人や国の不平等をなくそう

情報格差「デジタルデバイド」が高齢者の暮らしを左右し始めている

2030年までに世界が一丸となって取り組む、持続可能な開発目標「SDGs」。
その目標10に「人や国の不平等をなくそう」があります。

性別や年齢、障がい、人種、民族などを理由とする差別はさまざまありますが、IT化が進む現代において、情報格差「デジタルデバイド」は、個人の利益や暮らしの質、命にまでかかわる大きな課題となっています。

ここでは、特に情報弱者になりがちな高齢者に焦点を当てて、現状と今後の展望をまとめてみました。

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進むデジタル化と取り残される高齢者

進むデジタル化と取り残される高齢者
2020年のコロナ禍をきっかけとして、デジタル環境は急激な変化を続け、さまざまな手続きのデジタル化やリモートでのコミュニケーションが一気に進んだと言えます。

そのような中、コロナワクチン接種においては、優先されるべき高齢者が情報格差によって取り残されがちな状況が起きました。
電話がつながらない中、自力でインターネットを駆使できる高齢者は少なく、スマートホンやパソコンでの操作を、子や孫、またはボランティアの学生などの力を借りるケースが多く見られたのです。

また、新型コロナウイルス接触確認アプリ「COCOA」がスマートホン保有前提であったり、補助金や補助金などのオンライン申請のハードルが高かったりするなど、有事に起こるデジタル優先の施策において、特にデジタルリテラシーの低い高齢者の情報格差が露見する形となりました。

ITリテラシーと災害時の危険度

ITリテラシーと災害時の危険度

「50年に一度の災害が迫っている」という言葉を耳にすることも多くなりました。
50年に一度というのは計算上の数値ですが、実際に1時間降水量80mm以上の「猛烈な雨」や、35℃以上の「猛暑日」の発生頻度は年々増加しています。

自分が住む地域で、いつ自然災害が起こってもおかしくない状況ですが、テレビや防災無線だけに頼っていては、自分の命を自分で守ることが難しくなってきています。

災害時に弱者となりがちなのが、ITリテラシーの低い高齢者です。
スマートホンやパソコンで得られる緊急性の高い情報を得られず、避難が遅れるなど、情報格差により危険にさらされる可能性があります。

各自治体が防災メールや防災ラジオなどの整備を工夫していますが、電波の届きにくいエリア等もあり、まだまだ十分ではなく、地域のリーダーと連携を取るなどの人的面も含めたしくみづくりが必要となっています。

参照元:大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化|気象庁ホームページ

高齢者を襲うインターネットトラブル

高齢者を襲うインターネットトラブル

高齢者のデジタルへの移行を妨げる要因として、インターネットをめぐるさまざまなトラブルがあります。

コロナ禍で外出を控え、ECサイトで買い物する人も増えました。
2020年は17%増の13.7兆円、2021年は10%増の15兆円超と予測されています。

しかし、デジタルリテラシーの低い高齢者は詐欺などの標的になる可能性が高いとも言えます。
1回だと思い購入したら定期購入の契約となっていて高額を請求された、ネットショップ自体が架空で商品が届かなかったなどのトラブルが頻発しています。

また、「フィッシングメール(銀行、カード会社、オンラインサービスなどの名をかたった詐欺メール)を受け取ったことがある」という方も多く、周りに相談できる人がいない場合は特に巻き込まれることも多くあります。

パソコン自体の操作に不慣れということで、パソコンメンテナンス費用として高額を支払ってします詐欺などのターゲットになりやすいのも高齢者です。
そうしたトラブルが、高齢者のデジタルへのハードルを上げる結果となっています。

参照元:通販・e-コマースビジネスの実態と今後 2021 調査レポート|富士経済グループ

高齢者へのデジタル普及に必要なのは「メリット」

高齢者へのデジタル普及に必要なのは「メリット」

高齢者もICT(情報通信技術)を活用できるようにすると意気込むマイナンバーカード。
高齢者においてその取得率は約6割ですが、取得の予定がない、または無関心という層も約3割います。

なぜ取得しないのかという理由の一番が、「個人情報の漏洩が怖い」次いで「メリットがわからない」となっています。

総務省が「デジタル格差」の解消を目的として、デジタル活用に不安のある高齢者向けに無料の講習会を実施しており、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの4社の店頭でも受けることができます。

マイナンバーカードの申請方法やマイナポータルの活用方法、オンライン行政手続などについて知ることができますが、デジタルのメリットをどう感じられるのかというところが伝わらなければ、これ以上の普及は難しいかもしれません。

参照元:シニア世代のデジタル化に関する意識・行動と課題||NRIメディアフォーラム|野村総合研究所(NRI)

情報格差解消がめざすのは「幸福」

 

情報格差解消がめざすのは「幸福」

そもそもデジタルが高齢者にもたらす価値は何かと考えた時に、それは「幸福」ではないでしょうか。

手続きが便利になる、時間が短縮できるといった直接的な利便性ではなく、満足した生活ができる、充実した毎日を送れるといった多面的で継続的な幸せ。
いわゆる「well-being(ウェルビーイング)」です。

コロナ禍で自由に行き来ができなくなった時、LINEの利用率が増加したと言われています。
外出がままならない状況の中、スマートホンでもいいから遠くの子どもや孫の顔を見たい、友人と日々の交流をしたいという要望が高まりました。

高齢者においても、スマートホンの普及、SNSの利用拡大の引き金となったケースも多かったようです。

こうした大切な人たちを身近に感じること、興味ある情報を入手したり仲間と交流したりすること、個人の健康データをもとに健やかに暮らせることなど、デジタルがより心が満たされる毎日のための手助けであることが望まれます。

そして、それがひいては社会の「well-being(ウェルビーイング)」にもつながり、高齢者もより暮らしやすい社会へとつながっていきます。

高齢者の情報格差を埋めるのは「思いやり」

高齢者の情報格差を埋めるのは「思いやり」

北欧の中でもデジタル化先進国と評されるデンマークでは、70年代の行政システム導入を機に、90年代には利用者側の意見に基づくシステム設計の考え方がすすみ、コンピュータサイエンスの教育にも組み込まれています。

また、現場の人や物、情報の流れを理解した人を設計に巻き込む『参加型デザイン』という手法が当たり前のように行われているようです。

日本のシステム開発には、まだまだ供給者側のニーズに合わせて設計するという発想が根付いているのではないでしょうか。

使用者側、特に高齢者などデジタルリテラシーやスキルが低い人の視点にたったシステムづくりやWEBサイトの設計が、情報格差の壁を取り払う解決方法の1つです。
特に行政のホームページなどには、「使いやすい」を優先した設計をもっと取り入れるべきだと思われます。

また、普及させるための伝え方も、「楽しそう」「何かいいことありそう」という演出をし、体験をさせることが大切です。
高齢者がデジタルで楽しい経験がたくさんできるよう、取り組んでいきたいものです。

高齢者の情報格差を埋めるのは、実はきめ細かい多方面からのリアルの交流であり、相互支援であり、思いやりです。

まとめ

まとめ

日本では65歳以上の総人口に占める割合(高齢化率)は28.8%となり(2020年10月1日時点)、2065年には約4割になると推計されています。
これまでに経験したことのない少子高齢化が進むいま、情報格差(デジタルデバイド)への対策は急務となっています。

高齢者にとってデジタルが使いやすくなることは、耳の不自由な方、目の不自由な方、言語の異なる方などにもやさしいものになるはずです。
デジタルにもユニバーサルデザインという考え方を取り入れることが、情報格差(デジタルデバイド)の課題解決になるのではないでしょうか。

地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」。
SDGsのめざす世界は、一人ひとりの思いやりと、垣根を取り払った新たなチャレンジにかかっています。

参照元:人口推計(令和3年(2021年)2月平成27年国勢調査を基準とする推計値,令和3年(2021年)7月概算値)(2021年7月20日公表)|統計局ホームページ

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