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SOCIETY

ユニバーサルエネルギーアクセスとは?SDGs目標7の重要概念をわかりやすく解説

ユニバーサルエネルギーアクセスとは?SDGs目標7の重要概念をわかりやすく解説

現代社会において、電気やガスといったエネルギーは生活に欠かせない存在です。しかし、世界には今でも電気のない暮らしを強いられている人々が約7億5000万人もいることをご存知でしょうか。ユニバーサルエネルギーアクセスは、こうした世界的なエネルギー格差を解消し、すべての人が持続可能なエネルギーを利用できる社会の実現を目指す重要な概念です。

この記事で学べるポイント

  • ユニバーサルエネルギーアクセスの基本概念とSDGs目標7との関係
  • 世界のエネルギーアクセスにおける深刻な地域格差の実態
  • 2030年の目標達成に向けた国際的な取り組みと今後の展望

ユニバーサルエネルギーアクセスとは

ユニバーサルエネルギーアクセスとは

基本的な定義と概念

ユニバーサルエネルギーアクセスとは、文字通り「すべての人々がエネルギーにアクセスできる状態」を意味する国際的な概念です。これは単に電気が使えることを指すのではなく、安価で信頼性があり、持続可能で現代的なエネルギーサービスを、世界中のすべての人が利用できる状況を表しています。

具体的には、以下の4つの要素が重要とされています。

安価性(Affordable):家計に負担をかけることなく、エネルギーサービスを購入できること

信頼性(Reliable):必要な時にいつでも安定してエネルギーを利用できること

持続可能性(Sustainable):環境に配慮し、将来世代にも継続して提供できるエネルギー源であること

現代性(Modern):効率的で安全な技術を用いたエネルギーサービスであること

これらの条件を満たすエネルギーアクセスを実現することで、貧困の削減、教育機会の拡大、健康状態の改善、経済発展の促進など、様々な社会課題の解決につながると期待されています。

SDGs目標7との関係

ユニバーサルエネルギーアクセスは、2015年に国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」の中核を成す概念です。SDGs目標7は「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」ことを2030年までに実現することを目指しています。

この目標には、以下の具体的なターゲットが設定されています。

ターゲット7.1:2030年までに、安価かつ信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保する

ターゲット7.2:2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大する

ターゲット7.3:2030年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を2倍にする

SDGs目標7の達成は、他の多くの目標実現にも直結しています。例えば、電力へのアクセスは教育機会の向上(目標4)、ジェンダー平等の推進(目標5)、経済成長の促進(目標8)、気候変動対策(目標13)など、様々な分野に波及効果をもたらします。

世界のエネルギーアクセス現状と課題

世界のエネルギーアクセス現状と課題

電力アクセスの地域格差

現在の世界における電力アクセスの状況を見ると、深刻な地域格差が存在しています。国際エネルギー機関(IEA)の最新データによると、2023年時点で世界人口の約92%が基本的な電力アクセスを有していますが、残り8%にあたる約7億5000万人が依然として電気のない生活を送っています。

最も深刻な状況にあるのは、サブサハラ・アフリカ地域です。電力アクセスを持たない人々の約85%がこの地域に集中しており、特にコンゴ民主共和国、エチオピア、ナイジェリア、タンザニア、ウガンダなどの国々で状況が厳しくなっています。

一方、アジア地域では過去10年間で大幅な改善が見られました。インド、インドネシア、バングラデシュといった人口大国が相次いで普遍的電力アクセスを達成したことで、同地域の電力アクセス率は2010年の79%から2023年には97%まで向上しています。

この地域格差の背景には、経済発展レベルの違い、地理的条件、政治的安定性、インフラ整備の状況など、複数の要因が複雑に絡み合っています。

クリーンな調理用燃料の問題

電力アクセスと並んで深刻な問題となっているのが、クリーンな調理用燃料へのアクセスです。世界では現在も約20億人が、薪、木炭、動物の糞などの伝統的な固体燃料を使用して調理を行っています。

これらの燃料を屋内で燃やすことで発生する有害な煙は、深刻な健康被害をもたらします。世界保健機関(WHO)の調査によると、室内大気汚染により年間約360万人が早期死亡しており、その多くが女性と子どもです。また、燃料の収集のために長時間を費やすことで、特に女性や子どもの教育機会や経済活動への参加が制限されるという社会的な問題も生じています。

サブサハラ・アフリカでは、クリーンな調理用燃料にアクセスできない人の数が年間約1400万人ずつ増加しており、人口増加率がアクセス改善の速度を上回っている状況が続いています。

ユニバーサルエネルギーアクセス実現への取り組み

ユニバーサルエネルギーアクセス実現への取り組み

国際機関の役割

ユニバーサルエネルギーアクセスの実現に向けて、多くの国際機関が連携して取り組みを進めています。その中でも中心的な役割を果たしているのが、国際エネルギー機関(IEA)、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)、世界銀行、国連などです。

国際エネルギー機関(IEA)は、各国のエネルギーアクセス状況を継続的に監視・分析し、年次報告書「SDG7を追跡する:エネルギー進捗報告」を発行しています。この報告書は、世界各国の政策立案者にとって重要な指針となっており、効果的な戦略策定に欠かせない情報を提供しています。

世界銀行は、エネルギーアクセス向上のための資金調達において主導的な役割を担っています。2021年以降、開発途上国のクリーンエネルギー支援のための国際的な資金フローは年々増加しており、2023年には216億ドルに達しました。しかし、これでも2030年の目標達成には不十分とされており、さらなる資金動員が求められています。

国連エネルギー(UN-Energy)は、「2025年に向けたエネルギー行動計画」を立ち上げ、加盟国や関係者との協力を通じて、2025年までに5億人への電力アクセス提供と、年間350億ドルの電力アクセス投資を目標に掲げています。

技術革新とソリューション

ユニバーサルエネルギーアクセスの実現には、従来の大規模な送電網の延伸だけでなく、革新的な技術ソリューションが重要な役割を果たしています。

ミニグリッド技術は、小規模な地域コミュニティに電力を供給するシステムとして注目されています。太陽光発電やバッテリー技術の進歩により、遠隔地や島嶼部でも安定した電力供給が可能になりました。IEAの分析によると、2030年までにアフリカで電力アクセスを必要とする家庭の約60%は、ミニグリッドやオフグリッドシステムが最も実現可能な電化手段となる見込みです。

**ソーラーホームシステム(SHS)**は、個別の家庭に太陽光発電システムを設置する技術で、特にケニア、エチオピア、ナイジェリアなどで急速に普及しています。10ワット以上の発電能力を持つSHSの販売実績は近年記録的な伸びを示しており、電力網への接続が困難な地域での電力アクセス向上に大きく貢献しています。

調理用燃料の分野では、改良型クックストーブバイオガス技術電気調理器具の普及が進められています。これらの技術は、従来の薪や木炭と比べて燃焼効率が高く、有害な排出ガスを大幅に削減できるため、健康被害の軽減と環境保護の両方に効果をもたらします。

デジタル技術の活用も重要な要素となっています。モバイル決済システムの普及により、従来は電力料金の徴収が困難だった地域でも、プリペイド式の電力サービスが提供できるようになりました。また、IoT技術を活用した遠隔監視システムにより、電力設備の効率的な運用と保守が可能になっています。

各国の成功事例と学び

各国の成功事例と学び

近年、ユニバーサルエネルギーアクセスの実現において顕著な成果を上げた国々から、貴重な教訓を得ることができます。

インドは、2017年に開始した「サウバーギャ計画」により、わずか数年で国内のほぼ全世帯への電力供給を実現しました。この成功の要因は、中央政府の強いリーダーシップ、十分な予算確保、効率的な実施体制の構築、そして無料での電力接続提供という包括的なアプローチにありました。

バングラデシュは、2023年に普遍的電力アクセスを達成した国の一つです。同国は、農村部での小規模太陽光発電システムの大規模展開と、段階的な送電網拡張を組み合わせた戦略により、短期間での目標達成を可能にしました。

ルワンダは、アフリカにおける成功事例として注目されています。同国は、政府主導の明確な電化計画と民間投資の誘致を通じて、電力アクセス率を2009年の約10%から2020年には90%以上まで向上させることに成功しました。

2030年目標達成に向けた今後の展望

2030年目標達成に向けた今後の展望

必要な投資と政策

2030年までにユニバーサルエネルギーアクセスを実現するためには、現在のペースでは不十分であり、大幅な投資の拡大と政策の強化が必要です。IEAの分析によると、現在の進捗状況が続けば、2030年時点でも約6億4500万人が電力アクセスを欠いた状態となる見込みです。

目標達成のためには、年間約1億3500万人の新規電力接続が必要とされています。これは過去の実績を大幅に上回る規模であり、従来とは異なるアプローチが求められています。

資金調達の課題は特に深刻です。電力アクセス向上のために必要な年間投資額は約510億ドルと推定されていますが、2023年の実際の投資額は216億ドルにとどまっています。この資金ギャップを埋めるためには、公的資金だけでなく民間投資の大幅な拡大が不可欠です。

多国間金融機関や二国間援助機関による融資制度の改革、譲許的融資の拡大、リスク軽減のための仕組み作り、そして適切な国家エネルギー計画と規制環境の整備が急務となっています。特に、債務負担の重い開発途上国に対しては、グラント(無償資金)の割合を現在の9.8%から大幅に引き上げる必要があります。

政策面での取り組みも重要です。各国政府には、長期的なエネルギーアクセス計画の策定、適切な規制環境の整備、民間投資を促進するためのインセンティブ制度の構築が求められています。また、エネルギーアクセスを他の開発目標と統合したアプローチを取ることで、より効果的な成果を上げることが可能になります。

日本の貢献と国際協力

日本は、ユニバーサルエネルギーアクセスの実現に向けて多方面で貢献を行っています。政府開発援助(ODA)を通じた支援に加え、民間企業の技術力と経験を活用した取り組みが展開されています。

日本政府は、「質の高いインフラ投資」の一環として、アジア・アフリカ諸国のエネルギーインフラ整備を支援しています。特に、再生可能エネルギー技術、省エネルギー技術、スマートグリッド技術の分野で、日本の先進的な技術が途上国の課題解決に活用されています。

民間企業レベルでは、太陽光発電システム、蓄電池技術、エネルギー管理システムなどの分野で、日本企業が途上国市場に参入し、現地のエネルギーアクセス向上に貢献しています。これらの取り組みは、技術移転や人材育成を通じて、持続可能な発展にも寄与しています。

国際協力の面では、日本は国際エネルギー機関(IEA)、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)などの国際機関を通じた多国間協力にも積極的に参画しています。また、二国間関係においても、エネルギー分野での技術協力や資金支援を通じて、パートナー国のエネルギーアクセス向上を支援しています。

まとめ

まとめ

ユニバーサルエネルギーアクセスは、単なるエネルギー問題を超えて、貧困削減、教育機会の拡大、健康状態の改善、ジェンダー平等の推進、気候変動対策など、様々な社会課題の解決につながる重要な概念です。

現在、世界では約7億5000万人が電力を利用できず、約20億人がクリーンな調理用燃料にアクセスできない状況が続いています。特にサブサハラ・アフリカ地域での状況は深刻で、人口増加率がアクセス改善の速度を上回っているという課題があります。

しかし、技術革新の進展により、ミニグリッドやソーラーホームシステム、改良型クックストーブなどの新しいソリューションが普及し始めています。インド、バングラデシュ、ルワンダなどの成功事例は、適切な政策と投資により短期間での大幅な改善が可能であることを示しています。

2030年の目標達成には、現在の約2.5倍のペースでアクセス拡大を進める必要があり、国際社会全体での協調した取り組みが不可欠です。資金調達の拡大、技術革新の促進、政策環境の整備、そして国際協力の強化を通じて、すべての人々が持続可能なエネルギーにアクセスできる世界の実現を目指していく必要があります。

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