私たちが普段、何気なく使っている化粧品や日用品の中には、安全性を確かめるために動物実験を行い製造されているものもあります。
安全性を確かめることは、怪我や事故を防ぐためにも大切です。
しかし、だからといって動物を殺したり痛めつけたりしていい理由にはなりません。
そこで誕生したのが、クルエルティフリーです。
本記事では、クルエルティフリーが注目されるようになった背景やヴィーガンとの違い、認証マークの種類などについて紹介します。
まずは、クルエルティフリーとは何かを知りましょう。
クルエルティフリーとは
クルエルティフリーとは、「cruelty(残虐性)」と「free(~がない)」を合わせた言葉です。
製品開発から消費者の元へ届くまでの過程において、動物を傷つけたり殺したりしないことを意味します。
近年は、犠牲となる動物を減らすために、完全菜食主義者である「ヴィーガン」と併せて注目されている考え方です。
クルエルティフリーが注目されるようになった背景
先述した通り、クルエルティフリーが注目されるようになった理由として、動物実験が挙げられます。
動物実験とは
動物実験とは、危険が生じる可能性のある医薬品や化学物質・機器などを、人間が使用する前に動物に試すことです。
現在は法律にもとづき、出来る限り動物を使わない実験を行ったり使用数を減らしたりするなど、動物に配慮した実験を行う国や企業も増えています。
しかし、すでに流通し、人体への安全性も確認されている成分や機器に対して実験を行っていることも事実です。
そのため、「すでに安全性が確認されている成分や、機器に対する実験は必要ないのではないか」という声もあがっています。
各国で異なる動物実験への対応
実際に下記の国では、化粧品のための動物実験が禁止されています。
・グアテマラ
・アイスランド
・インド
・イスラエル
・ニュージーランド
・ノルウェー
・セルビア
・スイス
・トルコ
しかし、まだまだ動物実験を行っている国が多いことも事実です。
また、自分が暮らす国では禁止されていても、動物実験が禁止されていない国から製品が輸入されることも少なくありません。
そのため、私たち消費者もクルエルティフリーについて知識を深め、自ら選択する必要があります。
ここまでは、クルエルティフリーについて解説しました。
続いては、クルエルティフリーと混同されやすい「ヴィーガン」に注目し、双方の違いを見ていきましょう。
クルエルティフリーとヴィーガンの違い
クルエルティフリーとヴィーガンは、動物保護や愛護を目的とした考え方です。
しかし、この2つはまったく同じではありません。
クルエルティフリーは先述した通り、開発から消費者の手元に届くまでの過程で、動物を痛めつけたり殺したりしない(動物実験を行わない)ことを意味します。
その一方でヴィーガンは、動物性由来の成分を一切使用しない考え方や製品を意味する言葉です。
そのため、動物性由来の成分を使用していなければ、動物実験を行っていたとしても「ヴィーガン」と言えます。
この点が、クルエルティフリーとヴィーガンの大きな違いでしょう。
動物に対して可能な限り配慮したいのであれば、クルエルティフリーとヴィーガンの両方を満たした製品の購入をおすすめします。
クルエルティフリー認証マーク
動物実験を行っていない製品と、そうでない製品を見分ける方法の1つである「クルエルティフリー認証マーク」。
なかには偽物も存在するため、購入の際は注意が必要です。
正しい認証マークを知り、動物に優しい製品を購入しましょう。
クルエルティフリー認証マークの種類
今回は、有名な認証マークを3つ紹介します。
リーピングバニー
引用元:リーピングバニープログラム
リーピングバニーは、アメリカとカナダで活動する8つの動物団体から結成された「化粧品の消費者情報連合(CCIC)」が推進する認証制度です。
動物実験を行っていない企業と協力し、動物に優しい化粧品や家庭用品を、消費者が手に入れやすい世の中にするために誕生しました。
認証マークの中では最も認知度が高いと言われており、リーピングバニー認証制度の基準を満たし、承認したブランドの数は2,000以上もあります。
参照元:リーピングバニー
IHTK認証マーク
引用元:IHTK
IHTK認証マークは、ドイツを拠点に活動する動物実験を行わない国際製造業者団体「IHTK」の認証マークです。
1979年から、動物実験の廃止やクルエルティフリーの化粧品の認証などを行ってきました。
IHTK認証マークを取得した企業は、ガイドラインである「動物虐待防止のためのドイツ社会」に沿って作業を行います。
またIHTKでは、動物実験の全面拒否だけではなく、動物由来の成分に対する制限も設けています。
ただし、制限であって動物由来成分の使用禁止ではないため、ヴィーガンとは異なります。
その点は注意が必要です。
参照元:IHTN
CCF認証マーク
CCF認証マークは、オーストラリアの非営利団体「CHOOSE CRUELTY FREE(CCF)」の認証マークです。
この団体は1993年から動物実験反対を呼びかけており、その他にも「Restrictions on animal bi-products(畜産副産物の制限)」という独自基準も設けています。
畜産副産物の制限は、「食肉用に処理された動物の副産物(皮や臓器など)だとしても、動物が犠牲になっていることには変わりないため使用を禁止する」という内容です。
製品製造のために、動物を痛めつけたり殺したりすることへの禁止を呼びかける団体は沢山ありますが、CCFは他の産業で発生した動物由来の成分の使用にまで触れているのです。
ただしハチミツやミルクなど、一部の副産物の使用は許可されています。
クルエルティフリーに対する日本国内の動き
続いては、クルエルティフリーに対する日本国内の動きを見ていきましょう。
花王グループ
花王グループは、1980年代後半から動物実験代替法の技術開発に力を入れている企業です。
グローバルな研究機関と連携し、国際的な試験法ガイドライン化に向けた取り組みを行っています。
また「Cosmetics Europe(欧州化粧品工業会)」が推進する、動物実験代替法プロジェクトにも参加するなど、動物実験の廃止に積極的に取り組んでいます。
参照元:動物実験に対する方針|花王
キユーピー株式会社
キユーピー株式会社は、2018年7月にアニマルライツ団体「PETA」から要請があり、「動物実験を行わない(外部委託も含む)」「動物実験に資金提供をしない」ことを、要請から半月後に決断しました。
以前から動物実験の縮小化を考えていたため、動物実験の廃止を短期間で決断できたそうです。
現在は、動物実験が必要となる素材開発を行わない商品設計にも力を入れています。
参照元:
・キユーピーが食品事業における動物実験を廃止|JAVA
・健康・栄養の開発|キユーピー株式会社
まとめ
私たちが、普段何気なく使用している化粧品や家庭用品などは、安全性を確かめるために動物実験が行われている可能性があります。
動物実験は、消費者が実態を把握しにくい問題のため、知らずに購入する人もいるでしょう。
1人でも多くの人がこの事実を知り、クルエルティフリーの製品を選択することによって沢山の動物たちが救われます。
買い物をする際は、クルエルティフリー認証マークが付いてないか確認しましょう。