世界的な課題を解決するための、世界共通目標「SDGs(エスディージーズ)」。
「SDGs」では、2030年までに達成すべき、私たちの住環境や自然環境に関する17の目標が設定されています。
しかし、すべての目標を、各国の努力だけで達成することはできません。
現在、各国のNPOや民間企業もさまざまな取り組みをおこなっていますが、加えて、私たちひとりひとりによる理解と積極的な行動も必要です。
そこで今回は、目標4「質の高い教育をみんなに」に焦点を当てて解説します。
目標達成のために、私たちには何ができるのか考えていきましょう。
SDGsの目標4「質の高い教育をみんなに」とは?
SDGsは、17の目標と目標達成に向けた具体的な取り組み169項目から構成されています。
17ある目標のうち、4番目にあたる「質の高い教育をみんなに」の内容を見ていきましょう。
目標4「質の高い教育をみんなに」の概要
目標4「質の高い教育をみんなに」では、世界の誰ひとり残さずに公正で質の高い教育を受けられる機会、生涯学習の機会の提供を目指していて、同時に、その機会を提供できる環境作りをおこなっています。
そして、教育環境を整えるために、10個の具体的な取り組みを「ターゲット」として定めています。
目標4「質の高い教育をみんなに」のターゲット
目標4「質の高い教育をみんなに」で定められているターゲットは、以下の10項目です。
1.2030年までに、すべての子どもが男女の区別なく、適切かつ有効な学習成果をもたらす、自由かつ公平で質の高い初等教育および中等教育を修了できるようにする。
2. 2030年までに、すべての子どもが男女の区別なく、質の高い乳幼児の発達支援、ケアおよび就学前教育にアクセスすることにより、初等教育を受ける準備が整うようにする。
3. 2030年までに、すべての人々が男女の区別なく、手頃な価格で質の高い技術教育、職業教育および大学を含む高等教育への平等なアクセスを得られるようにする。
4. 2030年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事および起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。
5. 2030年までに、教育におけるジェンダー格差を無くし、障害者、先住民および脆弱な立場にある子どもなど、脆弱層があらゆるレベルの教育や職業訓練に平等にアクセスできるようにする。
6. 2030年までに、すべての若者および成人の大多数(男女ともに)が、読み書き能力および基本的計算能力を身に付けられるようにする。
7. 2030年までに、持続可能な開発と持続可能なライフスタイル、人権、ジェンダー平等、平和と非暴力の文化、グローバル市民および文化的多様性と文化が持続可能な開発にもたらす貢献の理解などの教育を通じて、すべての学習者が持続可能な開発を推進するための知識とスキルを習得できるようにする。
子ども、障害およびジェンダーに配慮した教育施設を構築・改良し、すべての人々に安全で非暴力的、包摂的、効果的な学習環境を提供できるようにする。
9. 2020年までに、開発途上国、特に後発開発途上国および小島嶼開発途上国、ならびにアフリカ諸国を対象とした、職業訓練、情報通信技術(ICT)、技術・工学・科学プログラムなど、先進国およびその他の開発途上国における高等教育の奨学金の件数を全世界で大幅に増加させる。
10. 2030年までに、開発途上国、特に後発開発途上国および小島嶼開発途上国における教員養成のための国際協力などを通じて、資格を持つ教員の数を大幅に増加させる。
「質の高い」教育が必要となる背景とは?
教育の持つ力は、生きる力を育成することです。
そのため、誰もが教育を受ける必要と権利を持っているはずです。
しかし、世界では教育を受ける機会がなく、国民の識字率が50%に達しない国も多く存在します。
その場合、将来的に働くことになっても書類の作成ができない、契約書が読めないなどの問題を抱え、仕事の選択肢が限られます。
また、病院でもらった薬の飲み方が読めないなど、命に関わることもあります。
識字率はあくまでひとつの指標ですが、教育が担う役割は大きく、人々の暮らしに与える影響も大きいといえます。
さらに、公正な教育を受ける機会がなかったために誤った認識から差別意識が持ってしまったり、暴力に発展する例もあります。
教育は読み書きや四則計算を教えるだけでなく、ひとりひとりの思考を養う場でもあるのです。
今後、世界全体で経済発展を目指すためにも、各国は国家間の教育格差および経済格差をなくし、誰一人取り残さずに公正な教育を受けられるよう環境を整える必要があります。
世界における教育問題
世界全体において、近年の就学率や識字率は大きな向上が見られています。なかでもアフリカでは大きな改善がみられており、1990年代は就学率が52%で識字率が76%であった状況が、2012年には就学率が78%で識字率が86%にまで高まっているのです。
ただ、これらのデータは、あくまでも世界各国の就学率や識字率を平均したものであることを忘れてはいけません。国ごとや、もっと細かく地域ごとにして見ていくと、これらの数字よりもかなり低いデータ結果を示すところもあるのです。
学費が払えない、生活のために働かなければいけない、紛争によって通学ができない子どももいます。なかでも後発開発途上国とされる国々とされる47ヵ国では、識字率が南スーダンで27%、ニジェールでは15%という結果が明らかになっています。
また、問題は発展途上国に限りません。
例えばアメリカでは、人種差別や貧富の差による教育格差が長い間、問題視されています。韓国でも、家庭間の経済格差による教育格差が問題となっているほか、都市部と郊外での地域格差による教育の差が生まれている国もあります。
しかしこれらはまだ、一部の例にすぎません。
ただ、世界全体で教育に関する問題が起きていて、国ごとに異なる問題を抱えていることがわかります。
日本における教育問題
一方、日本ではどのような教育問題が起きているのでしょうか?
日本では小中学校教育の義務化など、教育を平等に受ける機会は整備されているように感じます。
しかし、昨今の日本社会は急激に高度化・複雑化しているため、それらに対応できるよう教育をおこなう必要があります。
ただし、学校教育の現場だけでその対応をおこなうには人材、資金、時間の不足が問題となり、教育環境の整備が遅れているという問題があります。
また、いじめや不登校などひとりひとりの心のケアが必要となるケースも増えていて、心に寄り添ったケアができる人材の確保も急務となっています。
SDGsの目標4「質の高い教育をみんなに」達成に向けた日本の取り組み
日本政府は目標達成のための取り組みとして、まず、2015年に「平和と成長のための学びの戦略」を発表しました。
現在もこの戦略にもとづき、教育分野における国際協力をおこなっています。
具体的な国際教育への協力例のひとつとして、「みんなの学校プロジェクト」があります。
「みんなの学校プロジェクト」は、JICA(ジャイカ=独立行政法人国際協力機構)が西アフリカを中心に支援してきた住民参加型の学校運営プロジェクトです。
日本政府はこのプロジェクトへの協力を支援し、保護者や住民の教育に対する意識を向上させるとともに、子どもたちの学びの質も向上させてきました。
また、「アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ」というプログラムでは、アフリカの若者に日本の大学や大学院で教育を受けたり、日本企業でのインターンシップに参加したりする機会を提供しています。
こうした日本政府による海外向け支援のほか、日本の民間企業でも教育に関する取り組みが見られます。
例えば、日本の子どもたちに金融への興味関心を持ってもらおうと、SMBC日興証券が小学校への出張教育がおこなっていて、ほかにもさまざまな企業が教育の現場に参加しています。
世界でのSDGsの目標4「質の高い教育をみんなに」に対する取り組み
SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」の取り組みは、もちろん日本だけでなく世界中で行われています。
例えば、西アフリカのニジェールで取り組まれたものとして、住民が参加するかたちの学校運営です。これは、国や行政に頼ることなく、この地域の人々で力を合わせながら学校運営をする仕組み作りが行われました。
子ども達が教育を受けることができるように環境を整えることにより、先生や保護者の意識を変えることに成功したのです。そして、この学校は当初24校のみでしたが、2007年の時点では14,000校にまで拡大しました。
これはまさに持続可能な目標であり、SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」に沿った取り組みといえます。
SDGsの目標4「質の高い教育をみんなに」達成に向けて私たちにできること
世界や日本で起きている教育の問題に対して私たちができることは、まず問題をきちんと認識することといえます。
現在の日本には多くの資料があふれ、インターネットで海外の情報も無料で手に入れることができます。
そこでまずは、正しい情報に触れ、起きている問題を認識し、その根本原因がどこにあるのかを考えることが大切です。
そのうえで、国内外問わず一人でも多くの人が教育を受けられるよう、できることを考えることが必要です。
例えば、世界の子どもの教育格差がなくなるよう寄付をしたり、日本の子どもが学びを得られるようボランティアに参加したりと、ひとつひとつのアクションが積み重なることで、大きな変化につながります。
質の高い教育で 豊かな社会へ
ひとりでも多くの人に質の高い教育を受けられる機会を与え、ひとりひとりがそれぞれの立場で問題に向き合いつつ国際協力をおこない、世界が抱える問題を解決することが大切です。
そうすることで、今、世界が抱える問題に対する解決策の選択肢が生まれる、解決までのスピードがあがるといったメリットがうまれ、より豊かな社会を目指せるのではないでしょうか。