世界では、日々驚くべきスピードで森林破壊が進んでいます。
森林破壊は環境、生態系、そして私たちに悪影響をもたらします。
そのため森林破壊を減速する、あるいは環境を改善するため、早急に対策しなければなりません。
一度壊れてしまった森林を、元の姿に戻すには多くの時間と労力が必要です。
だからこそ対策はすぐに、そして地道に取り組む必要があります。
そこで、まずは現状を知り、環境のために私たちができることを考えましょう。
そして毎日の暮らしを通じて、少しでも森林破壊を食い止められるよう行動しましょう。
森林破壊における世界の現状
世界には、約40.3億haの森林があります。この森林面積のうち、2000年から2010年まで平均して、毎年520万haの森林が失われています。520万haとは、日本の約138個分に相当し、それだけ多くの自然が失われていることになります。
しかし、森林破壊が起きている地域には偏りがあり、ブラジルのアマゾンほか、主に熱帯地域で起きています。
原因として挙げられるのが、穀物を育てるための農地への転換、紙パルプ用の植林地への転換です。
一方、中国では大きく森林面積が増加しています。
中国をはじめアメリカやインドでは、植林活動が精力的におこなわれており、結果として森林面積が増加しています。
参照元:国際的な森林保全対策|環境省HP
森林破壊における日本の現状
日本の現状として、日本が保有する約2500万haの森林面積は、林野庁が示す昭和41年から平成29年までほぼ変化がありません。
また、「森林蓄積」が同じ期間で3倍近くに増えています。
森林蓄積とは、森や林にあるそれぞれの木の幹の体積を指します。
つまり、日本では年月を重ねて育った樹木が、資源として使われていないことになります。
その原因は、国産資源より輸入資源の方が安価に入手できることです。
低コストで大量に入手できるため、日本は多くの資源を持ちながらも、その資源を使わずに輸入しています。
しかし、それでは日本での消費のために海外の資源が費やされることとなり、問題視されています。
そのため、日本の資源を活用することや、そもそも資源の消費量を減らすことが日本の課題となっています。
森林破壊による具体的な影響は?
森林破壊による樹木の減少で、具体的にはどんな影響を与えるのでしょうか?
地球環境への影響
森林の減少によってまず起きるのが、大気汚染です。
大気汚染が進むと、地球温暖化が加速します。
その結果、海面上昇、水害、干ばつなどが連鎖して起こります。
野菜や果物、小麦や稲の収穫量は天候に左右されるため、地球環境が変わることで収穫量が減り、収穫そのものができなくなる恐れもあります。
また、これまでは雨水が森林によってろ過され、水質が守られていました。
しかし、森林がなくなれば水質の担保もできなくなってしまいます。
生態系への影響
森林破壊は、生態系にも影響を及ぼします。
例えば、木の実をエサにしている鳥や動物にとって、食べ物がなくなります。
すると、鳥やエサを食べていた動物にとっても、エサを失うこととなり食物連鎖が破綻します。
また、森に住む動物だけでなく、南極のような寒い地域の生き物にとっても悪影響があります。
森林がなくなり地球の温暖化が進めば、今以上に南極の氷が溶けて、シロクマやペンギンといった南極の生き物のエサや住まいがなくなります。
人類への影響
森林破壊が人間に与える影響のひとつは、食糧です。
森林がなくなり地球温暖化が進むことで、農作物の収穫ができなくなり、価格が高騰します。
それだけでなく、食糧不足に陥り、飢餓の問題に発展します。
また、それまで食物連鎖によって増殖を防げていたはずの害虫が増えて、感染症にかかりやすくなったり、作物の収穫ができない、住まいに害が出るといった影響が考えられます。
森林破壊が現状に至るまでの原因
世界で森林破壊が進んだ原因は、大きく分けて3つあります。下記では原因別に解説していきます。
・農地転換
・森林伐採
・森林火災
農地転換
近年、アフリカを中心とした人口増大に伴い、食糧不足が懸念されています。
食糧を確保するため、森林を農地に変えることが、森林破壊の原因のひとつとなっています。
また、先進国の発展に伴い、食肉や乳製品への嗜好が高まったことも農地転換のきっかけを生んでいます。
畜産物を育てるための飼料は、ほとんどが穀物であるため、畜産物の需要が増えれば、穀物の収穫量を増やす必要があります。
そのため、森林を開拓し、畑に変えるケースが増えているといえます。
森林伐採
人口の増加によって、必然的に紙や木材などの使用量も増えます。
紙や木材の原料は樹木であるため、消費量が増えることで森林の伐採が加速します。
樹木は人の生活にとって切り離せない資源となっており、その過剰な需要から違法伐採が起こっています。
法令で定められた基準から外れた、量や品種の伐採、コストに対して正当な支払いがされずに安価で販売されることが問題となっています。
森林火災
森林破壊の原因として、森林火災も挙げられます。
森林火災の原因は、たばこや花火などの不始末による発火と、温暖化による気温上昇や乾燥から起こる自然発火です。
温暖化は、ものを燃やしたときに排出される温室効果ガスが原因のひとつです。
しかし、温暖化によって森林火災が発生し、樹木が燃えることによって、さらに温室効果ガスが排出され、温暖化を加速させる悪循環となっています。
森林破壊の現状に対する 世界の取り組み
こうした事態を避けるために世界で行なわれている取り組みとして、持続可能な開発目標であるSDGsでは「陸の豊かさも守ろう」という項目が設定されました。
SDGsの設定以前は世界共通の目標がなく、SDGsの設定によって共通の目標に向かうことができるようになりました。
違法伐採に対しては、衛星観測データを用いて違法伐採がおこなわれないよう森林を監視したり、各国で罰則を設けたりしています。
また、「コミュニティフォレストリー」と呼ばれる管理方法によって、森林を守る対策もとられています。
「コミュニティフォレストリー」とは、地域の住民が森林管理をおこない、得られた利益を関わった住民で分配する方法です。
この方法によって、地域住民の森林や生物多様性に対する関心がより高まるうえ、森林保全につながります。
森林破壊の現状に対する 日本の取り組み
さらに、日本がおこなう違法伐採への対策のひとつとして、インドと協力し、衛生データを活用して伐採状況を把握したり、木材の調達から廃棄までを追跡できる技術の開発をおこなっています。
また、日本政府は2001年4月から「グリーン購入法」を施行しました。
グリーン購入法では、政府機関が調達・購入する木材、紙や文具を含む木材製品の原料は、合法性が証明されたものでなければならないと定められています。
さらに、2017年から「クリーンウッド法」を施行。
「クリーンウッド法」の施行は、日本または木材の原産国の法令に基づき、正当に伐採された樹木の流通・利用を促進を目的としています。
そこで、対象となる事業者の範囲を定めて、「登録木材事業者」として登録。
消費者にも、「登録木材事業者」から木材製品を購入することを推奨しています。
そのほか、日本がこれまで培ってきた荒廃した山を修復する治山技術や、海岸砂丘林の技術を他国に伝えて技術支援することで、森林環境の改善に貢献しています。
森林破壊の現状に向けた 私たちひとりひとりの取り組み
森林破壊に対して、私たちひとりひとりにもできることがあります。
森林破壊の原因別に、ご紹介します。
農地転換を減らすため
農地転換のおもな理由は、人口増大による食糧不足の懸念、そして畜産物の飼育量の増加です。
食糧不足への対策として、食べられるはずの食べ物を廃棄する食品ロスをなくすことで、本当に必要な人の手に食糧が行き届くようになります。
またそれにより、適正量が生産され、不必要な農地転換をせずに済みます。
さらに、肉や乳製品の消費を減らすことも、私たちにできる取り組みです。
たとえば週に一度、肉や乳製品を摂らない日を作り、消費量を減らします。
その積み重ねによって家畜の飼育数を減らし、飼料となる穀物生産量を減らすことで、農地転換される森林をなくすことにつながります。
森林伐採を減らすため
紙や木材、石鹸やゴム製品などの原料となる森林資源には、限りがあります。
限られた資源を有効に使えるよう、大切に扱いましょう。
たとえば近年、少しずつマイ箸やマイカトラリーも浸透しています。
着なくなった衣類はリサイクルする、再生紙を使うなど、使い捨ての生活をやめ、環境にやさしい行動をしていきましょう。
また、違法伐採を減らすために私たちができることとして、木材を購入するときは「森林認証」マークのついた木材を選ぶことも大切です。
森林認証とは、適正な管理を受けた森林から産出された木材であることを、独立した第三者機関が認証することです。
「抜粋元:森林認証制度|wikipedia」
森林認証を受けた企業の木材を購入することで、森林保護の活動を間接的に支援できます。
森林火災を減らすため
花火やタバコの不始末による火災は、きちんとごみを持ち帰ることで対策できます。
一方、地球温暖化による自然発火については、すぐに対策が取れません。
結果が出るまで時間がかかりますが、私たちができることとして、地球温暖化を防ぐための地道な取り組みをするほかありません。
ごみや食品ロスのような燃やすものを減らすこと、電気や水道などエネルギーのムダ使いをしないことなど、毎日の生活の中で少しずつ取り組んでいきましょう。
まとめ|森林破壊の現状を回避しよう
日本はもちろん、世界でも森林破壊の抑制に向けて、さまざまな活動がおこなわれています。
しかし、私たちの消費行動が、その活動に大きく影響します。
今ある環境問題の解決だけでなく、未来により多くの自然を残せるよう、ひとりひとりが行動を起こしましょう。
小さなアクションであっても、その人数が増えれば大きな取り組みになり、結果につながります。
・国際的な森林保全対策|環境省 HP
・森林資源の現況|林野庁 HP
・日本の森林面積と森林蓄積の推移|森林・林業学習館 HP
・クリーンウッド法の概要|林野庁HP
・グリーン購入法|環境省HP