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地域新電力とは?地産地消で地域を活性化する仕組みを解説

地域新電力とは?地産地消で地域を活性化する仕組みを解説

電力自由化により、私たちは自由に電力会社を選べるようになりました。その中でも注目を集めているのが「地域新電力」です。地域で作った電気を地域で使う「地産地消」の考え方で、電気代の削減だけでなく、地域経済の活性化や環境問題の解決にも貢献する新しい電力供給の形として期待されています。

この記事で学べるポイント

  • 地域新電力の基本的な仕組みと自治体新電力との違い
  • 地域新電力が地域経済や環境に与える具体的なメリット
  • 地域新電力の課題と今後の可能性

地域新電力とは何か

地域新電力とは何か

地域新電力とは、特定の地域に根ざした小売電気事業者のことです。従来の大手電力会社とは異なり、地域内で発電された再生可能エネルギーを中心とした電力を、その地域の住民や企業に供給することを目的としています。

電力自由化以前は、各地域の大手電力会社(東京電力、関西電力など)が独占的に電力供給を行っていました。しかし2016年4月の電力小売全面自由化により、新たに電力市場に参入する事業者が増加しました。これらの新規参入事業者を総称して「新電力」と呼びますが、その中でも地域密着型の事業を行うのが地域新電力です。

地域新電力の最大の特徴は「エネルギーの地産地消」にあります。太陽光発電、風力発電、バイオマス発電、小水力発電など、地域にある再生可能エネルギー設備で発電した電力を、同じ地域内の公共施設、企業、一般家庭に供給します。これにより、エネルギーの域内循環を実現し、地域経済の活性化につなげることを目指しています。

地域新電力の基本的な仕組み

地域新電力の事業モデルは、従来の電力供給とは大きく異なります。まず、地域内にある再生可能エネルギー発電設備から電力を調達します。太陽光パネルが設置された公共施設、地域のごみ処理場での廃棄物発電、近くの川を活用した小水力発電など、地域の特性を活かした多様な電源を利用します。

電力が不足する場合は、日本卸電力取引所(JEPX)から追加の電力を購入したり、他の発電事業者から調達したりして需要に対応します。このように複数の電源を組み合わせることで、安定した電力供給を実現しています。

供給先は主に地域内の需要家です。市役所や学校などの公共施設から始まり、地元企業、そして一般家庭へと供給範囲を拡大していくケースが多く見られます。公共施設への供給から始める理由は、自治体が出資に関わることが多く、まずは安定した需要を確保しやすいためです。

料金設定については、大手電力会社よりもやや高めになることが一般的ですが、その分、電気代として支払ったお金が地域内で循環し、地域経済の活性化に貢献するというメリットがあります。

自治体新電力との違い

地域新電力と似た概念に「自治体新電力」がありますが、両者の違いは自治体の関与の程度にあります。地域新電力は地域密着型の電力事業全般を指すのに対し、自治体新電力は特に自治体が出資や協定などの形で直接関与している電力事業を指します。

自治体新電力では、市町村が株主として資本参加したり、業務協定を結んだりして、より積極的に事業に関わります。秩父市が出資する「秩父新電力株式会社」や、下関市が関わる「株式会社海響みらい電力」などが代表的な例です。

自治体の関与により、公共施設への優先的な電力供給や、地域の環境政策との連携、地域住民への還元事業などが実施しやすくなります。また、自治体が関わることで事業の信頼性が高まり、地域住民の理解も得やすくなるというメリットがあります。

一方、自治体が関与しない純粋な民間主導の地域新電力もあります。これらは地元企業が中心となって設立され、より機動的な事業運営を行うことができます。どちらの形態も、地域のエネルギー自給率向上と地域経済活性化という目標は共通しています。

地域新電力が注目される背景

地域新電力が注目される背景

地域新電力への注目が高まっている背景には、エネルギー政策の転換と地域が抱える課題があります。東日本大震災を契機とした エネルギー政策の見直しや、地方の人口減少・経済縮小といった問題の解決策として、地域新電力が期待されているのです。

近年、政府は2050年カーボンニュートラルの実現を目指し、再生可能エネルギーの導入拡大を推進しています。地域新電力は、地域に賦存する再生可能エネルギーを最大限活用する仕組みとして、この政策目標の達成に重要な役割を果たすと考えられています。

電力自由化と新電力の誕生

2016年4月の電力小売全面自由化により、これまで地域の大手電力会社が独占していた家庭向け電力市場に、多様な事業者が参入できるようになりました。この制度改革により、消費者は電力会社を自由に選択できるようになり、電力市場の競争が活性化されました。

新電力の参入により、電気料金の多様化や付加サービスの充実が進みました。携帯電話会社やガス会社、石油会社など、様々な業種から電力事業への参入が相次ぎました。中でも地域新電力は、単なる電気の販売にとどまらず、地域課題の解決を目指す事業モデルとして注目を集めました。

電力自由化当初は大都市圏の新電力が注目されましたが、徐々に地方でも地域密着型の新電力が設立されるようになりました。2024年時点では、自治体が関与する地域新電力だけでも全国で100社を超えており、その数は年々増加しています。

この背景には、電力自由化が単なる料金競争ではなく、エネルギーの地産地消や地域活性化といった新たな価値創造の機会を提供したことがあります。地域新電力は、この機会を最大限活用する事業モデルとして発展してきました。

地域課題解決への期待

地方自治体が地域新電力に注目する理由の一つは、地域が抱える構造的な課題の解決への期待です。人口減少、高齢化、産業の空洞化といった問題に直面する地方にとって、地域新電力は新たな解決策として位置づけられています。

従来、地方から大都市圏の電力会社に支払われていた電気代が、地域内で循環するようになることで、地域経済の活性化が期待されます。電気代として地域外に流出していた資金を域内にとどめ、地域の雇用創出や税収増加につなげることができると考えられています。

また、地域新電力は再生可能エネルギーの導入促進にも貢献します。これまで活用されていなかった地域の自然資源を電力として利用することで、エネルギー自給率の向上と環境負荷の軽減を同時に実現できます。特に、農村部では耕作放棄地への太陽光発電設置や、森林資源を活用したバイオマス発電などが注目されています。

さらに、災害時のエネルギー安全保障の観点からも地域新電力は重要です。大規模な電力システムに依存せず、地域内で電力を自給できる体制を構築することで、災害時の停電リスクを軽減し、地域の防災力向上にも貢献できると期待されています。

環境省は地域新電力を「地域循環共生圏の担い手である地域エネルギー会社」と位置づけ、地域の脱炭素化を推進する重要な主体として期待しています。このように、地域新電力は単なる電力事業を超えた、地域課題解決のための総合的な取り組みとして注目されているのです。

地域新電力のメリット

地域新電力のメリット

地域新電力には、経済面と環境面の両方で大きなメリットがあります。特に、地域内での資金循環により地域経済が活性化し、同時に再生可能エネルギーの利用により環境負荷の軽減も実現できる点が高く評価されています。

地域新電力の導入により、これまで地域外に流出していた電気代が地域内にとどまるようになります。全国の地域新電力103社の2022年度の販売電力量は合計76.8億kWhに達しており、これは全新電力の6.7%に相当します。この数字からも、地域新電力が地域経済に与える影響の大きさがうかがえます。

また、地域新電力は一般的に大手電力会社よりも二酸化炭素排出係数が低いという特徴があります。これは地域の再生可能エネルギー電源を積極的に調達する傾向にあるためで、環境面でのメリットも明確に示されています。

地域経済への効果

地域新電力の最も大きなメリットは、地域経済への波及効果です。従来、地方の電気代は大都市に本社を置く大手電力会社に支払われていました。例えば、人口10万人の地方都市では、年間約50億円程度の電気代が地域外に流出していると推計されます。地域新電力により、この資金の一部が地域内で循環するようになります。

地域内での資金循環は、直接的な経済効果だけでなく、間接的な効果も生み出します。地域新電力会社で働く従業員の給与、設備のメンテナンス費用、事務所の賃借料など、事業運営に必要な様々な費用が地域内で支出されることで、地域の商店や サービス業にも好影響をもたらします。

雇用創出の効果も重要です。地域新電力の運営には、営業担当者、技術者、事務職員などの人材が必要です。また、太陽光パネルの設置・メンテナンス、バイオマス発電の燃料調達など、関連する事業でも新たな雇用が生まれます。特に、若年層の地域定着や都市部からのUターン・Iターンの促進にも貢献する可能性があります。

税収面でのメリットも見逃せません。地域新電力会社が地域内に設立されることで、法人税、事業税、固定資産税などの税収が地域に入ります。また、従業員の住民税収入も期待できます。これらの税収は、地域の公共サービスの充実や住民サービスの向上に活用することができます。

さらに、地域新電力は他の地域振興策との連携も可能です。地域の特産品の販売促進、観光業との連携、地域イベントの開催支援など、電力事業を核とした総合的な地域活性化事業を展開する事例も増えています。

環境面でのメリット

地域新電力は、環境負荷の軽減においても大きなメリットを提供します。最も重要なのは、再生可能エネルギーの利用拡大です。地域新電力の多くは、太陽光、風力、水力、バイオマスなど、化石燃料に依存しない発電方法を積極的に採用しています。

二酸化炭素排出量の削減効果は数値でも確認されています。地域新電力の平均排出係数は一般的に大手電力会社よりも低く、地球温暖化対策に有効であることが実証されています。2050年カーボンニュートラル実現に向けて、地域レベルでの脱炭素化を推進する重要な手段として位置づけられています。

地域の未利用資源の活用も環境面でのメリットです。これまで活用されていなかった耕作放棄地への太陽光発電設置、間伐材や剪定枝を利用したバイオマス発電、小さな川の流れを活用した小水力発電など、地域に眠っていた資源を有効活用できます。

ごみ処理施設との連携も注目されています。一般廃棄物の焼却熱を利用した発電や、下水処理場での消化ガス発電など、廃棄物処理の過程で生み出されるエネルギーを電力として活用する事例が増えています。これにより、廃棄物の適正処理と再生可能エネルギーの創出を同時に実現できます。

環境教育の推進にも貢献します。地域住民が身近な場所で再生可能エネルギーの発電を目にすることで、環境問題への意識向上や省エネ行動の促進につながります。学校教育における環境学習の教材としても活用され、次世代の環境意識醸成にも役立っています。

地域新電力の課題と問題点

地域新電力の課題と問題点

一方で、地域新電力には解決すべき課題も多く存在します。特に事業の持続可能性を確保する上で、経営面での課題や電気料金の問題が重要な検討事項となっています。

2022年に世界的な燃料価格高騰の影響を受け、一部の地域新電力で供給停止が発生したことからも分かるように、外部環境の変化に対する脆弱性が課題として浮き彫りになっています。小規模な事業者が多い地域新電力にとって、リスク管理と事業の安定化は喫緊の課題です。

経営面での課題

地域新電力の経営面での最大の課題は、事業規模の小ささに起因する様々な制約です。大手電力会社と比較して供給規模が小さいため、スケールメリットを活かすことが困難で、単位当たりのコストが高くなりがちです。

電力調達の面では、安定的で安価な電源の確保が困難な場合があります。地域内の再生可能エネルギー発電設備だけでは需要を満たせないことが多く、不足分を日本卸電力取引所や他の発電事業者から調達する必要があります。しかし、電力市場の価格変動リスクや調達量の制約により、安定した事業運営が困難になることがあります。

人材確保の問題も深刻です。電力事業には専門的な知識と経験が必要ですが、地方では電力業界の経験者を確保することが困難です。需給管理、系統運用、料金設定、顧客対応など、多岐にわたる業務を少数の人員で対応する必要があり、人材育成にも時間がかかります。

資金調達の課題もあります。発電設備の建設や設備投資には多額の資金が必要ですが、地域新電力の多くは中小企業であり、金融機関からの融資を受けにくい場合があります。また、事業の収益性や将来性について、投資家や金融機関の理解を得ることも容易ではありません。

競争環境の厳しさも経営面での課題です。電力自由化により多くの新電力が市場に参入し、料金競争が激化しています。地域密着型のサービスで差別化を図ろうとする地域新電力にとって、価格競争に巻き込まれることは事業存続に関わる重大な問題となります。

電気料金の問題

地域新電力の電気料金は、一般的に大手電力会社よりも高くなる傾向があります。これは事業規模が小さいことによるコスト高や、再生可能エネルギーの調達コストが影響しているためです。消費者にとって電気料金の高さは大きなデメリットとなり、契約獲得の障害となることがあります。

料金設定の透明性も課題の一つです。地域経済への貢献や環境負荷軽減といった付加価値を適切に評価し、料金に反映させることは困難です。消費者に対して、単純な料金比較では表れない地域新電力の価値を理解してもらうための説明が必要ですが、これを効果的に行うことは簡単ではありません。

電力市場の価格変動リスクも料金に影響します。燃料価格の急騰や電力需給の逼迫により、電力調達コストが急激に上昇することがあります。大手電力会社のように安定した電源を多数保有していない地域新電力にとって、このリスクはより深刻です。価格変動を料金に適切に反映させる仕組みの構築が課題となっています。

また、料金体系の複雑さも問題です。時間帯別料金、季節別料金、再エネ価値の評価など、多様な要素を考慮した料金設定を行う場合、消費者にとって分かりにくくなることがあります。シンプルで理解しやすい料金体系と、地域新電力の価値を適切に反映した料金設定のバランスを取ることが求められています。

さらに、料金収納や顧客管理のコストも無視できません。大手電力会社のような効率的なシステムを構築することが困難なため、これらの業務コストが料金に影響することもあります。デジタル化の推進により効率化を図る努力が続けられていますが、初期投資と運用コストのバランスが課題となっています。

地域新電力の具体的な事例

地域新電力の具体的な事例

全国で100社を超える地域新電力が設立され、それぞれの地域特性を活かした独創的な取り組みを展開しています。成功している事例を見ると、単なる電力供給にとどまらず、地域の課題解決と連携した総合的なサービスを提供していることが共通しています。

特に注目されているのは、福岡県みやま市の「みやまスマートエネルギー」です。同社は2015年に設立され、日本で初めて家庭用電力小売を実施した地域新電力会社として知られています。その先進的な取り組みは2015年度グッドデザイン賞金賞を受賞し、全国から年間約800人の視察者が訪れるほどの注目を集めています。

成功している自治体の取り組み

みやまスマートエネルギーの成功要因は、電力事業を核とした包括的な地域サービスの提供にあります。同社はみやま市が55%出資する第三セクターとして設立され、市内の太陽光発電やバイオマス発電で作られた電力を、公共施設や一般家庭に供給しています。

特徴的なのは、家庭用エネルギー管理システム(HEMS)を活用したサービス展開です。市内約2000世帯にHEMSを導入し、エネルギー使用状況の見える化を実現しました。このシステムを基盤として、高齢者の見守りサービスや地域商店の宅配サービスなど、電力供給を超えた生活支援サービスを提供しています。

また、地域通貨「みやまん・コイン」との連携も注目されます。地域新電力の利用者は毎月の電力使用量に応じてデジタル地域通貨を受け取り、市内の200を超える加盟店で利用できます。この仕組みにより、電力の地産地消が地域経済の循環促進に直結する仕組みを構築しています。

久慈地域エネルギー(岩手県久慈市)も成功事例として挙げられます。同社は再生可能エネルギー設備の導入支援から少子化対策まで幅広い地域課題に取り組み、初年度から黒字経営を実現しています。地元企業との連携により、ガスとのセット販売や関連サービスの拡充を進めています。

秩父新電力(埼玉県秩父市)は、ごみ処理発電を中心とした電源構成により安定的な電力供給を実現しています。秩父広域市町村圏組合のごみ処理施設での発電電力を主要な電源として活用し、地域内での資源循環と エネルギー循環を同時に実現しています。

地域特性を活かした発電方法

地域新電力の大きな特徴は、それぞれの地域が持つ自然資源や特性を最大限活用していることです。地域ごとに異なる発電方法を採用することで、エネルギーの多様性と安定性を確保しています。

太陽光発電は最も多く採用されている発電方法です。特に九州地方では日照時間の長さを活かした大規模な太陽光発電設備が多数導入されています。みやま市では遊休地を活用した出力5MWのメガソーラーを設置し、地域の電力需要の相当部分を賄っています。住宅用太陽光発電の普及率も15%と全国平均の3倍近い水準を達成しています。

バイオマス発電では、地域の農業廃棄物や森林資源を有効活用する事例が増えています。みやま市のバイオマスセンター「ルフラン」では、家庭から出る生ごみを燃焼ではなく液肥化し、その過程で発生するメタンガスを発電に利用しています。生成された液肥は市内の農地で使用され、資源循環型の仕組みを構築しています。

小水力発電は、山間部の地域新電力で活用されています。年間を通じて安定した水量が確保できる河川では、環境負荷の少ない持続可能な電源として重要な役割を果たしています。設備規模は小さくても、24時間連続運転が可能な点が太陽光発電や風力発電との大きな違いです。

ごみ処理発電は自治体新電力で特に注目されている電源です。一般廃棄物の焼却処理は自治体の責務であり、その際に発生する熱エネルギーを電力として回収することで、廃棄物処理費用の削減と再生可能エネルギーの創出を同時に実現できます。下水処理場での消化ガス発電も同様の考え方で導入が進んでいます。

地域新電力の今後の展望

地域新電力の今後の展望

地域新電力は、2050年カーボンニュートラル実現に向けた日本のエネルギー政策において重要な役割を担うと期待されています。政府は第6次エネルギー基本計画で再生可能エネルギーの主力電源化を掲げており、地域に分散した再生可能エネルギーを活用する地域新電力の重要性はさらに高まると予想されます。

現在、全国で103社の地域新電力が設立されていますが、この数は今後も着実に増加していくと考えられます。特に、2050年二酸化炭素排出実質ゼロを表明するゼロカーボンシティが900を超える自治体に拡大する中で、具体的な脱炭素施策を実行する手段として地域新電力への期待が高まっています。

脱炭素社会への貢献

地域新電力は脱炭素社会の実現において、技術面と社会システム面の両方で重要な貢献を果たします。技術面では、地域に分散した再生可能エネルギーの統合管理と最適運用により、系統全体の安定性向上に寄与します。

デジタル技術の活用により、需要予測の精度向上や発電量の予測技術の高度化が進んでいます。人工知能(AI)や機械学習を活用した需給バランスの最適化により、再生可能エネルギーの変動性に対応した安定的な電力供給が可能になります。

蓄電システムとの連携も重要な技術要素です。地域レベルでの蓄電池や揚水発電との組み合わせにより、太陽光発電や風力発電の出力変動を吸収し、24時間安定した電力供給を実現できます。電気自動車(EV)の普及と連携したV2G(Vehicle to Grid)技術により、移動体としての自動車が地域の電力システムの一部として機能する可能性も注目されています。

社会システム面では、エネルギーの地産地消を通じた分散型エネルギーシステムの構築が重要です。大規模集中型の電力システムに依存しない、地域自立型のエネルギー供給体制により、災害時の レジリエンス向上と平時の安定供給を両立できます。

地域づくりの新しい形

地域新電力は単なるエネルギー事業を超えて、地域づくりの新しいプラットフォームとしての役割が期待されています。ドイツのシュタットベルケ(地域公社)を参考とした総合的な地域サービス事業体としての発展可能性が注目されています。

デジタル技術を活用した新しい地域サービスの創造も重要な展開方向です。スマートメーターやIoTデバイスから得られるデータを活用し、エネルギー使用パターンの分析から地域住民の生活支援まで、包括的なサービス提供が可能になります。

地域の多様な主体との連携強化により、農業、観光、福祉、教育など様々な分野との融合が進むと予想されます。例えば、農業とエネルギーを組み合わせたソーラーシェアリング、観光と組み合わせた再エネツアー、教育と連携した環境学習プログラムなど、地域新電力を核とした新しい価値創造が期待されます。

広域連携による事業拡大も重要なトレンドです。複数の地域新電力が連携することで、電力調達の安定化、運営コストの削減、ノウハウの共有などのメリットを享受できます。みやまスマートエネルギーが九州各地の類似事業体と連携を進めているような事例が、今後全国に拡大していく可能性があります。

最終的に、地域新電力は持続可能な地域社会の実現に向けた重要なインフラとして位置づけられることになるでしょう。人口減少や高齢化といった課題に直面する日本の地方において、エネルギーを核とした地域活性化と課題解決の新しいモデルとして発展していくことが期待されています。

参照元
・自然電力株式会社 自治体新電力が秘める可能性~取り組むメリットと成功事例をご紹介~ https://shizenenergy.net/decarbonization_support/column_seminar/municipal_power_agency/

・アーバンエナジー株式会社 サービス紹介 地域新電力支援事業(自治体向けサービス) https://u-energy.jp/service/municipality.html

・地理空間情報技術ミュージアム 地域新電力 https://mogist.kkc.co.jp/word/bdd6e4b3-bd10-4900-9e07-867745cf443f.html

・一般社団法人ローカルグッド創成支援機構 地域新電力が100社を超えました https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000013.000082323.html

・みやまスマートエネルギー株式会社 公式サイト https://miyama-se.com/ ・みやまスマートエネルギー株式会社 会社案内 https://miyama-se.com/company

・資源エネルギー庁 2050年カーボンニュートラルを目指す日本の新たな「エネルギー基本計画」 https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/energykihonkeikaku_2022.html

・環境省 2050年カーボンニュートラルの実現に向けて https://www.env.go.jp/earth/2050carbon_neutral.html

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