「フェアトレード」という言葉をご存知でしょうか。
フェアトレードの歴史は欧州から始まっていることもあり、アメリカやヨーロッパにおいては人々が買い物をする時の一つの指標となっているフェアトレード。
一方で、日本においてはまだまだ認知率も低く、「フェアトレード商品は高い」というネガティブイメージの方が先行して普及が進んでいないという現状です。
この記事では、フェアトレードとは何かをご説明したうえで、日本における現状と課題、個人レベルで取り組めることは何かを考えていきます。
「なんとなく高いから選ばないかな」という現状を、どうしたら「少し値段が高くてもフェアトレード商品を買おう」というマインドに切り替えることが出来るのか、一緒に検討していきましょう。
フェアトレードとは?世界や日本における取り組み
「フェアトレード」とは一体どのような制度・仕組みなのでしょうか。
英語を直訳すると「公平な貿易」ですが、具体的には何がどう公平なのかご説明していきます。
フェアトレードとは一体何?
日本における普及活動を行っているフェアトレード・ジャパンは、フェアトレードをこのように定義づけています。
フェアトレードとは直訳すると「公平・公正な貿易」。
つまり、開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す「貿易のしくみ」をいいます。
大量消費大量生産社会では「できるだけ安く作る」ことにフォーカスをしすぎたあまり、原料を作ったり、製品を作る生産者側へのしわ寄せがいっていました。
その結果、信じられないような安価で原料が買いたたかれたり、労働環境の悪化、需要にこたえるべく大量の化学肥料の使用など、原産国側では目も当てられないような環境が広がってしまいました。
この現状にいち早く目をつけて活動を開始したのが、フェアトレードという取り組みです。
参照元:フェアトレードミニ講座|フェアトレードジャパン公式ホームページ
なぜフェアトレードが大切なの?
フェアトレードを実施することの大きなメリットは、労働者に正当な対価を支払うこと。
ただし、これだけが理由ではありません。
単純に遠くの国の人の生活を助けているだけでなく、わたし達の住む暮らしや食べるものにも影響があるとご存知でしょうか。
・労働者に正当な対価を支払うことで生活水準の維持に繋がる
・生産量維持・増加のための農薬や化学品の使用を抑えられる
・労働者の農薬・化学品からの健康被害を抑えられる
・商品を購入する側の農薬摂取量も抑えられる
・健全な取引をすることで、長期的にサステイナブルな取引が期待できる
安い値段でしか買ってもらえないとなると、農業の現場では「とにかく大量に生産する」ことにフォーカスするため、農薬などの化学品の使用率が上がります。
少しでもロスを出さないために、徹底的にスプレーで農薬を振りかけるというのはバナナなどの作物や、綿花において良く見られることです。
これは、労働者の方々の健康被害に繋がるだけでなく、地球の裏側でバナナを食べているわたし達の健康被害にも繋がります。
また、たくさんの化学品を使う農業は地球環境の悪化にもつながり、これもまた原産国だけでなく、地球全体の環境汚染に繋がります。
このように、「原産国だけでなく、地球全体へのメリットがある」ということを理解することが、フェアトレードの普及にあたり不可欠な点と言えるでしょう。
日本におけるフェアトレード普及率の課題
欧米におけるフェアトレードの歴史は長く、1940年代にアメリカにて産声を上げた活動です。
それがヨーロッパにも広がっていき、1960年代には市民運動に繋がるほどの普及率となりました。
すでに60年以上の歴史があるということで、欧米の方々にとっては身近となっているフェアトレードですが、日本においてはどのような状況でしょうか。
日本におけるフェアトレードの歴史
日本にフェアトレードという単語がやってきたのは、1990年代です。
現時点で約30年ほどの歴史がありますが、そのわりにはまだまだ広がっていないというのが正直なところです。
2002年にスターバックス・ジャパンが大体的にフェアトレード導入をうたったことを皮切りに、イオン系列や無印良品、西友などでもキャンペーンが実施されるようになり、少しずつ人々の目にするところにフェアトレードという単語や、フェアトレード認証のついた商品が並び始めたところです。
なぜ日本でのフェアトレード普及率が低いのか
欧米と比べて歴史が浅いこともあり、日本においてはまだあまり普及しているとは言えないフェアトレードですが、なぜ日本ではこれほどまでに広がらないのでしょうか。
理由はいくつか考えられます。
フェアトレードに関する教育がほとんどされていない
欧米においては小学校教育にて、原産国での労働環境の現状やフェアトレードの大切さについて学ぶ機会が設けられています。
このような取り組みは、まだ日本では進んでおらず、積極的にサステイナブルな取り組みについて学ぶ人の中でしか広がっていないというのが正直なところでしょう。
フェアトレードについて聞いたことがある人でも「なんとなく遠くの国のだれかをサポートする仕組みでしょ?」と、チャリティのような感覚でとらえてしまっている人も。
フェアトレード商品を買うことが、周りまわって自分の住む地球環境や食べるものの質にも影響すると知ることが出来れば、もう少しフェアトレード商品の普及が進むと思われます。
相変わらず「安い方が良い」という考え方が強い
「とにかく安いものが良い」という考え方をベースにした消費行動が、まだまだ根強い日本。
「多店舗より1円でも高ければ調整します」などのうたい文句は、まさにそれを象徴していると言えるでしょう。
「質」「素材・色」「価格」などと同じレベルで、「サステイナブルな作り方をしたものか」が、物を買う時の指標に組み込まれるまでは、まだ時間がかかるかもしれません。
また、消費者の方が「価格」を重要視する傾向があるため、小売店の方も「とにかく安いもの」の方で商品棚を埋めることになり、結果としてフェアトレード商品は隅の方に少しだけ置かれているという現状が続いてしまいます。
消費者も、販売者もフェアトレードのメリットを理解し、生活に取り入れようと意識を変えていくことが不可欠です。
2020年のアンケート結果|まだまだ低い認知率
生活者起点のリサーチ&マーケティング支援を行なうネオマーケティングの調査によると、エシカル消費について実施している項目の中でもフェアトレード商品の購入を実践している人は限定的でした。
・リサイクル製品やリユース製品 35.5%
・オーガニック・自然由来成分の商品 28.7%
・フェアトレード商品 13.0%
参照元:「サーキュラーエコノミーに関する調査」生活者の消費行動や、環境に対する意識・取組みを徹底調査!|PR TIMES
リサイクルやオーガニック商品は、すでに多くの人にメリットが知れ渡っていることと、それを受けて市場に出回っている数も多いため、多くの人が手に取りやすいため、購入経験がある人の数が伸びたと言えるでしょう。
それに比べてフェアトレード商品は、実際に買ったことがある人となるとかなり限られていることが、この調査結果から見えてきました。
日本のフェアトレード普及に向けて|わたし達にできること
約30年の歴史のあるフェアトレードですが、実際にスーパーで日常の買い物をするときに、どれだけ意識できているかというと、正直自信をもってYESと言える人は少ないはず。
残念ながら日本におけるフェアトレードの認知率・普及率はまだまだ限定的ですが、一個人でもできることは沢山あります。
自分に出来る範囲から始めてみませんか。
フェアトレードについてしっかりと学ぼう
何よりも大切なのは、フェアトレードはどのような仕組みなのか、そしてどのようなメリットがあるのかを勉強することです。
・フェアトレード商品を買うことはどのようなメリットがあるのか
・なぜ他の商品と比べてフェアトレード商品は値段が高くなるのか
とくに3つ目の点を理解できれば、買い物をするときに「安ければ安いだけよい」という考え方から少しだけ離れることができるかもしれません。
「少し値段が高くても、遠い国のだれかだけじゃなく、自分にとっても良いものだから」ということを理解できれば、少しずつフェアトレード商品を手にしたときの印象が変わるはずです。
フェアトレード商品を買おう
せっかくフェアトレードについて勉強をしたら、身の回りのお店にてどれだけ・どんな商品があるのかチェックしてみましょう。
「他の商品と比べて値段・質はどうか」「どれだけお店側が注力して商品を並べているか」など実際に目でみることは、さらなる勉強になります。
まだまだフェアトレード商品の数は限定的ですが、一般的なスーパーでも「コーヒー豆」「チョコレート」あたりは取り揃えていることが多いです。
ぜひチェックしてみてください。
SNSや口コミで発信をしていこう
フェアトレードについて勉強したり、実際に商品を買ってみたら、ぜひ周りの人にも紹介していきましょう。
単純に「このコーヒー美味しかった!」というコメントでも、別の人が購入するキッカケになるかもしれません。
そうやって少しずつ「値段だけじゃない価値」に気づく人が増えることが、ますますフェアトレード商品のラインアップを増やすことに繋がります。
普及活動というと大それた話のように感じられますが、まずは自分が買ってみて、良いなと思ったものを人に勧めるだけで大丈夫です。
一人ひとりが意識して、小さな一歩を踏み出すことが大切です。
まとめ:日本でのフェアトレード普及は個人のエシカル意識改善が鍵
日本においては、残念ながらフェアトレード普及率はまだ限定的です。
依然として「安い方が良い」という考え方が根強いことと、フェアトレードについての理解が進んでいないことが原因と言えるでしょう。
ただし、コロナ禍を受けて、少しずつではありますが消費における考え方が見直されるようになってきました。
これを追い風として、サステイナブルな取り組みをしている企業や商品の普及率がグッと広がるといわれています。
フェアトレードが単なるチャリティではなく、自分の暮らしや食べるものへのインパクトがある重要なアクションだということへの理解が進むことで、日常生活においてフェアトレード商品を手にする機会が増えていくことを期待しています。