ニュースで耳にすることの多い、「発展途上国」や「開発途上国」、「先進国」という単語。
「日本は先進国に分類される」と認識している人は大勢いますが、その一方で、どの国が発展途上国や開発途上国に分類されるのかを知らない人も少なくありません。
本記事では、発展途上国とは何か、開発途上国との違いやSDGsとの関係性などをまとめました。
まずは、発展途上国とはどのような国を指すか知りましょう。
発展途上国とは?
発展途上国とは、名前の通り経済発展が途中の国です。
以前は、「後進国」や「低開発国」と呼ばれていました。
発展途上国と先進国を判別する明確な決まりはありません。
そのため、主に経済開発協力機構(OECD)(※)が3年ごとに作成している、「ODA(政府開発援助)受け取りリスト」に掲載された国を発展途上国と呼びます。
このODA受け取りリストには、世界銀行が公表した「一人当たりの国民総所得(GNI)」に基づく低・中所得者と、国連が定義するすべての「後発開発途上国」も含まれています。
(※)経済開発協力機構(OECD):ヨーロッパ諸国を中心に、日米を含む38カ国の先進国が加盟する国際機関。経済成長や貿易の自由化、途上国支援など、国際経済の全般について協議し貢献することを目的としている。
発展途上国と呼ばれる国は146個もある
現在、経済や産業が発展していない「発展途上国」に分類される国は、196ヵ国のうち146個もあります。
これは、全人口の74%が発展途上国で暮らしていることになるのです。
そして発展途上国の多くは、東南アジアや南アジア、南アフリカに集中しています。
どのような国があるか詳しく知りたい方は、下記の外務省ホームページをご覧ください。
参照元:外務省HP
発展途上国の特徴とは
続いては、発展途上国の特徴を見ていきましょう。
発展途上国には、下記のような特徴が見られます。
・農業や酪農畜産業、漁業などの一次産業を主産業にしている国が多い
・以前は後進国や低開発国と呼ばれていた国
・人口が多い
・かつて植民地として支配されていた国が、多く存在する南半球に集中している
人口増加が著しい発展途上国では、労働人口も多く、その大部分を農業が占めています。
理由としては、貧困による教育格差や植民地時代の影響などが挙げられます。
また人口増加も、労働力の確保や自分が年老いた時に世話をしてもらうために子どもを生むなど、さまざまな理由から起きているのです。
ここまでは、発展途上国の特徴についてお伝えしました。
続いては、「発展途上国」と「開発途上国」の違いについて確認していきましょう。
参照元:貧困層を抱える国における産業発展の考え方|公益財団法人 国際通貨研究所
発展途上国と開発途上国の違いは?
「発展途上国」以外に「開発途上国」という言葉を目にしますが、実はこの2つ、同じ意味をもつ言葉になります。
しかし最近は、「発展途上という言葉が抽象的で、何が発展途上なのか分からない」という理由から、「開発途上国」と呼ぶことが一般的になっているのです。
ちなみに開発途上国の「開発途上」は、「経済や産業、技術などが開発途上にあること」を意味します。
発展途上国以外に分類される国
発展途上国以外にも、下記のような呼び方をする国があります。
後発開発途上国
後発開発途上国(LDO)とは、発展途上国のなかでも特に開発が遅れている最貧国を指します。
LDOの認定には、
・一人あたりの国民総所得(3年間の平均)が、1,018米ドル以下(2021年時点)
・HAI(Human Assets index)(※1)
・EVI(Economic Vulnerability Index)(※2)
上記の国連開発計画委員会(CDP)が認定した基準を満たし、尚且つ当該国の同意が必要です。
2022年8月時点で、アフリカやアジア、大洋州、中南米の46カ国が後発開発途上国に認定されています。
(※1)HAI:国連開発政策委員会(CDP)が、人的資源開発の程度を表す指標として設定したもの。栄養不足人口の割合や5歳以下乳幼児死亡率、妊産婦死亡率、中等教育就学率、成人識字率を指標化している。
(※2)EVI:CDPが設定した、外的ショックに対する経済的脆弱性を表す指標。人口規模や地理的要素、環境、貿易のショック、経済構造、自然災害のショックから構成されている。
参照元:後発開発途上国|外務省
新興国
新興国とは、日本やアメリカなどの先進国と比較すると経済水準は低いものの、高い成長性を秘めている国です。
別名「エマージングカントリー」とも呼ばれています。
代表的な国として、ブラジルやロシア、インド、中国、南アフリカ共和国などが挙げられます。
発展途上国を支援している日本企業
ここからは、発展途上国を支援している日本企業を見ていきましょう。
さまざまな企業が、専門性を活かし発展途上国の支援を行っています。
サラヤ株式会社【100万人の手洗いプロジェクト】
日本初となる薬用手洗い石けん液と、石けん液容器の開発・事業化をしたサラヤ株式会社。
対象となる衛生商品の売り上げ1%を寄付し、ユニセフがアフリカのウガンダで展開する「ユニセフ手洗い促進活動」に2010年から支援しています。
石けんを使いしっかりと手を洗うことによって、下痢や肺炎の予防につながり、約100万人もの子どもたちの命が守られると言われています。
この活動によってウガンダの家庭では、2006~2007年時点で14%であった手洗い普及率が、2019~2020年には38%まで上昇しました。
参照元:プロジェクト概要|SARAYA|100万人の手洗いプロジェクト
株式会社ユーグレナ【ユーグレナGENKIプログラム】
藻の一種である「ユーグレナ(ミドリムシ)」を活用した、機能性食品や化粧品などの商品開発、販売などを行う株式会社ユーグレナ。
2014年から、バングラデシュで暮らす子どもたちの栄養問題解決を目的とした、「ユーグレナGENKIプログラム」を開始しました。
栄養豊富なユーグレナを含むクッキーを、バングラデシュの子どもたちに無償配布。
配布される1食分(6枚)のクッキーは、バングラデシュの子どもたちが、特に不足している1日分の栄養素を摂取できます。
そしてこの活動は、私たちがプログラム対象商品を購入した際に、発生する売り上げの一部が充てられているのです。
発展途上国へ私たちができること
私たち個人にも、発展途上国のためにできることはあります。
①発展途上国について知る
まずは、発展途上国について知りましょう。
どのような国を発展途上国と呼び、どのような問題が発生しているのかを知ることが大切です。
専門書を読んだり、支援をおこなっている団体の講演会やイベントに参加してみたりと、情報収集から始めましょう。
「イベントへの参加はハードルが高い」と思う人は、下記団体のホームページを覗いてみてください。
■国境なき子どもたち
■日本ユニセフ協会
■AAR Japan「難民を助ける会」
②フェアトレード製品の購入
フェアトレードとは、直訳すると「公平な貿易」を意味します。
発展途上国でつくられた製品を適正な価格で購入することによって、現地で働く人の労働環境や生活の改善につながると注目されているのです。
買い物をする際は、フェアトレード認証マークの有無を確認しましょう(※フェアトレードであっても、認証マークがついていない製品も存在します)。
参照元:【途上国の働く子どもたちを救う】フェアトレード製品を選んでみませんか?|独立行政法人 国際協力機構
③寄付をする
発展途上国への寄付を募集している団体もあります。
e-Education
途上国の教育格差をなくすために、2010年から活動している団体です。
アジアの子どもたちに、映像教材や現地の大学生チューターによるオンライン家庭教師などを行っています。
毎月1,000円の寄付で、2,000種類もの映像授業が入ったタブレット端末を、現地の高校生2人に無償で提供できます。
参照元:e-Education公式HP
NGO法人ワールドギフト
物品の寄付を中心に、食糧支援や医療支援、「安全な水」支援などを行う国際協力NGOです。
物品の寄付支援では、衣類やキッチン用品、おもちゃなど不要になったモノを再利用し、これまで92カ国に支援してきました。
参照元:NGO法人ワールドギフト公式HP
発展途上国の支援とSDGsの関係性
発展途上国を支援し、発展途上国数の減少や課題解決につながるとSDGsの目標達成にも貢献できると考えられています。
双方の関係性をお伝えする前に、まずはSDGsについて知りましょう。
SDGsとは
SDGsとは、2015年に行われた国連総会にて193の加盟国が賛同した国際目標です。
地球上で起きている環境・社会・経済の課題解決を目指し、17の目標と169のターゲットを設定。
世界中の人々が力を合わせ、2030年までにすべての目標達成を目指します。
目標には貧困や飢餓なども含まれているため、開発途上国を支援し課題解決に取り組むと、SDGsの目標達成にもつながるのです。
目標1「貧困をなくそう」と目標2「飢餓をゼロに」
先述した通り、発展途上国は経済が発展途上(途中)の国です。
そのため、先進国と比べると経済的に不安定な国も多く、貧困によるさまざまな問題が起きています。
例えば、低賃金での長時間労働が当たり前となっている環境や、主産業である農業は、自然災害や紛争などによって収入に影響がでやすいなど。
これらが原因で、その日の食事を確保するのも厳しい人々が大勢いるのです。
そのため、
・労働環境を整え、それに見合った報酬を受け取れるような仕組みづくり
・持続可能な農業を目的とした農業技術の指導
・自然災害への対策を目的としたプロジェクトを立ち上げる
などといった支援をすることによって、貧困や飢餓問題の解決につながり、SDGs目標1と目標2の達成にも近づきます。
目標4「質の高い教育をみんなに」
実は、貧困問題が解決すると目標4の達成にもつながる可能性があります。
発展途上国に暮らす子どもたちは、家計を支えるために学校へ行かずに家の手伝い(児童労働)をすることも珍しくありません。
しかし、先述したような支援を行うと収入が安定し、子どもは学校へ行けるようになります。
すると、子どもたちの学力は向上。
勉強したことによって就ける職の選択肢も増え、収入も安定します。
さらに、これまで親から子どもへと続いていた貧困の連鎖も断ち切れるのです。
まとめ
発展途上国(開発途上国)では、苦しい生活をおくる人々が大勢います。
そして、解決しなければならない問題も山積みです。
解決するためには、世界全体の課題として考え協力する必要があります。
日本企業も、専門性を活かし独自の支援を行っています。
私たち個人も、何かできることはないか考えてみましょう。
一人でも多くの人が動くことによって、問題解決への近道になるはずです。