公式LINEアカウントでも絶賛配信中!

友だち追加
ENVIRONMENT

全固体電池とは?従来との違いや仕組みから実用化までを詳しく解説!

【用語解説】全固体電池とは?従来との違いや仕組みから実用化までを詳しく解説!

全固体電池とは、イオンの通り道である電解質まで含めて電池の主要部材をすべて固体にした次世代の蓄電池です。現在主流のリチウムイオン電池は液体の電解質を使うため、この点が最大の違いになります。一方で「燃えない」「もうすぐ車に載る」といった言葉が先行しやすい分野でもあります。この記事では、従来の電池との違いや仕組みを押さえたうえで、トヨタ・日産・ホンダなど日本勢の実用化の現在地を比べます。EVや電池搭載の製品を選ぶときに何を基準に判断すればよいかも、あわせて取り上げます。

この記事で学べること

  • 全固体電池とリチウムイオン電池の違いと、充放電の仕組み
  • 硫化物系・酸化物系・高分子系の3種類の特徴と、よくある誤解
  • トヨタ・日産・ホンダの計画と、2026年10月時点の実用化の位置づけ
  • EVの買い替えで全固体電池を待つかどうかを決める判断基準
  • 環境面で全固体電池に期待できる点と、まだ分からない点
目次

全固体電池の仕組み|リチウムイオン電池との違いはどこにあるのか

電池は、正極、負極、その間でイオンを運ぶ電解質、そして両極の接触を防ぐ仕切りで構成されています。現在のリチウムイオン電池では、電解質に有機溶媒を使った液体が入っており、仕切りには薄い樹脂の膜(セパレータ)が使われています。全固体電池はこの液体と仕切りの役割を、1枚の固体電解質にまとめる発想の電池です。

電解質を固体にすると何が変わるのか

液体の電解質は燃えやすい有機溶媒でできているため、電池が壊れたときや高温になったときの発火が、設計上の大きな課題でした。固体電解質に置き換えれば、この弱点を構造から減らせると期待されています。

もう一つの利点は、電池の内部設計の自由度です。液体がないので、電池の中で電極を直列に積み重ねるといった構造も取りやすくなります。そのぶん同じ体積に詰め込めるエネルギーが増え、充電を速くできる可能性があるとされています。日産は2022年の発表で、エネルギー密度を従来比で約2倍にすることを目指すとしています。

充放電で起きていること

放電するとき、リチウムイオンは負極から固体電解質の中を通って正極へ移動します。同時に電子は外部の回路を通って負極から正極へ流れ、これが機器を動かす電気になります。充電では、外から電気を加えることで、この動きが逆向きに起こります。

基本の動きはリチウムイオン電池と同じで、変わるのはイオンが通る道が液体から固体になる点だけです。ただし固体の中をイオンが通る道筋は、液体より狭く、通りにくくなります。だから固体電解質の材料選びと、電解質と電極の接触面のつくり方が開発の中心になっています。

全固体電池の3つの種類|硫化物系・酸化物系・高分子系の比較

全固体電池は、固体電解質に何を使うかで大きく3つに分かれます。どれが優れているかは用途で変わります。車載向けの大容量電池と、小型機器向けの電池とでは、求められる条件が異なるためです。

硫化物系|車載向けの本命とされる材料

硫化物系は、イオンを通しやすい材料がそろっており、車載用の開発で最も多く名前が挙がります。材料が比較的やわらかく、電極と押し付けて接触面をつくりやすい点も利点です。

一方で、水分に触れると有毒な硫化水素が出る性質があり、製造や取り扱いは水分を極力減らした環境で行う必要があります。トヨタと出光興産が協業の対象にしているのも、この硫化物系の固体電解質です。

酸化物系|安定性が高いが加工が難しい

酸化物系は、化学的に安定していて、水分や空気に強い材料です。その一方で硬くてもろく、粒子どうしの接触が悪いとイオンが通りにくくなります。一般に、高温で焼き固める工程が必要になります。

この性質から、大型の車載電池より、積層セラミックコンデンサの製造技術を生かせる小型の電池との相性が良いとされてきました。

高分子系|柔軟で加工しやすいが温度に注意

高分子(ポリマー)系は、柔軟で加工しやすく、形の自由度が高い点が特徴です。一方で、室温ではイオンが動きにくいため、加温して使う設計が多いとされています。

この3種類は優劣ではなく、得意分野の違いとして見るのが現実的です。単に「全固体電池」と書かれた記事や製品でも、どの種類を指すかで、性能も課題も変わります。

全固体電池のメリットとデメリット|誤解されやすい4つの点

全固体電池の長所は「高エネルギー密度」「安全性」「長寿命」と紹介されることが多く、短所は「コスト」「製造の難しさ」とまとめられがちです。ここでは、その説明で誤解が生まれやすい4点を整理します。

「燃えない」は「リスクがゼロ」ではない

液体の可燃性有機溶媒がなくなるため、発火のリスクが下がるのは確かです。ただし、安全性は電池全体で決まります。硫化物系では水分に触れたときの硫化水素の発生が、電極材料や外装、充電の制御などでも別の課題が残ります。

「液体がないから絶対に安全」ではなく、「従来の弱点が減り、新しい注意点が加わる」と捉えるのが正確です。

「高温でしか動かない」は種類による

「全固体電池は高温でしか動かない」という説明を見かけることがあります。ただ、酸化物系で数百度という温度が出てくるのは、多くの場合、材料を焼き固める製造工程の話で、電池を使うときの温度とは別です。

使うときに温度の影響を受けやすいのは、先に述べた高分子系のように、材料の性質で加温が必要になる場合です。温度の話が出てきたときは、製造の温度なのか、使用時の温度なのか、どの種類の話なのかを確認すると誤解を避けられます。

「長寿命」はまだ実証の途中

固体電解質は、液体のように蒸発したり、水分や酸素と反応して劣化したりしにくいため、長持ちすると期待されています。一方で、充放電のたびに電極がふくらんだり縮んだりすると、固体どうしの接触が悪くなり、性能が落ちるという別の課題があります。

車載用で実際に何年・何万キロ使ったときの結果がどうなるかは、これから各社の検証で明らかになっていく段階です。

「高性能ならすぐ安くなる」とは限らない

各社の公表資料には、コスト目標が示されています。たとえば日産は、2028年度に1kWhあたり75ドル、将来的には65ドルまで下げる可能性があるとしています。ただしこれは目標値で、実際の販売価格を示すものではありません。

製造に高価な材料や特殊な環境が必要な間は、初期の搭載車の価格に影響が出る可能性があります。コストは「いつ下がるか」を各社の量産の進み具合と合わせて見る必要があります。

日本の実用化の現在地|トヨタ・日産・ホンダの計画を比べる

日本では、自動車各社と材料メーカーがそれぞれ別の角度から全固体電池の実用化を進めています。時期の目標はいずれも「目指す」段階のもので、量産の開始が確定した年ではない点に注意が必要です。

トヨタと出光興産|材料から量産体制をつくる

トヨタと出光興産は2023年10月、バッテリーEV向け全固体電池の量産に向けた協業を発表しました。対象は硫化物系固体電解質で、「電解質の開発とパイロット設備の準備」「その設備での生産と電池・車両の開発」「本格量産の検討」という3段階で進めると説明されています。トヨタは、2027〜28年の全固体電池の実用化をより確実にし、その後の本格量産を目指すとしています。

出光興産は2026年1月29日、固体電解質の大型パイロット装置について最終投資決定を行い、建設を始めたと発表しました。千葉事業所に設け、2027年中の完工を目指すとされています。生産能力は年間数百トン規模と報じられています。

日産|自社開発のセルと試作ラインで2028年度を目指す

日産は、2028年度までに自社開発の全固体電池を搭載したEVを市場に投入する方針を示しています。横浜工場には試作生産設備があり、2024年4月に報道向けに公開されました。

2026年4月には、車載を想定したセル(23層の試作パックとされる)が充放電の性能目標を満たしたと報じられています。同年度中に積層数を決め、モジュールの設計と試作に進むという計画です。具体的な数値は公表されていません。

ホンダ|栃木のパイロットラインで量産技術を検証

ホンダは2024年11月、栃木県さくら市に設けた全固体電池のパイロットラインを初めて公開しました。延べ床面積は約27,400平方メートル、投資額は約430億円と報じられており、NEDOのグリーンイノベーション基金の支援も受けています。電極材料の混ぜ合わせから、塗工、プレス、セルの組み立て、モジュールまでを一貫して検証できる設備です。

ホンダは、この設備で量産技術を確かめながら電池セルの基本仕様を決め、2020年代後半に投入する電動車への搭載を目指すとしています。稼働は2025年1月を予定していると公表されました。

3社を並べると見えること

3社に共通するのは、「2027〜2028年ごろ」「2020年代後半」という時期の目標を掲げつつ、現時点では試作や検証の段階にある点です。また、自動車メーカーが電池だけでなく、材料の量産体制を含めて整える動きになっている点も共通しています。

電解質のような材料が足りなければ、電池が設計どおりにできても、車に載せられる台数は限られます。実用化の時期を読むときは、車の発売日だけでなく、材料の量産設備がいつ整うかも見ておくと目安になります。

すでに使われている全固体電池|小型用途と車載用は別の話

「全固体電池はもう実用化されている」という説明と、「まだ実用化されていない」という説明の両方を目にします。どちらも誤りではなく、小型の電池と車載用の大型電池を分けて見ると、食い違いが解けます。

小型の全固体電池はすでに製品として存在する

TDKは、基板に実装できる小型の全固体電池「CeraCharge」を製品化しており、IoT機器や温度計などの電源に使われているとされています。こうした小型の電池は、容量が小さいぶん、材料や製造の難しさを抑えやすく、高温になる環境でも使える点が評価されてきました。

車載用の大容量化が難しい理由

車載用の電池は、小型の電池と比べて、桁違いに大きな容量と、電極の面積が求められます。電極が大きくなるほど、固体どうしの接触を均一に保つのが難しくなります。また、大量の材料を安定して、かつ安く用意する仕組みも必要です。

2026年10月時点で、日本の自動車メーカーの公表をみる限り、全固体電池を搭載した量産車はまだ発売されていません。各社の目標は、あくまで2027〜2028年以降の市場投入です。「全固体電池を使った製品がある」という情報に触れたときは、小型用途の話なのか、車載用なのかを見分けることが大切です。

「半固体」などの呼び方にも注意

電池の呼び名には、「半固体電池」のように、電解質に液体の成分が残るものを指す言葉もあります。メーカーや報道によって、全固体電池との線引きの説明が異なる場合があります。電解質がすべて固体かどうかを、公式の説明で確認するのが確実です。

全固体電池を待つべきか|EVや電池搭載製品を選ぶときの判断基準

全固体電池の話題を知ると、「今EVを買うのは早いのでは」と迷う人も多いはずです。待つべきかどうかに正解はありませんが、判断の軸は整理できます。

買い替え時期が2028年より前か後かで考える

目標どおりに進んだとしても、全固体電池搭載車が出始めるのは2027〜2028年以降です。次の乗り換えがそれより前になる見込みなら、全固体電池を待つよりも、今ある車種の中で、自宅や職場の充電環境、毎日の走行距離に合うかどうかで選ぶほうが現実的です。

反対に、乗り換えまで数年の余裕があるなら、各社の発表を見ながら判断できます。

初期の価格と台数は不確実だと考えておく

搭載車が発売されても、初期は車種や台数が限られ、価格も高めになる可能性があります。コストの目標は各社が示していますが、確定した販売価格ではありません。「全固体電池だから買う」と決める前に、車の価格、航続距離、充電のしやすさを、現行のモデルと同じ条件で比べることをおすすめします。

どの電池でも確認しておきたいバッテリー保証と使い方

電池の種類が何であっても、保証の内容は比べられます。バッテリー容量の保証が何年・何キロまで続くのか、劣化したときの交換や回収はどうなるのかを、購入前に販売店で確認しておくと安心です。

スマートフォンやパソコンの電池も、高温の場所に置かない、満充電のまま長時間放置しない、といった使い方で、電池の寿命を延ばせます。全固体電池を待つ間にも、今の電池を長く使うことが、資源を使いすぎない現実的な行動になります。

環境の視点|全固体電池は本当に環境にやさしいのか

全固体電池は、長寿命や省資源への期待から、環境面でも注目されます。ただし、「環境にやさしい」と言い切れるだけの公開データは、まだそろっていません。期待できる点と、分からない点を分けて見ておきます。

資源の面で期待できる点と注意点

全固体電池でも、リチウムなどの資源は必要です。電池の資源の使い方は、正極や負極に何を使うかでも変わるため、固体電解質にしただけで資源の問題が解決するわけではありません。固体電解質の原料にも、材料によっては希少な元素が必要になる場合があります。

製造と寿命の面で見ておきたい点

液体の劣化要因が減るため長持ちすれば、電池の交換回数を減らせる可能性があります。その一方で、水分を極力減らした環境での製造や、材料の合成にどれだけのエネルギーが必要になるかは、量産の設備が動き始めてから見えてくる部分です。

製造から廃棄までを通した環境への影響(ライフサイクルでのCO2排出量など)は、全固体電池ではまだ検証が進んでいる途中です。

リサイクルの面で分からない点

現在のリチウムイオン電池向けのリサイクルの工程が、そのまま全固体電池に使えるとは限りません。固体電解質の回収方法や、使い終わった電池の扱い方は、実用化に合わせて整える課題として残っています。

環境への貢献を語るときは、「寿命が延びる可能性がある」「資源や製造の影響はこれから検証される」と、分かっていることと分からないことを分けて見ることが大切です。

まとめ

全固体電池は、電解質を固体にすることで、安全性、エネルギー密度、充電の速さなどの向上が期待される電池です。ただし、「燃えない」「高温でしか動かない」「もう買える」といった言葉は、電池の種類や用途によって当てはまる場合と、そうでない場合があります。種類ごとの特徴を知っておくと、情報の見分けがつきやすくなります。

日本では、トヨタと出光興産が硫化物系の電解質の量産体制を整え、日産が自社開発のセルを試作し、ホンダが栃木のパイロットラインで量産技術を検証しています。いずれも2027〜2028年ごろ、あるいは2020年代後半を目標にしていますが、2026年10月時点では、量産車の発売はまだ先の段階です。

EVの購入や買い替えを考えるときは、全固体電池を待つかどうかを、自分の乗り換え時期や充電環境と合わせて決めるのが現実的です。環境面についても、期待と検証中の部分を分けて見ていくと、情報に振り回されにくくなります。

次にEVやスマートフォンなどを買い替えるときは、まずバッテリー保証の年数と条件を1つだけ確認してみてください。

  • 全固体電池は、電解質を固体にした電池で、硫化物系・酸化物系・高分子系の3種類に分かれる
  • 「燃えない」「高温でしか動かない」といった説明は、種類や条件によって当てはまり方が変わる
  • トヨタ・日産・ホンダは2027〜2028年ごろ、または2020年代後半を目標にしており、2026年10月時点では量産車は発売されていない
  • EVの購入は、乗り換え時期、充電環境、バッテリー保証の条件で判断できる
  • 環境面の効果は、資源、製造、リサイクルを含めて検証の途中である

参考文献

  • 記事を書いたライター
  • ライターの新着記事
MIRASUS

MIRASUS編集部。地球と人に優しい未来をつくるサステナビリティな事例をご紹介。誰にでもわかりやすくSDGsに関する情報は発信していきます。

  1. りそな×大学生「共創プロジェクト」の1年間。「さすてにゃ診断」の誕生から最終発表までを振り返る

  2. 廃棄予定の複合機を再び使う|TMTユニバーサル「コピーキ革命」のレンタルを紹介

  3. 創業120周年を迎えたあらしおの歴史|駿河の塩づくりから平釜塩の復活まで

RELATED

PAGE TOP