自然界には驚くべき仕組みがあり、素晴らしいバランスで成り立っています。
バイオミミクリーとは、こうした自然界の仕組みを技術開発の参考にすることです。
今回は、バイオミミクリーの概要を解説するとともに、メリットや具体例を紹介していきます。
バイオミミクリーとは
自然界は、地球が誕生してから今日まで、様々な進化を遂げ調和を保ってきました。
人間が地球に誕生する遥か昔から培われた仕組みであり、地球の知恵といっても過言ではありません。
こうした自然界の仕組みは、私たち人間が持続可能な社会を実現する上で参考にすべき点です。
バイオミミクリーは、生物を表す「Bio(バイオ)」と模倣の「Mimicry(ミミクリー)」を合わせた言葉で、地球の知恵を参考にして、技術開発や製品開発を行うことを意味します。
参照元:バイオミミクリー大学
バイオミミクリーのステップ
バイオミミクリーには、「デザイン」「プロセス」「生態系」の3つに分類することができます。
まずはじめのステップとして、自然界にあるデザインを模倣して製品を作るケースが挙げられるでしょう。
デザインを参考にするだけでは、持続可能な社会に繋がるとは言い切れませんが、バイオミミクリーのひとつとして大切なステップです。
続いて、自然界の仕組みがどのように作り出されているかを模倣します。
料理でいうところのレシピにあたり、バイオミミクリリーを実現させるために欠かせません。
最後のステップが、生態系そのものを参考にすることで、「デザイン」「プロセス」と合わせて3つのステップを踏まえた生産を行えば、環境負荷を抑えることが可能になるといわれています。
バイオミミクリーのメリット
バイオミミクリーは、長い歳月をかけて培われた自然の英知を活用するため、新たなアイディアを生み出す必要がありません。
また、自然界に合致した方法であり、無理なくナチュラルに問題を解決できる点が大きなメリットといえるでしょう。
バイオミミクリーの具体例
バイオミミクリーは、すでに世界中の様々なジャンルで活用されています。
続いては、バイオミミクリーの具体例を4つ見ていきましょう。
鳥を参考にした新幹線
新幹線は、カワセミとフクロウの特徴を参考にして作られています。
まず、カワセミのくちばしを真似て作ったのが、新幹線の先頭車両のデザインです。
新幹線は、トンネルに入る際に非常に大きな圧力がかかります。
同じくカワセミも水に飛び込む際に圧力がかかりますが、綺麗に飛び込むことからヒントを得て、くちばしのデザインを取り入れました。
フクロウを参考にしたのが、新幹線と電線を接続するためのパンタグラフです。
新幹線のパンタグラフは、高速で空気中を通るため風の抵抗が強すぎて、騒音問題につながります。
そこで、鳥の中でも静かに飛ぶフクロウの羽に着目し、特徴的な形を新幹線のパンタグラフに取り入れました。
マグロの皮膚を参考にした塗料
大阪府にある日本ペイントマリン株式会社では、マグロの皮膚を参考にした塗料「エコロフレックス」を開発しました。
マグロは、大きな体でありながら、水中を時速80kmで泳ぎます。
これは、マグロの体表にある粘膜が水との摩擦抵抗を抑えているため成り立つ特徴です。
エコロフレックスでは、この粘膜の代わりにハイドロジェルという素材を導入しています。
ハイドロジェルを含ませることで、水との摩擦抵抗が減り、結果的にCO2排出量削減が可能となりました。
現在は、同社が特殊特許を取った「ウォーターとラッピング機能」を生かし、「A-LF-Sea」や「LF-Sea」といったさらに性能の高い製品を製造発売中です。
参照元:
・マグロの皮膚を模倣した低燃費型船底防汚塗料|環境省
・日本ペイントマリン株式会社
心地よい木漏れ日を生かしたサンシェード
セキスイハイムサプライ株式会社では、まるで木陰にいるような涼しさを再現したサンシェード「エアリーシェード」を開発しました。
森の中は、樹木が枝を張り、木の葉によって太陽の光を受け止めてくれため、都市部よりも涼しいといった特徴があります。
また、木の葉には適度な間隔があり、風の抜けが良い点もポイントの1つです。
こちらの製品では、森の原理を生かし、樹木の葉を模したシェードで人工的に森と似た環境を作り出しています。
まとめ
自然界は、私たち人間には計り知れないほどの叡智が備わっています。
それは、人間が生まれる遥か昔から、脈々と繰り替えされた営みの賜物といえるでしょう。
私たちも地球の一員として、自然界が生み出したデザインや仕組みを活用し、自然に沿った生き方をすることが求められています。
バイオミミクリーは、誰もが心地よく暮らす社会を実現する上でも欠かせない考え方です。
頻繁に利用するアイテムにも、バイオミミクリーの概念が導入されているケースも多いでしょう。
長い年月をかけて洗練されたデザインを模倣することは、環境に負荷がかかりにくい製品を生み出すことにもつながります。
どのような製品にバイオミミクリーが導入されているかを知るだけでも、環境問題に意識を向けやすくなるでしょう。