ジェンダーレスな考え方が浸透している昨今、LGBTに関する問題が浮き彫りになっています。
最近はメディアやSNSにおいても、多くの著名人がLGBTであることを告白し、世の中が抱える課題を変えるきっかけにもなっているといえるでしょう。
とはいえ、未だ周囲からLGBTについて理解をしてもらえず、悩み苦しむ方も少なくありません。
今回は、LGBT問題の現状や課題について触れるほか、自治体や企業の取り組みについて解説します。
LGBTとは
LGBTは、性的マイノリティ(性的少数者)を表す言葉の一つです。
以下の性的趣向の頭文字をとって「LGBT」といわれています。
・Lesbian(レズビアン)…女性の同性愛者
・Gay(ゲイ)…男性の同性愛者
・Bisexua(バイセクシャル)l…両性愛者
・Transgender(トランスジェンダー)…身体の性と心の性が一致せず、違和感を感じている人
性的趣向とは、恋愛感情を持つ相手の性別のことをいい、思春期の頃に気がつくケースが多いようです。
また、トランスジェンダーは、性自認であり、自分の性に対する認識を表します。
LGBTを取り巻く問題
多様性が大切にされるようになった昨今、LGBT問題についても多くの人が目を向けるようになりました。
しかし、これまで築いてきた社会や文化、考え方を根底から変えていくのは難しく、未だ根強く問題は残っています。
続いては、LGBTを取り巻く問題について紐解いていきましょう。
学校教育におけるLGBTの課題
宝塚大学看護学部が実施した「LGBT当事者の意識調査」によると、調査対象となった15,141件の回答のうち、約半数が10代でいじめを経験したといいます。
いじめの内容としては、「ホモ」「おかま」「おとこおんな」といった差別的発言が多く、服を脱がされるような被害もありました。
学校教育で、LGBTや同性愛について習ったことがある人は3割程度にすぎず、中には異常的なものだという認識を得た人もあったようです。
職場におけるLGBTの課題
学校に限らず、社会に出てからもLGBT問題を抱えた人は多くいます。
例えば、職場においてLGBTであることをカミングアウトする割合は非常に低く、ほとんどの人が悩みを一人で抱えている状況です。
また、就活において面接でLGBTを打ち明けたことが原因で、不合格になったというケースも後を絶ちません。
教育現場と同じく、社会や職場においても、LGBTへの理解が乏しいことの表れといえるでしょう。
結婚に関するLGBTの課題
日本では、日本国憲法第24条1項において、「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」と定められています。
この文言からは、同性愛者の結婚が認められないという意味合いを受け取れませんが、実質のところ、日本ではまだ法整備が行き届いていないため、同性婚が認められていない状態です。
地域によっては、パートナーシップ制度を導入するなど、同性カップルをサポートする制度を設けているものの、法的な効力はありません。
LGBTに関する企業の取り組みについて
近年は、日本でも多様性を大切にするダイバーシティに取り組む企業が増加傾向にあります。
多様な人材や多様な働き方のポイントとなるのが、LGBT問題です。
日本の企業の取り組みについて解説します。
野村證券株式会社の取り組み
野村ホールディングスの子会社で、証券会社である野村證券株式会社では、独自に「野村LGBTアライズ マルチカルチャーバリュー・ネットワーク」という活動を立ち上げています。
LGBTの理解者を増やし、LGBT当事者が働きやすい環境を整えていく活動です。
LGBT当事者を招いた講演会を開催するなど、社員に対しての啓蒙活動を進めています。
参照元:職場×多様性|野村證券株式会社
サントリーグループ
サントリーホールディングス株式会社では、2018年にLGBTの取り組み指標である「PRIDE指標」で最高評価のゴールドを受賞しています。
性別に限らず、国籍や年齢にとらわれない「ダイバーシティ経営」を人事の基本方針としており、創造性あふれる職場環境や従業員の属性の多様化を推進しているのが特徴です。
具体的には、就業規則内の配偶者の定義に「同性パートナー」を加えたり、LGBTに関する相談窓口を設置するなど、積極的な取り組みを行っています。
参照元:LGBTの取り組み指標「PRIDE指標」で最高評価のゴールドを受賞!|サントリー
KDDI
携帯電話事業などを手がけるKDDIでは、5年間連続で「PRIDE指標」の最高評価を得ています。
中でも、同性パートナーの子供を社内制度上「家族」として扱う「ファミリーシップ申請」が非常に高く評価されました。
2013年度から、すでにLGBTに関する社内公募型セミナーを実施するなど、いち早くLGBT問題の取り組みを行っています。
参照元:LGBTQに関する取り組み指標「PRIDE指標」の最高位「ゴールド」を5年連続で受賞~同性パートナーの子を社内制度上”家族”として扱う新制度がベストプラクティス賞を受賞~|KDDI
LGBTに関する世界の取り組み
世界に目を向ければ、LGBTに関する法整備が進んでいる国が多くあります。
NPO法人EMA日本の報告によれば、2021年9月時点で、同性婚や登録パートナーシップといった同性カップルの権利を保障する制度を用意している国は、世界の約20%です。
例えば、アイルランドでは、2015年に同性婚が合法化しました。
これは、国民投票の結果で成し得たもので、世界で初めて国民投票で同性婚が合法化された国です。
また、オーストラリアでは、2017年に婚姻改正法が施行され、性別やジェンダーを問わず、誰もが自由に結婚できるようになりました。
LGBTの受け入れが最も進んでいる国など、世界各国のLGBT関連法の現状についてはMeltwater Japan社が掲載している下記の記事もご参照ください。
⚫️参考:世界各国のLGBT関連法の現状比較!LGBTの受け入れが最も進んでいる国は?
LGBTに関する日本の取り組み
現在、日本では同性婚やパートナーシップといった同性カップルを護る法律はありません。
こうした状況は、G7のアメリカ・イギリス・フランス・ドイツ・イタリア・カナダ・日本の中では唯一です。
ロシアを加えたG8でいえば、ロシアと日本の二カ国のみとなっています。
とはいえ、地方自治体においては、同性パートナーを認める動きが出始めました。
日本における取り組みとして、地方自治体の活動を紹介します。
東京都における取り組み
渋谷区や世田谷区など、12の自治体で、同性パートナーシップ証明制度を導入しています。
2021年6月の都議会本会議では、知事が東京都として制度の導入を検討するとの明言もありました。
すでに同性パートナーシップ証明制度を導入しているエリアでは、「東京都パートナーシップ制度導入自治体ネットワーク」を結成し、情報交換や制度の活用を促す活動を行っています。
大阪府における取り組み
大阪府では、2020年1月22日に同性パートナーシップ制度を導入しました。
これは、茨城県に次いで二例目に当たり、全ての人が自分らしく生きるための取り組みの一環です。
一方もしくは双方が性的マイノリティの上、青年に達していることや、両当事者がすでに他者と婚姻関係にないことなど要件を満たす必要があります。
また、プライバシーの確保を保つために、1日3組までが交付対象です。
参照元:「大阪府パートナーシップ宣誓証明制度」について|大阪府HP
まとめ
LGBT問題に限らず、生き方や考え方は一人一人異なります。
全て一致するという人はいないといっても過言ではないでしょう。
LGBT問題に取り組むことで、全ての角度において多様性を考えるきっかけとなります。
多様な人々が生きやすい環境を作るためには、企業や自治体だけではなく、個人の意識改革も欠かせません。
それぞれが持つ考え方の違いや悩み、苦悩を認識し、そして受け止めるだけではなく、よりスムーズに過ごすための取り組みを進めていきたいものです。
近年、LGBTに関する認知は高まりつつあり、より実践的な段階へと突入しています。
近い将来、日本でも世界と同じように同性婚が法律的に認められるような、先進的な動きが期待できるでしょう。