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ジェンダーレスとは?差別や偏見、格差のない社会を目指すために

ジェンダーレスとは?差別や偏見、格差のない社会を目指すために

「ジェンダーレス」という言葉は、ファッションやランドセル、企業の採用方針まで、暮らしのさまざまな場面で目にするようになりました。ジェンダーレスとは、男女という社会的・文化的な区別をなくし、一人ひとりが自分らしく選択できるようにしようとする考え方です。ただ、言葉の意味を知るだけでは「では自分の職場や学校で何をすればいいのか」「ジェンダーフリーとどう違うのか」といった疑問は残るはずです。本記事では、日本の最新データや企業・自治体の具体的な取り組みをもとに、ジェンダーレスという考え方をどう暮らしや働き方に落とし込めるかを整理していきます。

この記事で学べること

  • ジェンダーレスとジェンダーフリー・ジェンダーニュートラルの違い
  • ジェンダーギャップ指数など日本の男女格差の最新の実態
  • 企業や自治体が実際に進めているジェンダーレスな取り組みの事例
  • 職場や学校で誤解されやすいポイントとハラスメントとの境界線
  • 今日から自分にできる具体的な行動のヒント

ジェンダーレスとは|意味と広がった背景

ジェンダーレスとは、男女の社会的・文化的な区別をなくすこと、またはなくそうとする考え方を指します。「男は男らしく、女は女らしく」という価値観が長らく一般的とされてきましたが、育児や介護に積極的に関わりたい男性、仕事で成果を出したい女性など、従来の枠にとらわれない生き方を望む人が増えています。

法律やマナーの範囲内であれば、何をどう考え、どう行動するかは本人の自由です。他人や社会から「男性だから」「女性だから」と一方的に役割や振る舞いを決めつけられることのない社会が、ジェンダーレスが目指す先にあります。ファッションや教育の場面だけでなく、就職活動や社内制度、地域社会のルールづくりにまで、この考え方は広がりつつあります。

大切なのは、ジェンダーレスが「男女の違いをなくす」ことではなく、「性別を理由にした選択肢の制限をなくす」ことを目指す点です。次の章では、混同されやすい類似語との違いを整理しながら、この考え方の本質をもう少し掘り下げます。

ジェンダーレスとジェンダーフリー・ジェンダーニュートラルの違い

「ジェンダーレス」と似た言葉に「ジェンダーフリー」「ジェンダーニュートラル」があります。意味の重なりが大きいため混同されがちですが、それぞれ強調しているポイントが異なります。

ジェンダーフリーとの違い

ジェンダーフリーとは、性別による役割分担や差別をなくし、それぞれの能力や考え方に応じて自由に行動・生活できるようにする考え方です。ジェンダーレスが「性による区別そのもの」をなくそうとするのに対し、ジェンダーフリーは「区別によって生じる差別」をなくすことに主眼を置きます。たとえば職場で「男性が管理職、女性が事務補助」という役割分担を廃止するのはジェンダーフリーの発想であり、女子生徒が制服でズボンを選べるようにするのはジェンダーレスの発想に近いといえます。両者は対立するものではなく、区別をなくす取り組みが結果として差別の解消につながるという関係にあります。

ジェンダーニュートラルとの違い

ジェンダーニュートラルは、性別を前提とせず中立的に扱うという意味で使われる言葉で、商品開発やマーケティングの文脈で使われることが多い表現です。「男性用・女性用」と分けずに一つのラインで展開する商品などがこれにあたります。ジェンダーレスがより広く社会や個人の価値観の変化を指すのに対し、ジェンダーニュートラルは商品設計やサービス設計の手法として語られる場面が目立つ、という使い分けの傾向があります。厳密な定義が法律で決まっているわけではないため、記事や企業によって言葉の使い方に幅がある点も知っておくとよいでしょう。

こうした違いを理解しておくと、ニュースや企業の発表を読んだときに、それが「区別をなくす話」なのか「差別をなくす話」なのかを見分けやすくなります。ジェンダー平等に関する取り組み全般については、こちらの記事でも詳しく取り上げています。

数字で見る日本のジェンダーギャップの実態

言葉の整理ができたところで、日本の現状を数字で確認していきます。日本は「男女平等が進んでいる国」というイメージを持たれることもありますが、国際比較や統計を見ると、実態はそう単純ではありません。

ジェンダーギャップ指数における日本の順位

世界経済フォーラムが公表する「ジェンダーギャップ指数」は、経済・教育・健康・政治の4分野から男女格差を数値化した国際的な指標です。2021年の調査では、日本は156か国中120位という結果が報告されていました。その後も指数は毎年公表され続けており、経済分野・政治分野における男女の格差の大きさが、総合順位を押し下げる主な要因として繰り返し指摘されています。特に管理職や国会議員に占める女性比率の低さが、日本のスコアを他の先進国と比べて低くしている構造的な要因とされています。

育児と仕事をめぐる男女の差

家庭内での役割分担にも、男女の差が色濃く残っています。かつて厚生労働省の調査では、男性の育児休業取得率は増加傾向にありながらもわずか6.16%にとどまっていたのに対し、女性の取得率は82.2%と報告されており、男女間に大きな開きがあることが示されていました。その後、男性の育児休業取得を促す企業の制度整備や法改正が進んだことで、男性の取得率は年々上昇傾向にあると各種調査で報告されていますが、女性が8割前後で推移してきたのに対し、男性はなお少数派にとどまっているのが実情です。

保育の受け皿についても課題が残ります。全国の待機児童数は減少傾向にありつつも12,439人にのぼると報告された時期があり、その後も自治体による保育所整備が進められてきました。育児は女性が担うもの、あるいは女性が働きたくても働きに出られないという実態を映し出す数字であり、こうした構造こそがジェンダーレスな社会づくりが必要とされる理由の一つです。

企業や自治体に広がるジェンダーレスの取り組み

数字だけを見ると変化が乏しいようにも感じますが、商品やサービス、制度の現場では、複数の企業・自治体がジェンダーレスな選択肢を実際に広げてきました。

生活用品やファッションのジェンダーレス化

身近な生活用品にも変化が見られます。性別に関係なく利用できるトイレや、誰でも使える多機能トイレの整備がメーカー各社で進められています。ランドセルの分野でも、以前は男児は黒、女児は赤という色分けが一般的でしたが、いまは青やピンク、パステルカラーなどカラーバリエーションが豊富になり、色を性別で決めつけない選び方が広がっています。化粧品業界でも、男性向けのスキンケア・メイク製品を展開するブランドが増え、女性向けにもナチュラルなメイクからはっきりした色使いまで、幅の広い選択肢を提示する動きが続いています。

制服や職場でのジェンダーレス化

学校の制服も変化の象徴的な事例です。女子はスカートと決めつけるのではなく、ズボンもスカートも選べるようになり、ジャケットやシャツ、リボンやネクタイも組み合わせで選べる学校が増えています。こうした制服の見直しは、全国の複数の教育委員会や私立・公立校で個別に導入が進められており、性別に関わらず動きやすい服装や、性自認に配慮した服装を選べる仕組みとして広がっています。

職場においても、性別を問わない採用基準の明確化や、育児・介護休業を男女どちらも取得しやすくする制度整備を進める企業が増えています。こうした取り組みは、単に「女性を優遇する」ものではなく、性別にかかわらず能力や希望に応じて働き方を選べる環境を整える点に意味があります。個々の企業の制度は年度によって変わるため、就職活動や転職の際には、各社が公表する採用情報やサステナビリティ報告書で最新の制度を確認することをおすすめします。

職場や学校で誤解されやすいポイント

ジェンダーレスという言葉が広まる一方で、現場では誤解や行き過ぎた解釈も見られます。ここでは特に注意したい2つの視点を整理します。

「区別をなくす」と「配慮をなくす」は違う

ジェンダーレスは、性別を理由にした一律の決めつけをなくす考え方であって、身体的な違いや個々の事情への配慮までなくすものではありません。たとえば、女性に対して無理な重労働を課したり、体調やプライバシーへの配慮を欠いたりすることは、ジェンダーレスの本来の趣旨とは異なります。「男女の境界線」を誤って解釈すると、かえってパワハラやセクハラ、モラハラにつながりかねない点には注意が必要です。

発言や態度に潜む無意識の決めつけ

差別や偏見をなくすことを掲げる場でも、無意識の決めつけに基づく発言が問題視される場面がありました。国内外の大きな国際イベントの運営に関わる立場の人物が、女性の話し方や振る舞いについて一方的に決めつけるような発言をして、社会的な批判を受けたことも記憶に新しいところです。こうした発言に明確な悪意があったかは別として、根底に「女性は〇〇であるべきだ」という思い込みが働いていたことは否めません。男性に対しても「男らしくあるべき」「弱音を吐くべきではない」といった価値観が押し付けられがちである点は、ジェンダーレスを考えるうえで見落とされやすい視点です。

世界の男女格差とジェンダーレスの必要性

日本国内の課題だけでなく、世界に目を向けると、ジェンダー平等の実現はより切実な課題として位置づけられています。国連が定めた持続可能な開発目標(SDGs)には「目標5 ジェンダー平等を実現しよう」が掲げられており、世界にはなお女性や女の子に対する差別や暴力が根強く残っていると指摘されています。人身売買や早すぎる結婚の強要、教育機会の制限など、地域や風習によって女性の安全や自由が脅かされている実態があり、こうした問題の背景にはジェンダー、すなわち社会的・文化的な性差に対する偏見や固定観念があるとされています。

ジェンダーレスという考え方を広げることは、「女性だから」「男性だから」という理由で不利益を受けたり、選択肢を狭められたりする状況を減らすことにつながります。日本国内の制度や企業の取り組みを見直すことは、この世界共通の課題に対して私たちができる小さな一歩でもあります。

原材料の調達先や海外の取引先を含めたサプライチェーン全体で人権リスクを点検する「人権デューデリジェンス」を導入する日本企業が増えており、その点検項目には児童労働や強制労働と並んでジェンダーに基づく差別が含まれることが一般的です。海外で作られた衣料品や食品を選ぶときに、原産国や製造背景に目を向けることも、間接的にジェンダー平等を後押しする行動の一つといえます。

私たちが今日からできること

ジェンダーレス社会の実現は、企業や行政だけの課題ではありません。日常のなかで一人ひとりが意識できることも数多くあります。

まず、「男性だから〇〇すべき」「女性だから〇〇すべき」という固定観念を、会話や職場の判断の中で一度立ち止まって疑ってみることが出発点になります。何を選ぶかは本人が決める問題であり、周囲や社会が一方的に決めつけるものではありません。具体的には、妊娠や出産を理由に退職を迫らないこと、男女で仕事の割り振りや評価に差をつけないこと、育児や介護の分担を性別で決めつけないことなどが挙げられます。

一方で、区別をなくすことと配慮をなくすことは別の話です。身体的な負担や個人のプライバシーへの配慮は、性別にかかわらず必要なものとして残しておく必要があります。境界線を誤らないよう意識しながら、お互いにとって働きやすく、暮らしやすい環境とは何かを考え続ける姿勢が求められます。まずは自分の身の回りにある「当たり前」を一つだけ見直してみることから始めてみてください。

まとめ

ジェンダーレスとは、男女という社会的・文化的な区別をなくし、一人ひとりが性別にとらわれず選択できる社会を目指す考え方です。似た言葉であるジェンダーフリーが「差別をなくす」ことに主眼を置くのに対し、ジェンダーレスは「区別そのもの」をなくすことに焦点を当てており、両者は補い合う関係にあります。

日本では、ジェンダーギャップ指数の低い順位や、育児・仕事における男女差など、実態として残る課題が複数の統計で示されてきました。その一方で、生活用品や制服、企業の制度面では、性別で選択肢を制限しない取り組みが着実に広がっています。大切なのは、区別をなくすことと個々への配慮をなくすことを混同せず、自分の職場や学校にある「当たり前」を見直す視点を持つことです。

  • ジェンダーレスは性による区別をなくす考え方、ジェンダーフリーは差別をなくす考え方
  • 日本はジェンダーギャップ指数で長年低い順位が報告されてきた
  • 制服やランドセル、化粧品など生活用品でジェンダーレス化が進んでいる
  • 区別をなくすことと配慮をなくすことは別問題であり境界線を誤らない意識が必要
  • まずは身の回りの「男性だから」「女性だから」という決めつけを一つ見直してみる

参考文献

  • 記事を書いたライター
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