「グリーンコンシューマー」とは、環境志向が強い消費者のことを指す造語です。
日本ではあまり聞き慣れない言葉ではありますが、グリーンコンシューマーの活動は1980年代後半から世界で注目されています。
私たち人間の活動から二酸化炭素などの温室効果をともなう温室効果ガスを排出してきたことによって、地球の温暖化が進んでいます。
また、家庭や工場から出るごみは海洋汚染の原因となり、海の生態系に悪い影響をあたえてきました。
私たちがグリーンコンシューマーになることで循環型社会が作られ、地球を守ることにつながります。
グリーンコンシューマーについて理解し、できることから始めましょう。
グリーンコンシューマーとは?
green consumer(グリーン コンシューマー)をそのまま訳すと「緑の消費者(購買者)」。
環境を表す「グリーン」と、「消費者」を組み合わせて作られた言葉です。
環境を意識して物やサービスを消費する人のことをグリーンコンシューマーといいます。
私たちが当たり前のように環境に優しい物を選び消費するようになると、生産者や販売者は環境を意識した商品を増やすことになります。
グリーンコンシューマーが増えるほど、循環型社会の形成につながるのです。
グリーンコンシューマー活動がはじまった背景
「グリーンコンシューマー」という言葉が使われるきっかけとなったのは、1988年にイギリスで出版された「グリーンコンシューマー・ガイド」という本です。
イギリスで日常的に使用される商品が、どんな場所でどのようにして作られているのか、商品を使用したり廃棄したりするとどのような影響があるのかを紹介されました。
また、環境問題に向き合うスーパーチェーンが評価・公表されたことが話題となり、第1版は30万部も売れたといわれています。
当時のヨーロッパはチェルノブイリ原発の事故やライン川の汚染、アザラシの大量死をはじめ、多くの環境破壊が問題になっていました。
環境保全の必要性が注目されるようになったものの、自分たちに何ができるのか分からない状況であったことから、本が出版されたという経緯です。
人には自由に購入する権利があり、環境に配慮した購入・消費活動をすることによって、物づくりの環境を変えられる。
そして地域の環境から世界全体の環境までを改善できると伝えられました。
ヨーロッパと日本の環境問題における意識の差
ヨーロッパ諸国では、環境問題への意識が日本と比べて大きく進んでいます。
日本には「循環型社会形成推進基本法」があり、循環型社会を形成するにあたり「処理の優先順位をつける」ことが法定化されています。
制度化するきっかけとなったのが、1986年にドイツで制定された「廃棄物の回避・管理法」です。
ドイツの法律においてごみ処理の優先順位は、「ごみになるものを発生させない」ことが最も優先されるべきだと定められました。
「包装や化学物質は回収をして適正にリサイクルをするよりも、使用量を減らし、使用しなくても良いものは使用しないこと」。
これが環境への負荷を少なくする上で一番大切であるとされています。
「発生抑制」の方法は環境に負荷をあたえるものを使用をしないことの他に、再使用があります。
容器が必要な飲料の販売においては、容器を回収して再使用すればごみは発生しません。
ドイツではビールや清涼飲料をできる限り再使用できる容器で販売するよう指導されていて、容器を回収・洗浄をして再度利用しています。
再使用型のペットボトルは20回以上使うため、日本のペットボトルと比べるととても頑丈に作られているのです。
日本でもペットボトルのリサイクルは行われていますが、回収した容器は潰したあとに溶かして再生しています。
こういったところでも、ヨーロッパ諸国のほうが環境問題への向き合い方が進んでいるといえるでしょう。
参照元: 循環型社会形成推進基本法の概要|環境省
グリーンコンシューマーが地球環境へあたえる効果
グリーンコンシューマーが増えると、次のような効果をもたらします。
地球温暖化を抑制できる
グリーンコンシューマーの考え方では、物の選び方を改善することがポイントです。
例えば、家電製品を選ぶときには省エネ性能が高いものを選ぶと電気代が安くつき、エネルギーの消費量も少なくなります。
また、移動手段を車に頼らず自転車にすることでも、エネルギーの消費量は減らせます。
こうした活動によって二酸化炭素の排出を削減し、地球温暖化の抑制につながるのです。
ごみを削減できる
グリーンコンシューマーはごみになることが少ない商品を選ぶため、ごみの削減に効果があります。
ごみをどのように分別するのかではなく、ごみを出さないことが大切なのです。
家庭ごみのうち、容器や包装のごみが6割近く占めると言われています。
「野菜やくだものはラップやパックで包装されたものではなくはだかで売られているもの」「ペットボトル飲料はできるだけ買わない」などの活動が習慣となった人が増えると、ごみは大幅に削減できます。
グリーンコンシューマーになるための10原則
グリーンコンシューマーは環境に優しい消費活動をする人です。
環境を守るためには、次のような活動ができる人が増えることが求められています。
1.本当に必要なもの・必要な量を買う
「あったら使うかも」、「安いから多めに買っておこう」というような買い物をしないことが大切です。
2.使い捨て商品や消耗品を避け、長く使える商品を選ぶ
ペットボトル飲料を買わず水筒を持参する、安価で低品質な洋服を選ばず質の良いものを長く着るなどの心がけでゴミを減らせます。
3.容器や包装がないものを優先して選ぶ
エコバッグを持参する、自宅用であれば簡易包装を優先するなどの行動を実践しましょう。
4.資源やエネルギーの消費が少ないものを選ぶ
省エネ家電やLED電球を選ぶと、環境に配慮しながら節約できます。
5.環境汚染のリスクや健康への影響が少ない商品を選ぶ
無農薬の野菜・添加物があまり使われていない食品を優先して選びましょう。旬の野菜を買うことも大切です。
6.自然や生き物の多様性に害を及ぼさないものを選ぶ
環境を破壊せず、動物実験が行われない商品を選ぶことが生態系を守ることにつながります。
7.地元や国内で製造された商品を買う
近くで生産・製造された商品を選ぶと、輸送にかかるエネルギーを減らすことができます。
8.生産者が公正に守られる商品を選ぶ
発展途上国の児童に労働させたり、低賃金で雇われたりする状況が当たり前になってはなりません。フェアトレード商品の活動が広がっています。
9.リサイクルされた商品やリサイクルできる商品を選ぶ
再生紙から作られたトイレットペーパーや、スーパーで回収可能な容器に入った食品を選びましょう。
10.環境問題に真剣に取り組む企業の商品やサービスを選ぶ
環境保全の活動内容をホームページなどで公開しているメーカーの商品を選ぶと、活動に協力することができます。
まとめ
「グリーンコンシューマー」とは、環境を意識して物を消費する人のこと。
グリーンコンシューマーの活動では、物を購入する前に「エネルギーがかからないものを選ぶ」、「ごみにならないものを選ぶ」といったことが優先されます。
そのため、グリーンコンシューマーが増えるとエネルギー温室効果ガスの排出量を減らせ、地球温暖化を抑制できます。
さらにごみの量も減らせますので、地球環境を保全することにつながるのです。
エネルギーの消費が少ない商品やごみにならない商品が多く購入される社会になれば、そのような商品がたくさん販売されることになります。
グリーンコンシューマーになるために、できることはたくさんあります。
循環型社会を作り上げるために、小さなことから行動してみましょう。