富栄養化とは?SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」で注目される問題をわかりやすく解説
post_id: 4019
original_date: 2021年10月6日
url: https://mirasus.jp/sdgs/oceans/4019
カテゴリースラッグ: environment
公開日: 2026年3月11日
関連SDGs: 目標14(海の豊かさを守ろう)、目標6(安全な水とトイレを世界中に)
台所で油をそのまま流した経験、ありませんか? その一杯の油が、遠い海の「酸欠ゾーン」をつくり出す原因になっているとしたら——。私たちの日常と海が思わぬところでつながっている問題、それが「富栄養化」です。SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」のターゲットにも明記されたこの問題を、しくみから対策まで解説します。
SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」とは
SDGs目標14は、海の生態系を守り、持続可能な形で海洋資源を利用することを目指す目標です。
海は、地球の表面の4分の3を占め、人間が生産する二酸化炭素の約30%を吸収し、地球温暖化の影響を緩和する役割を担っています。また、30億人以上が海洋・沿岸の生物多様性を頼りに生計を立てているとされています。
しかし、その海が今、さまざまな問題にさらされています。FAOが2024年6月に発表した「The State of World Fisheries and Aquaculture 2024(SOFIA 2024)」によると、
2021年時点で持続可能な形で漁獲されている水産資源は調査対象の50.5%、漁獲圧力が低く余力のある資源は11.8%にとどまりました。
言い換えると、残り約37.7%の資源は過剰に漁獲されている状態にあるとされています。
世界の海洋汚染の約80%は、農業活動による流出物、栄養素や農薬の排出、プラスチックを含む未処理の下水など、陸の活動で発生した汚染によるものとされています。
こうした状況を改善するため、SDGs目標14には10個のターゲットが設けられています。その最初のターゲット(14.1)に明記されているのが「富栄養化の防止・削減」です。
「富栄養化」とは何か
栄養が多すぎることで起きる悪循環
富栄養化とは、
海・湖沼・河川などの水域が、貧栄養状態から富栄養状態へと移行する現象のことです。
名前に「豊か」という字が入るため良いことのように聞こえますが、実態はまったく逆です。
水域に窒素化合物やリン酸塩などの栄養塩類が過剰に流れ込むと、光合成による一次生産が増大し、特定の植物プランクトンが異常増殖します。これが赤潮やアオコの形成を招きます。
その後の悪循環はこうです。大量のプランクトンが海面を覆うことで、水中植物が光合成できなくなり、水中の酸素が急激に減少します。
藻類の異常増殖により水中が酸欠状態となり、海洋生物の大量死を招きます。
さらに死骸が海底に積もり、悪臭の原因にもなります。
世界に500か所以上存在する「デッドゾーン」
富栄養化が進んだ海域は、ほとんどの生物が生存できない「デッドゾーン(貧酸素水域)」へと変化します。
現在、世界中で500近くのデッドゾーンが確認されており、その面積は24万5,000km²以上に及び、イギリスの国土とほぼ同じ広さになっています。
また、
日本の多くの沿岸域では、長年富栄養化が問題であったため、人為的に栄養分の供給を減少させてきましたが、最近はむしろ貧栄養化による魚類生産の減少が起きている可能性も指摘されています。
過剰な規制がもたらす「栄養不足」の問題もあり、バランスの難しさを示しています。
日本での事例|瀬戸内海の富栄養化
1960〜1970年代の高度経済成長期、瀬戸内海では富栄養化が進行し、1970年代前半には年間300件にもおよぶ赤潮が発生するなど、水質が著しく悪化しました。これを受け、1973年に瀬戸内海環境保全臨時措置法が制定され、窒素やリンの総量規制が導入されて水質改善が進みました。
この経緯は、対策が一定の効果をあげた国内の代表例として知られています。
富栄養化の主な原因は「生活排水」
富栄養化の原因となる窒素やリンは、どこからきているのでしょうか。横浜市が公表している発生源の内訳によると、窒素については生活排水が約60%、工場排水が約20%、農業・畜産・その他排水が約20%を占めているとされています。生活排水だけに注目すると、窒素の約80%はトイレ由来、残り約20%が台所・洗濯などの雑排水とされています。
工場排水よりも、私たちが日々何気なく流す排水が富栄養化の主な原因になっているという事実は、見過ごしがちですが重要なポイントです。
富栄養化を防ぐための対策
行政・技術面の取り組み
富栄養化対策として、下水処理技術の向上が求められています。現在、物理化学的・生物化学的なリンや窒素の除去処理が行われていますが、除去できなかった成分はそのまま水域へ流れ出てしまうとされています。除去率のさらなる向上が課題です。
また、リン資源は将来的に世界的に枯渇するおそれがあるという見方もあり、下水処理の段階でリンを回収・再利用する研究が進められています。工場に対しては、排水の水質基準を独自に設ける自治体も存在します。
私たちが今日からできること
富栄養化の原因の大部分は生活排水です。以下のような日常の工夫が、海の保全に直結します。
油をそのまま流さない
揚げ物や炒め物のあとにフライパンに残った油は、紙でふき取ってから洗います。市販の凝固剤を使って固める方法も効果的です。食べ残しも同様に、できるだけ残さず食べ、汚れをふき取ってから洗い物をする習慣をつけましょう。
洗剤・シャンプーは適量を守る
洗剤は泡立ちが良いからといって多く使いすぎると、リンや窒素が過剰に排出されます。適量の使用が海への負荷を減らします。
環境負荷の低い製品を選ぶ
洗剤や日用品の中には、水を汚しにくい処方の製品も増えています。購入時に成分や認証マークを確認する習慣をもつことが、持続可能な消費につながります。
MSC認証(海のエコラベル)付き水産物を選ぶ
富栄養化対策と並行して、水産資源の保全も重要です。
MSC認証付きの水産物を消費者が購入することが持続可能な漁業への支援となり、海洋天然資源や海洋環境が守られる仕組みになっています。
まとめ|海を守る一歩は、台所から始まる
富栄養化は遠い海の出来事ではなく、私たちの台所や浴室と直接つながっている問題です。原因の多くが生活排水であることを知れば、日々の行動が変わるヒントになります。
完璧な対策を一人で行う必要はありません。油をふき取ってから洗う、洗剤の量を守る——そんな小さな積み重ねが、海の酸欠ゾーンを減らすことにつながります。まずは今日の台所から、一つだけ試してみてください。
富栄養化とは?海の「酸欠」を生む仕組みと私たちにできること
【学べるポイント】
✅ 富栄養化は生活排水が主な原因
✅ 世界に500か所以上の「デッドゾーン」が存在
✅ 油をふき取る・洗剤を適量にするだけで海が守れる

