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CSR

SDGs広報を「伝わる発信」に変えた企業事例|失敗から学ぶ3つのポイント

Photo by Adrien Olichon on Unsplash

SDGsへの取り組みは社内で進めているのに、「なぜか伝わらない」「社外からの反応が薄い」と感じている広報担当者や経営者の方は少なくありません。学生団体のSDGs活動を長年支援してきた立場からも、同じ悩みを何度も聞いてきました。活動の質は高いのに、発信の仕方で損をしているケースが本当に多い。この記事では、SDGs広報で実際に効果を出した企業の事例を整理しながら、「伝わる発信」に切り替えるための考え方と実践ポイントを紹介します。

なぜSDGs広報は「やっているのに伝わらない」のか

50件以上の社会課題プロジェクトに関わってきて、もっとも多く目にしてきた失敗パターンは「報告書を作って終わり」という状態です。サステナビリティレポートや統合報告書を発行している企業は年々増えていますが、それを読んでもらえる相手が限定的になっているケースが目立ちます。

問題の根本は、「発信すること」と「届けること」が混同されやすい点にあります。情報を出したという事実だけでは、ステークホルダーや生活者の心には届きません。2015年の国連によるSDGs採択から10年が経ち、単にSDGsのアイコンを並べるだけの発信は、むしろ信頼を損ねるリスクになりつつあります。欧州では「グリーンウォッシュ」への規制強化が進んでおり、日本でも消費者庁や金融庁が開示の質を問い始めています。

一方で、広報の工夫次第で社外からの認知や共感が大きく変わった事例も確かにあります。まず、よくある「伝わらない」理由を3点に整理しておきます。

  • 取り組みの「成果」ではなく「姿勢」だけを伝えようとしている
  • 本業との関連が見えず、活動が浮いて見える
  • 情報の置き場がウェブサイトの深い階層にしかなく、検索でも届かない

この3点を念頭に置いたうえで、次のセクションから具体的な事例と改善策を見ていきましょう。

事例で見るSDGs広報の「成功パターン」

ここで紹介するのは、公開情報から編集部が整理した事例です。個別企業の取り組みを一般化した形でお伝えします。

パターン1|本業の延長線上にストーリーを置く

SDGs広報で継続的に話題を集めている企業に共通するのは、「本業とのつながり」が明確なことです。例えば、食品メーカーがフードロス削減に取り組む場合、「食品ロスを〇〇トン削減した」という数字だけでなく、「なぜそれを始めたのか」「どんな現場の声があったか」をセットで伝えている企業は、メディアへの露出頻度が高い傾向があります。

PR会社ビルコムのインタビューによると、SDGs活動の広報で重要なのは「本業との接続性」「具体性・独自性」「個性のあるリーダーの想い」の3点であり、本業とつながりのある活動であるほど生活者や記者の納得感が高まるとされています。 これは学生団体の活動支援でも同じで、なぜその課題に取り組んでいるかを語れるチームほど、外部からの協力が集まりやすいと感じてきました。

広報物を作る前に「自社の事業とこの取り組みはどこでつながっているか」を一文で言えるかどうか、チェックしてみてください。言葉にできないうちは、発信を急ぐより内容の整理を先にするほうが結果につながります。

パターン2|SNS発信を「参加型」に設計する

SNSでのSDGs発信で効果を出している企業は、一方通行の情報発信に留まらず、フォロワーを巻き込む仕掛けを持っています。 SDGsに意識の高いユーザーの具体的アクションが、そのユーザーをフォローしている人へのPRとなり、さらなる行動喚起につながるという連鎖的なPR効果が生まれます。

森永製菓がX(旧Twitter)で展開した環境クイズ投稿や、オズモールの「#サステナブルチャレンジ」キャンペーンは、その典型例として公開情報に複数登場します。 プラットフォームごとの特性として、X(旧Twitter)では「ライトさ」や「親しみやすさ」を意識したユーザーを巻き込む投稿、Instagramでは「画像のきれいさ」や「パッと見た時に目を引く」ビジュアルで自社の取り組みを伝えることが効果的とされています。

ただし、キャンペーンの見た目だけを整えても、実際の取り組みが伴っていなければ逆効果になります。発信の量を増やすより、発信の「根拠となる実績」を先に積むことが順序として重要です。これは、学生団体が短期間でSNS映えを狙って失敗するパターンと全く同じ構造です。

パターン3|noteで「過程」を丁寧に記録・発信する

BtoB企業や中小企業には、SNSのリーチよりも「深く読まれる」場が向いていることがあります。 noteでの情報発信は、対外的な発信に役立つだけでなく、メンバー一人ひとりの意識を高め、目線を合わせることにもつながるとされています。自社での取り組みの発信自体が、SDGsへの取り組みの一つにもなり得るという指摘もあります。

実際に中小企業の広報担当者から聞いた話では、「何かアクションをしたい、でも何から始めればいいかわからない」という状態のとき、まず社内の取り組みをnoteに書き始めたことで、自社が何を大切にしているかが言語化され、採用や取引先からの問い合わせにつながったという声がありました。発信を外向けのPRと捉えず、社内の思考整理として始める視点は、意外に再現性が高いやり方です。

SDGs広報の「3つの落とし穴」と対処法

うまくいかないSDGs広報には、繰り返し現れるパターンがあります。支援先で見てきた事例を一般化すると、次の3点が特に陥りやすい落とし穴です。

落とし穴1|SDGsバッジを貼るだけの「ラベリング発信」

SDGsの17のゴールカラーバッジをウェブサイトや名刺に並べることは、取り組みの入口としては理解できます。しかし、バッジを貼ることと、具体的な成果や目標を開示することは別物です。ステークホルダーや投資家が求めているのは、「何をしているか」ではなく「それがどう変わっているか」という変化の記録です。

見落としがちなポイントとして、「目標」「現状」「ギャップ」をセットで示すことがあります。例えばCO₂排出量を削減している企業であれば、「目標値・現在の実績・達成率」を時系列で示すだけで、発信の説得力が大きく変わります。

落とし穴2|発信のタイミングが「決算期のみ」になっている

PRやSNSの施策においては「なぜ今」という時流に乗った要素が必要で、メディアは世の中で起こっていることを伝える使命があるため、広告のような印象を持たれる情報は取り上げられにくいとされています。 年に一度のサステナビリティレポート発行だけに発信を集中させると、日常的なつながりが生まれません。

世界環境デー(6月5日)、食品ロス削減の日(10月)、国際女性デー(3月8日)など、SDGsの各ゴールに関連した国際デーは年間を通じて存在します。それらを発信のタイミングとして活用することで、「なぜ今この話をしているか」の文脈をメディアや生活者と共有しやすくなります。

落とし穴3|担当者1人に任せきりで「組織の声」になっていない

特に中小企業でよく見られるのが、SDGs広報がCSR担当や広報担当1名に集中し、現場の実態が外に出てこない状態です。発信内容が「担当者の言葉」であれば、どこか他人事に見えてしまう。これは学生団体でも同じで、代表1人が書いたリリースより、メンバーそれぞれが現場の言葉で語ったほうが読者の共感を得やすいと繰り返し感じてきました。

現場で実際に取り組んでいる社員のコメントや顔写真を広報物に入れるだけでも、情報の温度が変わります。「誰がやっているか」が見えると、読み手は「自分でもできるかもしれない」と感じやすくなります。

編集部が整理|SDGs広報の「発信チャネル」比較と使い分け

公開情報と編集部で整理した知見をもとに、SDGs広報でよく使われるチャネルの特徴と向いているシーンをまとめました。あくまで傾向であり、業種や企業規模によって最適解は異なります。

  • サステナビリティレポート/統合報告書 投資家・機関ステークホルダー向け。数値目標・達成状況・マテリアリティ分析を盛り込む。年次発行が基本だが、補足情報をウェブに随時更新する企業が増えている。
  • 自社ウェブサイト(SDGsページ) 潜在顧客・採用候補者向け。検索流入を意識したコンテンツ設計が重要。バッジ一覧に留まらず、具体的な取り組み内容と指標を掲載する。
  • プレスリリース メディア向け。「なぜ今」の時流要素を入れ、数値・担当者コメント・写真をセットで用意する。配信タイミングに国際デーを絡めると取り上げられやすい。
  • SNS(X・Instagram・LinkedIn) 広範な生活者・BtoB関係者向け。X=参加型・ライト、Instagram=ビジュアル重視、LinkedIn=BtoB・採用文脈に強い。プラットフォームごとにトーンを変える。
  • note/オウンドメディア 深く読んでもらいたい層向け。取り組みの背景・担当者の思い・失敗談も含めた「過程の記録」として機能する。長期的なブランド資産になる。

これらを「最初から全部やろう」とすると、どれも中途半端になります。実際に支援先で試してみたところ、まず1チャネルに絞って月次で更新するサイクルを作ることで、発信の質と継続性が格段に上がりました。最初の選択肢としては、既存ウェブサイトのSDGsページを「成果が見える形」に整えることが、多くの企業に再現しやすいアプローチです。

SDGs広報を「形骸化」させないための視点

SDGs広報が形骸化する最大のリスクは、「発信のために活動している」という倒錯が起きることです。これは、SNS映えを優先するあまり現場の実態から離れていくプロセスと似ています。

グリーンウォッシュ(実態を伴わない環境訴求)への批判は、日本でも消費者庁を中心に問題意識が高まっています。消費者庁の2024年の調査では、消費者が環境配慮をうたう商品・サービスの信頼性に懐疑的な割合が一定数存在することが示されており、根拠のない訴求は逆効果になりえます。SDGs広報においても、「○○に取り組んでいます」という表現だけでなく、「何を、どれだけ、いつまでに」という具体性を加えることが、信頼醸成の最低ラインとなりつつあります。

また、SDGsの17ゴールを「全部やっています」と網羅的に示す発信より、自社が特に注力する2〜3のゴールに絞り込んで深く語るほうが、読み手への伝わり方は明確です。企業の規模や業種によってマテリアリティ(重要課題)は異なるはずであり、その選択と理由を開示すること自体がすでに「質の高い広報」の第一歩になります。

SDGsに関する企業の取り組み事例の全体像については、当メディアの企業SDGs事例まとめも参考にしてください。

今日からできる1アクション|まず「自社の取り組みを1つ言語化する」

SDGs広報を始めるにあたって、新しい取り組みを立ち上げる必要はありません。すでに社内にある「当たり前にやっていること」がSDGsのゴールに紐づいていることは多いものです。まず社内の担当者と30分ほど話し合い、「自社の本業がどのゴールと接点を持っているか」を1つ言葉にするところから始めてみてください。それができたら、そのゴールに関連した数値(電力使用量・廃棄物量・女性管理職比率など)を1つ探して記録しておく。広報の素材はそこから生まれます。

まとめ|SDGs広報で意識したいポイント

SDGs広報が「伝わる発信」になるかどうかは、取り組みの規模よりも「誰に・何を・なぜ今」が明確かどうかにかかっています。本業との接続性を示し、数値と担当者の言葉を組み合わせ、発信チャネルをしぼって継続することが、長く信頼を積み上げる広報の基本です。

  • 本業との接続性を示すことで、生活者・メディアの納得感が高まる
  • 「目標・現状・ギャップ」を時系列で示すと説得力が上がる
  • 発信チャネルは最初から全部追わず、1チャネルで月次更新サイクルをつくる
  • 担当者の顔・言葉を出すことで、発信に「温度」が生まれる
  • グリーンウォッシュを避けるために、「何を・どれだけ・いつまでに」の具体性を持たせる

関連する企業SDGs事例のまとめは、企業SDGs事例ハブからご覧いただけます。また、SDGsゴール17「パートナーシップ」の文脈で広報を考えたい方は、エシカル消費とSDGsの記事も参考になります。

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