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SDGs

デンマークの風力発電|2024年に風力比率58%を達成した先進国の戦略と日本への示唆

デンマークの風力発電事情 現在を知り、これからを考える

デンマークの電力に占める風力発電の割合が、2024年に58%に達したと報告されています。日本の再生可能エネルギー政策が本格化しつつある今、半世紀にわたって風力発電を育ててきたデンマークの戦略には、政策・技術・市民参加の3つの柱が絡み合っています。数字の背景にある歴史的経緯と最新動向を追いながら、日本が参考にできる点を考えます。

2024年、デンマークの風力発電比率が58%に到達

イギリスのシンクタンクEmberが推計した2024年のデータをISEP(環境エネルギー政策研究所)が取りまとめた速報によると、デンマークの発電電力量に占める自然エネルギーの割合は88%に達し、そのうち風力発電だけで58%を占めています。 風力と太陽光を合わせた変動性自然エネルギー(VRE)の割合はすでに69%に達しており、化石燃料依存からの構造転換が数字として明確に表れています。

三井物産が公開した資料によると、デンマーク統計局のデータとして2023年のエネルギー消費全体に占める再生可能エネルギーの割合は45.2%で、2011年比でおよそ2倍に拡大しています。また、過去15年間で電力における石炭使用量が83%減少したとされており、化石燃料からの脱却が数値として裏付けられています。

2017年時点では風力発電の比率が43%超、2019年には47%と着実に伸ばしてきたデンマークは、2024年についに58%という水準に到達しました。同国の電力の過半数が風力だけで賄われている計算になります。

なぜデンマークは風力発電の先進国になれたのか

デンマークがここまで風力発電を発展させられた背景には、地理的条件と歴史的な政策転換の組み合わせがあります。

1973年のオイルショックが転換点になった

かつてのデンマークは、エネルギーの95%以上を輸入に頼る国でした。1973年の第一次オイルショックは輸入依存の脆弱さを突きつけ、国としてエネルギー自給率の向上に本腰を入れるきっかけになりました。以来50年超にわたって風力発電への投資と制度整備を続けてきた積み重ねが、現在の高い比率を支えています。

偏西風と平坦な地形という自然条件

デンマークは三方を海に囲まれた半島と島々からなる平坦な地形で、北大西洋からの偏西風が遮るものなく吹き抜けます。海岸線沿いには年間を通じて安定した強風が確保できるため、風力タービンの稼働率が高い水準を維持しやすい環境です。単純な「風の強さ」だけでなく、風速の安定性が発電量の予測精度を高め、電力系統への統合を容易にしている点も見逃せません。

風車文化が培った技術基盤

ヨーロッパには中世から風車を動力として活用してきた歴史があります。デンマークもその例外ではなく、風を機械的エネルギーに変換するノウハウが地域社会に根付いていました。この文化的・技術的蓄積が、近代的な風力発電タービンの設計・製造へ自然につながっていったとされています。世界最大手の風力発電機メーカーであるヴェスタス(Vestas)がデンマーク発の企業であることは、その象徴といえます。

市民・協同組合が発電の担い手になった歴史

デンマークでは1980年代から、農家や地域住民が協同組合を組織して風力タービンを共同所有する形が広がりました。電力の消費者が同時に発電の担い手になるという構造が、再生可能エネルギーへの社会的な受容度を高めてきました。この市民参加型のアプローチは、後に洋上風力の大規模開発へとシフトする際の政治的支持基盤にもなっています。

洋上風力の最前線|エネルギー島構想の現在地

デンマークが次の段階として描く戦略の核が「エネルギー島(Energy Island)」構想です。北海とバルト海(ボーンホルム島周辺)の2カ所に洋上風力発電の拠点を建設し、周辺国への送電ハブとして機能させる計画です。

自然エネルギー財団の2025年の報告によると、デンマーク政府は2030年までに洋上風力を最低6GW導入する目標を掲げており、2023年5月の政府・議会合意に基づく内容が2025年5月にも更新されています。 2024年4月に発表された洋上風力6GW規模の新たな公募は、6海域を対象に最低6GWを合計する形で実施されましたが、事業者のリスク配分に関する課題が浮上し、制度の再調整が進められています。

北海のエネルギー島は、最大5GW規模の洋上風力を集約し、約500万世帯分の電力を供給できる見込みとされています。デンマーク国内の消費だけでなく、スウェーデン・ノルウェー・ドイツなど隣国との電力ネットワークを強化することで、北欧・欧州全体の脱炭素化を加速させる狙いがあります。

2024年の公募では入札ゼロという事態も起き、自然エネルギー財団はこれを「洋上風力の転換点」と位置づけています。 事業コストの上昇や許認可の遅延、リスク分担の不公平感が投資家の慎重姿勢につながったとみられます。 デンマーク政府は2025年5月の政治合意で防衛上の費用を国が負担する形に改め、条件を再整備しました。 世界一の導入実績を持つ国でも、制度設計の難しさは続いています。

世界最大タービンの量産とヴェスタスの役割

デンマークの風力発電戦略を語る上で、ヴェスタスの存在は欠かせません。2021年に発表された出力15MW(メガワット)の洋上風力タービン「V236-15.0MW」は、それまでの最大機種と比べて1基あたりの発電量が65%増加するとされ、世界各地の洋上風力プロジェクトへの採用が進んでいます。

大型化によって同じ海域面積からより多くの電力を得られるため、単位発電量あたりのコストを下げる効果があります。洋上という制約がある環境で1基の出力を最大化することは、事業採算性を高める上で重要な要素です。デンマークが国内外の洋上風力開発で影響力を持ち続ける背景の一つが、このタービン技術の競争優位にあります。

陸上と洋上、2つの発電方式の特徴

風力発電は設置場所によって陸上(オンショア)と洋上(オフショア)に大別されます。それぞれに異なる特性があり、国や地域の条件に応じた使い分けが求められます。

陸上風力のメリットと課題

陸上風力は設置・メンテナンスのコストが洋上に比べて低く、すでに多くの国で導入が進んでいます。一方で、平地が少ない国では適地の確保が難しく、騒音・景観への懸念から地域住民との合意形成に時間がかかる場合もあります。デンマークは平坦な地形と風況の良さにより陸上風力でも高い成果を上げてきましたが、適地のほぼ全域が活用済みに近い状態にあるとされ、今後の拡大余地は限られつつあります。

洋上風力が切り開く可能性

洋上では陸上より風速が強く、年間を通じて安定した発電量を確保しやすいのが最大の利点です。また、タービンが沖合に設置されるため、万が一の事故や損壊が起きても陸上の住民への直接的な影響が小さくなります。国土が狭いイギリスや日本にとっては、陸上に代わる広大な発電スペースとして洋上が戦略的意味を持ちます。

課題はコストとインフラです。海底ケーブルの敷設、強度の高い基礎構造の建設、メンテナンス船の確保など、陸上に比べて初期投資が膨らみます。デンマークでも2024年の公募で入札ゼロが発生した背景には、この事業コストの上昇があります。技術開発とともに制度面での支援が不可欠です。

日本の風力発電はどこに向かうのか

日本の風力発電をめぐる状況は、デンマークとは大きく異なります。複雑な海底地形、台風・地震などの自然災害リスク、漁業権や景観規制など、日本固有の制約が重なります。

それでも近年、政策的な追い風が生まれています。2019年に施行された改正港湾法や2021年の洋上風力促進区域の指定など、制度の整備が進んでいます。日本政府は2030年までに洋上風力を累積で1GW、2040年までに30〜45GWの導入を目指す目標を掲げており、大型プロジェクトの入札が複数の海域で進められています。

デンマークが示す教訓の一つは、長期の政策継続性です。オイルショックから50年以上、政権が変わっても再生可能エネルギーへの基本方針が維持されてきたことが、産業の育成と投資家の信頼につながっています。日本でも洋上風力に関するルールが短期間で変更されることへの懸念が事業者から上がっており、安定した制度設計が問われています。

また、日本では固定価格買取制度(FIT)から競争入札(FIP)への移行が進む中、ヴェスタスのような強い製造基盤を国内で持てるかどうかも課題です。デンマークが風力発電で経済的メリットを享受できてきた背景には、タービン製造から運用・保守まで一貫した産業エコシステムがあります。日本が洋上風力を単なる電力調達手段にとどめず、産業振興と組み合わせるためには、国内サプライチェーンの構築が欠かせません。

デンマークの発電量の内訳と日本の現状を同じ視点で比較するのは難しい面もありますが、同国が50年かけて積み上げた教訓——政策の継続性、地域との合意形成、産業としての裾野の広さ——は、日本の今後の議論において参照に値します。

まとめ|デンマーク風力発電から読み取れること

デンマークの2024年における風力発電比率58%という数字は、一夜にして達成されたものではありません。1973年のオイルショックを契機とした政策転換、偏西風という地理的条件の活用、市民参加による社会的受容、そしてヴェスタスを中心とした産業エコシステムの育成——これらが長期にわたって積み重なった結果です。

エネルギー島構想や洋上風力6GWの2030年目標は、同国がさらに先を見据えていることを示しています。一方、2024年の公募で入札ゼロが発生した事実は、世界最先端の国でも制度設計の難しさが続くことを教えてくれます。

日本にとってデンマークの経験が示すのは、「完成形をまねる」ことではなく、「長期にわたって修正を続ける」姿勢です。まず身近なところから、エネルギー政策や再生可能エネルギーに関する情報に目を向け、自分が使う電力の出どころを意識することが、変化を後押しする第一歩になります。

  • 2024年のデンマークの発電電力量における自然エネルギー比率は88%、風力だけで58%(ISEP/Ember速報)
  • 1973年のオイルショックを契機に、半世紀以上にわたる政策の継続がこの比率を支えている
  • エネルギー島構想と2030年の洋上風力6GW目標で、さらなる拡大と近隣国への送電を目指している
  • 日本との比較で見えるのは、地理条件の違いだけでなく、政策継続性と産業エコシステムの有無という構造的差異
  • 洋上風力の事業環境は世界的に変化しており、制度設計の柔軟な見直しがデンマークでも続いている

  • 記事を書いたライター
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会社員とのパラレルキャリアを経て、独立。 執筆ジャンルは主に、SDGs、旅行、ファッション。現在、複数のメディアで記事を掲載。 SDGsに関心を持ったきっかけは、ハワイへの語学留学中、日本のSDGsに関する取り組みの遅れを感じたこと。 より多くの人に、環境への取り組みを知ってほしいと思い、2021年6月より「MIRASUS」にて執筆を開始。

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