スマートフォンやPCなど、今やデジタル機器は私たちの生活になくてはならない存在です。
しかし、その便利さゆえに長時間使用するとVDT症候群(※)や睡眠障害・デジタル機器依存症など、心身にさまざまな影響を及ぼします。
(※)VDT症候群:デジタル機器の画面を長時間み続けることで発症する。疲れ目や抑うつ状態など心身に不調がでる。
これらの影響を軽減するために、近年注目されているのがデジタルウェルビーイングです。
心身の健康を守るだけではなくSDGsの目標達成にも貢献すると言われており、注目が集まっています。
本記事では、デジタルウェルビーイングの注目理由や実用例をまとめました。
まずは、デジタルウェルビーイングとは何かを知りましょう。
デジタルウェルビーイングとは
デジタルウェルビーイングとは、スマートフォンやパソコンなどの電子機器を健全に使い、心身が健康な状態であることです。
2018年にGoogleが開催した「2018 Google I/O」にて、デジタルウェルビーイングの機能が公開されたことをきっかけに注目され始めました。
先述したとおり、近年のデジタル機器や技術は目まぐるしい進化を遂げ、私たちの暮らしに必要不可欠になっています。
しかし便利すぎるあまり、使い方を誤ると心身に影響を及ぼす危険性があることも事実です。
このような理由から、デジタルウェルビーイングを取り入れる企業や個人が増加しています。
参照元:Google Japan Blog|Google Japan
デジタルウェルビーイングが必要な日本の現状
ここからは、デジタルウェルビーイングが必要な日本の現状を詳しく見ていきます。
デジタル機器の使用率の増加
総務省の情報通信統計ベースが発表した「令和3年版 情報通信白書」によると、日本の情報通信機器の世帯保有率はグラフの通りです。
引用元:令和3年版 情報通信白書|総務省
全体的に上昇傾向にあり、特にスマートフォンの普及が目立つ結果となりました。
また、利用しているインターネットサービスを見ると、インターネットショッピングや決済・動画配信など生活・娯楽系が大部分を占めています。
引用元:令和3年版 情報通信白書|総務省
このような調査結果になった理由として、スマートフォンを含むモバイル端末の普及の他に、新型コロナウイルスの影響もあります。
「外出しづらい」「在宅時間が増えた」などの理由から、デジタル機器を使用する機会も増えていったのです。
そして家の中でできることも限られてくるため、退屈しのぎに長時間動画を観たり、ショッピングサイトを覗いたりする人が増えていきました。
日本人は「デジタル機器を使いすぎている」と思っていない
デロイト トーマツグループの「2019年版 世界モバイル利用動向調査」によると、日本人はデジタルウェルビーイングに対する意識が他国に比べると低い結果となりました。
また、使いすぎないために「使用管理を試みていない」と回答した人は37%もいたそうです。
この数字は、調査対象の5カ国の中でも最多でした。
日本の現状を理解したところで続いては、個人がデジタルウェルビーイングに対してどのようなことをすればよいのかを見ていきます。
参照元:世界モバイル動向調査、日本は「デジタルウェルビーイング」の意識が低い結果に|株式会社マスメディアン
デジタルウェルビーイングの取り組み方
個人にもできるデジタルウェルビーイングの実践例として、下記が挙げられます。
アプリの活用
デジタルウェルビーイングのために、さまざまなアプリが登場しています。
Googleの「Digital Wellbeing」は、スマホ中毒症状改善を目的としたアプリです。
使用時間や通知数などを可視化し、通知をまとめて知らせる機能などが搭載されています。
また、このようなアプリはAppleのiOS12にも追加されており、設定した時間帯は通知が表示されない機能があります。
さらにiOS15には「集中モード」と呼ばれる機能も追加されました。
スマホツールの設定
長時間の使用を防ぐために使用時間を可視化したり、制限したりするツールがスマートフォンの設定にもあります。
その他にも、メールやアプリからのお知らせを制御するツールもあるため、自身のスマートフォンを確認してみましょう。
デジタルデトックス
デジタルデトックスとは、スマートフォンやパソコンなどのデジタル機器から意識的に距離を置くことです。
デジタル機器を長時間使用することによって、心身に不調がでます。
その不調を改善し、リフレッシュするための方法として注目されているのです。
デジタル機器を持たずにサイクリングや登山に行くなど、触れない状況をつくる方法もありますが、「最初から長時間手放すのは厳しい……」と思う人もいるでしょう。
その場合は、下記のように小さなことから実践してみてください。
・寝る1時間前はデジタル機器を見ないようにする
・1日のどこかで、デジタル機器に触れない時間をつくる
・常に持ち歩くのではなく、置き場を決めて必要な時以外は触らない
さまざまな方法でデジタルウェルビーイングを行うことで、デジタル機器と健全な距離を保てます。
すると、心身にとって良いことが起こるだけではなく、SDGsの目標達成にも貢献できるのです。
SDGsとデジタルウェルビーイング
2015年に開かれた国連総会にて、採択されたSDGs。
世界中で起きている、環境・社会・経済の問題を解決するための国際目標です。
2030年までに解決することを目指し、17個の目標と169個のターゲットが設定されました。
そのなかでも、目標3はデジタルウェルビーイングと深い関わりがあります。
目標3「すべての人に健康と福祉を」
目標3は、「すべての人々が、健康的な生活を確実に送れるようにするとともに、福祉も推進させる」ことを目指す内容となっています。
デジタルウェルビーイングは、スマートフォンやPCといったデジタル機器を健全に使うことを推奨する考え方です。
そのため取り入れることによって、心身ともに健康な状態の維持につながり、SDGs目標3の達成にも貢献します。
まとめ
今後も、デバイスやテクノロジーの進化によって私たちの暮らしは便利になり、より良い方向へと進んでいくでしょう。
しかし不健全な使い方をすると、私たちの心身に影響を及ぼすことも忘れてはいけません。
そうならないためにも、デジタルウェルビーイングを意識することが大切です。
1人ひとりがデジタルウェルビーイングを意識すると、SDGsの目標達成にも貢献します。
デジタル機器の設定を変更したり専用のアプリを活用したりするなど、自分に合った方法を試してみましょう。