リデュースとは、ゴミそのものの発生量を減らす行動を指します。循環型社会形成推進基本法では「リデュース(発生抑制)」「リユース(再使用)」「リサイクル(再生利用)」の3Rのうち、リデュースが最も優先度の高い取り組みとされています。ゴミを出してから分別・再利用を考えるのではなく、そもそもゴミになるものを作らない・持ち込まないという発想です。2020年のレジ袋有料化をきっかけに言葉自体は広まりましたが、実際に企業や個人がどのような行動を取っているのかまでは知らない人も多いのではないでしょうか。この記事では、リデュースに関する企業と個人それぞれの取り組み事例を紹介しながら、自分の暮らしに取り入れられるヒントを探っていきます。
リデュースとは|3Rの中でなぜ最優先とされるのか
リデュースは「Reduce(減らす)」という英語が示す通り、ゴミになるものの発生そのものを抑える行動です。似た言葉に「リユース(Reuse)」「リサイクル(Recycle)」がありますが、この3つには優先順位があります。
日本の循環型社会形成推進基本法では、廃棄物処理の優先順位を「発生抑制(リデュース)→再使用(リユース)→再生利用(リサイクル)→熱回収→適正処分」の順と定めています。一度出てしまったゴミを分別・再利用するリユースやリサイクルに比べ、そもそもゴミを生まないリデュースのほうが、資源採取から廃棄までのライフサイクル全体でエネルギー消費や環境負荷を抑えられるためです。
この優先順位は建前上のスローガンではなく、国の政策にも反映されています。2022年4月に施行された「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラスチック資源循環促進法)」では、スプーンやストロー、ハンガーなど特定の使い捨てプラスチック製品について、事業者に対し使用量そのものを減らす取り組みを求めています。つまりリデュースは、企業にとってもはや「やったほうがよい」ではなく「求められている」段階に入っているといえます。
日本でリデュースが急がれる理由|食品ロスとプラスチックごみの現状
なぜ今、これほどリデュースが注目されているのでしょうか。背景には、日本特有のごみ問題の構造があります。
食品ロスの現状
日本では、まだ食べられるのに廃棄されてしまう「食品ロス」が長年の課題となっています。消費者庁は食品ロス削減に関する情報発信を行っており、家庭系・事業系を合わせた食品ロスの削減に向けて、国・自治体・事業者が連携した取り組みを呼びかけています。使い残しや食べ残し、賞味期限切れによる廃棄は家庭でも日常的に発生しており、個人の意識ひとつで減らせる余地が大きい領域です。
プラスチックごみの現状
プラスチックごみについても、日本は一人当たりの容器包装プラスチック使用量が世界的に見ても多い国とされています。レジ袋有料化やストローの紙製化はその一部にすぎず、飲料容器や食品トレーなど、まだ削減余地の大きい分野が数多く残っています。だからこそ、企業側の素材転換や軽量化と、個人側の「マイ〇〇」習慣の両輪が必要とされているのです。
企業のリデュース事例|モノを長く使う工夫
企業にとってリデュースは、一見すると「商品をたくさん売って利益を得る」というビジネスの基本と矛盾するようにも見えます。しかし、長く使える製品を作ることは、消費者の信頼やブランド価値の向上につながり、結果として支持される理由にもなっています。
耐久性を高めて買い替えを減らす
製品そのものの寿命を延ばすことも、有効なリデュースの手段です。例えばFRP(繊維強化プラスチック)は、軽量なプラスチックにガラス繊維などの強化材を加えることで、軽さと耐久性を両立させた素材です。静岡県内の小学校で1970年代に設置されたFRP製プールが現在も現役で使われている例があり、素材選びひとつで製品の寿命が大きく変わることを示しています。
修理サービスで「まだ使える」を後押しする
アウトドアブランドのパタゴニアは、製品を長く使ってもらうための修理サービス「Worn Wear(ウォーンウェア)」を展開しています。スタッフによる修理対応に加え、インターネット上で自分で修理する方法を公開しており、写真付きの解説で初めて修理に挑戦する人でも取り組みやすい構成になっています。「まだ使えるものを買い替えない」という選択肢を、企業自身が用意している点が特徴です。
企業のリデュース事例|包装・容器を減らす工夫
製品そのものだけでなく、包装や容器の設計を見直すことでもリデュースは実現できます。コンビニや飲料メーカーの事例を見ていきましょう。
ローソンのフタ一体型設計
ローソンは、MACHI caféで提供するアイスドリンクのフタに飲み口を設け、ストローを使わずに飲める形状へと切り替えました。従来はアイスドリンクにストローの使用がほぼ必須でしたが、ホットドリンクと同じ形状のフタを採用することで、ストローという別部材そのものを不要にしています。ローソンは容器包装プラスチックの削減とオリジナル商品への環境配慮型素材の使用拡大を中長期の目標として掲げており、フタの形状変更はその取り組みの一つに位置づけられます。
サントリーの軽量ペットボトル
サントリーは、天然水の550mlペットボトルで国内最軽量クラスを実現しています。植物由来素材を一部に使用した軽量ボトルは、従来品に比べて石油由来原料の使用量を大きく削減できるとされ、ペットボトル1本あたりに使う樹脂の量そのものを減らす発想に基づいています。あわせて梱包用の段ボールを透明フィルムに置き換えることで、製造から輸送、リサイクルまでの過程で出るCO2排出量の抑制にも取り組んでいます。
詰め替え・量り売りの広がり
容器包装のリデュースは、飲料メーカーだけの話ではありません。日用品メーカーでは、洗剤やシャンプーなどの詰め替え用製品が定着し、ボトル本体を繰り返し使う前提の販売方法が一般化しています。また無印良品をはじめとする一部の小売店では、せっけんや洗剤を必要な分量だけ購入できる量り売りコーナーを店舗に設置する動きも広がっており、容器そのものを持たない選択肢を提示しています。こうした詰め替え・量り売りは、企業の環境配慮と消費者の節約志向の両方に応える取り組みとして注目されています。
シェアリング・フードシェアで生まれる新しいリデュース
SDGsへの関心の高まりとともに、「そもそも所有しない」「余っているものを分け合う」という発想に基づいた新しいビジネスモデルも増えています。
TABETEのフードシェアリング
食品ロス削減を目的としたフードシェアリングサービス「TABETE」は、作りすぎてしまった惣菜や、予約キャンセルで行き場を失った食事、規格外の食材を使った商品などを、通常より手頃な価格で購入できる仕組みを提供しています。店舗側は廃棄予定だった食材を販売に回せ、利用者は割安に食品を手に入れられるうえ、新しい店との出会いも生まれるという、双方にメリットのある仕組みになっています。
アイカサの傘シェアリング
ビニール傘の買い切りをやめ、必要なときだけ借りるという発想で展開されているのが傘のシェアリングサービス「アイカサ」です。関東を中心に複数の地域で駅や商業施設に設置された傘立てから、必要なときだけ傘を借りて、近くの別の設置場所へ返却できる仕組みになっています。突然の雨のたびにビニール傘を買ってしまう、という消費行動そのものを減らすアプローチです。
水Do!が推進する水道水の利用
「水Do!」は、使い捨てペットボトルに頼らず水道水を活用する「水の域産域消」を掲げて活動する団体です。マイボトルにステッカーを貼るアクションの呼びかけや、給水スポットの設置、飲食店と連携した給水対応の拡大など、街中や大学構内でさまざまな働きかけを行っています。ペットボトルという「容器そのもの」を使わない選択肢を広げる活動といえるでしょう。
個人でできるリデュースの実践術|今日からできる4つの行動
企業側の取り組みが進んでも、実際に利用し、選ぶのは私たち個人です。ここでは家庭で無理なく始められる4つの行動を紹介します。共通するポイントは「ゴミになるものをそもそも家庭に持ち込まない」という考え方です。
マイ〇〇を持ち歩く
レジ袋有料化をきっかけにマイバッグを持つ習慣が定着した方は多いはずです。同じ発想はマイボトルやマイ容器にも広げられます。コンビニやカフェではマイタンブラーを持参すると割引を受けられる店舗があり、対応する肉屋や魚屋、豆腐店などでは持参した容器に商品を詰めてもらえる場合もあります。近所の個人商店が対応しているかどうか、一度確認してみる価値があるでしょう。
食品ロスを減らす
食品ロスは、家庭の意識だけで大きく減らせる領域です。必要な分だけを購入し、食べきれる量だけを調理する、野菜の皮を厚くむきすぎないといった小さな工夫の積み重ねが効果を生みます。どうしても出てしまう生ゴミは、コンポストを使って堆肥化する方法もあり、自治体によっては購入費用を補助する制度を設けているところもあります。
詰め替え・パッケージフリー製品を選ぶ
使い捨て容器は便利ですが、その分だけ廃棄物を生みます。調味料や洗剤の詰め替え用製品は、本体ボトルに比べて価格が抑えられていることが多く、経済的なメリットも兼ね備えています。プラスチック包装が多い日本では、包装を使わない「パッケージフリー」の商品や量り売り専門店はまだ限られていますが、都市部を中心に少しずつ選択肢が増えています。
レンタル・シェアリングサービスを利用する
年に数回しか使わないものは、購入せずにレンタルやシェアリングを利用するという選択肢もあります。都内では自治体と事業者が連携したシェアサイクルが普及しており、複数の駐輪拠点から自転車を借り、目的地付近の別拠点へ返却できる仕組みが広がっています。先に紹介したアイカサのような傘のシェアリングも、同じ発想に基づくサービスです。「所有」から「利用」へと発想を切り替えることが、リデュースにつながります。
リデュースとリユース・リサイクルの違い|混同しやすいポイント
3Rという言葉はセットで語られることが多く、意味を混同してしまう人も少なくありません。ここで改めて整理しておきましょう。
リデュースは「ゴミになるものの発生自体を減らす」行動です。マイバッグを持つ、詰め替え製品を選ぶ、必要な量だけ購入するといった行動は、いずれもゴミの発生そのものを未然に防ぐものです。一方でリユースは「一度使ったものを繰り返し使う」行動を指します。フリマアプリで譲る、リターナブル瓶を回収して再利用するといった行動がこれにあたります。そしてリサイクルは「使い終わったものを資源として再生し、別の製品に作り変える」行動です。ペットボトルを回収して繊維製品に加工する、といった例がわかりやすいでしょう。
この3つのうち、リサイクルは比較的取り組みやすい反面、回収・運搬・再加工の過程でエネルギーを消費します。一方リデュースは、そもそも資源を使う量自体を減らすため、ライフサイクル全体で見た環境負荷の抑制効果が大きいとされています。「リサイクルしているから安心」で終わらせず、まずは発生を減らす選択肢がないかを考えることが、優先順位どおりの行動といえます。
食品ロスの具体的な削減方法についてさらに詳しく知りたい方は、家庭でできる工夫をまとめた記事もあわせてご覧ください。

マイボトルやマイバッグなど「マイ〇〇」習慣を暮らしに取り入れるコツは、こちらの記事でも紹介しています。

リユース・リサイクルを含めた3R全体の考え方を体系的に知りたい方には、こちらの記事もおすすめです。

まとめ
リデュースは、3Rの中で最も優先すべき行動でありながら、企業と個人のどちらか一方だけで完結するものではありません。パタゴニアの修理サービスやローソンの容器設計、サントリーの軽量ボトルのように、企業は製品や仕組みそのものを見直すことでゴミの発生を抑えようとしています。一方でTABETEやアイカサ、水Do!のような新しいサービスは、私たちが「利用する側」として参加することで初めて効果を発揮する仕組みです。
個人にできることは、決して特別なことばかりではありません。マイボトルを持ち歩く、必要な分だけ食品を買う、詰め替え製品を選ぶ、たまにしか使わないものは借りる。どれも今日から始められる小さな選択です。そしてその選択を積み重ねる人が増えるほど、企業側もリデュースに投資しやすくなるという好循環が生まれます。リサイクルやリユースと混同せず、「そもそも発生させない」という視点を意識するだけでも、日々の消費行動は変わっていくはずです。
- リデュースは3Rの中で最も優先される「発生抑制」の行動であり、プラスチック資源循環促進法などの国内制度にも反映されている
- パタゴニア・ローソン・サントリーなど、企業は製品の耐久性向上や容器包装の見直しでリデュースに取り組んでいる
- TABETE・アイカサ・水Do!のようなシェアリング型サービスは、利用者の参加によって初めて効果を発揮する
- 個人はマイ〇〇の習慣化、食品ロス削減、詰め替え製品の選択、レンタル・シェアの活用で今日からリデュースに参加できる
- リユース(再使用)・リサイクル(再生利用)と混同せず、まず発生を減らす視点を優先することが3Rの基本原則

