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SOCIETY

クルエルティフリーとは|動物実験の現状と認証マークの選び方

クルエルティフリーとは? 注目理由や認証マークの種類を知ろう

毎日使うシャンプーや化粧品が、動物実験を経て作られているかもしれないと知っていますか。「クルエルティフリー(Cruelty-Free)」は、製品の開発から流通にいたるすべての工程で動物を傷つけない、という考え方です。消費者として選択肢を持つために、認証マークの見方や国内外の現状をまとめました。

クルエルティフリーとは何か

「Cruelty-Free」は、「cruelty(残虐性)」と「free(〜がない)」を組み合わせた英語表現です。製品の原材料調達・開発・製造・流通のいずれの段階においても、動物を痛めたり殺したりしないことを指します。化粧品・日用品・衣料品など幅広い分野で使われますが、特に注目されているのは化粧品・スキンケア分野です。

重要なのは、「クルエルティフリー」が動物性成分の有無を問う言葉ではない点です。製造プロセスにおける動物実験を行っていなければクルエルティフリーと呼べます。一方、動物性由来の成分を使わないことを意味する「ヴィーガン」とは概念が異なります(両者の違いは後述)。

化粧品の動物実験|なぜ今も続いているのか

動物実験とは、医薬品や化学物質・化粧品成分などの安全性を人が使用する前に動物で確認する手法です。主に皮膚刺激性・眼刺激性・急性毒性などの試験で用いられてきました。マウス・ラット・ウサギ・モルモットなどが実験対象になることが多く、試験の内容によっては動物に大きな苦痛を与えます。

現在、欧州連合(EU)では2013年に化粧品目的の動物実験を全面禁止しており、英国・アイスランド・ノルウェー・スイス・インド・イスラエル・ニュージーランド・トルコ・グアテマラ・セルビアなど40か国以上が同様の規制を導入または推進しています。欧州議会も化粧品のための動物実験の世界的廃止を求める決議を重ねています。

しかし、世界的に見ると状況はまだら模様です。中国では長年、輸入化粧品に対して動物実験データの提出を義務付けてきました。2021年以降、一般向け化粧品の一部カテゴリでは規制が緩和され、国内で製造・販売される通常の化粧品については動物実験が必須ではなくなりましたが、依然として特定カテゴリや輸入品には試験が求められるケースがあります。中国市場に進出したいブランドが動物実験をやめられない背景には、こうした規制の複雑さがあります。

また、すでに安全性が確認済みの成分であっても、国や企業によっては慣習的に実験を繰り返していることがあります。「安全確認済みの成分に動物実験は不要ではないか」という声は国際的に高まっており、3Rの原則(Replace・Reduce・Refine=代替・削減・改善)に基づく規制改革が各国で進んでいます。

クルエルティフリーとヴィーガンの違い

この2つは混同されがちですが、別々の概念です。整理すると以下のとおりです。

  • クルエルティフリー:製品の開発・製造過程で動物実験を行っていない。動物由来の成分(ハチミツ・ラノリン・コラーゲンなど)を含む場合もある。
  • ヴィーガン(コスメ):動物性由来の成分を一切使用していない。ただし、動物実験を行っていない保証はない。
  • クルエルティフリー+ヴィーガン両対応:動物実験も動物性成分も排除している製品。動物への配慮を最も幅広く実践したい場合はこの選択肢が候補になる。

つまり、クルエルティフリー認証があってもヴィーガンとは限らず、ヴィーガン表示があってもクルエルティフリーとは限りません。購入時には両方のラベルや認証を確認することが、より正確な判断につながります。

主要なクルエルティフリー認証マーク3種

認証マークがあれば、第三者が審査した証拠として信頼の目安になります。ただし、企業が独自に「クルエルティフリー」と自称するだけでは保証の裏付けがありません。以下の認証機関のマークを確認する習慣が大切です。

リーピングバニー(Leaping Bunny)

米国・カナダの8つの動物保護団体が結成した「化粧品消費者情報連合(CCIC)」が運営する、最も認知度の高い国際認証です。認証の基準は厳格で、製品を構成するすべての原材料サプライヤーを含めた動物実験の全面禁止を要件とします。毎年の再確認審査があり、取得後も基準の維持が義務付けられています。2024年時点で世界2,000以上のブランドが認証を取得しており、日本向けに流通するブランドにも複数見られます。

IHTK認証マーク

ドイツを拠点とする国際非営利団体「IHTK(Internationaler Herstellerverband Tierversuchsfreier Kosmetik und Haushaltsprodukte)」の認証マークです。1979年から活動を開始しており、歴史の長さが特徴です。認証企業は動物虐待防止のための独自ガイドラインに沿って製品を製造します。動物実験の全面拒否に加え、動物由来成分についても一定の制限を設けている点がほかの認証と異なります(ただし全面禁止ではなくヴィーガン認証とは別物です)。

CCF認証マーク(Choose Cruelty Free)

オーストラリアの非営利団体「Choose Cruelty Free(CCF)」が1993年から運営する認証制度です。動物実験の禁止に加え、独自の「畜産副産物制限(Restrictions on animal bi-products)」基準を設けています。これは、食肉処理の過程で生じた副産物(皮・臓器など)を化粧品に使うことも「動物の犠牲を前提とした利用」として制限するというものです。ただしハチミツやミルクなど一部の副産物は使用を認めています。

なお、PETAも独自の「Beauty Without Bunnies」データベースを公開しており、動物実験を行わないと企業が申告したブランドを掲載しています。ただしPETAの審査は自己申告ベースであるため、第三者によるサプライチェーン監査が伴う上記3機関と比べると証明力に差があります。製品選びの参考にはなりますが、認証の重みは区別して考えることをおすすめします。

動物実験に代わる技術|オルタナティブテストの現状

クルエルティフリーへの移行を支えるのが、動物実験の代替技術(オルタナティブテスト)の発展です。代表的なものを挙げます。

  • 再構成ヒト皮膚モデル(RhE):ヒトの皮膚細胞を三次元的に培養したモデル。皮膚刺激性試験などに活用されており、OECDのガイドラインとして国際的に認められている。
  • コンピューターシミュレーション(in silico):AIや機械学習を用いて化学物質の毒性を予測する手法。特定の化学構造から毒性を推定でき、スクリーニング段階での動物使用を削減できる。
  • オルガノイド・臓器チップ(Organ-on-a-chip):ヒトの細胞を用いた微小臓器デバイス。より複雑な生体反応を再現でき、次世代の代替技術として研究が進んでいる。

花王グループは1980年代後半から動物実験代替法の研究開発に取り組んでおり、欧州化粧品工業会(Cosmetics Europe)が推進する代替法プロジェクトにも参画しています。国際的な試験法ガイドライン化を通じて、代替技術の普及に貢献しています。また、キユーピー株式会社は2018年に食品事業における動物実験の廃止を決定しました。動物実験の縮小を検討していたところ、アニマルライツ団体PETAからの要請を受けて半月ほどで廃止を決断したとされています。現在は動物実験が不要な商品設計にも注力しています。

代替技術の精度は年々向上しており、一部の安全性試験では動物実験と同等以上の予測精度を示すケースも報告されています。ただし、すべての試験を代替技術に移行するには規制当局の承認プロセスや国際的なガイドライン整備が必要で、完全な移行には引き続き時間がかかるとされています。

日本市場でのクルエルティフリーの現状

日本は現時点で化粧品を目的とした動物実験の法的禁止措置を設けていません。ただし、国内の化粧品メーカーや日用品企業の多くが自主的に動物実験の削減・廃止に取り組んでおり、3Rの原則に基づく運用が業界団体の指針として広がっています。

消費者側の意識も変化しています。特に2020年代以降、Z世代・ミレニアル世代を中心に「エシカル消費」への関心が高まり、クルエルティフリーやヴィーガンコスメを選ぶ動機として「動物への配慮」が明確に上位に挙げられるようになっています。国内大手ドラッグストアや通販サイトでもクルエルティフリーを検索・絞り込みできる機能が整備されつつあります。

一方で課題もあります。日本語での情報が少ないこと、認証マークの認知度がまだ低いこと、「クルエルティフリー」を自称するだけで認証を取得していないブランドが混在していることなどが、消費者の判断を難しくしています。認証マークの有無を確認する習慣が、信頼できる選択の第一歩になります。

クルエルティフリー製品の選び方|買い物で実践するポイント

実際に購入に活かせる手順を整理します。

  • 認証マークを確認する:リーピングバニー・IHTK・CCFのいずれかのマークをパッケージや公式サイトで探す。
  • PETAのデータベースを補助的に使う:crueltyfreeinternational.orgやPETAのBeauty Without Bunniesで企業名を検索する(自己申告ベースと認識した上で参照する)。
  • 中国販売の有無を調べる:中国で一般販売しているブランドは動物実験データの提出が求められるケースがある。ブランドの公式声明を確認する。
  • ヴィーガンとの組み合わせを検討する:動物性成分も避けたい場合は、クルエルティフリー認証+ヴィーガン認証の両方を取得しているブランドを選ぶ。
  • 自己申告だけのブランドは慎重に:「We don’t test on animals」の記載のみで認証がないブランドは、サプライヤーを含めた確認が取れていない可能性がある。

クルエルティフリーコスメの選択肢は年々増えており、価格帯も高価格帯から手頃なプチプラまで広がっています。「認証マークがあるブランドを1本試してみる」という小さな一歩から始めることができます。

まとめ|知ることが選択肢を広げる

クルエルティフリーは、化粧品や日用品を選ぶときに使える具体的な判断基準です。認証マークの意味と種類を知るだけで、日常の買い物が少し変わります。

  • クルエルティフリーは「動物実験なし」を意味し、動物性成分の有無を問うヴィーガンとは別の概念
  • リーピングバニー・IHTK・CCFの3認証は第三者審査があり、自己申告より信頼性が高い
  • EUでは2013年から化粧品目的の動物実験を全面禁止。日本では法的禁止はなく企業の自主取り組みが中心
  • 中国販売の有無はブランドのクルエルティフリー性を判断するうえで重要な確認事項の一つ
  • 再構成ヒト皮膚モデルやAI予測など代替技術は進化中。完全移行には規制整備の継続が必要
  • まずは1製品、リーピングバニーマーク付きのアイテムを探すことから始めてみる

あなたの次の買い物で、パッケージのマークを一度だけ確認してみてください。それだけで、選択の幅は確実に広がります。

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