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フランスの移民の歴史や移民政策を解説

2019年に外国人労働者の受入に関する改正法が施行され、外国人労働者に門戸を開放したことで日本では移民問題に関する議論が活発化しています。

移民問題に関しては、ヨーロッパやアメリカなどが先進国です。
ヨーロッパ随一の移民受入国であるフランスは、「外国で生まれ、出生時にフランス国籍を持っていなかった人」を移民の定義としています。

この記事では、移民受入先進国フランスの移民事情について解説します。

フランスの移民の歴史

フランスの移民の歴史

フランスの移民受入の歴史は、18世紀後半に始まります。
フランスでは出生率が低下し、19世紀半ばから兵士や労働力が不足し、移民の受入を開始しました。
さらに第一次世界大戦後には、戦死者の増加や出生率の低下によって人口が急激に減少し、移民受入に積極的になりました。

戦間期や栄光の30年(第二次世界大戦後の経済成長期)には安価で大量の労働力が必要とされ、炭鉱や自動車産業の労働者としてスペインやポルトガル、アルジェリアなどから大量の移民を受け入れました。
この時期のフランスの経済復興及び成長は、移民労働力に支えられたといっても過言ではありません。

しかし、1974年にはオイルショックによる経済不況を契機として他のヨーロッパ諸国と同様に当時のジスカール・デスタン政権が移民の受入を停止します。
さらに1976年には、いわゆる「帰国奨励政策」を実施し、帰国志願者に給付金を支給することで移民の削減を目指しましたが、効果はありませんでした。

2000年代になると移民政策に変化が訪れます。
出生率が再び低下した2000年代以降は労働者不足が深刻化し、外国人労働者や移民の受入を積極的に行いました。

フランス政府は人道上の理由から移民に家族との合流を認めていたため、定住化した移民の家族の呼び寄せによって外国人労働者の数には大きな変化はないものの、移民が引き続き増加しました。

フランスの移民人口

フランスの移民人口

フランスの国立統計経済研究所”L’Institut National de la Statistique et des Études Économiques”によれば、いわゆる移民一世(外国で生まれ、出生時にフランス国籍を持っていなかった人)は、2015年時点で750万人と全人口の約11%を占めます。

さらに移民二世(片親もしくは両親が移民)は約850万人であり、移民一世と合わせると約1,600万人と全人口の約4分の1を占めます。
また、最近増加しているイスラム教徒は約570万人と言われ、社会の分断の一因となっています。

20世紀の前半までは移民の大半は他のヨーロッパ諸国出身でしたが、第二次世界大戦後はアフリカの旧植民地からの移民が増加しています。
フランスの国立統計経済研究所によれば、現在では移民の3割をポルトガルやイタリアなどのヨーロッパ出身者が占め、アフリカ出身者が4割を占めます。
なかでもアルジェリアやモロッコなどの旧植民地が上位を占めています。

移民の出身国の上位ランキングはポルトガル、アルジェリア、モロッコが最も多く、合わせて50万人と推計されています。
次いで、イタリア、スペイン、チュニジア、トルコ、アフリカ諸国となっています。

フランスの移民政策の課題

フランスの移民政策の課題

フランスはヨーロッパ随一の移民受入国ですが、移民政策には多くの課題があります。

具体的な課題について見ていきましょう。

イスラム教徒の社会統合

フランスでは中東からの移民が増加したことで、イスラム教徒を中心とする非キリスト教徒の移民を社会に統合することが政治的課題となってきました。
フランス政府は「ライシテ(laïcité)」という政策を行い、移民の社会統合を推進してきました。

ライシテとは「宗教共存の原理」であり、すべての宗教を平等に扱い、公共の場所に宗教を持ち込まない代わりに信仰の自由を保障するというものです。
ライシテは文化的背景を異にする移民にフランス語を習得させ、フランスの社会的価値観を共有させることでフランス国民にしようという試みでしたが、イスラム教徒には浸透しませんでした。

また、近年のイスラム原理主義者の台東やアフガン戦争、イスラム世界の反西洋的風潮によってフランス社会において反イスラムの潮流があります。
例えば、公立学校でのスカーフの禁止に関する論争が拡大し、2010年には当時のサルコジ政権がスカーフの着用に罰金刑を科す「ブルカ禁止法」を成立させています。

格差問題

移民の失業率の高さも課題となっています。
移民は元来、フランスの労働力不足を補うために受入が始まりましたが、近年の経済成長の鈍化によって単純労働者の多い移民の失業率は上昇しています。

フランスの国立統計経済研究所によれば、1990年時点の男性の失業率は16.7%、女性は27.3%となっています。
特にアフリカの旧植民地であるマグレブ諸国(モロッコ、アルジェリア、チュニジア)出身の移民は、失業率は3割程度となっています。

また、移民の多くは高度な技術が求められる職業ではなく建設業や警備業、ホテル・レストランなどの単純労働に従事しています。
例えば、移民が就業者に占める割合は建設業で27.1%、警備業で28.6%、ホテル・レストランで19.4%となっています。
一方で公務員に占める移民の割合は、わずか10.4%となっています。

失業率が多く、就労していても単純労働に従事する移民は給与水準が低い傾向にあり、経済的貧困に苦しんでいます。
移民の中には、このような経済苦を背景として犯罪に走る者もいて、フランス社会の不安の一因となっています。

不法移民増加と社会の不満

フランスでは、フランスの社会福祉制度を目的とした不法移民の増加が社会問題となっています。
これらの移民の中には、社会的不満を爆発させる者もいます。

2019年にはパリ中心部の観光名所であるパンテオンで不法移民700人が建物に侵入し、滞在許可証を求めて、首相との話し合いを目的に建物を占拠しました。
フランス政府は、これら不法移民に対するフランス国民の不満と移民に対する人道的配慮の必要性との狭間で葛藤しています。

2020年にはマクロン大統領は不法移民や難民の管理強化を発表し、難民申請が却下された外国人に対しては国外退去命令を迅速に出し、不法移民としての滞留を防ぐこととしました。
このような移民に対する寛容な考えと、移民に対する社会的不満が同居しているのがフランス社会の現状です。

フランス国民の中には、多くの移民や難民を受け入れることによってフランス国民の税金が使われていることに不満を持つ人や、旧植民地からの移民に対する差別意識を持つ人もいます。
前回の大統領選挙でマリーヌ・ルペン氏が台頭した背景には、移民や難民を快く思わない人が一定数いることを示しています。

まとめ

今回は、フランスの移民事情について、歴史から課題点について解説しました。
フランスは世界で比較しても移民の割合が多い移民大国ですが、やはり移民の受け入れが多いければ、それだけ課題が生じてしまうのが実情です。

私たち日本人も、遠い国のことだから関係ないというのではなく、世界で生じている移民の問題についてしっかりと理解しておく必要があるでしょう。

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