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SOCIETY

動物実験はどうなっている?世界の傾向や日本の現状は?

日常の生活で気がつくことはあまりありませんが、医科学研究のさまざまな場面で動物実験が行われています。
人間の生命や生活の質と引き換えに、実験という名のもとに動物に苦痛を与えたり命を奪うことには、昔から賛否両論が唱えられてきました。

この記事では、動物実験の世界と日本における現状やその実態について見ていきたいと思います。

動物実験が行われてきた経緯

動物実験が行われてきた経緯

それでは、動物実験が行われてきた経緯を順にみていきましょう。

最初の動物実験は?

人類が最初に生きた動物を実験に使用したのは紀元前300年頃とされています。
アレキサンドリアに建設された大規模な医学校において行われ、豚の実験で肺が呼吸器であることが確認されました。

解剖学の祖とされるヴェサリウスが16世紀に登場してからは、動物実験による様々な解剖学的発見が生まれました。

動物の権利が認められたのは?

それまでの「人間は支配者であり、思うままに他の動物を利用する権利がある」*1という、古いキリスト教の教えに基づき正当化されてきた考え方に、はじめて疑義を唱えたのは、18世紀のイギリスの哲学者ベンサムとされています。
彼は、「動物も感覚があり、苦痛を感じることができるので、道徳的に扱われる権利がある」*1と唱え、その考えは1876年に制定されたイギリスの動物虐待法のもとになっています。

19世紀にはがん遺伝子の発見やワクチンの発明など、動物を用いた実験により飛躍的に医学が進歩を遂げました。
その一方で、イギリスやアメリカでは動物虐待防止協会が設立され、動物の権利を守るための法律が整備されていきました。

戦時中は?

2つの世界大戦では兵士治療のための化学物質や抗生物質が開発され、医学が進歩しましたが、その陰で数多くの動物実験が行われました。

軍事兵器の研究にも多くの動物が用いられました。

現在は?

現在は、「生命科学研究に動物実験は不可欠であるが同時に動物福祉の面からも適正な動物実験が実施されなければならない」という姿勢のもと、国際的な動物実験の基本理念「3R」にのっとって、適正に実験を行うことが求められています。*2

参照元:
・*1 下記論文より引用。
「動物とヒトとのかかわりー特に医学において動物実験が果たした役割ー」|松田幸久
・*2 解説パンフレット|環境省

動物実験の基本理念「3R」とは?

動物実験の基本理念「3R」とは?

動物実験の基本理念「3R」とはイギリスの科学者ラッセルとバーチによって提唱されたもので、次の3つが原則となっています。

・Replacement(代替):できるだけ動物の代わりとなるものを利用すること。(例えば、意識や感覚がないとされる低位の動物種や試験管での実験で代用するなど)
・Reduction(削減):できる限り実験に利用される動物の数を少なくすること。
・Refinement(苦痛の軽減):できる限り動物に苦痛を与えないこと。

この原則は、WHOとUNESCOが共同して設立した国際医科学連合( CIOMS )が1985 年に公表した「動物を用いた医科学研究の国際原則」に盛り込まれ、現在は動物実験に関する国際原則として周知されています。

日本では、平成17年の「動物愛護管理法」の改正の際にこの3Rの原則が明記されました。

動物実験に反対する意見

動物実験に反対する意見

歴史的にも医学の進歩に貢献し、生命科学の研究に不可欠とされている動物実験ですが、一方で全面的な廃止を求める声もあがっています。
動物実験に反対する主張とは、どのようなものなのでしょうか。

動物の福祉

先ほど紹介した3Rの原則では「できる限り動物に苦痛を与えない」「できる限り実験動物の数を少なくする」とされていますが、「できる限り」ではなく「絶対に苦痛を与えない」「動物実験をゼロにする」というのが絶対廃止の主張です。

人間の利益のために、動物を傷つけたり苦痛を与えたりすることを全面的に否定しています。

動物実験の有用性

動物と人間は生物学上全く異なるので、実験には意味がないという主張です。
「NPO動物実験の廃止を求める会」のホームページでは、フランス科学者のコメントを以下のように紹介しています。


「85%の実験に用いられているマウスやラットは、ヒトとは全く異なる動物である。また、98.4%のDNAが人間と共通するチンパンジーでさえ、人間には致命傷となるマラリアやB型肝炎に耐性をもつ」

動物実験を経たにもかかわらず薬害が認められる例はいくつもあり、それこそが動物実験が有用性をもたない証拠だとも捉えられています。
また、実験では健康である動物を人工的に病気やけがにするため、その再現性を問題視する意見もあります。

参照元:NPO動物実験の廃止を求める会ホームページ

日本の現状は?

日本の現状は?

日本では「動物の愛護及び管理に関する法律」とその規定にもとづいた基準によって動物実験のことが定められています。
また、それぞれの研究機関を管轄する省庁から基本指針が出され、「科学的に合理性のあるものか」「国際基準3Rに沿っているか」といった基準を守り、動物実験を適正に実施するよう求められています。

とはいえ、日本の動物実験の制度は他の国に大きく遅れをとっていると指摘する声もあります。

学校での解剖実験

欧米を中心に議論が起こり、小中高等学校の解剖実験から医学部の実験に至るまで、多くの動物実験が他の方法に代替されつつあります。
そのようななか、日本の小中高等学校では、カエルやフナを使った解剖実験がいまだ多数行われています。

「命の大切さを伝える」ことが実験の目的となっているにもかかわらず、そのために生き物の命を奪っていることは矛盾しているのではないかという疑問から、杉並区の小中学校などいくつかの地域で解剖を廃止する動きもおこっています。

医学校での動物実験

アメリカやカナダではすべての認定医学校において、生きた動物を使った手術や医学的処置などのトレーニングが廃止されました。

一方日本では、ほぼすべての医学部で動物を用いた実習が行われています。
どの大学においても、先ほどの法律に基づいて適正に実習が行われているとはいえ、コンピュータや模型などを使ったシミュレーションなどを活用することで、さらに動物実験を減らすことが期待されています。

化粧品の動物実験

嗜好品とされる化粧品の研究で動物実験を行うことは、近年ますます縮小される傾向にあります。

・化粧品の研究開発で動物実験を行わない
・動物実験を行った化粧品を流通・販売させない

「化粧品の動物実験禁止」には、この2つの意味があります。

EUやイギリスを含む多くの欧州の国では、この2項目を行い、化粧品の動物実験を完全に禁止しています。
アメリカでは近年次々と実験を行った化粧品の販売が禁止されています。

EUが動物実験を行った化粧品の販売禁止に踏み切ったのを機に、日本においても資生堂などいくつかの化粧品メーカーが動物実験を行わないことを表明しました。
とはいえ、日本ではなかなか動物実験完全廃止はすすんでいないのが現状です。

これには、日本とEUでの化粧品の分類が異なることも関係しています。
日本には「医薬部外品」という化粧品と医薬品の中間的なカテゴリーがあり、安全性や効能について承認を受ける必要があります。
このことも動物実験をなくすことを難しくしている一因とされています。

参照元:「化粧品の動物実験禁止 世界の動き」|PEACE

まとめ

まとめ

「動物は人間が支配するもの」と信じられてきた時代から今日に至るまで、動物と人間との関係は大きく変化してきました。

古代エジプトの時代から動物をペットとしてかわいがる文化があることは知られていますが、最近では「ペット」という一方向にかわいがる関係から進化して「コンパニオンアニマル」という言葉が一般化しつつあります。
「コンパニオンアニマル」は伴侶動物とも言われ、動物をより家族的で必要不可欠な存在としてとらえる考え方です。
畜産業界でも「アニマルウェルフェア」が一大傾向となっており、家畜にとってストレスや苦痛の少ない飼育環境への要請が強くなりつつあります。

このように、動物の権利を人間同様に認める傾向は、今後ますます高まっていくでしょう。

動物実験に変わる方法として、3DプリンタやビッグデータといったITテクノロジーの活用や培養組織といった新しい技術を用いた実験への取り組みもさかんになっています。
これまで動物実験に支えられてきた医学を中心とする科学のあり方も、今後大きく変化していくと考えられます。

  • 記事を書いたライター
  • ライターの新着記事

ICU卒業後、出版社にて女性誌の編集・ライティングに約10年間従事。その後NPOや財団法人で機関誌の編集・執筆を担当するなかで、社会貢献・慈善活動についての知見を深める。米・ペンシルバニアに滞在経験があり、現地の人々の寄付活動の熱心さに感銘を受ける。得意分野は、SDGs、多様性、フィランソロピー。

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