近年、さまざまなメディアで「SDGs」という言葉をみかけることが増えました。
2015年に国連で採択され、2016年からスタートしたSDGsは、15年かけて地球と世界を全ての人にとってより暮らしやすくしていくために定められた国際的な目標です。
日本でも、政府をはじめ企業、個人が積極的に取り組みや活動を発信しているため、SDGsに対する認知は少しずつですが確実に広がってきています。
この記事では、日本政府のSDGsに対する取り組み、開始から5年経過しての進捗度や達成度、今後の課題を紹介します。
SDGsとは?簡単におさらい
SDGs(エスディージーズ)とは英語の「Sustainable Development Goals」の略称で、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されています。
2015年9月に国連で採択された、2016年から2030年までに15年かけて達成すべき17の国際目標のことです。
・地球環境を保護し、将来の世代によりよい地球を残す。
・貧困や格差を無くし、世界のすべての人々が豊かで平和に暮らす。
全世界の人々、国・政府・企業・個々人が同じ方向を向いて協力していくために掲げられた17の目標の下には、具体的な行動指針としての169のターゲットと、評価の基準となる232の指標が定められてます。
SDGsの17目標について、以下の記事で詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。
SDGsに対する日本政府の取り組み
2015年に国連でSDGsが採択されたあと、日本政府もすぐにSDGs目標達成に向けての国内の基盤整備に取り掛かりました。
日本政府が率先してリーダーシップを取り、SDGsへの取り組みを推進する鍵となる組織・取り組みは下記3つです。
SDGs推進本部
2016年5月に設置された組織。
本部長は総理大臣、副本部長は官房長官と外務大臣、構成員は他のすべての国務大臣。
SDGsに係る施策の実施について、関係行政機関相互の緊密な連携を図り、国内実施と国際協力双方でSDGsを総合的かつ効果的に推進することを目的にしています。
推進本部の主導のもと、下記のような関連会合もSDGs関連政策の企画立案・実施に加わっています。
・SDGs推進本部幹事会(関係行政機関の職員が参加)
・SDGs推進円卓会議(各セクターでSDGsに取り組む組織やネットワークの代表的な存在が参加)
SDGs実施指針
SDGsを達成するための具体的な施策として2016年12月に概要決定。
「持続可能で強靱、そして誰一人取り残さない、経済、社会、環境の統合的向上が実現された未来への先駆者を目指す」というビジョンを掲げ、以下の8つの優先課題が定められました。
1.あらゆる人々の活躍の推進
2.健康・長寿の達成
3.成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション
4.持続可能で強靱な国土と質の高いインフラの整備
5.省・再生可能エネルギー、気候変動対策、循環型社会
6.生物多様性、森林、海洋等の環境の保全
7.平和と安全・安心社会の実現
8.SDGs実施推進の体制と手段
この実施指針は、2016年から3年の間に出てきた新たな課題や、国内外でのSDGsを巡る状況の変化を受けて、2019年の12月に改定が行われました。
実施指針改定版で変更が加えられたのが、下記太字の部分です。
1.あらゆる人々が活躍する社会・ジェンダー平等の実現
5.省・再生可能エネルギー、防災・気候変動対策、循環型社会
特に「ジェンダー平等の実現」に関しては、課題への対応に遅れが見られています。詳しくは次章で見ていきます。
SDGsアクションプラン
SDGs達成のために政府が推進する具体的な施策をまとめたプランで、2017年12月以降定期的に策定。
以下を3本柱とする日本のSDGsモデルを掲げています。
・ビジネスとイノベーション~SDGsと連動する「Society5.0」の推進~
・SDGsを原動力とした地方創生
・SDGsの担い手として次世代・女性のエンパワーメント
また、日本政府はSDGsの広報・啓発を重視しており、国内においてSDGsを浸透させるため以下のような取り組みを行い、SDGsの具体的な活動の「見える化」とその後押しに努めています。
・「ジャパンSDGsアワード」(2017年12 月~)
・「SDGs未来都市」及び「自治体SDGsモデル事業」の選定(2018年6月~)
・「Japan SDGs Action Platform」の設置(2018年6月~)
データで見る日本のSDGs17目標別の達成度・進捗度
SDGsは世界各国が主体的に取り組んでいかなければいけない目標であるため、進捗状況や成果がデータで「見える化」されています。
毎年発行されている「SDG Index and Dashboards Report」は、持続可能な開発方法ネットワーク(SDSN)とドイツのベルテルスマン財団の独立した専門家チームが共同で発表している報告書。
世界各国のSDGsの達成状況が100点満点のうち何点なのか、というスコアが17の目標ごとに算出されている、いわば各国の「SDGs通信簿」ともいえるものです。
ここでは、「SDG Index and Dashboards Report」における日本の過去3年間の評価をみてみましょう。
各目標は達成度合いに応じて色分けされていてます。
緑色:目標達成
黄色:目標達成に課題が残っている
橙色:目標達成に重要な課題が残っている
赤色:目標達成に主要な課題が残っている
また、目標の横の矢印は目標達成に向けての傾向を表し、緑色は順調もしくは達成を維持、黄色は改善傾向、橙色は停滞、赤色は達成度合いの減少、グレーはデータ無しを意味しています。
<2019年>総合順位15位/162カ国中(77.7点)
(1位:デンマーク/85.2点、2位:スウェーデン/85.0点、3位:フィンランド/82.8点)
参照元:SDG Index and Dashboards Report 2019|Sustainable Development Report
<2020年>総合順位17位/166カ国中(77.3点)
(1位:フィンランド/84.7点、2位:デンマーク/84.6点、3位:フィンランド/83.8点)
参照元:SDG Index and Dashboards Report 2020|Sustainable Development Report
<2021年>総合順位18位/165カ国中(79.8点)
(1位:フィンランド/85.9点、2位:スウェーデン/85.6点、3位:デンマーク/84.9点)
参照元:SDG Index and Dashboards Report 2021|Sustainable Development Report
SDGs目標達成に向けた日本の課題
前章の過去3年間のデータと推移を眺めると、日本のSDGsが現在目標に対してどのレベルにあるのか、そして目標達成に向けた課題がどこにあるのかが見えてきます。
<達成度合いが低く主要な課題が残り、取り組みが停滞しているか、改善策が不十分な目標>
この分野に関しては、2030年までの残り年数を意識して、大胆かつ効果的な施策を考案・実施する必要があります。
・目標5(ジェンダー・平等)
・目標13(気候変動)
・目標14(海の豊かさ)
・目標15(陸の豊かさ)
・目標17(実施手段・パートナーシップ)
<達成度合いが不十分で重要な課題が残り、取り組みが停滞しているか、改善策が不十分な目標>
主要な課題が残っている分野との関わりを意識しつつ、後回しにしない対策が必要です。
・目標2(飢餓)
・目標7(エネルギー)
・目標10(都市とコミュニティ)
・目標12(産業、つくる責任つかう責任)
<達成度合いが高く、その水準を維持できている目標>
この分野に関しては、国内での取り組みは成功しており、今後は国際協力に貢献できる可能性があります。
・目標4(教育)
・目標9(産業と技術革新)
まとめ
今回の記事では、日本政府主導でのSDGsへの取り組みの内容、そして2021年の最新レポートを踏まえた過去3年間の日本のSDGs達成度・進捗度とそこから見える課題をご紹介しました。
現在の日本の取り組みが世界の中でどのレベルにあるのか、どの目標の進捗状況が十分なのか、現在のペースでは達成が難しく拡大・加速する必要があるのか、ご理解いただけたかと思います。
2021年の「SDG Index and Dashboards Report」でも報告されていますが、現在各国政府の最優先課題はコロナウィルス感染症の抑制と経済との両立となっており、SDGsへの取り組みが始まって初めて、世界平均SDGsインデックススコアが前年よりも低下してしまいました。
それでもSDGsの目標達成の期限が2030年であることには変わりなく、残り10年足らずの時間で計画的に目標達成に向けて進み続ける必要があります。
今回は日本政府主導の取り組みを紹介しましたが、SDGsは企業・個人の取り組みも目標達成に重要な役割を果たしています。
MIRASUSでは、SDGsへの取り組みや最新情報を発信することで、引き続きSDGsへの取り組みを応援していきます。