児童労働と聞くと、なんとなく遠くの国で起きている話のような気がして、イメージが湧かないという人も多いかもしれません。
この記事では、今もなお世界のあちこちで起きている児童労働の現状についてご紹介していきます。
加えて、児童労働撲滅に向けた取り組みも見ていきましょう。
多くの子供の人生が危険にさらされているという事実をまずは知ることが、この問題への取り組みへの第一歩となります。
児童労働の現状を知ろう
「児童労働」とは、単語から想像ができる通り、子供を働かせることを意味しています。
具体的にはどれくらいの子供が、どのような現場で働いているのでしょうか。
国際労働機関(International Labor Organization)のデータをもとに、読み解いていきましょう。
国際労働機関は、仕事をしても良い最低の年齢を決めており、国際的な児童労働の定義として、児童労働に当たるのは以下の場合としています。
・15歳未満の就労
・18歳未満の危険で有害な労働に従事すること
就業最低年齢は15歳、さらに健康や安全面を損なう可能性のある労働は18歳まで禁止です。
このような国際ルールはありますが、アフリカや中南米、中東、アジアなど幅広い地域において、有給無給に関わらず15歳以下、特に幼い子供たちが労働をしています。
児童労働を行う子供の数
日本からはイメージの湧きにくい児童労働ですが、いったいどれくらいの子供が働きに出ているのでしょうか。
世界には、2億1800万人の働いている子どもたち(5~17歳)がいます。そのうち、1億5200万人が児童労働者であり、およそ半数の7300万人が危険有害な仕事をしています。男女別:男子8800万人/女子6400万人
2018年に発表された国際労働機関のデータによると、1億5200万人の子供が児童労働者とあります。
これは、具体的には「世界の子供の10人に1人」が働いているというのが現状で、日本の人口を上回る数の子供たちということになります。
さらに、その中の半数が「危険有害労働」という、例えば、こども兵士、売春や児童ポルノ、ドラッグ販売、炭鉱などの危険な現場での重労働を強いられているのが現状です。
2018年の1億5200万人という数字は途方もないように見えますが、2000年時点では1億4500万人とのデータがあるので、少しずつですが減ってきています。国際機関やNGOなどの取り組みが、少しずつ結果を出し始めていたと言えるでしょう。
ただし、2020年の全世界における新型コロナウイルス(COVID-19)の影響を受け、数字はまた悪化しているとみられています。
児童労働はどこで起きているのか?
世界の子供の10人に1人が関わっているこの児童労働ですが、子供たちはどのような場所で労働を強いられているのでしょうか。
児童労働は農業部門に集中しています。(71%)その中には漁業、林業、畜産、水産養殖が含まれ、自給用と商業農業があります。次に、サービス業(17%)、鉱業を含む工業(12%)が続きます。
「児童労働」というと、無理やり働かされているイメージが先行し、大きな工場や農場で働いている子供を想像しがちです。
もちろん大きなプランテーションで仕事をしているケースもありますが、その一方で「家族の小さな農園を手伝っている」というケースも多くあります。
中南米やアフリカ地域においてよく見られる小農家の場合は、文化的に「人手が足りないから家の仕事を手伝う」のが当たり前ということも多く、このようなケースも「児童労働」に該当します。
日本でも戦前・戦後は「1番上の子だけが学校へ行き、下の子たちは家の仕事を手伝っていた」というケースは多かったはず。
そのような現状が、今もなお発展途上国では続いているのです。
児童労働はなぜ問題なのか?
拉致などで親元を離され工場や農場、戦争地域で無理やり働かされているケースもあれば、文化的に家の仕事を手伝っているケースもあり、一言で「児童労働」と括れないほど幅が広いのが、この児童労働の問題です。
一度立ち止まって、なぜ児童労働が問題になるのか考えてみましょう。
児童労働による問題として具体的には下記が挙げれらます。
- 児童労働の多くが安全な環境ではないため、怪我や病気のリスクが高い
定常的に重いものを運ぶことで体の発達に不具合が出たり、日常的に農薬をあびることで免疫力が低下するリスクも高いです。 - 危険有害労働に従事した子供は、精神的被害も多く、PTSDなどの後遺症が残ることも多い
戦争地帯や鉱山などの危険な現場で大怪我や死に直面することで、幼い心に大きな傷を残します。 - 教育が受けられず、最低限の知識や道徳を学ぶことができない
学校に行かずに仕事をする生活を続けることで、本来子供が受けるべき教育を受けることができません。加えて、幼いうちにドラッグ販売のような危険有害労働をしていた子供は、将来にわたって道徳観の欠如など心のケアが必要になる場合が多いと言われています。
児童労働撲滅に向けた取り組みは?
児童労働撲滅に向けた取り組みの歴史は長く、国際機関や各NGO団体などが活動を続けてきています。
それを、ぐっと加速させることに繋がったのが2015年の国連サミットと言えるでしょう。
「持続可能な開発目標」として掲げられたSDGs目標8番に「児童労働の撲滅」という文章が取り入れられました。
強制労働を根絶し、現代の奴隷制、人身売買を終らせるための緊急かつ効果的な措置の実施、最悪な形態の児童労働の禁止及び撲滅を確保する。2025年までに児童兵士の募集と使用を含むあらゆる形態の児童労働を撲滅する。
これを受け、2021年は「児童労働撤廃国際年」となりました。
ターゲットである2025年までの児童労働撲滅に向けて、各政府・各機関・各団体が動き出す1年となりそうです。
その一方で新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で、世界中の人々の暮らしはさらに貧しくなっています。
家計を助けるために働きに出る子供は増え、続く休校がその波に拍車をかけています。
具体的な統計は採れていませんが、2017年の数字から悪化していることが優に想定できる状況です。
2025年の撲滅ターゲットに向けて、どのようなアクションが取れるかが鍵となっていくでしょう。
まとめ|児童労働の撲滅に向けて
世界の子供たちの10人に1人が労働をしているという現状に目を向けてきました。
根底にあるのは「貧しい」という問題ですが、社会的・文化的な背景もあり、撲滅に向けては多くの課題を乗り越える必要があります。
SDGs目標8番に制定された「2025年」というターゲットまで、残り4年。
児童労働撤廃国際年となった2021年は、向こう4年間にどれだけ前進できるかをかけて地盤を築く1年となりそうです。
新型コロナウィルス危機に晒されながらも、国際社会は着実に、そしてスピードアップしながら児童労働問題に取り組みはじめています。
一個人としては、まずはこの問題を理解することから。
そして自分たちの生活の中で、何が出来るのかを考えていきましょう。