らす人の健康被害
アマゾン環境研究所（IPAM）によると、アマゾンの火災により健康被害が増えていると発表しています。
・呼吸疾患による入院
・心血管系疾患
・肺疾患・心臓疾患のある人・子ども・高齢者
患者数は1歳未満で500人近く、60歳以上で1000人を超えています。
また年齢が下がるほど症状が深刻だともいわれています。
さらに、アマゾン地域に暮らす約300万人が有害な大気汚染にさらされていることもわかっており、被害の深刻さを物語っています。
参照元：
・アマゾン環境研究所（IPAM）
・ブラジル：アマゾン火災が数千人の健康に悪影響｜HUMAN RIGHTS WATCH
アマゾン熱帯雨林の役割と地球への影響
まず、アマゾン熱帯雨林の役割を理解しておきましょう。
アマゾンの役割
熱帯雨林は年間を通して植物たちが盛んに光合成をおこなっています。
多くのCO2を吸収し光によって水を分解することで酸素を発生させています。
日本では見られないような大きな森林がたくさんあることで、大型動物をはじめ、小動物や昆虫などの住処や食料を提供し、複雑な生態系を育んでいるのです。
また、熱帯雨林は大気に酸素を供給しているだけでなく、二酸化炭素と酸素の循環を調節する機能を担っているのです。
参照元：ココが知りたい地球温暖化 気候変動適応編｜A-PLAT 気候変動適応情報プラットフォーム
地球への影響
では、アマゾンをはじめ熱帯雨林が消失することで地球にどのような影響があるのでしょう。
これまでCO2吸収源と考えられていた熱帯雨林ですが、森林の減少の影響により吸収量は年々減少しているという結果が発表されています。
また森林破壊が続くことで森林への回復に時間がかかるようになり、元の森林に戻るのが困難になります。
森林に貯められていたCO2が大量に排出されることで、二酸化炭素や酸素の循環において大きな影響を与えると考えられています。
地球上の二酸化炭素が増えることで地球温暖化が進み、温暖化の影響による気候変動により異常気象が発生する可能性があります。
私たちと無関係ではないアマゾン火災
アマゾン火災と地球への影響についてご紹介しました。
遠く離れた場所でおこり、自分にはまったく関係のないようなことも、回り回っていつの日か自分たち違う形でやってきます。
アマゾン火災に対して直接手を差し伸べるのは難しいかもしれません。
しかし生活の中で、
・FSC認証マークがついている製品を買う
・紙製品の使用を控える
など、国際的に認められ、保全に取り組んでいる会社の製品を買うことで森を守ることができます。
アマゾン火災につながる森林開拓の手助けにならないよう、少しだけ意識を変えて行動してみませんか？
