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日本のジェンダー平等をめぐる議論が、国内外で続いています。世界経済フォーラム(WEF)が2025年6月に発表した「グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート2025」では、日本は148か国中118位とG7最下位という結果が改めて示されました。政治・経済・教育の各分野のデータを読み解くと、「改善が進んでいる側面」と「構造的に止まったままの側面」の両方が見えてきます。2026年の今、何が変わり、何が変わっていないのかを整理します。
148か国中118位|スコアで読む日本の立ち位置
WEFのグローバル・ジェンダー・ギャップ指数は、経済参加・機会、教育達成度、健康と生存、政治的エンパワーメントの4分野のデータを統合し、0(完全不平等)から1(完全平等)のスコアで国ごとの格差を測ります。2025年版では148か国が対象となり、日本の総合スコアは0.666でした。
G7各国の順位を並べると、イギリス4位、ドイツ9位、カナダ32位、フランス35位、アメリカ42位、イタリア85位、そして日本118位という結果になっています。同じ先進国グループの中で、日本だけが3桁の順位に沈んでいる構図は変わっていません。
一方で、世界トップのアイスランドは2025年版でもスコア0.926を記録し、16年連続で首位を維持しています。2022年以降、ジェンダーギャップの90%以上を解消した唯一の国でもあります。アイスランドとの差は0.260ポイント——この数字が、日本が向き合うべき課題の規模を端的に示しています。
2025年版の報告では、上位10か国はすべてジェンダーギャップの80%以上を解消しており、完全な平等に近い水準を達成した国が複数存在します。日本の0.666という数字は、それら上位国との差が「文化の違い」だけで説明できないことを示しています。
政治参加の後退|閣僚数の減少がスコアを直撃
2025年版レポートで最も目立った変化は、政治的エンパワーメント分野のスコアが2024年の11.8%から8.5%へと大きく落ち込んだことです。その直接的な要因として指摘されているのが、2024年10月に発足した石破茂内閣の構成です。女性閣僚は全閣僚の約10%にあたる2名にとどまり、前内閣の5名から大幅に減少しました。内閣の構成が数値に直結するという事実は、意思決定の場に誰がいるかの重要性をあらためて示しています。
国会議員に占める女性の割合も、衆議院では2024年10月の総選挙後に15%台にとどまっています。列国議会同盟(IPU)が公表している世界平均は26%超であり、日本はこの平均にも届いていません。意思決定の場に女性が少ない構造は、ジェンダー平等を推進する政策そのものが生まれにくい状況につながるという指摘が、国内外の研究者から継続的に出ています。
WEFの試算では、現在のペースで推移した場合、政治参加のジェンダーギャップが完全解消されるまでに162年かかるとされています。閣僚数の後退を踏まえれば、実際の到達はさらに先になる可能性があります。一方で、スウェーデン・フランス・ニュージーランドなどクオータ制(議席・候補者の一定割合を女性に割り当てる制度)を導入した国では、短期間で政治参加の格差を縮めた実績があります。日本でも2018年に「政治分野における男女共同参画推進法」が成立しましたが、努力義務にとどまっており拘束力は持っていません。
経済参加の「小さな前進」と根強い構造問題
経済参加・機会の分野では、2025年版レポートで一定の改善が見られました。スコアは2024年の56.8%から61.3%へと上昇し、管理職・上級職に占める女性比率も14.6%から16.1%へと伸びています。女性の労働力参加率の微増も、この改善に寄与しているとされています。
ただし、数字の改善が「構造転換」を意味するわけではありません。厚生労働省「令和5年度雇用均等基本調査」によると、正社員・正職員に占める女性の割合は27.3%にとどまっています。また内閣府男女共同参画局のデータでは、非正規労働者に占める女性の割合は53.6%と、男性の21.8%を大きく上回ります。
この非正規率の高さは、育児や介護との両立のために短時間・非正規の働き方を選ばざるを得ない女性が多い実態を映しています。管理職比率が上がっても、その手前にある「正規雇用へのアクセス」と「育児期のキャリア継続」という2つの壁が解消されなければ、格差の本質は変わらないといえます。男女の賃金格差についても、厚生労働省の調査では一般労働者の女性の賃金は男性の約75〜76%水準にあり(2023年時点)、欧州主要国と比べて依然として大きな差が残っています。
教育の「見えない格差」|理系分野に残る男女差
教育達成度の分野では、日本は国際的に高いスコアを維持しています。就学率・識字率ではほぼ格差がなく、この分野だけを見れば上位に位置します。しかし、専攻や進路の選択という観点から見ると、「見えない格差」が存在します。
文部科学省の学校基本調査によると、理学・工学分野の学部生に占める女性の割合は20%台前半にとどまっています。日本の女子生徒の数学・理科の学力はOECDの国際学力調査(PISA)で高水準を示しているにもかかわらず、理工学系への進学率が低い状況が続いています。これは「女性は文系」というジェンダーステレオタイプが進路選択の段階で影響していると、複数の教育社会学研究が指摘しています。
STEM分野(科学・技術・工学・数学)での女性活躍は、AIとデジタル化が進む経済社会において特に重要な意味を持ちます。日本経済団体連合会(経団連)が2024年に公表した提言でも、STEM教育への女子参加促進が中長期的な競争力強化の観点から盛り込まれました。学力の問題ではなく、構造と意識の問題として捉え直す視点が求められています。
CEDAW拠出金停止が示す国際的な文脈
2025年、日本が女性差別撤廃条約(CEDAW)の実施機関への拠出金を停止したという報道は、国際社会から大きな注目を集めました。CEDAWは1979年に国連総会で採択され、日本も1985年に批准した条約です。その実施監視機関である女性差別撤廃委員会は、これまでも日本に対して職場での差別是正、政治での女性代表性向上、ジェンダーに基づく暴力への法的保護強化など、複数の勧告を出し続けています。
拠出金停止の背景や詳細については政府が公式に説明しているわけではなく、影響の全容はまだ見えていません。ただ、この動きが「日本のジェンダー政策が後退している」というシグナルとして国際社会に受け取られるリスクは、外交・通商の観点からも指摘されています。
EU・米国・カナダなど主要国では、サプライチェーンにおける人権・ジェンダー平等への要求が法制化される流れが加速しています。日本企業がグローバル市場でビジネスを続けるうえで、国内のジェンダー平等水準は「国内問題」にとどまらず、貿易・投資の文脈と直結する課題になっています。
2025〜2026年の法制度の動き|制度整備の現在地
国内の制度面では、いくつかの前進が見られます。女性活躍推進法に基づく男女間賃金差異の開示義務化(2022年施行、2023年4月から101人以上の企業に拡大)によって、企業が賃金格差を「見えない問題」として放置しにくい環境が整いつつあります。開示が進む中で、「なぜ差があるのか」を管理職比率・職種分布・育休取得状況などと突き合わせて分析し、原因別の対策を立てる企業が増えています。
育児・介護休業法の改正(2025年4月施行)では、子の年齢に応じた柔軟な働き方の確保、育児休業の取得状況の公表義務の拡大などが盛り込まれました。男性の育休取得率は2023年度時点で30.1%(厚生労働省調査)と上昇傾向にありますが、取得日数が短い「形だけの取得」の課題は依然として指摘されています。育休を取った日数が数日にとどまる例が多く、実質的なケアの分担につながっていないケースも少なくありません。
また、2024年施行の改正配偶者暴力防止法(DV防止法)では、保護命令の対象が拡大され、身体的暴力に加えて精神的暴力も含むよう要件が見直されました。ジェンダーに基づく暴力対策の観点から一歩前進とされており、運用面での実効性が今後問われます。
まとめ|「162年」を縮めるために今できること
日本のジェンダー平等の現状を整理すると、次のポイントが浮かび上がります。
- WEF 2025年版レポートで日本は148か国中118位・G7最下位(総合スコア0.666)
- 政治的エンパワーメントのスコアは8.5%(前年11.8%から後退)、女性閣僚数の減少が直撃
- 経済参加は微改善(56.8%→61.3%)も、非正規率53.6%・賃金格差など構造的課題は継続
- 理工学系への女子進学率の低さは学力の問題ではなく、ジェンダーステレオタイプの問題
- 賃金格差開示義務化・育児休業法改正など制度整備は進んでいるが、実効性が問われる段階
- CEDAW拠出金停止は、日本のジェンダー政策が国際ビジネスの文脈でも評価される時代を示す
162年という数字は、現状を変えなければそれだけかかるという警告です。制度整備は必要条件ですが、十分条件ではありません。社会・企業・個人のそれぞれの場所で変化が積み重なることで初めて数字が動きます。まず1つ——職場の評価基準を確認する、育休取得を選択肢として考える、次の選挙でジェンダー政策を調べてみる——そのどれか1つから始めてみてください。
日本のジェンダー平等に向けた企業の法対応や職場での具体的な取り組みについては、こちらの記事も参考にしてください。



