マイノリティ(minority)とは英語で「少数」「少数派」という意味です。
反対語はマジョリティ(majority、多数・多数派)で、ともに元来は単純に数的な意味で使用されていました。
最近では「マイノリティ」は「社会的マイノリティ」の意味で使われることが多くなっています。
社会的マイノリティとは、少数者であるがゆえに社会参加が制約されたり、偏見や差別などが障壁となって生きづらさを感じている人のことを指します。
この記事では、社会的マイノリティの具体例や問題のポイントなどを解説していきます。
社会的マイノリティの具体例
社会的マイノリティには様々なものがあります。
ここでは具体的な例をいくつか挙げ、ご紹介します。
性的少数者
性的指向や性自認における少数派。
よく知られているのはLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)ですが、他人に対して性的欲求を感じない人(アセクシャル)や恋愛感情がない人(アロマンティック)、自分の性や性的指向が何なのかを決めていない・決められない人(Q:クエスチョニング)など、実は多様な性的マイノリティが存在します。
異性愛者が大多数で「当たり前」と考えられている社会では、性的少数者に対する根強い偏見や差別があります。
また、性的指向や性自認は繊細でプライベートな情報であるにもかかわらず、本人に許可なくSNSなどで公にする「アウティング」による被害も問題となっています。
障害者
都市開発やインフラ整備などは、大多数である「健常者」を念頭に置いて進められるため、障害をもつ人にとっては住みづらく利用しづらいものになっている傾向があります。
バリアフリー化されていない駅への車椅子でのアクセスや、ホームドア未設置のホームで視覚障害者が転落する事故などが、その例といえるでしょう。
また、雇用者の理解不足が原因で仕事に就く機会などが未だ制限されているという現状があります。
外国人、民族的少数者
特定の民族や国籍の人をターゲットに攻撃する「ヘイトスピーチ」は、マイノリティであるがゆえに受ける被害の最たる例です。
技能実習生や移民・難民を含む外国人への公的支援はまだまだ後回しにされることが多く、十分とはいえません。
外国人は言語的にも少数派であることから、日本語による授業では十分に学ぶことが出来ず、教育における不利益も受けがちです。
上に挙げたもののほかにも、婚外子や1人親家庭、難病患者、大きな傷やあざ・アルビノといった外見的な特徴を持つ人など、多様なマイノリティが存在します。
高齢者をマイノリティに含める場合もあります。
女性は社会的マイノリティ?
人口の割合でいえば半数を占める女性ですが、例えば現在の衆議院議員における女性の割合は10%を切っています。
ほかにも、企業における管理職や起業家、大学における研究者なども軒並み女性の割合が少なく、それぞれのフィールドにおいて女性はマイノリティとなっているのです。
このような状況に大きく影響しているのが「アンコンシャス・バイアス」、つまり過去の教育や環境・経験を通して作り出された、性別に関する無意識の偏見や先入観です。
「女性は家庭で子育てや家事をするもの」「女性は弱くて守るべき存在」といった因習的な考え方が、女性が社会で活躍する際に大きな壁となっていると考えられます。
参照元:令和3年12月内閣府発表資料
見えない障壁
マイノリティはなぜ、社会参加が制限されたり、差別や偏見の対象となりうるのでしょうか。
その背景には、マイノリティと呼ばれる人に対して抱く誤った前提や、根拠のない思い込みが存在します。
しかもその多くは、先ほどの女性に対する先入観のように「無意識」であるため、それによってマイノリティが精神的な苦痛を受けていたり、社会的に不便な状況を強いられていることに考えが及びません。
そもそもこれまでの社会は、いわゆる「普通=マジョリティ」を前提にデザインされてきました。
例えば学校の窓は、黒板に向かって左側に設置されています。
これは、大多数である「右利き」の生徒の手元が文字を書く手の影で暗くならないように、と決められたものだそうです。
今でこそ「左利き用」を見かけるようになりましたが、多くの文房具や道具類は右利き用が当たりまえであるため、「子供の頃に右利きに矯正された」という人も少なくありません。
このように、当事者でさえ気づかないような「見えない壁」がマイノリティに生きづらさを強いているという事実に、私たちが気づくことが大切なのです。
参照元:驚きの事実!教室は右利き有利にできていた!!|左利き.comサイト
マイノリティと多様性
「社会的マイノリティ」の問題が違いの「否定」から生まれるものならば、「多様性(ダイバーシティ)の尊重」はその違いを「肯定」する考え方です。
東京大学で開催されている「異才発掘プロジェクト(ROCKET)」は、そのユニークさゆえに学校になじめない子どもたちに新しい学びの場を提供し、彼らの才能を開花させようというプロジェクトです。
学校の教室では「マイノリティ」であり「和を乱す存在」と捉えられがちなこういった子どもたちも、その個性を認め、自分らしく学べる場所を提供することによって、社会にイノベーションを起こす「異才」として活躍する存在になるはずです。
マイノリティを特定の価値観で排除するのではなく、「多様な個性」として捉えることができれば、その個性を社会の活力や創造する力に変えることができます。
SDGsでも多様性が生み出す新しい発想や今までにないパートナーシップなどが、社会的課題を解決する力になると期待されています。
参照元:異才発掘プロジェクトROCKET
まとめ
ここまで、マイノリティであるがゆえに社会的な障壁で制限を受けている例や、マイノリティに対する根拠のない思い込みが、問題の背景にあることなどをみてきました。
社会的な関心が高まってきたとはいえ、「マイノリティの問題は自分とは関係ない」と思っている人はいまだに少なくありません。
しかし、私たち1人1人が異なる価値観や特性を持っている「ユニークな存在」であることを考えれば、私たち自身が何らかの意味でマイノリティであり得るといえるでしょう。
どんなに元気で若い人でもいずれは老い、社会的な弱さをもつ「マイノリティ」として生きづらさを感じることになるのです。
「マイノリティ」であってもそれを理由に分け隔てられることなく、自分の個性を充分に活かせる社会は、全ての人が自分らしく生きることができる社会です。
個人の多様性を社会全体のエネルギーや創造力に変えられるようになった時こそ、環境変化にも柔軟に適応できる、持続可能性が高い社会が実現するのです。