世界的な課題を解決するための、世界共通目標「SDGs(エスディージーズ)」。
「SDGs」は大カテゴリーである「目標」と、小カテゴリである「ターゲット」から構成されています。
目標には、私たちの住環境や自然環境に関して、2030年までに達成すべき17の項目が設定されています。
さらにターゲットとして、目標達成に向けた具体的な取り組みが169項目設定されています。
今回はその目標の中から、10番目にあたる「人や国の不平等をなくそう」について、解説していきます。
SDGsの目標10「人や国の不平等をなくそう」とは?
まずは、目標10の概要やターゲットについて見ていきましょう。
目標10「人や国の不平等をなくそう」の概要
世界では、さまざまな不平等や格差が起きています。
たとえば、教育格差、貧富格差、性別による格差など、世界各地が多くの問題を抱えています。
目標10「人や国の不平等をなくそう」では、そうしたあらゆる不平等や格差をなくし、世界の誰ひとり残さずに平等で格差に苦しまない社会を目指しています。
目標10「人や国の不平等をなくそう」のターゲット
目標10「人や国の不平等をなくそう」で定められているターゲットは、以下の10項目です。
目標達成に向けて、より具体的な取り組みが設定されています。
1.2030 年までに、各国の所得下位 40%の所得成長率について、国内平均を上回る数値を漸進的に達成し、持続させる。
2.2030 年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、全ての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する。
3.差別的な法律、政策及び慣行の撤廃、並びに適切な関連法規、政策、行動の促進などを通じて、機会均等を確保し、成果の不平等を是正する。
4.税制、賃金、社会保障政策をはじめとする政策を導入し、平等の拡大を漸進的に達成する。
5.世界金融市場と金融機関に対する規制とモニタリングを改善し、こうした規制の実施を強化する。
6.地球規模の国際経済・金融制度の意思決定における開発途上国の参加や発言力を拡大させることにより、より効果的で信用力があり、説明責任のある正当な制度を実現する。
7.計画に基づき良く管理された移民政策の実施などを通じて、秩序のとれた、安全で規則的かつ責任ある移住や流動性を促進する。
a. 世界貿易機関(WTO)協定に従い、開発途上国、特に後発開発途上国に対する特別かつ異なる待遇の原則を実施する。
b. 各国の国家計画やプログラムに従って、後発開発途上国、アフリカ諸国、小島嶼開発途上国及び内陸開発途上国を始めとする、ニーズが最も大きい国々への、政府開発援助(ODA)及び海外直接投資を含む資金の流入を促進する。
c. 2030年までに、移住労働者による送金コストを3%未満に引き下げ、コストが5%を越える送金経路を撤廃する。
「人や国の不平等」とは?
「人や国の不平等」とは、具体的にどんなものを指すのでしょうか?
まず、人の不平等には、性別、年齢、人種、職業、貧富など個人間の格差から生まれる不平等があります。
しかしどれも正当な理由には当たらず、一日も早く解消されるべき問題です。
同様に、国の不平等には、国家資金の差、技術力の差、教育水準などが挙げられます。
その結果、先進国と発展途上国で発言力、つまり発言による影響力が異なるといった問題もあります。
国家間の経済格差は、それぞれの国や地域に住む人々の暮らしにも大きく影響するため、早期是正が望まれています。
SDGsで掲げられている17の目標は、それぞれが密接に交わっています。
なかでも目標10は他の目標と深く関わっていて、他の目標をそれぞれ達成した場合、目標10の達成に大きく近づくと言えます。
例えば、目標4「質の高い教育をみんなに」は、国や個人間の教育格差をなくすことを目指しています。
教育格差の原因のひとつは、所得格差です。
そのため、教育格差をなくすには、所得格差をなくす必要があります。
これら2つの格差問題は、目標10で言う「人や国の不平等」にあたり、目標10を達成するための重要な項目です。
さらに、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」では、性差別や性格差をなくすことを目指しています。
性差による教育格差、所得格差などをなくすための取り組みがおこなわれており、それによって目標10の目標達成にも近づくことができます。
SDGs目標10「人や国の不平等をなくそう」に関する 日本の課題
では、目標10「人や国の不平等をなくそう」に関して、現在、日本が抱えている課題はどのような内容なのでしょうか?
日本が抱えている課題のひとつとして挙げられるのが、「所得格差」です。
世界各国内の所得格差は、「ジニ係数」という数字で表されます。
「ジニ係数」は、0~1の数値間で所得格差の割合を表します。
0に近ければ近いほど所得の格差はなく、1に近づくにつれ、所得の格差が広がっている状態を示しています。
2020年7月に独立行政法人経済産業研究所が発表した資料によると、2012年前後の日本のジニ係数は0.33。
世界比較では、ワースト9位という順位になっています。
さらに、日本のジニ係数を1984年~2017年の推移で見てみると、1980年代半ばから上昇し、2000年代以降、概ね横ばいで推移していることがわかりました。
つまり、2012年時点で日本は他国と比較して、国内の所得格差が大きく、その状態は少なくとも約10年の間、改善されていないということになります。
日本の課題解決に向けた取り組み
今現在、日本が所得格差是正に向けて重点を置いている取り組みは、大きく2つあります。
2. 所得再分配前の所得格差の縮小
所得再分配は、「富の再分配」とも言われることがあります。
税制や社会保障によって、所得格差を小さくする取り組みです。
例として、所得税は累進課税制をとっていて、所得額の高い人ほど所得税の納入額が高くなるよう定められています。
そうして集められた税金は、医療や福祉などの社会保障として国民に「再分配」されています。
政府はこうした仕組みにより、所得格差の是正を目指しています。
さらに、そもそもの各人の所得格差を小さくしようという取り組みがおこなわれています。
所得格差の起きる原因のひとつに挙げられているのが、若年・中年層の非正規雇用者が占める割合の増加です。
非正規雇用者として働く理由は人によりさまざまですが、正規雇用者と比較すると所得格差が大きいという問題があります。
問題の解決に向け、政府は非正規雇用者に向けた教育訓練投資の拡大や、人材開発のための環境を整えた企業に対する助成金制度の整備をおこなっています。
また、最低賃金の引上げをおこなっているほか、企業単位で最低賃金の引き上げをおこなう企業に対し、助成金を支給するといった取り組みもおこなわれています。
日本の課題解決に向けて 私たちができること
日本が抱える大きな課題である所得格差是正に向け、私たちができることは2つあります。
・不平等・格差を抱える社会をよい方向に動かすため、「協力する意識を持ち、行動する」こと。
2つの大切なことは、日本の課題解決だけでなく、世界の課題解決に向けたアクションにもなります。
不平等・格差の是正のためには、ひとりひとりの「協力」が欠かせません。
貧困の差を小さくするために、募金に協力することも私たちができることのひとつです。
また、労働に見合った賃金が支払われるよう適正価格での買い物をすることも、こうした課題解決への貢献となります。
不平等をなくして 「誰ひとり残さず」幸せな社会へ
今回は、SDGs目標10「人や国の不平等をなくそう」について解説をしました。
社会のあらゆる不平等・格差をなくし、ひとりひとりが満足に、そして幸せに暮らせる豊かな社会を目指して、私たちができることを地道に取り組んでいきましょう。
・SDGグローバル指標(SDG Indicators)|外務省 JAPAN SDGs Action Platform
・ゴール10「人や国の不平等をなくそう」 の日本での課題|SDGs one by one|相模原市HP