SDGsの目標15「 陸の豊かさも守ろう」。
そのターゲットには、持続可能な森林の経営が掲げられています。
実は、日本の国土の約7割は森林です。
その面積は約2500万ヘクタールにも及びますが、この面積は過去50年間変わっていません。
というのも、将来の木材として使うために植林が続けられてきた歴史があるからです。
この記事では、日本の植林活動と世界から見た特殊な森林事情について解説します。
植林活動とは
「植林」とは、森林を造成するために、伐採跡地や山林でなかった土地に木を植えることです。
苗木を植えたり、種をまいたり、さし木したりする場合も「植林」と言います。
植林によって生まれた森林は「人工林」と呼ばれ、昔から植林が盛んだった日本においては、森林面積の人工林の割合が高いのが特徴です。
日本では森林全体が約2500万ヘクタールありますが、そのうち約1000万ヘクタールが人工林となっています。
植林活動のメリット
植林活動により森林を増やすことは、その土地の自然を保護し、砂漠化の防止に役立ちます。
また、土地の保全や水源を作ることにも繋がるのがメリットです。
森林は光合成によって大気中の二酸化炭素を吸収して育ちます。
そのため、植林は温暖化対策の手段として行われることも増えてきました。
日本国内だけでなく、海外においても企業やボランティア団体が植林活動を積極的に行っています。
例えば「木を植えています」のキャッチフレーズでおなじみのイオン。
1991年から世界中で植樹活動をはじめました。
その本数は、2013年には1000万本、2019年には1200万本以上を超えています。
日本の森林の問題点
日本は7割が森林面積で、積極的に植林活動も行っており、その面積は減っていない……と聞くと、何ら問題がないように思えますが、実はそうではありません。
日本の森林には、世界とは逆の特殊な問題があるのです。
使われるべき森林資源が使われていない
日本の森林面積が減らないままでいるということは、木の伐採が少ないということです。
実は人工林の半分はすでに、伐採期と言われる樹齢50年を過ぎています。
しかし、日本に流通している木材は、コストの問題で海外からの輸入品が多く、国内にある森林資源が使われていないという問題があるのです。
森林と聞くと、なんとなく「伐採せずに守らなければ」と思ってしまうかもしれません。
しかしそれは、大規模な面積が毎日のように伐採されるアマゾンなどの熱帯雨林や、焼き畑農業のために燃やされてしまう森の話です。
日本では、木材を十分自給できるのに、その7割を海外からの輸入に頼っています。
海外から木材を運ぶには現地での伐採や輸送に二酸化炭素が排出されるため、実はエコではありません。
足元の資源を見直すことが求められています。
間伐されないことによる問題点
森林は、植えただけではその機能を十分に果たすことができません。
植栽や草刈り、伐採をして手入れすることにより、健全な森林に育ちます。
つまり、植林だけして放置ではダメなのです。
植林と手入れを繰り返す必要があります。
植林して、適切に伐採し、さらに育った木は資源として活用する、この循環を作ることが、森林を育てるゴールです。
また、地球温暖化防止にとっても、伐採は重要な役割があります。
木を切らない方が二酸化炭素吸収量が増えそうに思うかもしれません。
しかし、木が密集して生えている場合、太陽の光を十分に浴びることができず、大きく育つことができなくなります。
適切に伐採することで、それぞれの木や根元に生える植物も、十分に光を浴びて成長することができ、結果的に二酸化炭素吸収量が増えるのです。
さらに、現在温暖化によって水害が問題視されています。
上流から流れる水をしっかりと土壌に蓄えるのが森林の重要な役割の一つ。
強い木を育てるためには、伐採をはじめとした適切な管理と手入れが必要なのです。
植林活動はバランスが大事
森林はいきものです。
持続可能な資源である森林を保つためには、「植林する→育てる→収穫する」というサイクルを上手く循環させる必要があります。
つまり、植林しすぎてもだめだし、木を伐採しすぎてもいけません。
植えて育てたら、ちょうどいい量だけをちゃんと伐採して使うことがポイントです。
木が育つ早さは早めることができませんので、それを上回るスピードで木を伐採すると、最終的には森林がなくなってしまいます。
これが世界で起こっている森林破壊です。
このような状況では、活発な植林活動が必要なのは間違いありません。
しかし、日本では木が伐採されなさ過ぎて、森林の力が弱っている状況に陥っています。
世界とは逆の状況なのです。
この日本でいま私たちに今できるのは何でしょうか。
それは、「森林保護」について正しい知識を得て、植林活動と共に、日本の木材の利用にもっと目をむけることです。