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ENVIRONMENT

「包む」が変わる、脱プラ包装の素材革新と消費者が動かす変化の波

「包む」が変わる、脱プラ包装の素材革新と消費者が動かす変化の波

私たちが日々手にする食品や日用品の「包み」が、静かに変わりはじめています。プラスチックからの脱却は規制だけが牽引しているわけではありません。素材科学の進歩と、消費者の購買行動の変化が重なりあい、包装のあり方をめぐる転換が加速しています。2026年3月、世界各地からその最前線を伝えるニュースが相次いでいます。

牛乳から生まれる包装フィルム|素材革新の最前線

2026年2月28日、オーストラリアのフリンダース大学の研究チームが、牛乳タンパク質を原料とした生分解性の包装フィルムを開発したと発表しました。カゼイン酸カルシウム、デンプン、天然のナノクレイ(ベントナイト)を組み合わせることで、従来のプラスチックに匹敵する薄くて丈夫な素材を作り上げたといいます。
土壌での試験では、このフィルムが約13週間で完全に分解されることが確認され、使い捨て食品包装の現実的な代替材料として注目されています。
この研究は、バイオポリマーとナノクレイを組み合わせることで、食品包装に適した機能的なフィルムが製造できることを示す初期的なエビデンスとして評価されています。
同大学のナノ材料研究者ユーホン・タン教授は、食品包装をはじめとする使い捨てプラスチック製品の持続可能な代替品を開発することは、世界的な汚染の増加を緩やかにするために重要な一歩だと述べています。

もちろん、研究段階の素材が実際の商品棚に並ぶまでには、安全性・耐久性・コストなどさまざまな検証が必要です。しかし、このような基礎研究の蓄積が、数年後の「当たり前」をつくっていく土台になるという点で、注目に値する動きといえます。

植物タンパク質のコーティングが食品デリバリーを変える

素材革新は研究室の外でも着実に進んでいます。
2026年3月12日、フードデリバリー大手のJust Eat Takeaway.comは、サステナブル包装メーカーのHuhtamakiとの提携を拡大し、オーストリア・ベルギー・ドイツ・イタリア・オランダなどヨーロッパ10市場でプラスチック不使用のテイクアウト箱を展開すると発表しました。
この箱に使われているのは、英国のマテリアル・テクノロジー企業Xampla社が開発した「Morro™コーティング」で、化学的な改変を一切加えない天然植物タンパク質を素材としています。食品デリバリー市場において、従来のテイクアウト箱に使われてきたプラスチックコーティングの代替として高い性能を発揮するとされています。
この箱は完全にリサイクル可能で、EUの使い捨てプラスチック指令(SUPD)にも準拠しており、持続可能な調達元からのコルゲートペーパーで製造されています。
油分や水分が多い料理でも形状を維持し、熱も保てる設計になっており、プラスチックを使わない食品包装コーティングとしては英国の国立物理学研究所(NPL)からプラスチックフリー認証を取得しています。
Xampla社のCEO、アレクサンドラ・フレンチ氏は「ヨーロッパは包装規制で急速に動いており、プラスチックを本当の意味で置き換えられる素材への需要がかつてないほど高まっている。これらの市場には明確な規制と、環境への強い野心がある」と述べています。

バリアコーティング紙、5兆円超の市場へ

こうした動きを反映するように、市場規模も拡大しています。
2026年3月、ロンドンの調査会社Strategic Packaging Insights社が発表したレポートによると、バリアコーティング紙包装の世界市場は、プラスチックに依存しない持続可能な包装ソリューションの需要増を受けて顕著な成長を示しており、市場規模はすでに52億ドル(約7.8兆円)とされています。
バリアコーティング紙包装は、紙のリサイクル可能性と再生可能性を活かしながら、防湿・防油・防酸素性などの機能を特殊コーティングで付加することで、従来プラスチックや多層ラミネートが必要だった用途にも対応できるとされています。食品・飲料・医薬品・日用品メーカーが規制圧力と消費者意識の高まりを背景にこうした素材へ移行しているといいます。

消費者が「選んで」変える|購買行動の変化

こうした企業・研究者側の変化を後押ししているのが、消費者の行動の変化です。
カスタムパッケージ・印刷ソリューション企業のUPrinting社が2025年10月に米国成人1,000人を対象に実施した調査では、消費者の68%がプラスチックごみを減らすために積極的に購買習慣を変えたと回答しており、
これはもはや一部の意識高い層だけの行動ではないことを示しているといいます。

同調査では、価格が同じであれば93%の消費者がよりサステナブルに見える包装の商品を選ぶと回答しており、環境メッセージだけでなく視覚的なデザインが購買の決め手になっているといいます。
特に若い世代においてこの傾向は顕著で、Z世代の消費者の53%が過剰なプラスチック包装を使うブランドの購入を積極的にやめたと回答しているといいます。
さらに、Z世代の21%は購買判断の前に必ずサステナビリティに関する開示内容を確認していると答えているといいます。
また、消費者の32%が、サステナブルなデザインの包装であれば6〜10%高い価格を支払ってもよいと回答しており、包装の環境配慮が「コスト」ではなく「付加価値」として機能しはじめていることが見えてきます。

「包装廃棄物の削減はブランドや製造業者がリードすべき」と考える消費者は57%にのぼるとされており、責任の所在も企業に向けられています。

日本の現在地|法制度と産業界の対応

日本では、2022年4月に施行されたプラスチック資源循環促進法のもと、2030年までのワンウェイプラスチックの累積25%排出抑制や、容器包装の60%リユース・リサイクル、2035年までに使用済みプラスチックを100%有効利用するという目標が掲げられているとされています。

企業側でも対応が進んでいます。
たとえばファミリーマートは、2030年までにオリジナル商品の容器・包装に環境配慮型素材の使用率を60%に引き上げる目標を掲げているとされており、スプーンの軽量化や木製マドラーの導入、バイオマスプラスチックを配合したストローの採用などを進めているといいます。

一方で、目標の達成には技術コストの低減や消費者への周知など、解決すべき課題も残っています。包装をめぐる変化は、規制・技術・消費者行動という三つの力が交差する場所で起きています。その交差点で何が選ばれるかが、これからの「包む」のかたちを決めていくことになるでしょう。

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MIRASUS

MIRASUS編集部。地球と人に優しい未来をつくるサステナビリティな事例をご紹介。誰にでもわかりやすくSDGsに関する情報は発信していきます。

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