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企業・団体事例

【前編】135年前の創業当時から日本生命が行うサステナビリティを再確認

相互会社という会社形態で、株主を持たず契約者への配当を行う共存共栄・相互扶助の経営方針。女性職員が9割を占める企業の在り方。創業来実践してきたサステナビリティ経営について、サステナビリティ企画室(2023年度。2024年度からはサステナビリティ経営推進部に組織変更)が考え、行うことをお聞きしました。前編・後編に分けてお届けします。

鹿島 紳一郎(かしま しんいちろう)様
日本生命保険相互会社 執行役員チーフサステナビリティオフィサー(CSuO) 兼主計部長。
1993年入社。広報部長、商品開発部長、浜松支社長など多様な部署を経験し、2022年度から主計部で決算業務などに携わると同時に、2023年度からはサステナビリティ企画室長も務めた。2024年度は、サステナビリティ経営推進部担当執行役員として、日本生命グループのサステナビリティ経営を統括。

相互会社とは?共存共栄とは?

─相互会社の仕組み、共存共栄についてお聞かせください。

鹿島紳一郎氏(以下、鹿島:敬称略):相互会社というのは、あまり知られていない会社形態だと思います。相互会社は生命保険業特有の会社形態で、「相互扶助」の考え方に基づき、契約者が保険加入と同時に会社の構成員である「社員」となる社団法人です。「契約者が社員」となり、社員総会である「総代会(株式会社での株主総会に相当)」が意思決定機関ということになります。

相互会社形態には、株主が存在しないため、契約者のために、つまり、お預かりした保険料を運用し、最終的に金銭を契約者にお返しすることという保険会社の役割を果たすべく、保険制度を運営することができます。保険会社の保障責任は長期にわたり行われるものですので、長期的に安定的な経営を行い、契約者の利益を優先・最大化するために、当社は相互会社形態を採用しております。

生命保険は、契約者が少しずつ保険料を出し合い、その内のどなたかに何かあった場合に、保険金や給付金を受け取る仕組みです。このように、「共存共栄」の精神のもと、寄り添ってひとつの制度を長く運営していくという観点からサステナビリティに繋がります。

─会社の存在自体がサステナビリティともいえますね。

鹿島:そう言うとおこがましい部分もありますが、当社は創業以来、「共存共栄・相互扶助」という精神の下に続いてきています。そして、契約者のためになること、社会のためになることをやっていこうという高い意識を持つ職員が多く所属する会社だという自負はあります。

生命保険は、終身保険ですと長いもので100年以上契約が続く可能性もあります。人生100年時代と言われて久しいですが、まさに100年先をお約束する商品です。終身年金保険でも、例えば60歳からお亡くなりになるまで何十年もお支払いをすることもあります。保険会社にとって一番大事なことは、最終的に保険金・給付金という形で契約者にお返ししていくときまで会社が存続していく(企業のサステナビリティ)ことです。

─では、機関投資家としての運用面では、どのようなことを行ってらっしゃいますか?

鹿島:お預かりした保険料を、機関投資家として運用しています。ここでは、契約者にお約束している予定利率を上回るように長期にわたって運用を行うことが求められています。当社は国内最大規模の機関投資家として70兆円以上の資産を運用しています。内訳の一例として、上場企業の約3割に該当する約1,450社の国内株式を保有しています。そして、資金を提供するだけではなく、長期にわたり関係を築き、社会をより良くする後押しをしています。

女性職員が多い企業として行っていること

─女性職員が9割いらっしゃるという点、女性活躍の支援について教えてください。

鹿島:女性職員が多いことの歴史には、仕事に就いていなかった女性を中心に生命保険の営業という仕事を通じて働く機会を持ち、活躍してきたという流れがあります。また、営業職員だけでなく、内務職員も約7割が女性です。このように女性が多い企業ですので、女性に寄り添った制度が充実していることが当社の特徴です。制度運用面でも皆が使いやすいよう、きめ細やかに意見を取り込んでいます。

今では、当たり前になっていますが、男性育休100%を達成したのは約10年前。大手企業のなかではいち早い達成でした。これも、「女性活躍には男性の育児への参加や理解が必要である」という意見が、社内の多くを占める女性から出たことで実現できたものです。

─女性の管理職への登用については、どのようにお考えでしょうか?

鹿島:管理職候補層への研修は、営業職員向けと内務職員向けそれぞれに行っています。その内、内務職員向けには、「役員メンター制度」を行っています。課長職・部長職になる層の女性に、役員がメンターとして付いて、年に数回、困っていることを聞きアドバイスをしています。彼女たちがどんなことに苦労しているのかを会社が知り、必要な制度を作っています。また、管理職と役員との距離を近くすることも目的です。

「役員メンター制度」以外にも、「社外派遣制度」があります。ひとつの会社に長くいると、会社に染まってしまい、自分たちが行っていることが、仮に社会に良い影響を与えていたとしても、当たり前のことと感じてしまいます。社外派遣制度を通じて、他社のことを知りバランス感覚を養うことは大切なことです。私自身、ニューヨークで働いたとき、海外から見る日本生命という会社の課題や他社との違いなど、いろんな面で気づくことができました。

サステナビリティ経営の推進

─では、サステナビリティ経営の専管組織を立ち上げた理由を教えてください。

鹿島:当社は、全国の支社・営業部を始め、様々な部門・部署で、各種取り組みを行っているにも関わらず、ひとつにまとまっておらず、当社グループとして目指していく統一的なメッセージ性が薄いという課題がありました。職員自身、自分が行っていることがサステナビリティであることに気づいていないことも多く、発信力が弱いのではと感じていました。そこで、積極的な取り組み展開と企画・推進体制を強化する観点から、23年度にサステナビリティ企画室を新設しました。また、24年度からは、社会課題解決および当社グループの企業成長の好循環を生み出すサステナビリティ経営の高度化に向けた具体取り組みの推進と、対外発信等を強化する観点から、サステナビリティ経営推進部となります。

社会全体を良くしていくための社外での活動では、国際機関等が打ち出した構想を企業や団体がどのように進めていくかについて組織を超えて議論をするイニチアティブに、私も参加しています。具体的には、気候変動に関する国際的なイニシアティブである「ネットゼロ・アセットオーナー・アライアンス(NZAOA)」の代表者グループであるSteering Groupにアジア唯一のメンバーとして2024年1月から活動しており、日本だけではなく、アジアの立場をしっかりと共有し、地球レベルの課題である気候変動問題に積極的に取り組んでいます。

(後編に続く)

▼ 日本生命保険相互会社のホームページはこちら
https://www.nissay.co.jp/
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伊藤緑

2001年より、ライター・広報PRとして活動。2020年より、日本一分かりやすくSDGsを伝えるライターとして執筆。Newsweek日本版のSDGs特集で執筆。関西テレビ『世界をちょっとだけ変えるサミット』のWebサイトで番組内容とSDGsの関連を執筆。LinkedInでは、SDGsインストラクターを行う。

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